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TDK オーケストラコンサート2008
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演
【 2008年11月23日(日) at ミューザ川崎シンフォニーホール 】
指揮:サイモン・ラトル / ソリスト歌手(Ms):マグダレナ・コジェナー


■ ハイドン:交響曲 第92番 ト長調 Hob.I:92 《オックスフォード》
■ マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌 Ms:マグダレナ・コジェナー
■ ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 《田園》
他のオーケストラと一体何が違うとここまでの音楽が生まれるのだろう… と思った位に素晴らしいコンサートでした。今までで聴いたオーケストラの中では一番圧倒されましたし、私好みの音色を放って下さいました。人気の秘密が分かりました。すごすぎて倒れそうなくらいです。

元々はミーハー気分で「ベルリンフィルの音色を一度聴いてみたい!」と考えていました。でも、マーラー5番の曲にハマった際に見たラトルさん&ベルリンフィルのDVD、ネットで見た今年のヨーロッパコンサートの映像(ラトルさん&レーピンさん&ベルリンフィルのコンビネーションが素晴らしかった!)などから段々本当に興味を持ち始めました。

ベルリンフィルは今年はブラームスを全曲演奏されるので本当はそちらを聴きたかったのですが、完全に行くことが出来るようにと日曜日の本日の公演を選びました。結果、色々な曲が楽しめるお得なプログラムで大満足でした♪>私としてはブラームスよりも良かったかも…

本日は満員御礼!
ミューザ川崎のホールは3階席までびっしりです。

開演時間の16:00になって舞台にハープが持ち込まれています。
そして、ヴァイオリンの皆様から順に舞台へ登場。客席の拍手も「待ってました!」と通常のコンサートと違うのですよね。時々そういう温かみを感じる拍手に出会うことが出来ますが、この日は一段とすごかったです。

最後にラトルさんが出てきた時が最高潮!
ラトルさん…ヤンソンスさんと同様、ごくごく普通の御方に感じました。「私は指揮者です!」のような威厳のあるオーラを放っているような方ではありませんでした。

ヤンソンスさんの場合、腕を振り上げた瞬間からとてつもないオーラを発して別人に生まれ変わります(私にはそう見えます)。ですがラトルさんの場合、指揮をされても普通に見えるのです。何も特別なことをしているようには見えません。なのに今目の前にある素晴らしい音の世界は、まぎれもなくラトルさんが操作している、作り出しているのだと言うことが分かるのですよね!
こ、この人(ラトルさんのこと)何なんですかっ…!!! と言いたくなる位、訳が分からず、でも無性にラトルさんに惹かれてしまい、目の前にある不思議な今まで体験したことのないような光景を受け入れることしか私には出来ませんでした。

1曲目はハイドンの交響曲第92番(92番ってすごいですね…)。
予習もしておらず初めて聴く曲です。オーケストラにしては小規模で演奏する曲のようです。
最初の弦の一音を聴いて、まずこのオーケストラは非常に私好みの音色を発信して下さるなぁ…ということが嬉しくなり、また室内楽かと思ってしまう位に各パートがとても良くまとまっておりました。
ロイヤルコンセルトヘボウは音色が大変美しく、でも格調高さも同時に伝わってくるので、きゃ〜っ!となりますが(大好きですが)、私などでは演奏に近寄りがたい印象もあります。ベルリンフィルの音色は誰にでもウェルカムといいますか、すんなりと自分もその演奏の世界に入って行くことが出来ました。極端な話、Tシャツにジーンズで演奏聴いても大丈夫なくらい、誰もが気軽に近づくことの音色だと思います。

ですので初めて聴く曲でもすごく楽しくて。音そのものが楽しいから! すごい〜と圧倒されつつも楽しむことが出来ました。
特に、管の素晴らしさに圧倒されました。上手過ぎます!
楽譜通りに弾くとこれが当たり前なのかもしれませんが、本当に上手い。第2・3楽章だったでしょうか…しばらく管の音色しか耳に入ってこなかった時間がありました。
途中でフルートとそのお隣にいる楽器…よく分からないのですがクラリネットでしょうか。この二つのハーモニーが超素晴らしい部分がありまして。
こんなの初めて! あまりの美しさに気絶するかと思いました。

今回、チケットが先行抽選予約で幸運にも取ることが出来ました。もちろんお席を選んでの購入では無かったのですが、会場に行ってみると1階席の後ろの方の列の中央の席でした。
正面にラトルさん。ラトルさんが少しずれるとフルートのパユさんが真正面に見える席です!
こんなにオーケストラ全体が見渡せる席に座ったのは初めてで、いつもは指揮者がお目当てですので(ははは)前の方の席で弦位しか見えないのですが、本日はむしろ管がよく見えます。
音も素晴らしく良く聴こえる席でして。最初、感動して涙が出てしまいました。
何でこんな良い席に座ることが出来たのだろう…と、逆に不安になりました。人の幸せの量って平等だと思っていますから、これは何かのご褒美か、それともこれから待ち受ける不幸に見合うだけの幸せかって。そんなことを考えるくらい、良い席であり良い音だったのです。
難を1つ言うとすれば、私の前の席のおじさまの頭がふらふら動くので、動くたびにラトルさんが見え隠れしてこちらも首が疲れたかな…位です。
もうこのような席では聴くことは出来ないと思います。今回はラッキーでした。

名前は聞くフルートのパユさん。パユさんの金のフルートはとてもよく目立ち、フルートが揺れるたびにドキドキしてしまいました。噂どおり、音が素晴らしいですね〜!!!
パユさんだけでなく、オーボエ、クラリネット、ホルン…細かい楽器の区別がつかないのですが、管の1人1人が本当に素晴らしかったです。ソロコンサートに行きたい位です。

ハイドンの曲が気に入ってしまったので、休憩中にラトルさん&ベルリンフィルのCDを購入し家で聴きましたが、全然違います! このCDは嘘をついているのではないかと思う位に、生演奏は何十倍も素晴らしかったです(もちろん、このCDも良いのですよ)。生はいつも見ているテレビとも違いました。
この空間を言葉で表現するのは到底不可能のなのですが、もうホール全体が日本ではないと言いますか、別世界に飛んで行ってしまったかのような空間になるのですよね。それも最初の一音から。

曲が終わった後に、凄すぎて拍手する手が動かなかったのも初めてでした。ラトルさん&ベルリンフィルの世界に圧倒されてしまい、そして胸がドキドキしてしまいまして。

2曲目はマーラー。
これも初めて聴く曲なのですが(今回、予習全然していません)。
メゾソプラノのコジェナーさんが登場! 美しすぎます!!!
確かピンクのドレスを着ていらしたと思うのですが、すごく素敵でv 声も美しかったです…
5つ目の歌…という表現でいいのでしょうか。「私はこの世に忘れられ」。
この世の声とは思えぬほど温かく優しい声で私たちを包んで下さり、再び私は涙しました。
この時はもうコジェナーさんの声しか耳に入らず、先ほど興奮したベルリンフィルのサウンドはそっちのけでした(爆) 素晴らしかったです。
会場、大拍手でした! ブラボーもたくさん飛びました。

休憩中の喫茶室、CD売り場はすごい人だかり。
コーヒーを購入しても、飲むためのテーブルにたどり着くことが出来ないし、どこにテーブルがあるかも見えない状態で(汗、その場で飲むしかないと言いますか…)

後半はベートーヴェンの田園。これも実はサビの部分しか覚えていない私です。
これが、前半の2曲をさらに上回るほどすごかったのです(涙)
ベートーヴェンは本当にここまでの世界をイメージして作曲したのかな…と思う位に、演奏を聴いていて色々な情景・感情が浮かび上がってくるような演奏。もしここまでのことを考えて作曲していたのだとしたら、他の演奏を聴いたら怒リまくると思います。私はここまで考えて曲は作られていないと思うのですよね。ベートーヴェンのイメージを遥かに超えた演奏だったのではと思いました。
といっても田園を生演奏で聴くのは今回が初めてなので、何の根拠もありませんが。

この「田園」とは自然描写ではなくて心の中の風景を描いたものだということですが、でも私は田園の世界が目の前に広がっていきました。しかもヨーロッパでいう田園と私のイメージする日本の田園とでもズレがあるかもしれませんが…

最初の1音が流れた瞬間から、ホール全体に田畑が広がってですね。そこから水車がコトコト回っているリズムが生まれてきたのですよ。そして私の目の前で田畑の緑、水車の茶色、小川の水色、空の青…など色も段々浮かび上がってきて。ゆったりと農業をする農民たち(ここが日本的な考え方なのかも、と思いました)。音楽のリズムに合わせながら皆が楽しく生活している様子が生まれてきたのです。「生きる」という自然のエネルギーみたいなものを音楽から感じました。

音楽というよりも舞台を見ているような… 音から私の中で1つの村が生まれてしまったのです。
オーケストラの皆様、体全体を使って一つにまとまって演奏をされていました。ラトルさんも体一杯に指揮されていて。皆、すごく格好良かったです!

第1楽章が終わった時、隣の男性が思わず「すごい…」とつぶやいたのです。私は楽章間で話をする人は好きではありませんが、でも今回だけは「本当、すごい…」と心の中で返事をしてしまった程(笑)
他と何が違うのでしょうか… 単に上手いだけではここまでの表現って出来ないと思うのですよね。どうしてこんなにすごいの?!って頭の中は疑問だらけです。

続く第2楽章では小川が流れているし、小鳥の鳴き声も完全にそこには鳥がいました(管が上手過ぎ)!田園の世界がさらにどんどん広がっていって。こちらのワクワク感も最高潮です。

リズム良く楽しいだけではなく、終盤に向けては加速し激しくなっていきました。
最終楽章の弦の皆様の腕の動きの統一感、その動きに比例して幸せに満ち溢れた音楽の盛り上がり! 胸がきゅ〜っとなってしまいました。
この曲は、その音の波が何度も繰り返されるのですよね!

このまま永遠に終わらないでほしい…

本気で思いました(笑) 幸せな時間でしたv
演奏が終わるとしばらく誰も拍手しなくて。いえ、出来なくて。
拍手するとこの時間が終わってしまうから。

でも、待ちきれない誰かさんが「パチ」と叩き始めてしまったのですよね…
これで、ベルリンフィルの公演も終わってしまいました。

カーテンコールも数回でオーケストラの皆様、舞台を去られました。
かえってこれ位さっぱりしている方が、私は好きかも…と。
(いつまで拍手すればいいのかなーと思う時もあるので。)

それでも拍手が鳴り止まず、ヤンソンスさんのように最後にもう一度ラトルさんが舞台に来て下さって、本当にこの日の公演が終了したのでした。

何度書いても書きたりませんが、本当に素晴らしい公演でした!

2008年11月24日 記

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