戻る |
ミシェル・ダルベルト ピアノ・リサイタル Michel Dalberto Piano Recital |
【 2009年10月12日(月) at パルテノン多摩 大ホール 】 ■ ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110 ■ シューベルト : 「さすらい人」幻想曲 ハ長調 D760 ■ フォーレ : 第7番 嬰ハ短調 作品74、第6番 変イ長調 作品63 ■ ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111 **************************** アンコール ■ シューベルト : 即興曲 変ホ長調 D899より第2曲 ■ シューベルト : 即興曲 変ト長調 D899より第3曲 ■ リスト : 愛の夢 第3番 ■ ドビュッシー : 亜麻色の髪の乙女(前奏曲第1集第8曲) |
キャーキャー幸せな日々を過ごしたデュメイさんのコンサートから約1ヶ月。今度はダルベルト先生です! やはり、なぜか数日前からドキドキしてしまいました(笑) この日を楽しみにしていました。 場所は京王線や小田急線の多摩センター駅前にあるパルテノン多摩ホール。デュメイさんの名古屋や大阪に比べたら、なんと近いことか! 有難いことです。しかも、祭日ですし。 駅の前は広場のようなショッピングモールのような感じになっていて、近所の方々が休日に足を向けるにはとても環境の良い場所だな、と思いました。ホールへ向かう道沿いには北海道展の様なものが開催されていて、じゃがバターとかいか焼き(だったかしら)などの屋台が並んでいました。帰りには大道芸も… コンサートが目的でここに来たのでなければ、絶対私食べていましたね。このまま通り過ぎるのが辛かったです。 パルテノン多摩 大ホールは1,414席もある大きなホールです。多摩という場所でこの規模のホールですと、数年前のデュメイさんの壬生でのコンサートの状況(あれも大ホールでした)を思い出すのですが、それに比べたら左右後ろ空席とはいえ人は集まっていたのではないでしょうか。 本日集まった客層は女性が多かったとは思いますが、年齢的には学生さんからお年寄りまで、幅広い感じだったと思います。皆、ダルベルト先生大好き! な感じで良かったです(私目線ですが)。 入口には「本日の楽曲は以下のように変更になりました」と、元々は1曲目がシューベルト、1曲目がベートーヴェンだったところ、1曲目にベートーヴェンが来たことの説明がありました。 舞台に1年ぶりのダルベルト先生が登場! >きゃ〜っ!!! 上下黒の詰襟っぽいスーツです。一瞬ベラっとめくれた時に見えたのですが、ジャケットの裏地は紫でした。すごい… 靴下は濃いめのグレーだったかしら。 頭を下げ両手を譜台の両脇に置き、いつものようにしばらくピアノと先生が対話をされてから(たぶん)、1曲目のベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番が始まりました。 私の大好きな曲であり、以前ネットで拝見したダルベルト先生の演奏は私の好みとは違うな…と感じた曲です。(ピリスさんの31番が好きな私です。CDではギレリスさん!) ですので、今日のプログラムを見たとき、嬉しいような、嬉しくないような、複雑な気持ちでした。 ですが、私ったら何て小さな人間なのだろう… と恥ずかしくなるような、映像と生演奏とは全然違うよ! とコンサート会場へ足を運ぶ意味を改めて教えていただいたような、すごい世界を体験することが出来ました。ダルベルト先生の第31番。こういう世界もアリなんだな…と。 特に引き込まれてしまったのが、第2楽章。思わず顔が緩んでしまうような、面白く、大変魅力的な先生の世界でした。 私はこの楽章だけは気持ちを音に乗せることが出来なくて苦手です。ピリスさんはあっさりと速めに弾いて下さるので、何とか聴き通すことが出来るのですが。 先生の第2楽章は、濃いです! 濃すぎてびっくりです。こんな楽章だとは知りませんでした。 映像だと単にピアノをたたきつけているだけにしか感じなかったのですが(すいません…)、傍で演奏を聴いていると先生の気迫みたいなものが伝わってくるのです。1音1音に先生は気持ちをいっぱい乗せて、観客もそれに共鳴してしまうといいますか。「この部分でも思いっきり気持ちを込めちゃいますか、先生…」みたいな所もたくさんあって。演奏される際のお顔も険しくて。聴きごたえありました。 好きか嫌いかにはっきりと分かれるような演奏だったと思うのですが(私も今までは苦手でしたし)、これにハマった方はとてつもないベートーヴェンの世界を見ることができたはずです。 私もここで先生の31番の魅力につかまってしまいました。 私にとって、次のクライマックスは1度目のフーガでした。本来は2度目のフーガで大感激して、その次々と襲ってくる音の波に包まれてこの曲が終わる… というのが私の好みのパターンなのですが。 この1回目のフーガの時に、先生は右手で三拍子か四拍子かを軽く指揮されながら左手で弾き始めたのです。(LFJでシューベルトのクッペルヴィザー・ワルツでもそうされていましたよね!) そうしたら、先程の嘆きの歌部分と雰囲気がガラッと変わってしまいまして、一気にダルベルト先生の周りにスポットライトがあたったような気分になり(実際は演奏前からあたっていましたが)、小さな天使が5〜6人先生の周りを飛び始めたのです… って、私の頭がおかしくなったのではなくて、そういう世界が舞台上で展開されていたのです。 いきなり1回目のフーガから聴き手の心を浄化させていくなんて、先生すごい…と。 これには大変感激しました。もちろん濃〜い第2楽章とも全く違いますし。 聴いていて、「これはパッションの世界だな…」と(何となくなのですが)。 詳しいことも分からず勝手な中途半端なイメージですが、キリストの受難と復活、そしてこれからの希望… それくらい私にとっては大きな世界でした。 最後は私の好みのように天上の音色が次々と客席に流れ込んできて、きゃ〜っ!!! というところで終わりました。すごい31番でした。 ホールいっぱいにダルベルト先生の気持ちが溢れていたように思います。 沢山の拍手の中 一度舞台を去り、再び登場されて椅子に座りますと、すぐに2曲目のシューベルトを始められました。今回、一番楽しみにしていた曲です♪ この曲を生で聴くのは初めてです。 先生のさすらい人はアルバムでも結構強めの迫力ある演奏だと思うのですが、生はもっとすごかったです。先程のベートーヴェンの第2楽章の時よりもさらに気合い(?)が入っています! そして、やっぱりダルベルト先生はシューベルトがお似合いだなぁと直観的に感じました。聴いていて、こちらのLove度がシューベルトの場合、強くなるようです(笑) もう、常にきゃ〜っ!って感じ。迷うことなく先生の音楽に入って行けます。 ダルベルト先生特有のリズムの刻み方は聴いていて心地よくて♪ 時々腕をバッサリ横に流して音を切って、無音の状態を作る間とかも私好みです。とにかく、先生のシューベルトは大好きだということを再確認いたしました。 私にとって、この「幻想曲ハ長調 D760」はマーラー5番と同じく『旅』だと思っています。きっと良い演奏に出会えると、演奏者と一緒に心の旅が出来る曲だとアルバムを聴いていて感じていました。ですので、今日の演奏はとても楽しみにしていました。ダルベルト先生が私たちの手を引いて、どこかへ連れて行って下さるかなぁ…なんて。 バカみたいな妄想ですが、でも実際先生は旅に連れて行って下さいました。この瞬間、自分がここでこの演奏を聴くことが出来た巡り合わせに感謝しました。「これ」があるのでコンサート通いは止められないといいますかv 最高のひと時でした〜!!! こういう演奏があれば、他に何も要らないですね… さすらい人幻想曲は超絶技巧の曲だそうですが、確かに先生の手の動きはすごいことになっていました(汗) それでいながら、先生の動きって華麗なのです。全然見苦しくなく、この音を出すために指3本使って押さえます、みたいな全てが計算し尽くされた動きでもあるようで、目が離せませんでした。 私は特に第4楽章が好きなのですが(後4分ほどでこの曲が終わってしまうという悲しい気持ちがわき起こると同時に、やはりこの曲の魅力が全身に伝わってくる部分だとも思うので)、先生の第4楽章はそれはもう素晴らしかったです! 4分程だったとは思うのですが、でも私にとってはとても長い時間に感じました。まだ終わらない、まだ先生の世界を一緒に旅することが出来る…って何度も思いましたから。 これでもか、これでもか、って位に先生が私たちの手を引っ張って下さって、上へ上へと気持ちを引き上げていただくような気分…とでも言うのでしょうか。有無を言わさず引っ張られてしまうのですよ。ノン・ストップで(笑) 聴いた後、迫力と音の波がすごくて 良い意味でぐったりしてしまいました。 後半は前半あまりにも興奮し過ぎてしまいまして、またフォーレの曲はヴァイオリン以外は私は知らないこともあって(!)、意識が少し飛んでしまいました… すいません。 でも、前半とは違う柔らかい音色が耳に心地よく入って来た記憶があるのですが… そして最後のベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番はフォーレの反省を踏まえ、しっかりとその世界を感じとってきたつもりです! これはもう、天上の世界の曲ですね(私にとって)。精神世界の曲だと思いました。 詳しいことは分かりませんが、第31番の続きのように私は感じました。 インパクトは先ほどの第31番の方が強かったですが、曲へどっぷり浸った具合は第32番の方が上でした。32番はあまり聴き込んでいない曲なので上手く表現できないのですが(生演奏で聴いたのも今回が初めてです)、第2楽章が素晴らしいのです! 1つ1つの音に意味があるように感じますし、次々と変わっていく変奏にこちらの気持ちも切り替わっていって。ダルベルト先生の音色に身を任せてこのまま流れて行ってしまいそうでした。(一歩間違えると意識を失いそうなリスクもある、精神的心地良さがありました。) 最後がですね、この世の終わりの先がこんな世界だったら、本当素晴らしいことだなと。自分でも良く分からないのですが、広い目線で物事を考えたくなってしまうような気持ちにさせられました。 イメージとしては海とか地平線とか。言葉で表すのなら、永遠とか無限とか。そして何かが始まる希望のようなものを残してこの曲が終わった気がしました。 ダルベルト先生そのものも、とても大きく感じました。 はぁ〜〜〜。ダルベルト先生、音楽の深みを教えて下さってありがとうございました! 前列に座ったおじ様の 「ブラボー!」 の声と止まぬ拍手の中、『シューベルト』 という先生のお声でアンコールが v とてもアンコールとは思えない、ソナタ級の重みのあるシューベルトでした。 続いても嬉しいシューベルトで(こんなにシューベルトが聴けて大感激でした)、今度はダルベルト先生の優しさが一杯詰まった胸にじーーーんと来るような演奏。同じシューベルトでも色々な顔を持っているのだなぁと。 個人的にはこれで終わりでも良かったのですが、ダルベルト先生の勢いは止まりません! 『リスト』 『ドビュッシー』 と合計4曲も。以前も思ったことですが、先生は止まぬ拍手に仕方なく… というのではなく、時間の許す限り自分が弾きたい! という感じでピアノの前に座って下さるので、こちらも何だか嬉しくなります。ピアノを弾くのがが本当にお好きな方だなのだなぁと感じました。 この2曲も有名な曲ですが、ダルベルト先生が弾くと違った曲に聴こえるから不思議です(笑) こんなに素敵な曲だったっけ… なんて。 (でも、アンコールって数をたくさん弾いて下さるからいいとかそういうものではないとも思います。その場の雰囲気が良かったので沢山…という時もあるでしょうし、本プログラムとの流れを含めて構成を考えられている場合もあるでしょうし。マーラーなどではアンコールは無い方がいいと思いますし。色々な状況がありますね。) コンサート終了後はサイン会がありました。もちろん(?)長蛇の列です! 昨年のすみだトリフォニーホールでのサイン会では若い女性の方で溢れていたような印象がありますが、この日はカップルが多かったような… そしてお年寄りの御婦人方(それも若手同様、きゃ〜vvvって感じの)。 とても和やかな雰囲気の中で行われました。先生も私たち1人1人に丁寧に応対して下さって、両手でしっかりと先生に握手する人あり、顔をめちゃくちゃ近づけてツーショット撮られる方あり(そんなに近づかないで〜!って思ってしまいました、笑。近過ぎです!)。 お疲れの中、演奏だけでなく ここまで私たちに思い出を作って下さる先生に感謝、感謝でした♪ とても素敵なコンサートでした。 帰りの電車の中では、頭の中でシューベルトのさすらい人幻想曲がグルグルと回っていました。。。 2009年10月17日 記 |
▲上へ |