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ジャン・ワン チェロリサイタル
【 2009年5月16日(土) at 浜離宮朝日ホール 】
ピアノ : 鈴木深喜


■ J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BMV1008
■ F.シューベルト : アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821
■ P.チャイコフスキー : 四季より 「10月:秋の歌」 Op.37b
■ C.グルック : メロディ
■ S.ラフマニノフ : ヴォカリーズ Op.34 No.14 嬰ハ短調
■ R.シューマン : 3つのロマンス Op.94
■ R.シューマン : アダージョとアレグロ Op.70

アンコール
■ サラサーテ : サパテアード
■ シューベルト : アヴェ・マリア
すごく素敵なコンサートで、またまた胸が一杯になってしまいました。
関東近辺で他にもリサイタルなどがあるなら行きたいと思って係りの方に聞いてみたのですが、今回はあとは九州でのコンサートしかないとのこと。
素晴らしい演奏家を知ることが出来た喜びの大きさに反比例して、今年はもうこれで終わりなのかという悲しみも大きくなって、複雑な気持ちでホールを後にしました(苦笑)
いい演奏は、1度と言わずに何度でも聴きたいです。でも、それは贅沢ですよね…

―― ジャン・ワンさん。
私にとっては、「デュメイさんファミリーの1人」と勝手に位置付けている憧れの存在です(笑)
オーギュスタン・デュメイさん、マリア・ジョアン・ピリスさんと一緒に収録しているブラームスのピアノトリオのアルバムが大好きで、あの2人と同化している、同化出来るチェロの音色って一体どのようなものなのだろう?!と、一度コンサートに足を運びたいと思っていました。ワンさんのチェロがすごいのですよ〜v このアルバム。
とはいうものの、チェロの世界はまだ良く分からなくて、ラ・フォル・ジュルネ以外はチェロのコンサートに行ったことが無く、今回のリサイタルは私にとっては冒険でした。

燕尾服を着た小柄なワンさんが舞台に登場!
舞台にはチェロの支えの棒(?)を置くための小さな穴が空いているのですね。今回初めて知りました。良く見てみると、中央・右手・左手くらいに3ヶ所確認できました(まだあるのかも)。
その穴にチェロを合わせて1曲目の無伴奏が始まりました。

バッハの無伴奏… なぜこんなに眠くなるのでしょうか(爆)
やはり私にはチェロの世界は早すぎるのかも…と自信を無くしかけました。チェロの音色って気持ちが良過ぎますよね〜

この曲はミクローシュ・ペレーニさんのDVDや先日ラ・フォル・ジュルネでアンリ・ドマルケットさんの演奏も聴き、知っている曲です。
ですが、まるで初めて聴いた曲かのよう…!
バッハの無伴奏って不思議ですね。ペレーニさん、ドマルケットさん、ワンさんと3人で全然違う世界を私たちに見せて下さるのですから。3人とも同じ曲とは思えませんでした。

私のお隣の方はジャン・ワンさんのファンの方のようでした(発するオーラが人とは全然違いました、爆)。なので、お隣の方にも申し訳なかったな…と思いつつ2曲目です。
アルペジオーネ・ソナタ。
ピリスさん&ゴムツィアコフさん、堤剛さん&小山実稚恵さんで以前訳が分からないまま聴いたことがあるのですが、今回は予習もしていきましたのでしっかりと聴くことが出来ました!

チェリストの左手が大変忙しく(上から下へと弦を激しく押さえて)、格好良い曲だったのですね!!! 感激でした。
特に、ジャン・ワンさんの指の使い方ってとても美しいと感じました(ピアノでミシェル・ダルベルト先生の指の使い方が美しいと感じるのと同じ感覚です)。上から軽く押さえたり、横からしっかり押さえたり…音の表現の仕方によって指の押さえ方を意識的に変えているのだと思うのですが、それが美しいのです。弦を弾く時の指先も綺麗。そして音も力強くはっきりとしていて、ポン・ポン・ポロロン… と、美しいのです〜v
そうしたら急にワンさんの音色に魅力を感じてしまって(無伴奏の時も素敵な音色ではあったのですが)、私のスイッチが入ってしまったと言いますか、ここからラストまでワンさんの世界をたっぷりと楽しんでしまいました(笑)
ワンさんの演奏も言葉のように感じました。独特のフレーズをお持ちの方でした。

後半は小品が並び、次々と演奏されて行きましたのであっという間でした!
もっと聴きたいな…と思った位です。

ネットラジオを聴いている際に、ルノー・カプソンさんがコンチェルトのアンコールとしてよく弾かれる曲があって、「聴いたことあるけど何の曲なのかな?!」と思っていたのですが、グルックの「メロディ」であったことが判明しました。すっきりしました…
チェロ版もヴァイオリン版と違って素敵ですね。チェロはもの悲しさが出ているような気がしましたし、ヴァイオリンの場合は若さ・可愛らしさが感じられました。全然イメージが違いますね。

シューマンの「3つのロマンス」はプログラムによりますと、ワンさんはこの第2曲が非常に好きなのだそうです。さらに『自分の最も好きな曲の1つ』ということですので、本当に好きなのですね(元々はオーボエとピアノの曲だそうです)。
この曲はデュメイさんもよく弾かれるのですよね〜v 第2曲が好きということは、ワンさんは心の優しい方なのかな…と想像します。そういう曲だと思うので。
「好き」という気持ちが強いからなのか、元々この曲がそうなのか、第2曲が盛大にフィニッシュとなったので一部の客席から拍手が起こりました。困ったような顔をして「まだ終わりではありませんよ…」と左手で拍手を制して第3曲へと続きました。

前半のアルペジオーネ・ソナタで私の気持ちはすでに「きゃ〜v」という感じでしたが、その気持ちはさらに盛りあがりました。

アンコールにです。
「今日のアンコールはサラサーテの…」

『 サパテアード 』

お隣のファンの方は「ああ、サパテアード…」とつぶやき、うっとりとしたような溜息を。
私は「何だ、それ?!」みたいな気持ちで。
>調べてみると以前テレビでヴァイオリンの演奏で聴いたことがあったのですが、記憶にありませんでした…

この曲。本当に溜息モノの曲でした。素晴らしかった…(感涙) ワンさんへのLove度がさらに急上昇ですよ。出来ればもう一度聴きたい、見たい、です。
サラサーテはツィゴイネルワイゼンだけではないのだな、と思いました。こういう超絶技巧な曲もあるのだということを知りました。

ワディム・レーピンさんが「演奏家のテクニックを見せるのはアンコールに1曲弾けば十分ですよ」みたいなことをインタビューで言われていたことを思い出しました(コンサートはテクニックを披露するのではなく精神性を表現するべきだ、というような内容だったのですが)。
ワンさんすごい…と。右手も左手も激しくて、最後の方では弓がスパッ!っと切れて(これもちょっと格好良かったりして、笑)、客席皆でこの曲を聴き入っていることを空気で感じました。
チェロはヴァイオリンと違って弦の長さが長いので、左手の移動が圧巻ですよね… チェロの魅力ってこういう部分では無いのかもしれませんが、自分なりに楽しむポイントを掴めてきたような気がします。同時にリズムを刻むピアノの鈴木さんも素敵でしたv
ワンさんの表現力はもちろんのこと、曲そのものもいいですね。サパテアードはスペイン舞曲だとか。演奏後の拍手の熱気が今までとは全然違いました。大満足♪
聴く魅力と見る魅力が両方備わった曲です。なので、もう一度生演奏に出会いたいです。

本当のラストは雰囲気をガラッと変えて、シューベルトのアヴェ・マリア。
グノー・カッチーニ・シューベルトのアヴェ・マリアの中で、只今私は一番好きなのがシューベルトです。久しぶりだったのと、チェロの演奏で聴くのは恐らく初めてだったのとで、感無量。これ以上の演奏は今日はもういらない、という感じでした。>わがままです。

コンサート終了後はサイン会があったので、喜んで(!)並びましたが、言いたいこと沢山あり過ぎて、でもそんな言葉を持ち合わせていないので、ワンさんを目の前にして何も言葉が出ませんでした… 前の方が「謝謝」と言っていたので、余計に頭が混乱してしまいました(笑) 演奏中はすごいお顔をして集中されて弾く方なのですが、演奏後は優しい笑顔で一杯の方でした(別人みたい)。

バッハの無伴奏のアルバムは2枚組みなのですが、皆さんにトレーをバリッとめくって2枚のDiskにサインを書いて下さいました。すごいサービス精神旺盛な方だなぁと思ったのですが、この話は続きがあります。

また、1人1人に「Thank you!」と握手して下さったのですが、手が赤ちゃんみたいに温かかったのです。きゃ〜っvvv って感じでした。そして、柔らかいし!
演奏後のためなのかもしれませんが、その暖かさにワンさんのお人柄が出ているようで、ますますLove度は上昇です(笑) よく手の暖かい人は心が冷たいと言いますが、それは嘘ですね、はい。

次に来日された時も、聴きに行こうと思いました。
来年日本フィルさんとドヴォルザークのコンチェルトをやるそうなので、それは行きます! きっとその前後にリサイタルもして下さいますよね。もっとワンさんの演奏を聴いてみたいです。

本日の演奏を思い出しながらドキドキして家に帰って(怪しいですが)、先程のバッハのアルバムを見ていますと、違うのですよ。1枚目と2枚目でサインが違うのです。

「JIAN WANG」 と 「王健」

会場では全然気が付きませんでした。漢字を持つ国の特権ですよね。当たり前のことなのかもしれませんが、私はこうやって使い分けてサインをいただいたことは初めてだったので、そのお気持ちにますます、きゃ〜vってなりました。あはは。
来年の楽しみが、また1つ増えました♪

2009年5月17日 記

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