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関西フィルハーモニー管弦楽団 第218回定期演奏会
巨匠デュメイのベートーヴェン
圧倒的な気品と生命力…グリュミオーを継ぐ唯一の継承者デュメイの古典美
【 2010年3月11日(木) at ザ・シンフォニーホール 】
指揮・ヴァイオリン独奏:オーギュスタン・デュメイ


■ メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26
■ シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D.485
■ ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
コートがいらないような暑い日かと思うと、夜雪が降って大変寒い日になったり、東京は不安定な気候が続いておりました。

…… ですが!

この日はとても暖かく、正に「春」!
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では無くて、(デュメイさんのヴァイオリンで)スプリング・ソナタが聴きたい… と思うような、外を歩くだけで笑顔になってしまう気持ちの良い日となりました。
会社を早退する私も喜びが2倍です(笑) そそくさと大阪へ向かいました。

着いた大阪は少し寒かったのですが、それは置いておきまして 今回私は大失態をしてしまいました。
ホテルを出るのも遅れた上、大阪での乗り換えも戸惑ってしまい時間がかかり、会場の最寄り駅のホームに着いたのが18時55分。開演は19時です(汗)
駅から近くのホールではありますが、これでは…
近すぎてタクシーには乗りづらい。一生懸命、ホールまで走りました。
いくら私が遅刻魔とはいえ、大阪まで来て、こんな行動はあり得ません(涙、新幹線の時間は余裕がありました) どうしちゃったのかなぁ、自分。。。

といいますのも、事前にプログラムの順番の訂正があり、デュメイさんの希望でベートーヴェンの協奏曲、フィンガルの洞窟、シューベルトの5番、と発表されていたのです(プログラムもそう印字されていました)。1曲目のベートーヴェンの協奏曲を聴き逃したら、何のために有休取って大阪へ来たのか…って話です。

最後は怖くて腕時計で時間を確かめることが出来なかったのですが、会場へ着くと「これから始まりますので、まだ大丈夫ですよ!」とのこと。

???

何だか分かりませんが、間に合いました。そんなに私は足が速かったっけ? それとも、開演時間が延びているのかしら?

さらに、偶然近くの席を取っていた友人から、「再度曲順の変更があって、本来通りフィンガルの洞窟からになったよ!」と。

…そうか、変更があったのか。と思いつつ、会場の空気が読めていませんでした。とにかく、間に合って良かった、良かった。(通路脇に座っていたおじ様には舌打ちされましたが、汗←すいません。。。)

オーケストラの方が舞台に登場し、コンサートマスターさんの岩谷さんが登場し、待ちに待ったデュメイさんの登場! >きゃ〜っ!!!
秋に痛めていらした膝の具合は大丈夫なのでしょうか。
半年後にデュメイさんにお会いできるなんて、幸せすぎです。わーい!
でもデュメイさん、足がものすごく細くなったような…(お年のせいなのか、膝のことを考えて努力されたのか、と勝手に想像)
昨年の秋に比べ、足の細さがとても目立っておりました。私の記憶違いかもしれませんが。

1曲目はメンデルスゾーンのフィンガルの洞窟。
昨年はメモリアルイヤーと言うこともあって、コンサートでもWebラジオでも何度も聴いた曲です。
デュメイさんもワロニー王立室内管弦楽団と演奏(指揮)されている映像がWeb上でありますね。
悪い演奏に出会うこともありませんが、「これ」という演奏にも出会えない、不思議な曲。(以前フィンガルの洞窟の写真を見たことがあって、この洞窟の入口の波打つ風景とかが出だしの音で頭に浮かんでくるような演奏に出会ってみたいなぁと勝手に思っています、笑)
この曲との組み合わせは大抵メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(特に私はニ短調が似合うと思うのですが)ではないかと思うのですが、今回はベートーヴェン。デュメイさんがお決めになったのかと思いますが、その意図が素人の私には分かりませんでした。

この日は木管…特にフルートの男性が素晴らしいなぁと思いました。とにかく、フルートが素晴らしかったです(2曲目も!)。フルートばかりを耳で追ってしまいました。

そして関西フィルさん+デュメイさんを目の前にして思い出すのは昨年のオークホールでのシューマンのピアノ五重奏曲。あの時の5人のお姿が浮かんできます。
今回はヴィオラの大江さんのお姿が見えなかったのが残念ですが、ヴァイオリンの岩谷さん、チェロの向井さんがオーケストラの両サイドをしっかりと守り、中央のデュメイさんが全体に指示を出す…みたいに舞台上の構成が見えてくるようで、何かいいなぁと思いました。
また、指揮台無しでもオーケストラの後ろにしっかりと指示を出しているお姿を見て、やっぱりデュメイさんだなぁ…と、今 目の前にデュメイさんがいるのだということを改めて実感しました。

2曲目のシューベルトの交響曲第5番。
私は初めて聴く曲で、しかも予習もしていかなかったのですが、とても素敵な曲でした。
デュメイさんはフィンガルの洞窟と同様に譜面無しで指揮されていましたので、これまでに何度も世界各地で指揮されている、デュメイさんにとってはおなじみの曲なのかなぁと思いました。
(余談ですが、譜面は無かったのですが、デュメイさん眼鏡は掛けていらっしゃいました。)

ヴァイオリンとチェロ、管楽器と弦楽器のやりとり(うろ覚えですが…)、など楽器の会話が次々と聴こえてくる出だしで、素晴らしい演奏でした。これはデュメイさん効果なのか、関西フィルさんが素晴らしいのか(恐らく両方)、コンサートでこういった瞬間に出会えるのはとても幸せなことです。

また、デュメイさんの優しさと幸せ感がそのまま曲に現れたような、ほんわかする可愛らしい曲でした。盛り上がる部分は、今度は関西フィルさんの格好良さが前面に出ている感じがして、曲と演奏者とのバランスがとても良かったと思います。関西フィルさんとデュメイさんとの組み合わせでは、モーツァルト系が似合うと感じていましたが、この曲もいいなぁと。
シューベルトは歌曲だったり、弦楽五重奏だったり、ピアノの最後の三大ソナタだったり、交響曲は第8番位しか私は知らないのですが(汗)、とにかく色々な方向性の素晴らしい音楽を短い人生の間にたくさん作ったのだなぁと、改めて好きになりました。
今度、この4番もCDできちんと聴いてみようと思いました。

休憩時間は久しぶりに会った友人とお話をし、確か「デュメイさんが元気で来日して下さることが何よりだよね〜」みたいなことを話していたと思うのですが。

後半が始まりますと、関西フィルの西濱事務局長が舞台へ登場。
私は最初、「今日は開演前のプレトークではなくて、後半前に少しお話をされることになったのか」と呑気に思っていたのですが。

「大変申し訳ございません。
後半は、今回の公演のメインであるオーギュスタン・デュメイの弾き振りによるベートーヴェンのコンチェルトで、これを楽しみに来場された方が会場のほとんどではないかと思うのですが…

前半終了後、オーギュスタン・デュメイが体調を崩しまして、医師に診ていただき、デュメイとも話し合った結果、この状態ではヴァイオリンを持って舞台に立つことは出来ないと判断しました。ドクターストップもかかり、現在デュメイは病院へ向かっています。

大変申し訳ござませんが、よって、本日の公演は中止とさせていただきます。
チケットについては後日払い戻しをさせていただきますので…(以下省略)」
※うろ覚えですが、このような感じの内容でした

………。

会場、しばらく 「しーーーん」 となり、皆 無言です。

何というか、ベートーヴェンが聴けないという状況よりも(まだそこまで頭が回っていないというか)、皆 『 デュメイさん大丈夫?! 』って気持ちだったのだと思います。心配で、心配で。

だって、さっきまで元気で指揮されていたのに。

デュメイさんと関西フィルさんとでこういう決断をしたということは、よっぽどのことだったのだろうと想像出来ますし、異議はありません。

これまで練習されてきたオーケストラの皆さんの気持ち、そして何よりゲストではなく関西フィルの一員として参加されている(責任感の強い)デュメイさんの気持ちを考えると、何か申し訳なくて。
いえ、私が悪い訳では無いのですが… (申し訳ないというよりも「辛い」が適切な言葉かも)
悪い原因を探すとすれば、不安定な今の日本の気候ですかね… あと2週間後あたりに来ていただきたかったです。

後から聞いた話では、開演前から体調をかなり崩されていたというデュメイさん。
なのに舞台上での姿からは、全くそんな気配は感じられませんでした。
舞台に立ち、音楽に向き合えば、精神力で完璧を目指す。プロなんだなぁと思いました。
その精神力をもってしてもベートーヴェンのコンチェルトは難しいと判断されたデュメイさん。ベートーヴェンのコンチェルトって、簡単には扱うことの出来ない重みのある曲なのですね。

デュメイさんはベートーヴェンのコンチェルトが大好きだということは何かで読んで知っていましたが、2年前に初めて都響さんとの演奏を聴いた時、その気持ちの入れ込み具合に大変驚きました。いつものデュメイさんじゃない。取りつかれたような(私としてはベートーヴェンに成りきったかのように感じたのですが)あの演奏。デュメイさんにとって特別な曲なんだと感じました。
それを今回は弾き振るのです! ヴァイオリンの演奏だけでも曲にあれだけ入れ込んでいたのに、指揮も一緒だなんて、デュメイさんの心の中にそれだけのスペースはあるのかな? バタバタして終わったりしないかしら(昨年のメンデルスゾーンのダブルコンチェルトのように)? などと生意気にも思っていました。
それだけデュメイさんのベトコンは内容たっぷりで、すごい&素晴らしいのですよ〜っ!!!

来日自体が体力に負担がかかる中(気候も悪いですし)、当日まで、ものすごく、ものすごく、ベートーヴェンに向けて精神を集中されていたのではないかと思います。

フランスの、そして世界の宝であるデュメイさん。
超ハードスケジュールな毎日かと思いますが、お体は大切にしていただきたいです。

「日本で演奏しよう!」という気持ち。
体調不良の中で前半指揮をして下さった気持ち。
今回、それだけでもとても嬉しかったです。

気持ちが上手くまとまりませんが、その後の関西フィルさんのご報告では、デュメイさんの病状は一過性のもので後の活動に支障が出るものでは無いとのことでしたので、一安心です。

そもそも私が1年に2シーズンもデュメイさんの音楽を聴くのは、10年早いのかもしれません(苦笑) 贅沢すぎましたよね。
秋は元気なお姿で、お会いしたいです! (東京で!!!) お待ちしております!

2010年3月13日 記

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