戻る

ミシェル・ダルベルト ピアノ・リサイタル
【 2008年11月21日(金) at すみだトリフォニーホール 大ホール 】

■ シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化師 作品26
■ シューマン:謝肉祭 作品9
■ ドビュッシー:「映像」より
  〈「映像」第2集より〉
   そして月は荒寺に落ちる / 葉末を渡る鐘の音
  〈「映像」第1集より〉
   ラモーを讃えて / 水の反映
■ ラヴェル:「夜のガスパール」 朗読:ミシェル・ダルベルト

アンコール
■ ドビュッシー:子供の領分より グラドゥスアドパルナッムス博士
■ シューマン:子供の情景より トロイメライ
■ シューベルト:即興曲 第2番 D.899 変ホ長調
■ ショパン:前奏曲 op.45 嬰ハ短調
LFJの大興奮から約半年… ダルベルト先生、待っていました!!!
前日は同じすみだトリフォ二―の小ホールでマスタークラスがあり、18:00〜21:20までの密度の濃いご指導だったと聴いております。私は残念ながら行くことが出来ませんでした(涙、元々は行くつもりでしたが) その分、今日のコンサートを楽しまなくては♪ なんて。

そう気合いを入れておきながら、ホールに着いたのは開演10分前。
ギリギリです。間に合って良かった…

本日はNHKの撮影が入っておりまして、1月7日のクラシック倶楽部での放送だそうです。…たぶん、最初はハイビジョンクラシック倶楽部の方でしょうね。楽しみですね♪
デュメイさんにヤンソンスさんにダルベルト先生…今年は撮影が沢山あって嬉しいです(感涙)

入口には「本日のプログラムの『夜のガスパール』は演奏者本人が朗読いたします」みたいな(うろ覚えですが)貼り紙がしてあり、演奏前から「まぁ素敵…vvv」と。

クロークの前でCDが販売されていましたのでコートを預けたついでに覗いて見ますと、開演前からかなりアルバムは売れている模様…(CDの積み上げられている高さの差で分かります)

といいますのも、机の中央に『演奏後にサイン会があります』の紙があったからなのですね!
>一応アルバム購入者が対象ということでしたが、実際は誰でもOKのようでした。
先生がサイン会だなんて、全然想像がつかないです。意外でした。
LFJの私の「怖い・気難しいダルベルト先生」という記憶からはとてもサイン会なんて…(あれはこちらのファン側>ファンと呼べるものではありませんが! の態度が悪かったということもありますが)
ものすごいピリピリムードのサイン会も嫌だなぁなんて、色々なことを考えてしまいました(笑)

さて、大きな拍手の中 先生が舞台に登場!
ピアノの前に座るや否や、すぐに1曲目を弾き始めました。ピアノに両手をついて、「これから一緒に頑張ろうね」という いつものピアノとの対話はありませんでした。舞台の横で、もうイメージ作りを終えられていたのですね。(そういえば、シューベルトの19番の時もいきなり弾かれたのでしたっけ…)

きゃ〜っ!!!
先生の演奏に対する集中力は、5月で感じた感動そのままです!

…でも、音が。
私は今回 視覚よりも音重視ということで中央付近のお席を選んだのですが、音がほんわか広がってしまいまして。先生の魅力って(私の場合)、一音一音の輝きだと思うのです。その一つ一つの表現の変化に私はドキドキしたりワクワクしたり、時には良過ぎて翌日寝込んだり(笑)5月はしたのです。
それがほわ〜んとしてしまって(といっても、演奏は素晴らしいのですよ!細かい部分の話を言っています)、もったいないなぁと思いました。こちら側まで全部が伝わりきれずに、先生に申し訳ない気がしました。先生のメッセージはこんなものではないはずです。
先生の演奏を聴くときは、何も考えずに前列を選ぼうと悟りました。(ここはオーケストラ用のホールなのかしら。今までハズレの席は無かったのに。)

次の謝肉祭op.9 は数日前から即席ながらもスーパーピアノレッスンの録画を見て頭に入れ込んだ曲。生徒さんとのやり取りも私好みで、番組そのものを楽しむだけでなく、この曲も好きになってしまいました。特にラストの「フィリスティンたちを討つダヴィッド同盟の行進」! すごく楽しみでした♪

演奏も期待通り、いえ、期待以上で、聴いていてゾクゾクしてしまいました。
レッスンではああいう説明していたよね…とか、ここは中指使って弾いた方が音が出るって言っていたよね…など、実際の目で確認です。
色々な表現が少しずつ含まれた、最後まで聴いていて飽きることのない曲ですよね。心の中で先生の演奏と一緒に歌って、自分のテンションがかなり高くなった時に演奏が終わりました。
休憩時間中はずっとダヴィッド同盟の行進部分を心で歌っていました(怪しいですが…)。

後半はドビュッシー。中でも私は「水の反映」が好きです。
以前聴いた菊池裕介さんの水の反映がとても良くて。菊池さんの演奏は、光に反射してキラキラしている水面に私たちがプカプカ浮かんでいる感じ。聴いていて、とても気持ちが良いし癒されます。

ダルベルト先生の水の反映は、エネルギッシュなのですよね。
先生の演奏は水そのものなんです。水がゆらゆら揺れるためのエネルギーを演奏で表現しているように私は感じるのです。上手く説明が出来ないのですが、イメージとか見た目とかで理解するのではなく、理屈抜きに心で感じる、吸収できてしまうような世界…でした。
アルバム聴いていた時は そこまで感じ取ることが出来なくて、先生のドビュッシーは独特だな…と驚いていたのですが、生で演奏を聴くと納得です。独特というよりも、先生にとってはきっと当たり前の世界なのだと思いました。そして、それを私は少し共感出来たような気がして嬉しかったです。
菊池さんも先生も どちらも確かにこれは「水の反映」で、でもこれらはイコールではなくて。演奏家によって色々な表現方法があるのだなぁと、答は一つではないのだと勉強になりました。

そしてラストが夜のガスパール。
先生自らベルトランの詩を朗読されるとは思ってもいませんでした(爆)
Webの先生の映像では女優さんらしき人が横で朗読されているものがありますが…
フランス語が分かりませんので朗読が上手いのか上手くないのかは分かりかねるのですが、演奏の流れ的には悪くなかったと思います(失礼な言い方かもしれませんが)。

先生にとってはこの曲とベルトランの詩とは切っても切れないものなのかな…と。確かに、あの詩集は素晴らしいと思います。夢中になって読んでしまいました(日本語訳ですが)。

演奏はオンディーヌ、絞首台、スカルボ…全部良かったです!!!>私の言葉では表現不可能です!
個人的に元々好きなのはオンディーヌ、迫力から言ったらスカルボが素晴らしかったですが、絞首台が一番印象に残りました。薄暗く、静まり返った荒野に絞首台があって(詩では確かここにスカルボも登場するのでしたよね…うろ覚えですが)、その不気味さというか淡々とした時間の流れのようなものがすごく伝わってきて。注目していなかった部分だけに、惹かれてしまいました。
スカルボは先生自体がスカルボに見えてきて…ははは。手の動きも人間業ではない位すごいものでしたし、演奏後は大拍手でした。

4曲のアンコール、全てが素晴らしく(ドビュッシー以外は私は全部先生が「シューベルト」と言っているように聞こえました、汗)、これだけ弾くというのは観客のためというよりも、先生は本当に演奏することが大好きな方なのだと感じました。そんな先生のお姿・気持ちに私たちは惹かれるのですよね。

2曲目を弾き終わって先生が舞台を去ろうとした時に、女性が舞台に走ってきて花束を渡しました! 先生もそれを受取ると、舞台を去らずにピアノに戻り、花束をピアノの上に置いてまた1曲弾かれたのですよっ!!!
… 何て素敵な方なのでしょう。さすがフランス人…ってそれは関係ないですね。
花束を渡した女性も良かったですよね! こちらまで嬉しくなってしまいました。良くやった!って。
ピアニストさんの場合、ピアノの上に花束を置いて下さるからいいですよね。すごく絵になります。
マリア・ジョアン・ピリスさんのリサイタルの時も男性が可愛らしい小さな花束をピリスさんに渡しまして、やはりピアノの上に置いてアンコールを弾いて下さったのでした。その光景がとても素敵で(男性が渡した花束のチョイスが良かった)、今でも目に焼き付いております。

4曲弾いた後も拍手が鳴り止まず、最後は会場全体の電気がついて終わりとなりました。

この時21:40は過ぎていたと思います。
その後にサイン会です! 当然ですが、長蛇の列!!!
私はクロークに服を取りに行ったせいもあり、最後の方です(涙)

サイン会が始まっても最初全然列が進まなかったのですが、周りの方の話ですとファンの方がプレゼント渡したりお写真を撮ったりされているので、進まないとのこと(笑)

そうなのです。ダルベルト先生は女性に大変人気のある方で(男性ファンももちろんいらっしゃいます)、先生の周りにはカメラを持った女性が沢山いらして! サインをいただくこちらも、なぜかその目線に緊張する位でした。ここまで人気のある方とは想像していませんでした。
本当にすごいのですよ。デュメイさんとは大違い…
(正直、ガーーーン!!!という気持ちでした。この違いに、涙)

最初は写真OKだったのですが、長蛇の列過ぎることから途中から「サイン1点のみ」となったようです。先生は私の前の人の時に、「あとどれ位で終わるのだろう…」と列の終わりを確認されていました(汗、すいません疲れていらっしゃる中…という気持ちでした)

私は元々 ダメ元で楽屋口へ行こうと思っていましたので、先生のアルバムの中で一番お気に入りのLPジャケットを持ってきていました(でも一応CDも購入しました)。自称ジャケット評論家としては、一押しのLPです♪ 先生のアルバムのジャケットって微妙なものが多いので、どうしてもこれにサインをいただきたかったのです。

LPを渡すのに(というか、袋から出すのさえも)緊張したのですが、スタッフの方が「格好いい…」と思わずつぶやいて下さって、「でしょ、でしょ〜っ!!!」と、心の中で固い握手をしました。大好きなのです、これ。写真もデザインも。

先生は見るなり「うわっ、めっちゃ若い!」と照れていらしてですね。でも、いつ頃のお写真か覚えていらっしゃるのですよ。すごいです(1981年、26歳です)。
ジャケットを眺めながら両腕組んで「う〜ん」と何度も考え込まれているお姿を見て、先生の人間味溢れる部分を感じたのでした。もっと怖い人かと思っていたのですが(どんなイメージだ、汗)、そんなことはなく優しく素敵な方でした。

演奏もサイン会も、とても楽しい一時でした♪ お疲れの中、ありがとうございました。
来年は東京文化会館小ホールでのリサイタルだそうです。
また聴きに行けるといいなぁと思いながらホールを後にしました。


サインの後に!!が
2008の後の(!!)は、その時の先生のお気持ち(笑)
( )で括るところが先生らしいユーモアと言いますか…
まるで幼稚園児にテストの採点をつけているような優しい雰囲気でした。

2008年11月21日 記

▲上へ
本嫌いさんの読書感想文〜カラマーゾフの兄弟はいつも貸出中?!
YUKIKOGUMA   All Rights Reserved