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ミューザ川崎シンフォニーホール & 東京交響楽団
名曲全集 第69回
【 2011年9月11日(日) 昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ 】
指揮&ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ ヴァイオリン:ラチャ・アヴァネシアン
管弦楽:東京交響楽団

■ モーツァルト:2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ
(D.ウォルター編曲による弦楽合奏版)
■ チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
■ モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」 K.492 序曲
■ チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ヴァイオリン独奏:ラチャ・アヴァネシアン

アンコール
■ コミタス:アルメニア民謡(メロディー)
ヴァイオリン:ラチャ・アヴァネシアン
 本来でしたらこの東京交響楽団さんの名曲全集はミューザ川崎シンフォニーホールで行われる予定でした。ですがミューザ川崎は3月の東日本大震災で被害に遭い、現在復旧中(数年かかるとか)。予定されていた公演はその間 色々な場所で行われるようなのですが、この公演は小田急線・新百合ヶ丘駅にある昭和音楽大学のテアトロ・ジーリオ・ショウワにて行われることになりました。

 9月に入り、少し涼しくなったかな…(雨も降ったし)と思いきや、今週末の暑いこと、暑いこと! 洗濯物もよく乾きます。汗だくの中、地図を見ながら新百合ヶ丘駅に到着しました。
駅前にはスタッフの方が「本日の演奏会へ行かれる方は、右へ進んで下さい!」というようなスケッチブックを持っていて下さり、迷うことなく昭和音楽大学へたどり着くことが出来ました。

緑に囲まれた素敵な校舎だなぁ…と思いながら中へ入りました。入口に日傘用と思われる傘立ても用意してある気配りも嬉しかったです。
ホールに入ると、オペラとかバレエを見たくなるような「劇場」という第一印象を受けました。小さめな舞台に赤いカーテン、それをぐるりと囲むような客席… 暑さも忘れ、ゴージャスな気分になりました♪

振り替えられた席は(元々ミューザ川崎の座席で購入したので)1階の13列目だったのですが、丁度良いかも…! ここのホールの舞台は高く、しかも前列付近の座席は段差が無いので前に背の高い人が座ったら完全にアウトだと思いました。

 東京交響楽団の皆様が舞台に登場し(本日のコンサートマスターはいつも笑顔が素敵な大谷康子さんでした。嬉しい!)、続いてデュメイさんとデュメイさんの愛弟子ラチャ・アヴァネシアンくんが登場! お二人とも黒のスーツ、ジャケットで決めていますv

舞台の中央に置いてある2台の譜面台の高さからしてお二人の身長のバランスは想像しておりましたが、想像どおりでした。やっぱりデュメイさんは背が高い! 約2メートルですものね。
(デュメイさんはフィガロの結婚以外は楽譜を見られていました。)
関西フィルさんのブログで、大幅なダイエットをされてお顔がすっきりのデュメイさんのお写真をいくつか見ておりましたが、実際は写真のようにゲッソリされた感じはありませんでした。いつものデュメイさんでした。でも、お腹周りはかなりスリムになられていました〜 素晴らしい! 羨ましい!
>痛めた足でも立って演奏が出来るように(足の負担を軽くするために)、ダイエットをされたのだそうです。

1曲目はモーツァルトの2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネでした。
ウィキペディアによると、コンチェルトーネとは『協奏交響曲とは別の、交響曲と協奏曲の中間に位置する楽曲』なのだそうです。確かにそのような感じの曲でした。

この曲はWebラジオのデュメイさんの演奏(2010年10月、デュメイさんの愛弟子ロレンツォ・ガット氏、ワロニー王立室内管弦楽団との共演)で初めて聴きました。その時に、この曲はオーボエとチェロも活躍すると聞いていたけれども どこで活躍しているのか分からないなぁ…と思っていたのですが。

本日のプログラムの解説を読んで納得。
今回デュメイさんの希望で弦楽合奏版を使用とのこと。恐らくWebラジオで聴いた演奏も(あれは管楽器も演奏していましたが)どなたかが編曲された楽譜を使われていたのだと思います。本来の演奏を知らないので何とも言えませんが、オーボエが活躍する場面など何度聞いても分からなかったので。
弦楽合奏版では、オーボエの部分はビオラが担当されているのでしょうか? 今回、チェロだけでなく、ビオラの方のソロ演奏も結構気になりました。

それと、放送当時 音だけではデュメイさんとガット氏との音の区別がつかなかったので(何となくは感じましたが、これ程デュメイさんの音を聴き分けられないなんてショックでした、苦笑)、どの部分をデュメイさんが弾いているのか目と耳に焼き付けて帰りたいなぁなんて思っておりました。

♪ ジャン ジャ ジャ ジャ、ジャ、 ティララン、ティララン…

す〜ご〜い〜っ!!!

東響の弦の音はいいですねーっ!
(個人的な感想ですが、最近聞いた日フィルさん、東京フィルさんと比べてダントツでした。この2つのコンサートでは弦の音が弱いなぁと思ったので。席の関係かもしれませんが。)

最初の音からここまではっきりと出るなんて、すごいなぁと思いました。ホールの気温などの関係なのか、最初は音が伝わってこないことが多いので。最初からここまで出ると気持ちがいい!

このホールは音が響かない… というような感想のブログをいくつか読みましたが、私の席ではきちんと響いて聴こえておりました。(ということは、もしミューザ川崎だったら もっと素晴らしい音色が届いていたのかな…?!)

そしてデュメイさん、続いてラチャくん、とソロが入ります(最初に弾かれている方がデュメイさんだったのか!と判明)。

決してソリストの二人が前に出るような曲の創りではないのですが、だからこそ舞台上のオーケストラ全体で演奏している感が伝わってきて、暖かく幸せな感じの曲に思えました。二つのヴァイオリンのハーモニーを中心に、全体がフワッと丸く盛り上がっていると言いますか。
まるでミュージカルでも見ているような感じでした(本当はオペラと言いたいのですが、オペラを観たことが私は無いので)。
それでいて、時々ふとヴァイオリン協奏曲を思わせるような場面もあるから面白いです。

初めて聴いたラチャくんのヴァイオリン。

デュメイさんの生徒でありながら、持っているヴァイオリンはストラディヴァリウス!!!
>何でもパガニーニも弾いたことがあるという名器だとか。パンフレットによると1717年製の「ピアッティ」。

ヴァイオリンの音がすごく素敵でした〜v

音そのものはデュメイさんのヴァイオリンよりもいいのではないかと。あとは音を出すテクニックと経験なのでしょうか。音楽は、ヴァイオリンの音が良ければ全てよしという問題ではないということが分かりました。音は間違えなく良いのですが、あともう少しの何かが物足りないのです。
まだ完璧とは言えない何かがあって。

やっぱりデュメイ先生とは違います…

でも、デュメイさんと不釣合い…という気持ちも起こらなかったので、上手いは上手いのだと思います(上から目線な感想ですが)。そして時々背伸びをしたような感じで体を一杯に使って演奏されている姿は、見ていてこちらも胸が熱くなる時がありました。グッとくる瞬間がある方なのですよね。

「これからが楽しみ」とか「演奏は普通でも一生懸命弾いていました」とか、そういう前向きな感想でその日のコンサートを無理矢理納得していいものなのか、いつも迷うのですが、正直に書いてしまうと、ものすごく感動したわけではないけれども(それだけ期待をして私たちは会場へ足を運ぶ訳で)デュメイさんはこういう道(自分が前に出て弾くというよりも、後継者を育てていきたいというか。未来ある音楽家たちを多くの人に知ってもらう場を作ろうとしているというか)を今、目指されているのだなぁということがすごく伝わってきて、そういった面で感動してしまいました。

あと、これも正直に書いてしまいますと、デュメイさんは昨年の10月からヴァイオリンをストラディヴァリウスに替えられたようなのですが、私は前のガルネリの方が好きだったなぁ…と。あはは。
どのような楽器を持たれてもデュメイさんはデュメイさんだし(デュメイさんの演奏が好きなので嫌いになる訳が無い!)、大きな違いは無いのですが、初めて逗子でデュメイさんの生音を聴いた時の感動と驚きは やっぱり今でも忘れられないのですよね! 美音が前面に押し出されているCDと違って、生の音は何て馬力があるのだろうかと。ますますデュメイさんの音色が好きになってしまったのでした。

ストラディヴァリウスだと、少し馬力が落ちるかな…(テクニックの問題ではなくて楽器的に)と感じます。その分、音の美しさは増しているのだと思いますが。私は美音よりもデュメイさんの迫力ある音色の方が好きみたいです。

この曲はデュメイさんの弾き振りだったのですが、オーケストラに指示を出していたのは数回で、ほとんどが正面を向いて弾いていました(笑、協奏曲の弾き振りのような感じではなかったです)。それでも皆バラバラになることなくデュメイさんの世界が広がっていたのがすごいです。
舞台上の光景がとても良かったです。特に最終楽章のメヌエットはフィナーレって感じがして、聴いている自分たちもその輪の中に入っているような感じがしました。豪華な世界が展開されました。

もっともっとデュメイさんのヴァイオリンを聴いていたかったのですが、本日のデュメイさんのヴァイオリンニストとしての演奏はこの1曲のみ。残りの3曲は指揮者オーギュスタン・デュメイの世界です!

でも、その3曲も、デュメイさんがこの曲をどう表現したいのかが私なりに分かったというか、デュメイさんが直接出しているヴァイオリンの音を聴かなくてもデュメイさんを感じられたのが不思議であり、また、嬉しかったです。指揮者の役割ってこういうことなのかな、と。

実際に演奏されていた方のブログによると、2曲目の弦楽セレナーデは当日のゲネプロでは時間が足りずに練習が出来なかったのだそうです! (デュメイさん…涙)

それでも、あの統一感。あの盛り上がり!

デュメイさんがすごいのか東響の皆様がすごいのか(どちらもだと思いますが)、ダイナミックな世界に吸い込まれてしまいました。弦の魅力200%! 弦楽器って格好良いなぁ…vvv

デュメイさんの腕の横振りもすごくて、何度も指揮台に指揮棒がベチベチぶつかっている音がしました。第4楽章では、勢い余って横ツーステップ(?)でヴァイオリンパートに近づき指示を出されていたのも印象深かったです(汗)

後半最後はもう一度ラチャくんが登場して、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲!>と、私は思っておりました。

私は未だに京響とデュメイさんとのメンコンが忘れられず(これは本当に素晴らしかったです!)、デュメイさんがこの曲を指揮することによって さらにデュメイさんのこの曲に対する思いが少しでも理解出来るといいなぁ…と、とても楽しみでした。

――― ですが。

曲が始まってみて びっくり!

あ、これってチャイコフスキーだ(爆)

… 本日のプログラムはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だったのでした。

頭の中を整理してチャイコンに切り替えようと思っても、この曲はすぐにソロが始まるので(苦笑)、ラチャくんがもう弾き始めている〜

デュメイさんはこの曲をソリストとしての部分は暗譜されているのだと思いますが、楽譜を見て指揮をされていたのが興味深かったです。
でもさすが、デュメイさん。これまでに数えられない位この曲で舞台に立たれた経験からか、オーケストラ部分はすごく格好良く仕上がっていたのですよ!!!
>ロシアっぽくは無かったのですが…

申し訳ないながらも、なぜこの舞台の中央に立っているのがデュメイさんじゃないのかしら…と何度も思ってしまいました。この伴奏で、デュメイさんのソロを聴いてみたかったです。すごいことになっていたと思います!

ラチャくんは、チャイコンはあまり合わない…と思いました。他の協奏曲で聴いてみたかったです。
独特のテンポというか間というか、それがデュメイさんの指揮と合っていなくて(デュメイさんも特に合わせていないようで)、所々でソリストとオーケストラが ずれてしまった感がありました。
ですので、中だるみもしましたし、私の隣の方は眠っておりました…
でも最終楽章は盛り上がりました! 最後は良かったです。

演奏後はブラボー!が飛び交い、今はラチャくんが主役のはずなのに、謙虚にデュメイ先生を前に前にとするお姿は微笑ましかったです(笑) で、デュメイさんが積極的にコンサートマスターさんやその他の方たちと握手を交わし…

何度か舞台を二人で行き来し、最後はデュメイ先生が「アンコールの演奏をしなさい。」みたいな感じで、手でヴァイオリンを弾く動作をしてラチャくんに指示を出し、ラチャくんのアンコールが。

「アルメニア」という言葉だけが聴こえたのですが、帰りの出口の案内板によるとコミタスのアルメニア民謡だそうです。初めて聴きました。
※ これはラチャくんの招聘先(コンサートイマジン)のWebSiteで現在映像で聴く(観る)ことが出来ます。

ラチャくんの持つストラディヴァリウスの高音の魅力がすごく伝わって来て、アルメニアという国は行ったことはありませんが(どのような国かも分かりませんが)、まるでそのアルメニアに旅しているかのような気持ちにさせられました。素晴らしかったです。

恐らく、これが本来のラチャくんだ! さっきのチャイコンは何かの間違えだ!

… と思ってしまいました(笑、…と言うほどひどい演奏だった訳ではありませんが。アンコールが良すぎたのでそう思っただけです)。

ラチャくんは恐縮そうに何度もお辞儀をされて舞台を行き来され、あまりに拍手が止まないので最後はヴァイオリンを持たずに舞台に現れました。

ですが、東響の皆さんも客席の私たちも「最後はデュメイさんも もう一度出てこられるよね…」という気持ちだったので拍手を止めることが出来ず(東響の方も舞台を去ることが出来ず)、でもデュメイさんは舞台に現れないので微妙な空気が流れました(苦笑)
そして最後に笑顔のデュメイさんともう一度ヴァイオリンを持ったラチャくんが登場し(一同ホッとした感がありました)、本日の公演は無事終了となりました。

またデュメイさんに何らかの形で東京(関東)で演奏していただきたいなぁ…と思わずにはいられませんでした。やっぱり、デュメイさん大好き! とても幸せなコンサートでしたv


   デュメイさん  ラチャくん
私の思い込みかもしれませんが(しかもどうでもいいことですが)、デュメイさんってファンへの一般的なサインは最後のYの字を意識的に2画で書かれていると思うのです(で、オフィシャルな時は1画と使い分けているのではと。昔は違ったのかもしれませんが、今はそのような気がします)。ですが、今回いただいた こちらのレコードの盤面には1画のYが…!!!
ここに載せるためにスキャニングをしていて気が付きました。
あの時のデュメイさんのお気持ちが伝わってくるようで、ちょっと嬉しいですv



2011年9月14日 記

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