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マリア・ジョアン・ピリス プロジェクト
in Tripony Hall 2009  第1夜 リサイタル

【 2009年4月22日(水) at すみだトリフォニーホール 】
チェロ:パヴェル・ゴムツィアコフ


■ F.ショパン / A.グラズノフ編:エチュード 第19番 嬰ハ短調 op.25-7 ※チェロとピアノ
■ F.ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 op.58
■ F.リスト:悲しみのゴンドラ S.134 ※チェロとピアノ
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■ F.ショパン:マズルカ ト短調 op.67-2
         マズルカ イ短調 op.67-4
■ F.ショパン:チェロとピアノのためのソナタ ト短調 op.65 ※チェロとピアノ
■ F.ショパン:マズルカ へ短調 op.68-4
本日の会場、すみだトリフォニーホールの入口はすごい人・人・人! でした。2年前のリサイタルを思い出します。あの時も、かなりの列を並ばないと入場出来なかったのです。
何でこんなに人が溢れるのでしょう… 不思議です。ホールに入る人数は決まっているはずなのに。

私にとって、本日の公演でピリスさんのショパンプログラムは最後です(次はベートーヴェンプロになります)。もう1回このプログラムで聴くことが出来たら、私はもっとショパンの世界に近づけただろう… と思ったコンサートでした。

先日の武蔵野文化会館の時とは、自分の耳が全然違います! あの強烈なピリスさんの世界を分からないなりにも一度体験していますから、家でアルバム聴いても耳に入ってくる感覚が違いますし、今日も大変感動し、ショパンの世界を楽しませていただきました。良かったです〜〜〜(涙)

本日の席は1列目! ピリスさんとゴムツィアコフさんがすぐ目の前にいらっしゃるという特等席でした。穴が開く位、ピリスさんのお姿を目に焼き付けてきました(笑)
ピリスさんは腰から上はリラックス、腰から下に重心を置いて弾いているように感じました。姿勢も綺麗です。小柄なので下半身全体の力を使ってペダルを踏まれていたので、迫力ありました。

舞台に、ピリスさんとゴムツィアコフさんが登場!
武蔵野の時のピリスさんの服装は私、全く覚えていないのですが、本日は(も?)大変ラフな感じでした。動きやすさ重視、そして何よりピリスさんらしいなと思えるような布地や色合い(具体的に表現できないのですが)。チェロの伴奏の時は楽譜を見るのですが、その際に掛ける眼鏡を洋服で毎回拭くのですよ♪ 大変マイペースな、ピリスさんのための時間が舞台の上では流れておりました。

チェリストが乗る正方形っぽい台の上には、チェロの軸(というのでしょうか、チェロを支える棒みたいなもの)を固定させるためのへこみのような印があるということを初めて知りました。
そこにチェロを合わせてゴムツィアコフさんはスタンバイ。1曲目が始まりました。

前回私はゴムツィアコフさんのチェロの音色は眠くなる…と書いてしまいましたが、目の前で聴く音色は大変魅力的でドラマティックで、本日はピリスさんのピアノの音色以上に惹かれてしまったかも…という位でした。素晴らしかったです!!!
とにかく、本日のゴムツィアコフさんの世界は全てドラマティックでした。こちらの心も「きゃ〜っ!」ってなってしまいそうで。演奏されているお姿を見ても、「この方は真面目な方なのだな…」と感じました。真面目な方が見せる感情だからこそ、余計にきゃ〜っ!なのですね、きっと。>勝手に言ってろって…ははは。

今日のピリスさんの出だしは、気持ちに音がついていっていないかなぁ…と少し感じたのですが(弾きづらそうと言いますか)、ソナタ第3番の第2楽章あたりからはピリスさんの世界がさく裂!

第3楽章が、第3楽章が、第3楽章が…(涙)

と、言葉にならない位に第3楽章は特に素晴らしかったです。
今この瞬間が永遠になったらいいのに、と思った位です。この世を超越していたような気がしました。演奏する技術が素晴らしいというのではなくて、その世界・精神性が素晴らしかったのです。
これは体験していただかないと、お伝えするのは難しいのですが… こういう世界に出会える時があるからコンサート会場へ足を運びたくなってしまうのですよね。CDだけでは満足出来ないのです!

続く第4楽章ももちろん引き込まれてしまいまして、この世界にゾクゾクしない人はいないだろうなぁと。ソナタ第3番っていい曲ですね。
(この第4楽章の盛り上がっている際に、席を立たれた人がいたのにはびっくりしましたが… よほどのご事情があったのでしょう。)

すごいなぁと思ったのは、この第3番で盛り上がった後で、すぐに気持ちを切り替えて(しばらく精神集中をされていましたが)リストの「悲しみのゴンドラ」を弾き始めたこと。
全然雰囲気の違う曲ですし、恐らく息が少し切れているところにこういう落ち着いたゆっくり目の曲を弾くのは大変なのではと。

前回強烈な睡魔に襲われた「悲しみのゴンドラ」でしたが、こんなに素敵な曲だったと分かり驚きました。ゴムツィアコフさんのチェロがゴンドラがゆっくりと前へ前へ進む光景を表現しているのだとしたら、ピリスさんのピアノはゴンドラによって左右に掻き分けられていく水面のゆらゆらした動きのようです。ピリスさんとゴムツィアコフさんの息はぴったりで(後半のチェロソナタはさらにすごかった!)、まるで親子のようでした。2人ともすごい集中力です。

後半はとにかくチェロソナタがすごくて(もう「すごい」としか言葉がありません、連発してしまいます)。
チェロの迫力と、御2人のピアノとチェロとの会話の素晴らしさに何も言うことなし、です。一心同体のようなあの会話は何なのでしょう…。
また、チェロソナタがこれほど魅力的な曲だったということにも気付かされましたし、今回ショパンプログラムを組んでいただいて、新しい世界を知ることが出来て良かったなぁと思いました。

本日も曲間の拍手は禁止だったのですが、このチェロソナタが終わったら拍手をした大バカ…いえいえ、兵が約1名おりました。完全に会場の雰囲気をぶち壊してくれました。

とはいうものの、最後のマズルカop.68-4はピリスさんもピアノの鍵盤に頭を近づけて1音1音を慈しむように弾かれている姿に心を打たれ、武蔵野で聴いた時とは全く違う気持ちでこの短い曲を受け止めることが出来ました。

ピリスさんは最後の挨拶は手を胸の前に組み、祈るような形でいつもされるのですが、それは会場の人へというよりも、天国の(?)ショパンへ感謝の気持ちを捧げているような気がしました。この姿にも目がウルウル来てしまいました。

大変素晴らしいコンサートでした。
本当、このプログラムをあと1回出来ることなら体験したいと思いました。
ピリスさん、ありがとうございました! ベートーヴェンプログラムも今から楽しみにしています〜v

2009年4月22日 記

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