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都民劇場サークル 第581回定期公演 クリスチャン・ツィメルマン&ハーゲン弦楽四重奏団 |
【 2010年10月5日(火) at 東京文化会館 大ホール 】 ピアノ : クリスチャン・ツィメルマン ハーゲン弦楽四重奏団 第1ヴァイオリン : ルーカス・ハーゲン / 第2ヴァイオリン : ライナー・シュミット ヴィオラ : ヴェロニカ・ハーゲン / チェロ : クレメンス・ハーゲン ■ バツェヴィッチ:ピアノ五重奏曲 第1番(1952) ■ ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」 ■ シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44 |
9月30日、武蔵野文化会館でのコンサートに行くことが出来なかった私… 翌日になるとそれが残念でたまらなくなってしまい(そこまで気合の入ったコンサートではなかったのですが不思議です)、本日のチケットを購入してしまいました! 開演時間ギリギリで何とか東京文化会館へたどり着いたのですが、入口にはNHKの車が2台… 録音…? まさかね(ツィメルマンさんは録音に厳しいのでなかなかアルバムが出ないと聴いたことがありますし)。 と、横目で見ながら入口を走っていきました。 この日は小ホールでチェリストのヨハネス・モーザーさん(帰りにお見かけしましたが、細身の長身の方ですね♪)のリサイタルがあり、こちらの録音(録画?)だったようです。 本日は都民劇場の公演で、年齢層も一般的な公演に比べて高めです。 東京文化会館の大ホールはほぼ満席! 5階まである客席を下から眺めると、こちらの気持ちも高まってきます!!! 直前で取った私の席は1列目のほぼ右端。恐らく何も見えまい…と覚悟しておりましたが、私の想像よりは色々見えるお席でした♪ 音もきちんと届きましたよ。意外です。 大拍手の中、本日唯一の女性、ヴェロニカ・ハーゲンさんを先頭にハーゲンカルテットの皆様とクリスチャン・ツィメルマンさんが登場! 私にとっては初ハーゲンカルテット、初ツィメルマンさんです。 ヴェロニカさんは雰囲気がヴァイオリニストのムターさんみたい。姉御肌とでも言うのでしょうか。そして笑顔が素敵♪ ハーゲンカルテットの他の男性陣3人は少し緊張した面持ち。 そしてツィメルマンさん、TLDのホーンテッドマンションにでもいそうな感じがしたのですが…(礼儀正しい執事みたいな感じ。一般人とは違う世界の空気をお持ちです。) 先日の公演までツィメルマンさんは眼鏡をかけて譜面を見ていたそうなのですが、本日は眼鏡をかけていらっしゃいませんでした。 各場所に着く5人。ヴェロニカさんはツィメルマンさんと同じ横長の椅子を使っていました。 私の位置からは2ndヴァイオリンのシュミットさんはチェロのクレメンスさんの背中に隠れて「全く」見えませんでした。そのクレメンスさんは背中だけ。1stヴァイオリンのルーカスさんが正面に見えて、ヴィオラのヴェロニカさんは横から、ツィメルマンさんはハーゲンカルテットに目線を向けた時だけお顔(正面向くと譜台で隠れてしまいました)が、足元はしっかり見えるという視界でした。 1曲目はポーランドの女性作曲家バツェヴィッチのピアノ五重奏曲 第1番です。 当然ですが(?)私の知らない曲、ツィメルマンさんのこの曲が収録されるアルバムがだいぶ前から発売される、発売される、と言われながら現在も延期になっているということで認識のある曲でした。 元々知らない曲ですので、どのような曲だったかということは細かく覚えていないのですが(汗)、ツィメさんとハーゲンカルテットはピアノと弦の会話がポンポンと気持ち良く聴こえる、素敵な組み合わせだと思いました。 ただ、第1ヴァイオリンのルーカスさんの高音だけは私にはダメでした… 丁度ルーカスさんの音を直接受ける席にいたせいもあると思います。ガンガン、ルーカスさんの高音が耳に届いてしまい、他の4人とは明らかに別の音であるように感じてしまって。音程が悪いというのではなく、音の性質そのものが違うように思えました。演奏自体は全く問題無いのですが。 第2楽章はピアノが先頭になってリズム溢れる、初めて聴いた私でも入り込みやすいものだったのですが、こういう感じの曲は日本人の作曲家でも作りそうだなぁと親近感が沸きました。 大人し目の(?)3楽章に続き、弦とピアノの戦いのような第4楽章。 弾きまくる皆様、格好良かったです〜 ツィメさんのピアノはソロの時は恐らく違った感じなのだとは思うのですが(私は聴いたことが無いので分かりませんが)、本当、無駄が無いと言いますか、クリアな綺麗な音色を出されるピアニストなのですね。 強く連打して、その瞬間だけ迫力を出すのは誰でも出来ると思うのですが(そして「単に強く叩けばいいってものでは無いのに!」と小言を言いたくなるような演奏も多々あると思いますが)、その強さを不快に感じさせず、瞬間的な音に終わらせない、心にずっとその迫力を残してくれるような演奏をされる方ってなかなかいらっしゃいませんよね。ツィメさんはそのような演奏をして下さる方でした。 それでいて、ハーゲンカルテットの邪魔はせず、ピアノが特別リードをするという訳でも無く、同じ立場で作品を表現されていました。上手く説明はできないのですが、完璧だなと思いました。 そういう時、ついダルベルト先生だったらどうなるかな…と考えてしまうのですが(!)、ダルベルト先生の場合はもう少し知的な(といってツィメさんが知的で無い、という訳ではないです)音を出されるかな、と。 知的というか哲学的というか。ダルベルト先生らしい少しねじれた方向性の表現をしてくるような気がしました。ツィメさんはねじれてもひねくれてもいない、真っ直ぐな正統派(?)の表現をされていました。 演奏が演奏なら、記憶が遠くに行ってしまうのではと思える現代曲でしたが、私にしては信じられない位に目がぱっちり、最初から最後まで楽しんでしまいました。すごかった〜! 続いて、ハーゲンカルテットだけでのヤナーチェクのクロイツェル・ソナタ。 私、トルストイのクロイツェル・ソナタを再読しまして、予習はばっちりです!>そっちの予習か! さっきは何だかな〜と思えた、ルーカスさん。今度はすごく良かったです。 4人の息も音もばっちり。これがハーゲンカルテットなのか…と、ドキドキわくわくです。 私はこの出だしの何度も変化しながら繰り返されるフレーズを、主人公たちが乗っている汽車の音だと思って聴いているのですが(このカタン・コトンという電車の音を背景に紳士の告白を聞く、と)、第2ヴァイオリンのシュミットさんのテンポがちょっと独特で、これはどう想像しても汽車では無かったので 笑ってしまいました。こういう表現もあるのか、と。 ハーゲンカルテットの演奏を聴いてイメージした汽車そのものも、広いロシアの大地を寒そうにひっそりと走る汽車ではなく、ヨーロッパの街並みを華麗に走るゴージャスな汽車でした。 妻の殺害を告白する紳士も、本来ならロシア的な卑屈さ(?上手く説明出来ないのですが)を持ったマイナスだらけな人物であると思うのですが、何だかクリアなイメージ。出だしはそのような演奏・音色でした。 第2楽章では、その紳士に殺されてしまった妻を誘惑する(?)ヴァイオリニストのフレーズが順番に演奏されるのですが、そこでもシュミットさんのテンポが皆と違う〜! 個性的といいますか、とても面白かったです。私の席からはクレメンスさんに隠れて見えない方でしたが、存在感がありました。 第3楽章では紳士の妻のフレーズに続いて ヴィオラが紳士の心の歪み・嫉妬のような部分を表現(恐らく)してジャカジャカジャカ…と弾くのですが、その時のヴェロニカさんが印象的でした。ヴィオラって…というよりも弦楽器ってこんな音も出るのかと。 最終楽章が一番夢中になって聴いてしまったのですが(一番好きな部分です♪)。紳士が妻を殺害するまでの とりつかれたような狂気。妻とヴァイオリニストが密会している自宅まで 怒りと憎しみ、嫉妬と屈辱、色々入り混じった気持ちで汽車に乗って帰って行く紳士の光景を、すごい気迫でハーゲンカルテットの皆様は演奏していて、格好いいやら感動するやら原作の光景と演奏が重なるやらで、大満足でした〜vvv (でも私は紳士の目線で聴いてしまいましたが、ヤナーチェクは妻の目線で曲を作っているのではないかと思うので、本来は違う意味を持った曲なのだと思います。) ヤナーチェクのクロイツェル・ソナタってこんなに素晴らしい曲だったのか…と。 後半は再びツィメさんも登場し、シューマンのピアノ五重奏曲です。 私はこの曲を一番楽しみにしていたのでした! 昨年のオーギュスタン・デュメイさん+関西フィルさんでのシューマンはとても素晴らしく、あの時の感動と興奮を再び違う形で味わいたいなぁと思って来たようなものです。 以下の感想は、私の好みと席の関係によるものなので、ご了承下さいと前置きした上で。 この曲は最初の出だしから 演奏者の生み出す世界に入って行ける、こちらも一気にテンションが急上昇してしまう、とても素晴らしい曲ですよね。 ですが 曲が始まりますと、 ??? といった感じで。 何だ? このルーカスさんの音は??? 音程が間違っているというのではなく、張り切れば張り切るほど、ルーカスさんの音の質が皆さんと外れて行くようで。全体のまとまり感をとても邪魔しているように感じました。 そもそも、ツィメさんの音とルーカスさんの高音は合わない気がしました。 そうなると、この曲にも全く魅力を感じることが出来なくて。 こんなはずでは無かったのにな…という結果に終わりました。 ―― ツィメさんとクレメンスさんのデュオ部分。 … とても素敵♪ ―― そこにヴェロニカさんが加わって三重奏。 … おおっ! 素晴らしい! ―― さらにルーカスさんが加わって。 … 何でそうなるかな(怒)! こんなことの繰り返しでした。 そうなると、この曲は実は第1ヴァイオリンがとても重要な位置にいるのかな(私はピアノかと思っていました)。1年前のあの時(オークホールでの演奏)、デュメイさんは決して前に出なかったけれど(そして関西フィルの他のパートの方たちもすごかった!)、実は見えない部分で全体を上手く調整していたのかな、など色々思ったり。 微妙に不完全燃焼の中 演奏が終了し、でも舞台上のツィメルマンさんとハーゲンカルテットの皆様は満足そうです♪ ツィメルマンさんはハーゲンカルテットの1人1人と握手を交わし、女性のヴェロニカさんには手の甲にKissを! 何度も何度もハーゲンカルテットの皆様に拍手を送られていました。 この組み合わせのツアーは本日が最終日。皆様とても納得のいく演奏が出来たのだと思いました。 つい小言を書いてしまいましたが、でも全体的にとても素晴らしい演奏でした(なので細かなことまで言いたくなってしまうといいますか)。 ツィメルマンさんはしばらく演奏活動はお休みされるそうです。ハーゲンカルテットの演奏はまた違う機会に聴きに行きたいなぁと思いました。 東京文化会館まで聴きに来て良かった、と頭の中をクロイツェル・ソナタの音楽で一杯にして帰りました。 私の記憶が正しければ、ライナー・シュミットさん(左側縦に)、クレメンス・ハーゲンさん(中央上)、ルーカス・ハーゲンさん(中央下)、ヴェロニカ・ハーゲンさん(右下)です。 一番最初に書いていただいたクレメンスさんに「CDの盤上とジャケット裏面とどちらに書く?」と聞かれ迷った末にジャケットにしていただいたのですが、これで正解♪ 最終的にこのような混み合う状態になるとは思っておりませんでした。もう、どれが誰だか… 最後にお願いしたシュミットさん、スペースが無くてすいません(涙)みたいな。 それにしてもハーゲンカルテットのジャケット写真って素敵ですよね〜v 格好良い! 2010年10月9日 記 |
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