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バイエルン放送交響楽団
2009年 日本公演
【 2009年11月11日(水) at サントリーホール 】
首席指揮者:マリス・ヤンソンス / チェロ:ヨーヨー・マ


■ ドヴォルザーク : チェロ協奏曲 Op.104  VC: ヨーヨー・マ
■ ワーグナー : 「タンホイザー」 序曲(ドレスデン版)
■ ワーグナー : 「神々の黄昏」 より “ジークフリートのラインへの旅” “葬送行進曲”
■ ワーグナー : 「ワルキューレ」 より “ワルキューレの騎行”

アンコール
■ バッハ : 無伴奏チェロ組曲 第6番よりサラバンド ヨーヨー・マ独奏
■ バッハ : 無伴奏チェロ組曲 第3番よりプーレ No1 & No2 ヨーヨー・マ独奏
■ ハイドン : セレナード
■ ワーグナー : 「ローエングリン」 第3幕への前奏曲
せっかくヤンソンスさんとバイエルン放送響の方々が東京に来て下さっているというのに、本日は朝から大雨。夕方には小雨になり、公演後にはすっかり止んでいたのが せめてもの救いでしょうか。

2年ぶりのバイエルン放送交響楽団さんです!
今年のパンフレットには「1.Violine Anton Barachovsky, Kozertmeister」の文字が輝いています!
>きゃ〜っvvv

開演時間になると、バイエルン放送響の皆様一同、舞台に登場。
このオケの素晴らしい点の一つは、最初に登場したときに各自椅子に座らず、皆で起立して正面を一度見ることだと思います。何てことないのかもしれませんが、それだけでオーケストラの威厳のようなものを私は感じることが出来ます。
日本のオーケストラもそうしてみればいいのに…と思う時があります。

そして、個人的に注目しているコンサートマスターさんが登場・・・

(予想はしていましたが)バラホフスキーさんではありませんでした(涙)

ひょっとして、太ったバラホフスキーさん???

なんて、何度も見ましたけど、やっぱりバラホフスキーさんではありません。
「あなた、一体誰なんですかっ!!!(涙)」と、何度もこの罪の無い彼に詰め寄りたくなりました(爆) 演奏中もコンマスさんを見るたびに、残念な気持ちになりました。

皆でチューニングをした後、ヨーヨー・マさんとヤンソンスさんの登場です!
ヨー・ヨー・マさんとヤンソンスさんの身長は大体同じくらいだったような気がするのですが、でもなぜかヨー・ヨー・マさんの方が大きく見えました。

そうです。ヨーヨー・マさんってとても大きな方なのです!
体格もそうなのですが、心が・・・
きっと、このまま飛び込んでも全てを受け止めてくれるような心の大きな・広い方なのではと、あの笑顔を見た瞬間、感じました。なぜだか 気持ちがスカッとしました。
(そして絶対に人より前に出ようとしない謙虚な方でした。)

本日、私は1列目の席を取りました。
オーケストラで1列目はどうかと思いますが(実際、どうかと思いました、苦笑)、ヨーヨー・マさんのドボコンを3回聴くのであれば、1回はしっかりとお姿拝見したいなぁと考えたからです(初・ヨー・ヨー・マさんですし!)。
ソリストお目当てでしたら、1列目は最高ですね♪ 目の前にいるヨー・ヨー・マさんを、目に焼き付けてきました。

このドヴォルザークのvc協奏曲が始まるときに、マさんはまず最初にじっとチェロの皆さんを見て、ニコッとアイコンタクトをされました。
そして首席チェロ奏者のセバスチャンも笑顔で返し、演奏が始まりました。
その時私は「ああ、これはチェロの協奏曲だったのだ・・・」と気付きました。当たり前のことなのですが、そう思えたことがなぜか嬉しくて、今日この公演に来て良かったと思いました。

余談ですが、私は前回(2年前)のバイエルン放送響の公演の際に、チェロの首席奏者セバスチャン・クリンガーさんのあまりの格好よさに惹かれ(ハンサム君です。そして、照れて少し下を向いた感じの笑顔が可愛らしい♪)、そしてその隣に座られていたおじいちゃんチェロの方もとても印象にあって、このお二人の姿を見るのも今回楽しみにしていました。
ですが、今年はおじいちゃんチェロの方はいらっしゃらないようで、セバスチャンの横にはまるでセバスチャンの弟のような、セバにそっくりなこれまたハンサム君が座っていました! 前髪のカール具合などそっくりですし(セバの方が一回り大きい感じ)。
私は心の中で彼を勝手に「セバ弟」と呼んでいました。この二人は仲がよろしいようで、曲と曲の間とかによくおしゃべりしているのですよ。こら、仕事中でしょ、って何度も思いました(笑)

さて、オーケストラだけによる最初の導入部分。これもまた素晴らしくて、私はヤンソンスさんの指揮がお目当てで2年前も、そして今日も聴きに来ていますが、バイエルンさんの演奏も好きなのかも、と思いました。とにかくこの音色が聴けて、幸せに包まれてしまって。ソリストが入る前にもしここで演奏が終わったとしても、私は悔いは無い・・・と思ったくらいです(爆)

その間、マさんは、といいますと。
最初は「うーーーん。」という感じの渋いお顔で(目を瞑って)オーケストラの音色を聴き入っていたのですが、チェロ・ビオラ・ヴァイオリン・・・と、次々に満面の笑みを浮かべて見渡して、1人でも多くの人たちとアイ・コンタクト。とても眼力のある方で、ピアニストのランランに負けていないのではと思います。ランランと違う点は、眼力に加えて笑顔がマさんにはあるということ。舞台の上でチェロを抱えて身動き取れない状態なのに、ものすごい存在感、そしてオーケストラに影響を与えていたと思います。ある意味、マさんが指揮者なの・・・?!みたいな。
私もお目当てのヤンソンスさんのお姿そっちのけで(すいません、涙)、マさんばかりを目で追ってしまいました。

そして、お待ちかねのマさんの一音・・・

チェロのことに詳しくないので、この音色に引き込まれたとか、素晴らしかったとか、そういう感想は持たなかったのですが、でも「これだ!」って思いました。
以前NHKホールで聴いた、N響+ミクローシュ・ペレーニさんとは全然違いました(申し訳ないのですが、個人的な感想ということで)。
ものすごく力強く、一見乱暴に弓を動かしているように見えるのですが、実際弦と弓との触れ合う関係はとてもソフトで(弦の上に柔らかく弓が乗って動いている感じ)、弓の毛が切れることはありませんでした。そして、左手の指の力強いこと!弦を弾く時の魅力的な音!(どうも私は左手の指の力がある方に惹かれるみたいです・・・デュメイさんとか)

数音弾いただけで、もう顔が真っ赤になったマさん。それだけ思いが詰まった音なのだと、一音一音を大切に聴かせていただきました。

曲の8割以上はバイエルン放送響の方々につねに笑顔を向けていたと思います。特にチェロパートに。笑顔で答えるセバスチャンも嬉しそうでした。あとビオラのイスラエルの方もしきりに笑顔でマさんに応えていました。体も45度位斜めっているし、正面見て演奏したのってほとんど無かったような・・・

正面向いた時は、目を瞑って「お父さん、もう疲れたよー! 腰も痛いしさー。限界!」って感じで下を向いているのですが(たぶん本当は違うと思いますが)、次の瞬間、ありったけの笑顔でまたチェロパートに視線を投げかけているのでした。
お顔に汗がとても流れていましたが、ハンカチで拭くことも無く。人間味溢れるマさん。
ソリスト部分がお休みのときはこんな感じだったのですが、時々チェロやビオラが素敵な感じで演奏に入っていくと、「うーーーん、今の音、最高だよ! 最高!」みたいな笑顔(ちょっとうなずきながら)で常に皆と意思の疎通を図っていました。
・・・本当、ヤンソンスさんの存在が薄れてしまって・・・(涙)
>いえ、でも素敵な指揮をされていました。そしてマさんの影響か、すごく乗りに乗っていたような気がします。

マさんの動きについて書きたいことは山のようにあるのですが(爆、私にとっては衝撃的な演奏家でした!)、きりが無いのでこの辺にしておきますが、第3楽章でのコンサートマスターさん(あぁ、なぜバラホフスキーさんでないのかしら、涙)とのハーモニーも素晴らしかったです。鳥肌が立ってしまいました。ヴァイオリンの音色もとても良かったです。
マさんが一生懸命笑顔で見つめているのに、コンサートマスターさんはまるっきり無視でした。。。
(シャイな方なのかしら。全然マさんを見ていませんでした。)

ドヴォルザークのチェロ協奏曲は有名ですし、私も好きな曲でしたが、ここまで最初から最後まで聴き入ったことは無かったような気がします。たっぷりと楽しませていただきましたv

演奏後は会場、当然ですが大きな拍手!

謙虚なマさんは、ヤンソンスさん、そしてオケの皆さんを立てて、決して前へ出ようとしませんでした。
2回目にチェロを持たずに舞台へ登場したときだったでしょうか。
今度は1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、チェロ、ビオラ…と握手をし始めたのですが、チェロ・ビオラパートあたりに来た時に、会場の拍手の熱気に合わせて「イエーーーイ!」といきなり飛び跳ねながら、両手を上げてガッツポーズをされたのです(爆)

チェロ・ビオラの人、目の前のマさんの姿にポカン顔…

「こいつ、クレイジーだ…」みたいな空気が漂っていました。。。

その光景に思わず私、吹き出しそうになって、後半のワーグナーですごく盛り上がっている時にこの光景を思い出したりして、笑いをこらえるのに必死でした。
何て楽しい方なのでしょう。

マさんクラスの演奏家になりますと、演奏は上手に弾けて当たり前で、その先をどう表現されるかだと思うのです。それはテクニックだったり、曲に感情を乗せていくものだったり、そこで演奏家の個性が出てくる(試される)のかな、といつも感じています。
マさんの場合は、「自分が」ではなくて「皆と一緒に」どれだけの世界を生み出す・表現することが出来るのか、を常に追求されているのかな、と感じました。だから舞台上があんなに楽しいし、オーケストラの皆さんも笑顔(…失笑?いえいえ。)が絶えないのですね。
そして、そのお人柄が音に表れているような気がしました。

再度チェロをお持ちになり、1曲目のアンコールを。
あれだけニコニコして舞台へ登場したのに、一瞬でバッハの世界へ入って行かれました。

その後、チェロを持たずに何度も舞台を往復されたのですが、チェロパートの所へ行って、セバ弟に「ちょっと貸してね。」と、チェロと弓を借りて2曲目を演奏されました。
人のチェロなのに魅力的な音色を鳴らされていて、もしかして音って楽器では無く、演奏家の腕が一番大事なの?!と思いました。
チェロを貸したセバ弟も嬉しそうでした♪ そして、周りの皆に何か言われているようでした(笑)

アンコールを2回曲演奏して下さり、それでも拍手は鳴りやまず、最後は後ろの管のパートに行かれ、皆と握手をし、また「イエーイ!」と両手を上げられ、舞台を去って行きました…

最後まで楽しい方でした。

後半はヤンソンス氏の希望により、当初予定されていた「ワーグナー:『ローエングリン』第1幕への前奏曲」はカット。そのかわり、アンコールで第3幕への前奏曲を弾いて下さいました。

1列目というのはとても近すぎて、魔法がかったヤンソンスさんの魅力も半減してしまったような気がします。近いので、ヤンソンスさんの指揮によってオーケストラがどのように変化していっているのかが分からないのです。皆さんの足元しか見えませんし。
また、ヤンソンスさんがジャンプされた時も、どの位飛ばれているのかとか分かりませんでした。
「オーケストラは少し後ろの席がいい」と改めて学びました。

公演後、友人と「楽しかったね〜!!!」と盛り上がり、幸せ気分でサントリーホールを出ました。

2009年11月12日 記

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