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名古屋フィルハーモニー交響楽団 第361回定期演奏会
夏風の中で
【 2009年9月5日(土) at 愛知県芸術劇場コンサートホール 】
指揮:ティエリー・フィッシャー / ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ


■ ウェーベルン:牧歌『夏風の中で』
■ ベルク:ヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』 vn:オーギュスタン・デュメイ

アンコール
■ モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216 〜第2楽章 アダージョ

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■ ストラヴィンスキー:バレエ『火の鳥』全曲
きゃ〜〜〜っ! 今年も待っていました、デュメイさん! 日本へようこそ!!!

…ということで、大変楽しみにしていました 私の『 Dumay Weeks 2009 』 がやって参りました。
今年は残念ながら関東方面での演奏が無いのですが(涙)、嬉しいことに週末に2回公演がありますので、デュメイさんの演奏に出会えるのです!この日・この時間に企画して下さった方々にお礼を申し上げたいです。

9月に入って秋になった感がありましたが、この週末は天気も良く 皆さんの服装も夏に戻った感じ(私の周りには半袖の方とか結構いらっしゃいました)。大変暑い日でした。

愛知県芸術劇場コンサートホールといいますと、私にとっては初めてマリス・ヤンソンスさんの指揮を生で見た(聴いた)思い出深い会場です。あの時は2階席でしたが、音が良く聴こえてきてドヴォルザークの「新世界より」とストラヴィンスキーの「春の祭典」を周りの皆で興奮しながら聴いたのを今でも覚えています。実際は遠くの舞台に立っているヤンソンスさんの姿しか見えていなかったはずなのに、私の中での記憶はまるで目の前で見てきたかのようです(笑)
あの日はホール全体が温かい拍手と熱気で包まれていて、とても良い雰囲気でした。
(これを思い出してしまうと、本日の拍手はちょっと物足りない感じがしたのですが… ヤンソンスさん+ロイヤルコンセルトヘボウの人気は、やはり別格なのでしょうか)

本日は1階席です。舞台と1列目がこんなに近く、舞台も低めな会場だったのか…(だから2階席は丁度良く聴こえるのかも)と、初めて気付きました。

1曲目のウェーベルン「夏風の中で」は、私の知らない曲です。予習もしていません(ベルクで精一杯!)。
出だしが夏の爽やかな感じがして「うわぁ、いいなぁ。聴きやすい曲だなぁ…」などと思いましたが、後半はやはり「現代音楽」という(私にとっては)訳分からない混沌とした展開になって、「うーーーん」と頭を悩ませて終わりとなりました。聴き込めば良い曲なのでしょうが、初めて聴くには入り込みにくい曲でした(苦笑) 隣のおじ様は1曲目から深い眠りに…

1曲目が終わると、第一ヴァイオリン部分の席の移動がありました。指揮台の横の空間には、背の高い回転式の丸椅子(他の方のブログによるとコントラバス用の椅子だとか)、そして大きな譜面台(ベルクの楽譜もオーケストラの方たちより二回り位大きいサイズのものでした)が運び込まれました。
誰がどう見ても、これはデュメイさん用の椅子と楽譜です。
椅子だけ見ても大きいし(足が長いのがよく分かります)、この椅子に恐らくぴったりに座るデュメイさんは大きいのだなぁ…と、半分ポカン顔の客席(私だけ?!)の前に、デュメイさんと指揮者のティエリー・フィッシャーさんが登場!!!

きゃ〜っv デュメイさんだ〜〜〜vvv (というのがその時の私の気持ち)
やっぱり大きい。頭の中では分かっていても、1年ぶりにまたお姿見ると その大きさには驚いてしまいます。上下黒のスーツ(格好いい!)で登場され、手に持っていた白いハンドタオルを指揮台にポンと投げ置き(譜面台ではなく、指揮台です…汗。指揮者の足元に置いてしまっていいの?! とこちらが心配に。)、椅子に座ったデュメイさん。べっ甲の眼鏡をかけました。

こういう椅子に座ってのデュメイさんの演奏は、ドキュメンタリー番組(だったと思いますが)で少し拝見しましたが、生で観るのは初めてです。とても不思議な感じがしました。
デュメイさんの腰が悪いのか、デュメイさんが立っていると後ろの方たちが指揮を見ることが出来ないのか、オーケストラとの音のバランスを取るため高さを合わせたのか… 理由は分かりませんが、とにかく座ってのデュメイさんの演奏です。

ポン、ポン、ポン、ポン  ポン、ポン、ポン、ポン…

ハープとソリスト(デュメイさん)のヴァイオリンとの会話でこの曲は始ります。

これがですね、デュメイさんのヴァイオリンがパープの優しく美しい天使のような音色を(遥かに)上回る位の素晴らしい、素晴らしい、音だったのです。。。(どっちがハープだか分からない位)
1年ぶりのこの音色に、私はたまらなく感動してしまいまして、ああ、名古屋に来て良かった…としみじみ思いました。ヴァイオリンの音色ってここまで出せるんだ…と、新しい発見でした。
私にとっては魔法の音色。日本に来てくれてありがとう、と改めて心の中で感謝を(笑)

敢えて「ソリストです」という特徴ある音を出そうとするでもなく、力みなどももちろん無くて、自然な淡々とした音の並びなのですが、その音の並びに不思議とストーリー性があって、私たちの心がその音の世界に持っていかれてしまうのですよね。

正直、ベルクのこのヴァイオリン協奏曲は私は苦手なのですが(すぐ眠くなるし、覚えることが出来なかったので)、デュメイさんの演奏を聴いたら不思議と出だしの部分は覚えてしまいました。

音楽を知っている人はこの曲を「超絶技巧」とか「12音技法」と言う言葉で表現されますが、私にはそんなことは分かりません(汗) 超絶技巧の曲だとも感じませんでした。だって、テクニックなどはデュメイさんクラスの演奏家には当たり前のことだと思いますし、仮にミスをしたからと言ってそれは私にとっては重要なことではないです。

この曲は18歳でこの世を去ったマーラーの妻であったアルマの娘マノンへのレクイエム的作品(「ある天使の思い出に」)とのこと。第1部で少女マノンの美しい思い出、第2部で病に冒されたマノンの苦しみと死、そして天国への昇天が描かれているそうなのですが、その部分をデュメイさんは巧みに表現されているなぁと感じました。そちらの部分で私は楽しませていただきました。

前半のデュメイさんは、まるでマノンと遊んでいるかのような(もう表情が娘を激愛している父親そのもの!)、もしデュメイさんに女の子がいたら親バカ間違えなしだな…と思う位の、優しい演奏でした。

全体を通じてソリストの音色が、ある1つの物語を語リ続ける「ナレーター」のような存在に感じました。それが「クラシック」という少し垣根のあるような世界から、「童話」とか極端に言うと「エッセイ」とか、一歩私たちに近寄りやすい音楽の形式を生み出しているのかな、と。(意味分かっていただけますでしょうか。)とても親しみやすい音楽の世界でした。

楽章間では左の手のひらをジャケットのすそでしきりに拭いていました。(お顔の汗よりも手のひらの方が大変なことになっていたのですね…)指揮台に置いたハンドタオルは 結局デュメイさんは使わなかったし、持って帰らなかったような気が…
>回収した記憶が無い。置き去られたタオルは私が欲しかったです、なんて。

後半は少し激し目な曲調で始まるのですが、デュメイさんの左の指の動きと右の弓の動きのコラボレーション(?)が格好良くて!
座って演奏されてもやはり唸ったりもして(笑)>それでこそ、デュメイさん!

個人的には後半の方がデュメイさんの魅力満載だったように感じます。
最後はとても素敵な細く、でもしっかりとした心に残る一音で終わりました。まるで、この音にマノンの思い出を乗せて、皆の心に焼き付けるかのよう。演奏が終わっても、耳の奥にはその音が残ったままでした。

最後の1音が消え、指揮者が腕を下ろし、ソリストが弓を持った腕を下ろしてから、会場に拍手が起こりました。この数秒間の無音がとても良かったです(もしかしたら終わりが分からなかっただけかもしれませんが…)。

何度か舞台を出入りした後、再びデュメイさんが椅子に座り、フィッシャーさんが指揮台に立ち、アンコールのモーツァルトvn協奏曲第3番第2楽章が始まりました!

デュメイさんがオーケストラでアンコールされるのはとても珍しい…(と思います)

モーツァルトは同じヴァイオリンなのに、さっきと違ってどうしてここまで細い音が出るの?! と言う位、美しく細い(でも芯はしっかりとした)音色が会場一杯に広がりました。
うん、デュメイさんはやはりモーツァルトが似合う… と思ったのは私だけではないはずです。聴き慣れないベルクを聴いて「素敵な演奏だったけど、でも今一分からなかった」と言う方も、このモーツァルトを聴けば納得です。モーツァルトまで聴けて大感激でした! 改めて、感謝です。

後半はストラヴィンスキーの「火の鳥」。これまで生演奏で何度も聴く機会があったのですが、曲そのものを覚えていないので、今一その世界に入りきれません。今日もそうでした…
面白さを一度知ってしまえば、ハマる曲だと分かっているのですが。
演奏後はとても大きな拍手が沸き起こり、「ブラボー」も連発。火の鳥の魅力をご存知の方は、大変楽しまれたようです。私も近いうちに、その興奮が味わえるように予習しようと改めて感じました。

1年ぶりのデュメイさんの音色。
非常に興奮してしまいました(笑) やっぱり、デュメイさんは素晴らしい演奏家です!
次は大阪で、メンデルスゾーンのダブルコンチェルト。
クライマックスで私、倒れてしまうのではないかと思う位、楽しみにしています。
とても良い曲ですし、デュメイさんの演奏なら尚更…うしし♪

楽しい「音楽の秋」の始まりとなりました。

2009年9月7日 記

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