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都響 第667回定期演奏会Bシリーズ
【 2008年9月26日(金) at サントリーホール 】
 指揮:マーク・ストリンガー ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ 東京都交響楽団


■ ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
■ ブルックナー:交響曲第6番 イ長調(ハース版)
サントリーホールの舞台の中央に立つデュメイさんの姿&演奏に大感動したこの公演。
家に帰ってきたら、これで東京公演最後なんだ…という現実と、この日デュメイさんが私たちにプレゼントしてくれた曲の深さを思い出したら、悲しくなってしまいました。寂しさと感動とが混ざってしまって、とにかく悲しくて仕方がないのです。
月曜日の小山さんとのリサイタルから始まって、木曜日・金曜日のベートーヴェンのコンチェルト。どれも全て素晴らしかったです。デュメイさんの音楽に出会えてよかった! そして、今年 生演奏を聴くことが出来て良かった! とにかく、私は幸せ者です。

あまりにも悲しくて落ち込んでしまったので、ひとまずゆっくり寝て一息入れましたので 冷静に昨日を振り返ってみたいと思います。といっても デュメイさんの演奏については私の持ち合わせた語彙では到底表現できない世界ですし まだ頭が混乱していますので、私の気持ちだけ、ということで(笑)

前日同様、指揮者のマーク・ストリンガーさんと一緒に舞台に登場したデュメイさん(上下黒のスーツです)。サントリーホールは私には「サントリーホール=すごい」という思い込みがあるので、その中央に立つデュメイさんの姿は一層輝いて見えますv

デュメイさんと客席の私達とのベートーヴェンの旅が始まりました。
デュメイさんは再び がっちりオケの方を向いて(客席には背中を向けて)、一緒にこの曲の中に入り込んでいるようでした。入り込んでいる…というよりも、指揮者以上に指揮をしている感じ(手は動かしませんけれども)。オケの隅々まで見渡しています。どう見ても指揮者が二人いるようにしか見えないよな…と再度思いました。デュメイさんの背中はとても大きいですし、存在感&迫力は指揮者のストリンガーさんよりも断然に上です! というか、それ以前に私の視界にはストリンガーさんは入っていませんでした(爆) デュメイさん100%…あはは。

途中からまたオケと一緒に音ならし(客席に背を向けたままです)。私はきっと、今後この冒頭の部分を聴くたびに このデュメイさんの姿を思い出すことでしょう。昨日よりも多目に弾いていました。少し激し目な部分とか、軽々と弾かれる姿も格好良かったです(笑)

そして、本来のソリストが弾き始める冒頭の部分…

!!!!!

…思わず、息が止まってしまう位に美しかったです。
この瞬間の気持ちをうまく表現する言葉が見当たりません。
デュメイさんの弾き方なのか、ホールの響きなのか、私の座った席の関係なのか。理由は分かりませんけれども、前日の東京文化会館の音(この日も大変な美音を響かせていました)よりもさらに美しく、丸みがあるように感じました。

「女神」って感じ… ちょっと違うなぁ。これが「神に捧げる音」なのかなぁ。
次々にヴァイオリンからこれでもかっ!って位に生み出される音。
聴衆はこれまで数分くらい待ったソリストのヴァイオリンの音色を、ここでたっぶりと堪能できるのですよね。ベートーヴェンはこの出だしをとても素敵に作られたなぁと。
36歳のベートーヴェンの純粋な心の部分をデュメイさんが音で代弁しているような気がしました。ベートヴェンについては映画などで見た位の知識しか無いので違うのかもしれませんが、こんな感じの人だったのかな、と。

とにかく、演奏家のデュメイさんというよりもベートーヴェンに成りきって弾いているように感じたのは前日と同じです。昨日よりも音の揺らし方とか少しだけデュメイさんらしさは見えたかも、とも思いましたが ずっと険しい表情で曲に入り込んで弾き続けられました。
都響もこの曲の重みのある部分を、よく表現出来ていたと思います。

そしてデュメイさんのビブラート(トリルですか?←違いが分からず)、美しいです!
デュメイさんの顔は怖いけど、でもこちらの顔は思わず緩んでしまいます。
派手なパフォーマンスなど一切ないのに、どうして私たちはこの音色に惹きつけられてしまうのでしょう。この曲が大好きなんだということが、すごく伝わってくるのですよね。

私の席からはオケの音もデュメイさんの音も、とても心地よく聴こえて 全体的に素晴らしい演奏を聴くことが出来ました。

デュメイさんの汗拭き用&ヴァイオリン拭き用の白いハンドタオルが この日も指揮台の背もたれ部分のパイプに置かれまして、途中、ストリンガーさんが指揮をしながらそのハンドタオルを落としてしまいました(何てことを!)。その後デュメイさんが拾って使っていましたが… でも、前日ほどデュメイさんは汗やヴァイオリンを拭かれていませんでした。

第一楽章のカデンツァからオケにつなげていく部分(だったと思うのですが)、オケのピチカートに合わせて伸び伸びと弾かれるデュメイさんのお姿も、感涙モノでした。
何度も言いますが お顔は険しいのに、その舞台上の雰囲気といったら! お花畑にいるような、優しい世界に包まれておりました。そして美しい。他の演奏家の時のこの部分の演奏は覚えていないのですが、今回はとても印象に残りました。
で、盛り上がって デュメイさんが右手を高く上にあげた決めポーズで一楽章フィニッシュ! すごくデュメイさんも曲に入り込んでいるような気がしました。

第二楽章は夢の世界。デュメイさんの美音炸裂! 都響の方たちも良かったです。
第一楽章同様、こちらもオケのピチカートとの演奏は大変心温まるものでした。
…もう、デュメイさんに釘付けですよ(笑)
あまりに気持ちが良いからか私の席の周りの方々は、別世界へ行かれてしまったようでした。気持ち、良く分かります。本当に心休まる音色でしたから。

で、少し私の周りは中だるみしてしまったかなぁ…という雰囲気もあったのですが(私の気のせいかもしれませんが)、第三楽章に切り替わると 本来の(?)デュメイさんらしさが少し出てきたようで。指揮者の前に行って、必死にアピール! 第二楽章と第三楽章の場面の切り替えを、上手くリードされているような気がしました。(こういう時のデュメイさん、私 大好きなのですv)
前回来日された際のメンデルスゾーンの最終楽章を思い出しました。

第三楽章の最後の最後で、ソリストが独奏するのもこの曲のすごい所ですよね(よく指が動くなぁと、汗)。再度 デュメイさんの音色を堪能し、オケと盛り上がってフィニッシュ!
この第三楽章を、そのまま家に持って帰りたいくらいでした。

良かった…
やっぱりデュメイさんは素晴らしいヴァイオリニストだなぁと、何度目になるか分かりませんが再確認しました。演奏聴くたびに深みにはまり、尊敬の念が深まります。

会場も、当然大拍手。デュメイさん拍手が止まないので何度も舞台に引き戻され 、最後はヴァイオリン無しで舞台に登場(笑)
こんなに素敵な素敵な演奏を ありがとうござました、という気分でした。

今回の東京三公演。どの演奏もそれぞれ素敵でした。
きっと私はこれらの演奏を忘れることはないでしょう。
デュメイさんは すでに巨匠と呼ばれる方なのに、それでも日々ヴァイオリンと曲と向かい合い、進化され続けているのだということが、今回とてもよく分かりました。
二年前よりも さらに魅力溢れる演奏に出会うことが出来て、こちらもテンション高くなりすぎて疲れました。コンサートが始まる前の数時間のドキドキ感といったら(笑)
また、ぜひ東京(関東)で演奏していただきたいです。お待ちしています!

※ ベトコン 二公演については思うところが沢山あり、いつも以上に文章がなっていないことをご了承ください(汗) なんか、だめです…

2008年9月27日 記

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