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ミシェル・ダルベルト ピアノリサイタル
【 2010年5月16日(日) at 碧南市芸術文化ホール エメラルドホール 】

■ フォーレ:主題と変奏 嬰ハ短調 作品73
■ フォーレ:夜想曲 第6番 変ニ長調 作品63
■ ラヴェル:夜のガスパール
        1.オンディーヌ
        2.絞首台
        3.スカルボ
■ ドビュッシー:前奏曲集 第2集
        1.霧 2.枯葉 3.ヴィーノの門 4.妖精は良い踊り子
        5.ヒースの茂る荒れ地 6.風変わりなラヴィーヌ将軍
        7.月の光がふりそそぐテラス 8.オンディーヌ
        9.ピックウィック卿を讃えて 10.カノ―プ
        11.交代する3度 12.花火
アンコール
■ リスト : ベッリーニ 「ノルマ」の回想
非常に素晴らしいコンサートでした。
音楽を追求することで これだけ多くの人の心を捉えてしまうダルベルト先生は、何てすごい人なのだろうと、改めて感じました。

名古屋駅からさらに30分程先の地域にある碧南市芸術文化ホール(エメラルドホール)は452席のどのお席で聴いても満足出来そうな大きさのホールでした。
残念ながら両サイドに空席があって(1〜2割位でしょうか)、日曜日の昼の公演だというのに何と勿体無いことを!!! と思わずにはいられませんでした。
客席はピアノを習っていると思われるお子様(小学校低学年)連れの方が数組が目立っていたのと、30〜40代の女性が多かったのではないかと思います。>私の周りはそうでした

約半年ぶりのダルベルト先生(詰襟風の服でした)が舞台に登場!

そこで私は気付いたのですが、このホールは前列付近の席は段差が無く、私が座った席では前の方たちの頭で、ダルベルト先生の手もお顔も何にも見えない!>背中とお尻はよく見えましたが(汗)
前の方が頭をずらした時だけ、先生の表情が見える… といった感じでした。
前の方の頭の動きを期待しても仕方がないので、今日は音に集中しようと思いました。私の左隣の方も同じ状況のようでした。

フォーレの曲は、今回ジャン=フィリップ・コラールさんの演奏で予習して行きました。夜想曲第6番が素敵だな〜と思って、主題と変奏は気にも止めていなかったのですが。

ダルベルト先生の主題と変奏。
最初のテーマをものすごくガンガン音を効かせて弾かれていて、「コラールさんと違う〜! 何で先生はこんなに力とか感情を込めて弾かれるのだろう…」と思いました。

余談ですが私には「主題」「変奏」「前奏曲」といった言葉の意味がよく分からず(次の王子ホールではバッハの「前奏曲とフーガ」とかありますし!)、だからといって調べたりもせずに会場へ向かったのですが。

次のバリエーションに移ったとたんに、私の視界がぱーーーっと開けたのです!
この時の気持ち、分かっていただけますでしょうか。いえ、ぜひ分かっていただきたい。

私の頭の中には先程のテーマが、ダルベルト先生の音が、強烈に残っていて、それをベースに色づけされたのがバリエーションだったのですね。
冷静に考えれば当たり前のことなのかもしれませんが、「主題」ってこういうことか、「変奏」ってこういうことなのか、とダルベルト先生の音を通じて知ることが出来たのです。

だから、先程のテーマはあのような演奏になったのか…と。

…ダルベルト先生の演奏は深いなぁ。すごいなぁと感激。

予習の際は退屈だった「主題と変奏」の魅力が少し分かったような気がして、最後まで楽しんで聴くことが出来ました。自分が少しステップ・アップ出来たようで、心はドキドキです(笑)

ラヴェルの「夜のガスパール」が始まる前に会場のアナウンスがあり、ダルベルト先生が演奏の前にこの曲の元になったベルトランの詩をフランス語で朗読されるとのこと。

そうそう、2年前のリサイタルでも朗読されていたのでした。
>私としたことが、この時はすっかり忘れていました!
2年前のリサイタルは、現在クラシック倶楽部で何度も放送されているので、観ることが出来ますね!

本日 名古屋駅からさらに乗り継いで、人が誰も歩いていない1本道を歩いて会場へ向かう際に 「私、こんな所にまで来てダルベルト先生のリサイタルを聴くなんて、馬鹿かなぁ、やりすぎだったかなぁ…」 と迷いが生じていました。これがデュメイさんなら迷いは無いのですが(苦笑)
名古屋から想像していた以上に遠かったので。
その原因の一つが、プログラムにこの「夜のガスパール」が挙がっていたことでした。
2年前に一度聴いた曲ですし、シューベルトのソナタだったら絶対聴きに行きますが、この曲はそれほど興味のある曲ではないので… そのためにここまでする必要があるのだろうかと。すいません。

でも この演奏を聴いて、「何を私はグズグズ悩んでいたのだろう! それこそ馬鹿だった!」と気持ちが一気に吹っ切れました。

オンディーヌ、絞首台、スカルボ、全てが素晴らしかった(涙)
オンディーヌは美しくキラキラした音色が心地よいし、絞首台は一瞬足りとも気の抜けない不気味な感じが何とも言えないし(聴いているこちらも緊張しました)、スカルボは先生の迫力と音色に脱帽、すごかったです。

思い出したのですが、2年前のすみだトリフォニーホールの会場は大きすぎてダルベルト先生の音色がもわ〜っとした感じで、良い席ではあったのですが全体的にはっきりと耳に伝わってこなかったのでした。

本日のホールは違います! どの曲も、素晴らしい音色が耳に体にたくさん伝わって来ます!
もう、2年前に聴いた「夜のガスパール」とは全く違うものでした。本当、素晴らしかった。
碧南に来て良かった、ありがとう碧南、って感じでした。

後半はドビュッシーの「前奏曲集第2巻」。
知らない曲ではありませんが、予習を全くして行かなかったのでパンフレットの題目を見ながら聴きました。

1曲ずつリズムだけでなくダルベルト先生の表現される世界が違いますし、ピアノの音色も違って聞こえます。「私、この曲好きかも…」と思える曲がいくつかありました。

最後の「花火」だけは私にとっては別格です。
といいますのも、ミシェル・ダルベルト…ではなくて、ベロフ先生の方のスーパーピアノレッスンで、現在日本で活躍中の菊池裕介さんを生徒として、放送されていたからです。その時に覚えた曲です。礼儀正しい菊池さんとのレッスンは大好きでした。

この曲の中に色々な花火が表現されていて(線香花火とか打ち上げ花火とか)、最後にフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が遠くから聴こえてくるのですよね。私は特にこの部分が大好きです。

「花火」を生で聴くのは初めてだったのですが、ものすっっっごく、迫力ありました!!!
花火の華々しさとか、打ち上げられた高さとか、大きさとか重さとか、音から全てが伝わって来ました。 ダルベルト先生の演奏だからかしら(笑)
4分程の曲なのですが、私にはとても長く感じ、たくさんの花火を見せていただいたような気がします。最後の「ラ・マルセイエーズ」は心にグッときました。

再度書きますが、碧南に行って良かったと。

ダルベルト先生、ありがとうございます!!! とたくさん拍手をしたのですが(会場の皆で)、このホール拍手があまり響かないようで、客席の気持ちが伝わっているかな…と心配になりました。

ですが、伝わっていたようです。

「Liszt… Norma…」

と、先生が言われました(私が聞き取れたのはこの2つの単語だけでした)。

…?!

リスト、ノルマと言ったら王子ホール公演のクライマックスの曲、「リストのベッリーニ『ノルマ』の回想」しかないでしょう!!!

王子ホール公演の予習をしていて大好きになった曲。いつもこればかりを予習していました(笑) 自然とこの曲を聴いてしまいます。

… でも、これ15分あるよ?!

♪ ダーン、ダーーダ ダーーーン、ジャジャジャッ

本当に 「『ノルマ』の回想」 でした(びっくり)。

すごい…

すごいよ、ダルベルト先生。。。

でも、「客席の皆様のために」というよりも、先生ご自身がリストを弾きたいから弾いているように感じました(笑) 演奏されることが大好きな方なのだなぁと、ますます尊敬。
王子ホール公演に向けての意気込みを見せていただいたような気もして、嬉しかったです。

聴いているこちらは心臓がバクバクで、息も出来ない位でした。
格好良いし、華麗だし、迫力あるし、何より最近好きになったこの曲を目の前で演奏して下さっているという感動と興奮。演奏終了後、しばらく手の震えが止まりませんでした。

こんなに素晴らしい曲があるということを教えていただいただけでも幸せなのに、2日後にもう一度聴けるのです! 何て幸せ者なのでしょう、私ったら!!!

ブラボーが飛び、スタンディングオベーションも出る中、ダルベルト先生のリサイタルは修了したのでした。素敵なひと時でした♪

リサイタル終了後はダルベルト先生のサイン会がありましたv
あれだけの演奏をして下さったのに、さらに私たちにサービスして下さる先生に感謝です。
でも机に座ってサインを書いて下さる先生の姿に茫然。。。

これ「机」ですよ、先生…

と最初思いましたが、でもその方が私達との距離も近くなりますし(机が隔てることが無いので)、すぐに立つことも出来るので気軽に写真の希望にも応じていただけるようになりました。作業効率としては、大変優れておりました。次の王子ホールのサイン会でも机に座られていました。

私の前は、小学校3〜4年生位の2人のお子様を連れている方でした。お姉ちゃんと弟くん。お姉ちゃんがピアノを習っているようでした。ダルベルト先生のスーパーピアノレッスンのテキストを持参されていました。

で、ダルベルト先生と一緒に記念のお写真も撮られていたのですが、お姉ちゃんは最初から最後まで号泣。

ダルベルト先生が「彼女はどうして泣いているの?」と質問されていて。>私も気になりました!

耳をダンボにして横で話を聴いた所によりますと、このお姉ちゃんはアンコールのリストを聴いた途端に泣き出してしまい、ずっとこの状態なのだそうです。
私はてっきり大好きなダルベルト先生を目の前にして、感激して涙が出たのかと思っていました。
子供なりに、ものすごいエネルギーをノルマから受けとったのでしょうね。いえ、子供だからこそ受けとれたのかも。

「『ノルマ』ね〜♪」と、ダルベルト先生もちょっと嬉しそうでした。

ちなみにお姉ちゃんの大好きな曲はシューベルトのピアノソナタ第21番だそうです。小学校中学年からすごいなぁ。でも、こういう感性の強い子どもたちが後々の演奏家として世に出て行くのかなぁなんて、分からないなりにも思いました。
ダルベルト先生のノルマ、お姉ちゃんは一生忘れないでしょうね。私も忘れないぞ〜!

会場を出てからも、今日は良かったなぁ…と色々な曲が頭の中を駆け巡り、でも最後は「ノルマの回想」の世界で頭の中が一杯になって…を繰り返しておりましたら、私、駅とは180度反対方向へ歩いておりました。線路からどんどん離れて行くのでおかしいなぁとは思ったのですが。

駅までは1本道。約30分後に再び、会場のエメラルドホールに戻ってきたのでした(汗)

今年はシューマンイヤーなので…

2010年5月30日 記

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