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関西フィルハーモニー管弦楽団
Community Concert Vol.44
【 2009年9月13日(日) at オークホール 】

■ ハイドン:弦楽四重奏局第79番 ニ長調 作品76-5より(第1・2・4楽章)
  徳岡裕紀(Vn) 鈴木洋子(Vn) ステファン・ポポフ(Va) 分藤美紀子(Vc)

■ フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
  オーギュスタン・デュメイ(Vn) ヴァネッサ・ワーグナー(Pf)

■ シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44
  オーギュスタン・デュメイ(Vn) ヴァネッサ・ワーグナー(Pf)
  岩谷祐之(Vn) 大江のぞみ(Va) 向井航(Vc)

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■ モーツァルト:セレナード 第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
  指揮:オーギュスタン・デュメイ
日曜日の、しかも16時からこのCommunity Concertがあるということで、企画して下さった方に感謝をしつつ 私にとって今年最後のデュメイさんの演奏を聴きに行ってきました。16時からですと、帰りの新幹線が間に合うのですよねー。嬉しかったです。

オークホールは関西フィルさんの練習場だそうで(その上だか下だかの階に事務局があります)、もちろん私は初めてです。ORC200というショッピングセンター(?)の中にありました。『地域密着』という雰囲気が伝わってくるような場所でした。

開演の1時間前(15時)開場ということだったのですが、「デュメイさんの熱いリハーサルが続いているため、もうしばらくお待ちください。」とのことでした。
私は帰りの新幹線に間に合いさえすれば全く問題無しなのですが(笑)、こういう延長は昨年のラ・フォル・ジュルネのダルベルト先生を思い出します。
この時も「熱心なリハーサルが長引いておりまして…」との説明で 並んでいるこちら側は大変感動したのですが、次の日の先生、開場時間に現場到着しておりました(汗、そして昨日と同じような説明を受け、昨日もそういうことだったのねと) でも、そのお姿が爽やかで格好良くて(東京国際フォーラムの窓から差し込んでくる日差しととってもマッチしていたのですよね)、良い思い出となっています♪

小山実稚恵さんは昔のインタビューで、デュメイさんやピリスさんが時間通りに待ち合わせ場所に来るとどこか具合でも悪いのではないかと逆に心配する位だ、みたいなことをおっしゃっていました(以前は時間どころか日にちの変更も当たり前のようでした) 。こちらとしては時間は気にしません〜

…ということで、楽しみにしていたコンサートが始まりました。
司会は事務局長の西濱さん。(この方のお話しを聞くだけでも嬉しいです。)

今回、このコンサートにあたって関西フィルさんとしてはデュメイさんに3分位の曲を何か弾いていただけないかとお願いしていたそうです。
それがデュメイさんが「フランクのソナタを弾きます!」をおっしゃったそうで。
値段のことをお話しするのはどうかと思いますが、このコンサート、2,000円なのですよ!
しかも、練習場ですので演奏者と客席の距離がとっても近い! (ラ・フォル・ジュルネのガラス塔のお部屋をもっと広くしたような感じでしょうか)演奏家のファンにとっては嘘みたいな状況です。贅沢。。。

で、デュメイさんですが、デュメイさんとしては もうフランクのソナタを弾く気満々で来日されたようで、デュメイさんのオフィシャルサイトにはしっかりと

Japon,
Musique de Chambre
avec Vanessa Wagner, piano

Franck, Sonate pour violon et piano en la majeur
Schumann, Quintette avec piano en mi b?mol majeur, Opus 44
Mozart, Serenade no 13 en sol majeur "Petite musique de nuit" K. 525
Kansai Philharmonique Orchestra
Osaka, Oak Hall
13 septembre, 16h

…と表示されていました♪ その気持ちが嬉しいですね。

11日に続いてヴァネッサ・ワーグナーさんについても説明があり。デュメイさんがワーグナーさんを関西フィルさんと一緒に演奏させることを希望していたこと、親友のダニエル・バレンボイムさんより「彼女を頼む!」と託されての今回日本初来日となったこと。
そして、実はワーグナーさんはこの日は他の仕事が先に入っていて来日できるか危うかったのだそうですが、紳士的なデュメイさんの「そんなの、断われよ(笑顔)」という一言で来日が決まったというエピソードも披露していただきました。

ちなみにワーグナーさんのオフィシャルサイトに掲載されているこの日のスケジュールは…

14 septembre 2009 : Osaka / Augustin Dumay (violon)
Schumann Romances avec violon
Schumann :Quintette
Mendelssohn Sonate en fa majeur avec violon

…こんなことになっていますけど。(しかも14日ですが。)
シューマンのロマンスとメンデルスゾーンのソナタ… ワーグナーさんも弾く気満々での御来日だったようです。有り難いことです(感涙) 私もこのプログラムで聴いてみたかったです。(デュメイさん、どんなオファーをワーグナーさんにされていたのかしら。)

あとデュメイさんは1週間で香水1瓶使ってしまうお方だそうで、デュメイさんのいた場所は香っているので「今日、デュメイさん事務所に来ていたでしょう!」と 団員の皆さんは匂いで分かるのだそうです。

そんな情報をいただきつつ、1曲目はハイドン。「ラルゴ」と呼ばれる曲ですが 今回は「ラルゴ」の楽章を抜きでお届けします、とのことでした。
デュメイさんに指導を受けられた方(昨年もこのメンバーで指導を受けられたそうです)たちによる演奏。ハイドンと言いますと、私はリンゼイズの演奏しか聴いたことが無く 詳しいことは分からないのですが、CDを聴いた時に感じたような同じ雰囲気が伝わってきて良かったと思います。…って、すごい感想ですね(汗)最後まで夢中になって聴かせていただきました。

2曲目は本来シューマンでした(プログラムもそう印字されていました)。
ですが、舞台上はすっかりソナタの配置に。事務局長さんも「順番としてはシューマンなのですが、マエストロ・デュメイが『フランク弾く!』と言っていますので…」ということで、フランクのソナタに。
(全体の流れとしては、前半はフランクよりもシューマンで締めたいですよね♪)

デュメイさんとワーグナーさんの登場です!
ワーグナーさん、やっぱり可愛いです…
デュメイさんは、ピアノの椅子に座っての演奏でした。

至福の極みでした…
デュメイさんの音色がホール一杯に広がって、大げさに言ってしまうと以前サントリーホールでマーラー8番を聴いたときのあの音の洪水に近いくらいの世界観でした。胸が一杯で息が出来ないくらい… とても幸せな時間を過ごすことが出来ました。
デュメイさんが踏み出した足の振動も、床板を通じて直接私たちの足に伝わって来ましたし。

デュメイさんと言うと、ピリスさんとのあの美しすぎるフランクのソナタのアルバムが有名ですが、あのフランクのソナタではありませんでした(これを期待していた方にはちょっと…だったかもしれませんね)。今のデュメイさんのお気持ちを、音に乗せました!というような演奏でした。
ですから「フランクのソナタ」として考えると、それは良かったのか悪かったのか、好みはあるかと思います。>私は好き!
こういう表現方法もありなのですね…と、音楽の楽しさをまた教えていただいたような気がしました。

前半最後の3曲目はシューマンです。
始まる前の事務局長さんのお話によると、今回の来日中デュメイさんは椅子に座られて演奏をされていますが、これは昔テニスをしていて痛めた膝(お医者様には手術をした方がいいと言われたのですが、断ったそうで)の痛みが再発したからとの事で、ヴァイオリンを演奏する分には問題ないのだそうです。 腰を痛めている訳ではなかったのか… と、1つ謎が解けて得した気分に。

さて、演奏はデュメイさん、ワーグナーさんに、コンサートマスターさん、首席ビオラ、チェロの方という豪華メンバーでした。
2日前にシンフォニーホールでも第1楽章を聴きましたが、この日の演奏は比べ物にならない位素晴らしいものでした! 室内楽っていいなぁ、私もその皆の輪の中に混ざりたいなぁと思った位です(笑)
あれから皆さんで音を何度も合わせられた結果がこの演奏に現れていたのですよね。

今回、とにかくこの時感じたことについて自分なりに記憶に残しておきたいと思っているのですが、上手く言葉で表現することが出来ません。でも、本当にこの目の前にいる5人が素晴らしくて。

まず、皆さん全員が最初の一音からものすごい迫力があったこと。特に関西フィルさんの3人には圧倒されました。そして、その5人の集中力は最後の一音まで続いたこと。これってすごいことだと思いました。こちらも手に汗握りながら聴いてしまいました。

そして、デュメイさんからチェロの向井さん(とても体の大きな方なのですが、それ以上にデュメイさんが大きくていつ見てもびっくりです)、そしてビオラの大江さん、最後にコンサートマスターの岩谷さんが全体をまとめ、ベースを後ろにいるワーグナーさんのピアノで形作る…という、ひとつの流れが何とも言えませんでした。
すごいなーと何度も思いました。(特にチェロとビオラのやり取りが大好きでした。)

一番すごいのは、5人皆さんが対等に演奏されていたこと。
私も詳しいことは分からないのですが、いつも聴いていると1人だけが上手いアンサンブルの場合、その1人が何とか全体をまとめて帳尻合わせたり、ちょっと変な感じになったり…ということがあると思うのですが、今回は皆さんのバランスが「同じ」でした。
といってデュメイさんが手を抜いたわけではなく(そういうことをする方ではありませんし!)、デュメイさんが本気の中での皆さん対等というレベルの高さですよっ! 日本人、すごい・・・と(すごいばかりですが)思いました。目の前の光景に感激してしまいました。

演奏後にビオラの大江さんがお話してくださったのですが、「デュメイさんと一緒に演奏できるなんて!!!」のような感無量なお気持ちがとても伝わってきました。
でも、全然そんな謙遜する必要が無いくらい、聴き手にとってはデュメイさんも大江さんも同じ「プロの演奏家」として聴かせて頂きましたから!とお伝えしたくなりました。>なのでここに書いてしまいます。
もう、皆さん素敵でびっくりしました。とても良かったです。

このメンバーでの室内楽、もっともっと聴きたいです。というか、Webラジオで流れてもいいかと思ったくらいです。とてもワクワクさせていただいた、楽しいひと時でした。

休憩が終わった時間が確か18時をまわっていたと思います。これから後半となると、20時発の新幹線にもしかしたらギリギリかも…(出来ればこの後友人と少しお話しして帰りたかったので)

などと思っていましたら、司会の事務局長さんが
「前半は盛りだくさんで長くなってしまい失礼いたしましたが、後半は15分で終わりますので!」

とのこと(笑)
このバランスのチグハグなところが、とてもデュメイさんらしくていいなぁ〜と思いました。いえ、このプログラムはデュメイさんが作ったかどうかは分かりませんけれども。リサイタルもこんな感じのバランスで組まれますよね。

モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク。
こちらもとても良かったです。
4年前にいずみホールでデュメイさん+関西フィルさんの演奏会を聴いた時、この時もモーツァルトプログラムでした。vn協奏曲の5番とか。
この時は関西フィルさんの音色って「日本人のモーツァルト」に感じたのです。デュメイさんと全然違うなー。失礼ながらも(本当にすいません)もっと頑張ってほしいなー、なんて。
それが目の前の演奏は、完全に日本の国を飛び出して、ヨーロッパの音色になっていました。気品があってとても美しくて。
皆さんの気持ちと努力でここまで変われるだなんて…と、この関西フィルさんとデュメイさんとのつながりがとても素敵に思えました♪

最後はデュメイさんの(とても長い)お言葉でコンサートが締められました。
今後、関西フィルさんとは一緒に世界を周りたい。現にいくつかの音楽祭からオファーが来ています。そして一緒に録音しCDも出したいです…みたいなことをお話されていました。世界に連れ出しても、日本からこの素晴らしいオーケストラを奪うようなことはしませんので、ご安心を!みたいなことも言っていました(笑)
これは単なる希望とかではなく、確実に実行される未来だと私は思います。すごいですね。

感動しっぱなしの、とても楽しいコンサートでした。
デュメイさんとの室内楽はまたぜひ聴きたいです。大阪までまた聴きに行ける日程で開催していただけると嬉しいなぁ…などと思いながら、ホールを後にしました。
これで私の2009年のクライマックスは終わったようなものです(笑) とても良い1年でしたv
>でも、まだまだお楽しみはありますけれど!

2009年9月16日 記

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