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姫路国際音楽祭 Le Pont 2008
書写山圓教寺三つの堂
【 2008年10月18日(土) at 書写山圓教寺三つの堂 】

■ W.A.モーツァルト : 弦楽五重奏曲第4番 ト短調 K.516
  樫本大進(vn)、ナタリア・ロメイコ(Vn)、ギャレス・ルペ(Va)、川本嘉子(Va)、趙静(Vc)

■ F.シューベルト : 弦楽五重奏曲 ハ長調 作品163 D.956
  アレクサンダー・シトコヴェツキー(Vn)、樫本大進(vn)、川本嘉子(Va)
  趙静(Vc)、クラウディオ・ボホルケス(Vc)
サッシャ(アレクサンダー・シトコヴェツキーさん)の音色が聴きたくて、姫路国際音楽祭に行ってまいりました(東京に来て下さらないので)♪
この音楽祭はヴァイオリニストの樫本大進さんが音楽監督をされている国際音楽祭です。
(何を持って「国際」なのかが私には分からないのですが… 演奏者たちが国際色豊かという意味なのかもしれません)

つ、着いた〜っ!!!
たくさん汗を掻きながら 本日の会場 圓教寺・三つのお堂にたどり着きました。
この日は大変暑い日でした。日傘か帽子、サングラスも持ってくれば良かった…と後悔(涙)
当然ですが、渡辺謙さんやトム・クルーズの影も形もありませんでした。このお堂。映画 ラスト・サムライのロケ地だったのだそうです! この映画は当時 3回観に行きましたよ、私♪>大好きでした〜
言われてみれば、謙さんが座っていたのってこんな感じのお寺だったっけ…と、後日DVDを確認しなくちゃと思いました。

姫路駅からバスで約30分、ロープウェイに乗ること数分、その後約20分の山登りです!!!
場所の把握をしていなかったので、黒い靴は真白・傷だらけに…(汗) ブーツやヒールで来られた方や楽器(ヴァイオリンでしょうか)を持って来られた方は、さらに大変そうでした。
よくここで開催する企画が通ったよなぁ…と驚きです。だって、会場にたどり着くまでが大変なんですもの(笑) 私はまだ歩けますが、お年を召した方とか大丈夫かなぁなんて。行きたくても来れない方もいらっしゃるのではと思いました。個人的にはすごくワクワクして楽しかったのですが!

全く時間配分が出来なかったので(想像も出来ませんでした)、私は開場の約40分前ほどに到着。その頃から受付に人が並び始め、本日は自由席だったのですが 会場の都合で中央前から順に座席の券が配られました。そして開演時間(15:00)までひとまず解散です。

開演時間の15:00が近づいてきました。まだまだ暑く、座席が並んでいる場所はさらに日差しがすごくて! とても座席に着く気になれず、ぎりぎりまで日陰で待っていました。
本日の公演はチケットが完売…完売以前に抽選でした。
客層は私が見た感じですと、樫本大進さんのファンの方(東京からもいらしていましたよ!)、そして地元の方々…特に、この音楽祭に携わっている方たちのお知り合いと思われる方が多かったように思います。入口では挨拶の嵐(笑) そして皆様、リュックを背負って 帽子かぶって 山登り対策バッチリでした。この地形を分かっていらっしゃるのですね…
姫路の市長さんもいらしていて、周りの皆様が挨拶をされていました。私など住んでいる区長さんのお顔も知らないのに、すごい。地域のつながりが出来ているのだなぁと。皆様、市長さんを尊敬されているということがよく分かりましたし、市長さんが「私も大進くんの音楽が大好きなのですよ!」とお話しされているのも聴こえてきましたし、地域の力で創りあげている音楽祭なのだと感じました。皆様、樫本さんのことを応援されているようでした。樫本さんは素敵な街がご出身なのですね!

お堂の前の特設ステージのような場所でしたが(客席はパイプ椅子です)、横から演奏者の皆様が登場!

何と言いますか… こんなこと書いてしまっていいのか分かりませんが、皆様演奏前からすでに疲れ切っているような表情に感じて(汗、いつものような華々しいホールでないからでしょうか。スポットライトもそんなに当たりませんし) 特にヴィオラの川本さんとギャレスさん。川本さんの髪はすごく乾燥していてバサバサになっている感じがしましたし(風も吹いていますし)、ギャレスさんもどうしてこんな表情なの…みたいな。すごく渋い表情なのです。とにかく、通常のホールでのコンサートとは空気が違いました。

演奏中どうしてなのだろう…と考えてみましたが、もしかしたら舞台は日差しが強すぎるため(太陽は客席の後ろ側にありました。つまり、演奏者にとっては正面)中央に座られた川本さんとギャレスさんは眩しかったのかもしれません。楽章間ごとにそれぞれ苦笑いしながら何か会話をされていたので、いつもとは勝手が違ったのかも…なんて思いました。

1曲目のモーツァルト。
恐らく私は初めて聴く曲だったと思います(記憶にありません)。

樫本さんのモーツァルトっていいですね♪
私が初めて樫本さんの生演奏を聴いたのがモーツァルトのアダージョと協奏曲第4番でした。この時も好印象だったのですが、本日のモーツァルトも楽しませていただきました。

チェロとヴィオラのリズムに乗って、ヴァイオリンの樫本さんとロメイコさんが気持ちよく旋律を奏でます。ロメイコさん(女性)は樫本さんに頻繁にアイコンタクトを行い(でも樫本さんは半分くらいしか気づいていませんでした)他の演奏者にも笑顔を振り撒き、とても素敵な方でした。

趙静さんも名前はよくお見かけしましたが、生演奏を聴くのは今回が初めて。どんな表情をしても可愛らしく美しい方でした。チェロの音色もなかなか良かったのではないかと思います(チェロについてはよく分かりませんが…)。とにかく「華」がある方ですね。
趙静さんは2楽章だったかで弱音器を付けられたのですが、外すのを忘れて次の楽章へ行こうとされていたので「ちょっと、ちょっと!」とギャレスさんに呼び止められる場面もあり、第3楽章だったかでロメイコさんとわざと真剣な表情をして見つめ合って弾いたりして(笑)皆さん、仲がいいのだなぁと思いました。

川本さんは最初は表情の件からも、何か怒っていらっしゃるのかな…みたいな雰囲気もあったのですが(5人の中で1人だけ浮いているような気もして)、それは大きな間違えでした。楽章が進むにつれて、ものすごく熱くヴィオラを左右に振りながら弾かれていましたし、時々ギャレスさんに楽譜の位置を指さして教えていたりして、皆のお母さん的存在なのかな…なんて勝手に思いました。無表情なのに演奏に対して誰よりも熱いものを感じました。そして、演奏が終わった後の笑顔が一番素敵だったのも川本さんでした!

5人の息はぴったりで、素晴らしい演奏だったと思います。
ですが、野外なもので音が外へ外へと行ってしまい、ハーモニーというのもは感じられませんでした。1+1が3とか5とかになりませんでした。1人1人の生音は伝わってくるのですが… これをホールで聴いたら、どれだけ幸せな気持ちでキャーキャー言ってしまったことか(笑)
でも、これは音の質がどうこうというよりも音楽を楽しむお祭りなので! 滅多に経験出来ないこの環境で聴くことが貴重なんだろうなぁと思いました。

休憩をはさんで後半はお目当てのサッシャの登場です!
休憩時間に裏のお手洗いに行こうと山道を歩いていたら、向こうからズンズンと元気よく歩いて来る青年がいました。そうです、サッシャでした! あの歩き方を見ただけで、今日は絶好調だなと伝わって来ました(笑)これからのシューベルトがますます楽しみに…v

シューベルトの弦楽五重奏では サッシャのことしか見ていませんでしたので(爆)、他の方も熱演だったと思うのですが 状況がさっぱり分かりません…すいません。

演奏される皆さんがステージ上の座席に着きますと、まず目についたのがサッシャの譜台と椅子の間隔…他の方に比べて、ダントツに幅がありました。>それだけ激しい演奏をされるからなのでしょうが(苦笑)
趙静さんだったと思うのですが「もっと皆で近寄りましょうよ!」みたいなことを言われていて(少し内側に寄りました)、皆が一斉に一番離れているサッシャを見たのがおかしかったです。
サッシャも「…? 寄るの?」みたいな感じで(笑)

そして楽しみにしていた弦楽五重奏が始まりました。
最初の出だしは皆が一つにまとまっている感じがして、あ、素敵だなぁ…と。

ですが、サッシャの音がめちゃくちゃ大きくて!!! あはは。
前列に座っていたということもあるのですが、ガンガンに耳に響いてきて。私はサッシャがお目当てですので問題ないのですが、他の方…特に樫本さんのファンの方とか大丈夫かなぁと心配になりました。樫本さんのヴァイオリンが全然聴こえないのです!
音が外へ出てしまう環境を考えるとサッシャ位のボリューム出した方が後ろの方などはいいのかなとも思うのですが、5人のバランスを考えると大きすぎる気がしました。サッシャは若いなぁ…と若さのせいにしたりして(笑) サッシャの演奏って若々しくてエネルギーが満ち溢れているのですよ!
それに音がいいから、多少…どころではなく かなり音が大きくても いいですよね?!>皆さん。
サッシャと樫本さんとでは、スタイルが全然違うのだなぁと感じました。御2人はヨーロッパなどで何度も一緒に演奏されているようですし、息も合っているはずだと思うのですが。

前回アンサンブル・ラロの演奏でこの曲を聴いた時は、サッシャは2ndでした。今回は1st!
サッシャが主旋律を弾くと、同じ曲でありながら全然雰囲気が変わるのですね。
ずっとサッシャの音色で演奏が聴けて、嬉しかったです。ちょっと駆け足かなぁとも思ったのですが、でも良かったです。

第2楽章。今でもこの光景を思い出すだけで、私は幸せになれます。適切な表現をすることが出来ないのが悔しいのですが!
サッシャのヴァイオリンとチェロのピチカート、そして他の方々の素敵なバックミュージック(?)で、何とも言えない素晴らしい世界が繰り広げられました。
サッシャの一音一音大切に弦を弾いていく指も素敵でした♪
優しくて温かくて、そして大きくて… 私は5人の中央に宇宙が見えました。
満点の星空の下でこの演奏を聴くことが出来たら、どんなに素敵だろうかとも思いました。

この曲はシューベルト最後の室内楽曲。このあと最後のピアノソナタ19・20・21番(これも素晴らしいですよね!)を書いてこの世を去ってしまいました。
この部分を書いた時のシューベルトって、人間の域を超えていたのではないか…なんて思いました。この世界、卓越していますよね! 本当に素晴らしかった。第2楽章がこんなに素敵だったなんて今まで気が付きませんでした(前回は意識が朦朧としていた記憶があります)。

第2楽章を弾き終わった後の「ふぅ」というサッシャの溜息!
もちろん全楽章集中していたのだとは思いますが、特に力を入れて弾かれていたのではないかな・・・なんて思います。良かったですよ〜!!!
この集中度合いは、初めてサッシャの演奏に触れた川畠成道さんとのバッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲を思い出してしまいました。あの時もお顔を真っ赤にしてこんな感じだったなぁと。

その後、サッシャがおもむろに楽譜の右端を大きく折ったので、どうしたのかな? と思ったのですが、続く第3楽章では樫本さんが急いでサッシャの楽譜をめくる場面がありました(この時の樫本さん格好良かったです)。樫本さんのための折り目だったのね、と。

第3楽章は元々良い曲ですよね! 私も大好きです。
今回は皆様 1音1音の切れが良くて、「男っぽいなぁ!」という演奏でした(女性もいましたが)。
Prestoが終わると、会場の一部で拍手が…(気持ち分かります)。
そして、第3楽章が終わると 演奏者も本当の終わりのように手を高く上にあげて終わらせたので、大きな拍手が起こりました。でもさらに素敵な第4楽章が残っているのですよね(ふふふ)

もうこの頃になると16時をまわっていたのでしょうか…
開演時の暑さとは逆に、今度は寒くなってきました。あたりも暗くなってきて。
サッシャが一生懸命ヴァイオリンを奏でると、それに比例するように鳥たち(スズメかな?)も「チュン、チュン」とだんだん鳴き声が大きくなっていって、それも面白かったです。
フランスのラ・ロック・ダンテロン音楽祭はセミの鳴き声がBGMに付きますよね。それを思い出しました。野外ならではの醍醐味です! 顔の周りに虫が飛んできたりもしましたよ。

少しチューニングをされてからの第4楽章は、最後のプレゼントかと思う位に サッシャの音色が大爆発! サッシャのリードする旋律は良かったです。
そして最後の最後で皆様盛り上がって(この部分が好きなのです〜v)、こちらもワクワクしてフィニッシュ! 会場は大きな拍手!!!

ヴィオラの川本さんは早々に「アンコールはしませんよ」の合図だと思うのですが 椅子を横にして舞台を去り…(汗)、でも拍手に応えて何度も皆さん舞台に戻ってきて下さいました。

とても楽しいコンサートでした。
サッシャも良かった〜! 姫路に足を運んで良かったです(笑)

帰りはまた元の山道を約20分歩き、ロープウェーに乗るのに数十分待ち(ロープウェーはぎゅうぎゅうだったのですが、ヴィオラの川本さんも乗っていらっしゃいました♪)、降りてから皆さんに付いて行ったら駐車場に行ってしまい(車で来られた方が多かったです)、暗くなっている中バス停を探すのに少しパニックになりながらも、無事に姫路駅まで帰ることが出来ました。
バスの中では山登りの疲れが出たのか、爆睡してしまいました…

東京から足を運ぶには大変ですが、こうやって地域密着型の音楽祭が開かれるというのは素敵なことですね。来年も 再来年も ずっと続いて、また規模も大きくなっていくといいなぁと思いました。

2008年10月25日 記

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