戻る

クリスティアン・テツラフ
ソロ リサイタル U
【 2011年5月15日(日) at トッパンホール 】

■ ヨハン・セバスティアン・バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV1001
■ ヨハン・セバスティアン・バッハ:無伴奏パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
■ バルトーク・ベラ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz117

アンコール
■ バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番より アンダンテ
またまた、帰りの電車の中でドキドキが止まらない演奏に出会えてしまいました!

いやーーーーー、素晴らしかった。
今はこの言葉しかとにかく浮かびませんが、「この演奏を私は聴いたのだ!」 と自分自身が忘れないようにしたいので、今頭の中にあることを文字に残しておきたいと思います。

本来、本日の公演はアレクサンダー・ロンクィヒ(pf)さんとのベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全曲(全3回)の最終日、8番、9番、10番が予定されていました。週末だったということと、テツラフさんの9番クロイツェルが聴いてみたいな…と思って、私はチケットを取ったのでした。

そして今年3月の震災があり、テツラフさんの公演もあるのかな…などと気にしておりましたら、5月の上旬にトッパンホールから葉書が届きまして。

「(省略)、A.ロンクィヒが来日を取りやめました。これに伴いまして、予定通り来日を約束してくれましたC.テツラフと協議の上、本公演はC.テツラフのソロ・リサイタルとして、下記のようにプログラムを変えて2日間で開催いたします。」

???

な…何か分からないけど、テツラフさん、格好いい… と、思う。

ロンクィヒさんを責めるつもりは全然なくて(今の状況でしたら然るべき判断かと)、「なら、無伴奏弾きましょう!」と言って下さったテツラフさんが無性に格好良く思えて(涙) とても嬉しいお葉書でした。

が、私が行く日のプログラムを確認しましたら、バッハのソナタとパルティータの1番。

…これは、私でも最後まで聴ける気がします。うん。

そして、バルトークの無伴奏。

…うっ、厳しい!!! バルトークの無伴奏は苦手です、私。大丈夫かしら(汗)

ベートーヴェンのクロイツェルから、一気に敷居が高いコンサートとなったのでした。

今日は日差しが強い日でした。
飯田橋駅からトッパンホールまでは一本道なのですが、距離が(自分が想像しているよりも)あるのでいつも道に迷います(苦笑)
本日、初めて迷わずにホールまで着くことが出来ました。とても良い日になる予感がしました。

私の周りの席は左右こそ同年代の女性でしたが、全体的に年齢層が高めでした。サントリーホールなどで見かける客層とは違う感じ。どういったつながりの方が聴きにいらしているのかなぁとちょっと不思議でした。

開演前の舞台上。
当たり前ですが、ピアノの姿がありません。本当に今日は無伴奏なのだなぁと思いました。

拍手の中、黒いスーツ(濃い目のグレーかも?)で出てきたテツラフさん(あ、眼鏡掛けていません!)。お辞儀をするなり、すぐに演奏へ。
>こちらもまだ心の準備が出来ていなかったので、焦りました。でもこれがテツラフ流みたいです。

テツラフさんのバッハの無伴奏は、聴きに行った公演(協奏曲)やWebラジオでのアンコールで少しずつ聴いたことがあります。アンコールだけでも、「すごい…」と思わず唸ってしまうような世界を体験出来ます。
無伴奏については、私もあまり詳しくないのですが、テツラフさんの無伴奏(というか協奏曲もですけど)って他の方と違って少し独特なのでは…と。見た目もなのですが、演奏そのものも独特デス。
本日も聴いていて、そう思いました。

ご自身の曲として身につけられているようで、とにかく上手い! 音も素敵!
聴き手を一気にバッハの世界へ導いて下さいます。
バッハの無伴奏って、ヴァイオリンの曲の中でも特別な曲(神秘的と言いますか、この世の曲とは思えない神々しさがあります)なのだなぁ…と感じました。

でも、テツラフさんらしさがベースにきちんと残っているのですよね。>その「らしさ」を言葉で上手く説明することは出来なのですが。勢いのある音の乗せ方とか、表現の仕方とか…

楽章間はゆっくりと間をおいたり、一気に弾いたり、様々でした。
すごい集中力でしたし、会場の空気も一種の緊張感が漂っていました。
無伴奏なのに眠くなることも無く、あっという間に前半が終わってしまいました。

休憩中は2階の喫茶店で「後半はバルトークかぁ…(憂鬱)」とコーヒーを飲んで、後半眠くならないように備えました。(初めてトッパンホールの喫茶室に行きましたが、並びますけど 椅子の座り心地も良くて、落ち着けますし、気に入ってしまいました。)

テツラフさんのバルトーク。

すごかった…!

超ーーーーー、すごかったデス!!!

今まで私がイメージしていたバルトークの無伴奏って何だったのだろうかと。世界が180度変わりました。衝撃的でした。今日、聴きに来れて良かった…と本気で感謝しました。

またバルトークの時は舞台に譜面台があったのが、今回の急な曲目変更を物語っているようで、胸がキュッとなりました。テツラフさんは普段はコンサートに合わせて暗譜される方なのかな?と思うので。>私の想像ですが。

元々、私とテツラフさんの音楽との出会いはバルトークのvn協奏曲(2番の方)でした。
私がオーギュスタン・デュメイさんの演奏するバルトークのvn協奏曲にはまっていて、Webラジオで片っ端から聴き比べをしていた時にデュメイさんとは違いますが、すごく魅力的な演奏をされる方の放送がありました。それがテツラフさんでした。
なので、私は元々テツラフさんのバルトークの世界が好きなのかもしれません。

私が今までCDで聴いていたバルトークは、バッハのパルティータ第2番と一緒に録音をされている方の物だったのですが(なので私にとってこれがバルトークの無伴奏の世界でした)、この演奏家はバッハの延長上にあるような、神々しい感じでバルトークを終始弾かれていました。
なので、バッハと比べると、どうしても曲として魅力が感じられないと言いますか… 途中で聴く方の集中力が途切れてしまうのです。

ですが、テツラフさんのバルトーク。
最初の数音から物語性があって。

まず、こんなに人間臭い曲だったのか、と。

そして、こんなに私たちに身近な曲だったのかと。
>ここら辺のことが具体的に言葉に出来なくてもどかしいのですが。

どんどん音が私の耳、頭の中に入っていって、テツラフさんの世界へ引き込まれてしまいました。
今までと違って、全然難しくない! 早く次の音が聴きたくて仕方がありませんでした。

舞台上のテツラフさんもすごいことになっていて。
ヴァイオリンを弾くテツラフさん、激しすぎる… 何か、お股の開き具合も目に入ったりして(苦笑)
>こんなとこを見てしまって すいません。凄かったデス。
弾く姿も演奏も、ビックバンのような、とても大きな世界が広がっていました。

バッハの無伴奏は一方的なお言葉を有難く受け止めるような曲(それが聴いていて心に染みるといいますか)だと思うのですが、バルトークは1つのヴァイオリンなのに、会話しているように聴こえます。なのでそこに物語性を感じます。

弦の上で弓が滑っていて(弾いているというよりも滑っているかのような滑らかかつ速い動き!)、そこから出て来る音色は変幻自在で伸びも良くて、時々左の指でポーーーンと弦をはじく音の素敵なこと! >私は弦をはじく音に弱いようです… ここでいい音色を出して下さる方が好きだと最近気づきました。

まだ演奏中なのに、もう一度この曲を聴きたいなぁ…と思ってしまいました。
でもテツラフさんは次の来日自体いつになるのか分かりかねる方ですし、ましてや無伴奏、それもバルトークだなんて、今後聴けるのだろうか…と。これが最初で最後の様な気がして(涙)
1秒たりとも見逃してはいけない! と、とにかくガン観して聴いておりました。

第2楽章は舞台上にオーケストラの姿を見ました。大人数で弾いているかのような、ダイナミックな演奏でした。
第3楽章は宇宙を漂っているかのようでした。不思議な世界〜
第4楽章では、左手で弦を弾きながら弱音器を付けたり外されたりしていた(たぶん)のがすごかったです。すごいというか、格好良かった(笑)

最後はバン!と右手を高く上にあげてフィニッシュ!

もう、素晴らしすぎましたっ!

アンコールはなんと、バッハのアンダンテ。
私がバッハの無伴奏(ソナタ&パルティータ)の中で一番好きな曲です。
数年前にジェラール・プーレ先生が読響とラロをされた際に、アンコールで弾かれた曲。
どう聴いても2つのヴァイオリンで弾いているようにしか聴こえなくて、その不思議さとプーレ先生の優しく包み込んでくれるような演奏で、一気に大好きになってしまいました。

テツラフさんもアンコールでこれを持って来て下さるなんて…(感涙)
私にとってはものすごいプレゼントでした。大切に聴かせていただきました。

テツラフさんの演奏は今後機会がありましたらまた聴きに行きたいですし、最近Webラジオでお名前見てもスルーしていましたが(放送されるのが多すぎるので)、申し訳ありませんでした。今後はきちんとチェックします、と心に誓いました。

バルトークの無伴奏がこんな曲だったとは…

とにかく、この言葉に尽きます。私には大変ショック(良い意味で)でした。
そして今もドキドキが続いております。。。



2011年5月15日 記

▲上へ
本嫌いさんの読書感想文〜カラマーゾフの兄弟はいつも貸出中?!
YUKIKOGUMA   All Rights Reserved