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都響 第666回定期演奏会Aシリーズ
【 2008年9月25日(木) at 東京文化会館 大ホール 】
 指揮:マーク・ストリンガー ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ 東京都交響楽団


■ ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
■ ブルックナー:交響曲第6番 イ長調(ハース版)
22日のデュメイさん&小山さんのリサイタルの興奮が冷めやらぬ中、本日も東京文化会館大ホールへ行ってまいりました!
リサイタルの時に自分の席の3つほど向こうに座っていた方をお見かけし、この方もデュメイさんのファンなのだな…と勝手に思って嬉しがっておりましたv

東京文化会館に来るまでは 頭の中は月曜日に聴いたデュメイさん・小山さんのブラームス3番で一杯だったのですが、去る時にはベートーヴェンのコンチェルトの旋律で埋め尽くされておりました(笑) それ程、心の中深くに入り込むようなベートーヴェンでした。
デュメイさんの演奏って、ここで終わりではないのですよね。演奏が終わった後も ずっと心の中で生きているというか。自分の中ではまだまだ続いているのです!
そういう部分も魅力の一つだったりします。

こんなにもベートーヴェンが大好きな人なんだ…と、気づかされました。クロイツェルでは分かりませんでした(こちらも大変素晴らしかったのですが!)。心の中をここまで見て良かったのかしら…と思う位、私の想像していなかったデュメイさんのお姿を見ることが出来ました。
「良かった。格好良かった。」位しか、しばらく言葉が出てきませんでした(笑)

デュメイさんのベートーヴェンのコンチェルトは もう一つのハ長調の「断章」をラジオで聴いたことがあり、これも素晴らしいと思っていたのですが、考えが甘かったです! もう、全然違います。生で聴く意味というか喜びというか。演奏家から受け取るメッセージの情報量が格段に違いますね。

月曜は小山さんと御二人で登場された東京文化会館の舞台に、今回は東京都交響楽団さんの中央に指揮者のマーク・ストリンガーさんと一緒に上下の黒のスーツで登場!
うわっ、デュメイさんってやっぱり大きい…と思いました(月曜はそれほど感じなかったのですが)。

リサイタルではピアノの上に置いていた、汗&ヴァイオリンの弦拭き用(兼用)の白いハンドタオルは堂々と指揮台の背もたれのパイプの二段目に置かれました(笑)
デュメイさん、曲の途中で何度も汗を拭かれていました。特に左手と、指を抑える弦の部分。途中でタオルを置く場所が背もたれの一段目のパイプになり、指揮者のストリンガーさんが落としそうになって「…おっと!」という場面もあり、こちらのタオルの行方も気になりました。
前回来日された時のスーツは胸ポケットがあり(今回は無かったです)ポケットパンパンでこの中に何が入っているのだろう…と思いましたが、これと同じようなタオルが入っていたのですね、きっと。

演奏する前に もう少し譜面台を後ろに下げてね〜 と、コンマスさんに指示をして自分の場所を確保されていました。それでも舞台はぎゅうぎゅうで、大変そうでした。
デュメイさんはもちろん暗譜。本日は眼鏡をかけておりません!

そして、楽しみにしていたベートーヴェンが始まりました♪

デュメイさんは客席に背中を向け(指揮者と同じ向き)、オケを見渡し 曲に合わせて体を動かされていました。何か、指揮者以上に存在感のある背中で 見た目指揮者が二人いるようでしたが、実際はデュメイさんが指揮者なのでは…なんて思ったり。都響さんの隅々までガン視しているようで、怖かったです。

そうです。演奏中のデュメイさん、終始ずっと真剣なお顔をしてちょっと怖かったです。モーツァルトを弾かれる時など幸せそのものの笑顔で演奏しますが、デュメイさんにとってのベートーヴェンってこういうイメージなのかな、と。モーツァルトの時以上に曲に入り込んでいるようでした。

デュメイさんはソリストが入る前の部分から弾き始めるよ♪ と以前聴いたことがあるので、待ち時間を持て余すあまり 弾いてしまうのかな…とこれまで思っておりましたが、それは違ったようです。
ヴァイオリンの音をならすために、客席に背中を向けたまま途中から一部弾いていました。そして、納得したような感じで終了。デュメイさんの演奏する姿は何でも格好良いですが、この時のお姿も 普段と違って格好良かったです(笑)

そして、本当のソリストの出だし――

私はこれまで、諏訪内晶子さんと川畠成道さんのベートーヴェンのコンチェルトしか生で聴いたことが無いのですが、諏訪内さんは花の中から蝶が出てくるような 下から上にすーっと何かが生まれてくるような感じ(気品があるというか華やかなというか)、川畠さんは優しさと温かさがホール一杯を埋め尽くすような 観客に手を差し伸べるような感じの出だしでした。

デュメイさんの出だしは 当然そのどちらでもなく。
華やかではなく、どちらかというと地味な感じがしたのですが、心の奥底まで突き刺さってくるような音色で(これは単に私がデュメイさんの音色が好きだからなのかもしれませんが)、「あ、ベートーヴェンそのものだ」って感じました。ベートーヴェンのことについては何も知りませんが、そう思ったのです。この音はベートーヴェンを表しているんだって。

デュメイさんはベートヴェンが好きですから、もっと個性というかコブシを利かせるような演奏をされるのかと思っていたのですが、そういった大きなリアクションはなく 淡々と弾かれました。
淡々と弾かれているのですが、音色は様々な形に変化していって…
これがデュメイさんのすごいところだよなぁって感激しました。色々なことがこちらに伝わってきたのです。ずっと怖い顔でも 暖かい演奏や迫力ある演奏、美しい演奏、色々表現されていました。
デュメイさんはこの曲をとても愛しているのだなと。真剣に曲と向かい合っている姿を感じました。

それで、当然なのですが上手いです。左手の指の動きも素晴らしいです!
「あ、ここの音に力を込めて弾くんだ…」とか、自分のこれまでのイメージとの相違なども発見したりして、もうデュメイさんの音しか聴こえてなかったのではと思います(笑)
最初の都響さんの低音の良さを確認して、安心してしまったのかも知れません。オケも良いイメージがありました。

第一楽章のデュメイさんのカデンツァ。
初めて聴きました… 私は今までクライスラーのカデンツァしか聴いたことが無いので(恐らく)、デュメイさんのカデンツァはクライスラーのものではないということだけは確かだと思います。
何を弾かれたのでしょう。次々とヴァイオリンから生まれてくる重音が素敵で、当たり前のように弾かれていましたが これを表現するのは大変なことだと思います。
追記:と書きつつも、やはりクライスラーのようです。今まで聴いたものと全然雰囲気が違うような…不思議!

諏訪内さんほど馬力は無いのが意外でしたが(諏訪内さんすごかった…)、でも存在感は抜群! 音楽は何も力だけではないということを言っているようでした。色々な表現方法があるのですね。どちらも素敵でした。
その後にオケと一緒につながる部分とか、その優しい雰囲気にこちらの想像力も膨らみました。ホール全体に、とても良い空間が生まれました。

第一楽章が終わると少しチューニング。
第二楽章の都響さんの出だしも良かったです。

デュメイさんの優しい音色がたっぷりと表現された第二楽章から続いて第三楽章。
これはもう、デュメイさんの生み出すリズムが八割方占めている部分です。そのリズムの刻み方なども、デュメイさんは抜群です。何度も言いますが デュメイさんの真剣な表情と生み出される世界とは別物ですから、不思議な気分になりながら 最後の盛り上がりの楽章を楽しませていただきました!

演奏に重さがあるのだとしたら、デュメイさんの演奏は色々なメッセージが詰まったとても重いベートーヴェンだったと思います。音色が美しいので、一見軽そうに見えがちですが。聴き終わった後に思い出すと、感じることが沢山出てきて!!!(でも適切な言葉が出てこない、笑)

とにかく、格好良かったです。音色も演奏もお姿も何もかも。デュメイさん、すごい…
これはファンだからとかそういうのではなく、会場で聴かれた方 皆様そう思われたはずです。
私のように軽く書いてしまうと、そんなもんか…と思われそうで失礼かな と思う位(でも書いてしまいますが)。本当にすごいのですよ!

今日のこの演奏で大満足でしたが、明日はサントリーホールでもう一度聴くことが出来ます!
きっと同じ演奏はされないデュメイさん(常に探求されている方だと思うので)。大変楽しみです。

後半のブルックナー。
私、この時 初めてまともに指揮者のマーク・ストリンガーさんを直視しました(笑)
ブルックナーは全然分からないので、もちろん初めて聴いた曲なのですが、出だしから格好の良い曲だこと! マーラーのようにはまればはまるほど 聴きたくて仕方がなくなるのだろうなぁと思いました。
きちんと予習しておけばよかったです。都響さんの演奏も、特に第三楽章のチェロが刻むリズムが素敵でした。都響さんも機会があれば足を運びたいなぁと改めて感じたブルックナーでした。
ちなみに、となりのおじさまは第二楽章で爆睡でした… (それ位、心地よい旋律でした)

2008年9月27日 記

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