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都民劇場音楽サークル 第5回(第560回)
オーギュスタンデュメイ&小山実稚恵 リサイタル
【 2008年9月22日(月) at 東京文化会館 大ホール 】
 ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ ピアノ:小山実稚恵


■ ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第3番 ニ短調 作品108
■ ヤナーチェク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
■ ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第9番 イ長調 作品47 「クロイツェル」

アンコール
■ ドビュッシー:美しき夕べ
■ ブラームス:ハンガリアン舞曲第2番
デュメイさんの来日をずっと待っていました!
1年位前から 楽しみで楽しみで ワクワクして、1ヶ月ほど前から 今度は始まるともう終わってしまうのか… と悲しくなり(始まってもいないのに) でも当日はやっぱり嬉しくて仕方がなくて、デュメイさんの音色との再会にとても緊張しました。

朝は昨日からのあいにくの雨でしたが、公演が始まる夜には止んでいました。良かった…
上野駅から東京文化会館までの足取りの軽いこと、軽いこと!
走りたい気持ちを抑えるのに必死でした(笑)

今日は都民劇場音楽サークルでの公演。そのせいなのか、デュメイさんの公演だからなのか、客席はデュメイさん世代の方が多かったです。あとは楽器を持った若い方。

今回の来日ではピアニストの小山実稚恵さんとの共演は、この日だけでした。だから1秒たりとも聴き逃さないぞ! と、こちらも気合入っています。
私は都民劇場の会員ではないので、席が前の方でした。後ろを見渡すと 5階席までお客様でびっしり! 圧巻でした。歌劇場そのものでした。舞台が上から左右から客席で包まれているような感じで、温かな雰囲気でした。
私の隣に座ったおじさん。前回のデュメイさんの公演でもお会いしたような… もしかしたら違うコンサートかもしれませんが、どこかで絶対に会ったことあります(笑) すごくヴァイオリンが好きなことが横から伝わってくる方でした。

さて、大きな拍手の中 デュメイさんが登場!
(客席を見たデュメイさんは嬉しそうでした。)

きゃ〜〜〜っ!!! …って、その時の気持ちを言葉で表現することは出来ません。
「これ、現実だよね?」って何度も自分に問いかけました。
上下黒のスーツで決められているデュメイさん。
小山さんはシルバーのキラキラしたドレス。笑顔も含めて、大変素敵でした。

1曲目はいきなりブラームスのヴァイオリンソナタ第3番。
前回来日された時のリサイタルのラストの曲です。まるで、前回の続きのような気持ちがしました。

前回私はこの曲のことがよく分からなくて(途中で睡魔が襲ってきたときもありましたし!)、でもデュメイさんの気持ちは何となく伝わってきて、この演奏を自分なりに受け止めることが出来るようになりたいなぁと思った記憶があります。そして、それから色々な方の演奏を聴く機会があって、その度にデュメイさんのあの時の演奏を考えていました。

注目の、デュメイさんの最初の1音…

私の愛する音はやっぱり「これ」なんだなぁv と再確認できました。

東京文化会館の舞台は少し高いので、前の席だと 頭の上に音が飛んでしまうのかもしれません。前回ほど音の馬力は感じませんでした(それでも十分な音色と表現なので問題はありません!)。

きゃ〜っ!!!と騒ぐような音色ではなく、まるで酸素のように、私にとってその音が目の前に存在していることはごく当たり前のこと…というように 頭で考える前に、心で感じ取る前に、体全体で音をどんどん吸収してしまいました。
デュメイさんの表現されるメロディーは、私には言葉に感じます。客席に何かを語りかけているようでした。一音一音にきっと意味があるのだろうなぁと思いました。それが音としてきちんと表現され、伝わってくるのですよね。デュメイさんの演奏って細かいのです!
途中からは、デュメイさんの左手から汗がポタポタと流れていました。

特に第4楽章が絶品でした! 1〜3楽章の演奏があってのこの盛り上がりだとは思うのですが。流れが良かったのかなぁ。ドキドキしてしまいました。
こんな演奏、今まで聴いたことない…って思いました。デュメイさんらしい音の伸ばし方やため方、迷いのない音色。デュメイさんって高音出す時もバシッと気持ちが良い位に決めて下さるから、そんな姿を見て今さらですが素晴らしいヴァイオリニストなのだな…って何度も思いました。
音楽というよりも、舞台を見ているようでした。目の前で物語が繰り広げられていて、こちらもその物語にどんどんはまってしまい、あっという間に曲が終わってしまう… そんな感じでした。

この曲を1曲目に持ってきて良かったの?!と思う位に大満足な世界♪
前菜抜いて、いきなりメインディッシュを食べてしまったようでした。
1曲目からブラボー!と叫んでいる方がいましたが、納得です。同感です。ブラボーです!

本日、デュメイさんは全曲楽譜を見て演奏されたのですが、1曲目が終わると 係りの人が舞台に来て譜面台の高さをデュメイさんサイズに上げていました(笑) 私も ずいぶんデュメイさんにしては低いなぁと思っていたのですが。これでデュメイさんとしては納得の高さに。私の席からは小山さんが譜面で見えなくなってしまいましたが(ははは)、仕方がありません。

続いてのヤナーチェクのソナタ。
私はあまり好きではない曲…だったりします。この曲の中からハマるきっかけの部分を未だに探すことが出来なくて。普段もあまり聴くことはありません。

それがですね。もしかしたらデュメイさんが弾いたということによる私の思い込みなのかもしれませんが、今回 この曲の魅力に気づいてしまったのです!

この曲に関しては小山さんの伴奏が大変素晴らしかったことも理由の一つだと思います。デュメイさんのヴァイオリンとの相性が抜群でした。
デュメイさんの音色は次々と変化していって、全然飽きません。ドビュッシーのソナタも普通に弾かれるだけでは魅力が全然分からないところがありますが(私の場合)、それと似ているなと思いました。
デュメイさんのピチカートが可愛い…というか、弓で弾く音色以上に表現豊かな気がして、聴いているこちらも思わず笑顔に♪ デュメイさんがヴァイオリンを使って私たちに語りかけてくるのですよね。

最終楽章は、さらにドラマチックな世界が表現されて。
これまで私が聴いてきた演奏家の方々は、大抵最後は「チャ、チャチャチャ、チャ」(上手く表現できませんが、汗)と、元気よく終わらせていたような気がしたのですが、デュメイさんは とてもゆっくりと「チャ… チャ チャ チャ チャ…」と弾かれて、最後は会場がしーーーんと静まり返って余韻を楽しみ そして拍手!となりました。素敵でした〜vvv

休憩後は本日のクライマックス、ベートーヴェンのクロイツェルです! クロイツェル大好き!
自分なりのチューニングが終わったら、小山さんのことなどお構いなしに弾き始めるデュメイさんが良かったです(笑、最初はヴァイオリンだけなので)

正直に書いてしまいますと ヴァイオリンとピアノのバランスは…な気がしてコンビネーションがもっと良い演奏家は他にもいると思いましたが、でもヴァイオリン、ピアノ、それぞれはとても良かったです! 私はそれだけでも大満足です。

何でこういう迷いのない音が出るのだろう…ってデュメイさんの魅力にハマりっぱなしでしたが(笑)、本当、デュメイさんの気持ちがそのまま音に乗っていて 深くて濃い演奏でした。デュメイさんはこの曲をこれまでに何百回、何千回(それ以上かも)と弾かれているはずですが、その度にこの曲と向かい合って この曲に対する考察を重ねられているのだと感じました。一度たりとも単調に同じ演奏を弾かれることはないのだと。聴いていて、とても新しい感じがしました。「今」のデュメイさんのクロツェルを聴かせていただいているのだということが、よく分かりました。

第一楽章、第二楽章の終わりにデュメイさんと小山さんが少しお話しされていたので、何か問題でもあるのかしら…(素晴らしい演奏なのに)と気になりましたが、特に何もありませんでした。

第3楽章が始まるとすぐに、デュメイさんのべっ甲の眼鏡が床に落ちてしまいました!
(…どれだけ迫力のある演奏だったか、想像して下さい!!!)
顔にぶつかって痛くなかったかな…と、少し心配でした。眼鏡が自発的に落ちると、顔が痛くなる時ありますよね。演奏のことよりもそちらのことが気になりました。
「あ、やっちゃった!」みたいな感じで、裸眼で楽譜を見るデュメイさんも素敵。恐らく、頭の中に楽譜が入っているのだとは思いますが… 演奏には全く問題無しでした!

色々な演奏で聴きなれているはずのクロイツェルですが、やはりデュメイさんの表現されたクロイツェルが私は好きだなぁ〜と思いました。デュメイさんの気持ちがたくさん伝わってくるので。
(色々感じたことはあるのですが、上手く言葉で表現することが今は出来ません。)

演奏後は会場から大拍手!
落としてしまった眼鏡は小山さんが優しく拾って下さいました♪

アンコールはドビュッシーの「美しき夕暮れ」。
ヴァイオリニストの川畠成道さんも時々演奏されて私の大好きな曲なのですが、まさかそれをデュメイさんで聴けるとは思ってもいなかったので、感無量でした! 胸が一杯になりました。

デュメイさんの美しき夕暮れは、太陽って見る分にはとても小さいけれども、実はものすごく大きいものなんだということと、地平線に沈む太陽を見て人は癒されたりするけれども、実はとても熱くてエネルギーを生み出していて、ものすごい存在なんだってことに気づかされるような演奏でした。上手く表現できないのですが。
スケールが大きくて、一音一音に沢山の気持ちが込められていて、何度も言いますが物語を見ているかのような世界でした。

ラストは美しき夕暮れで良かったな〜と思っていたら、もう1曲アンコールが!
私もデュメイさんの演奏で大好きなハンガリアン舞曲第2番でした(5番でなくて良かった…と思った私はひどいでしょうか)。
中盤で一部の会場から拍手が起こってしまいましたがご愛嬌!
これでもかってデュメイさんの魅力を見せつけられて本当にフィニッシュ!

大変素敵なデュオ・リサイタルでした。
デュメイさん、小山さん、またぜひ私たちに素敵な演奏を聴かせてください、と思わずにはいられませんでした。

ブラームス・デュメイさん(10月のリサイタルの時にピリスさんが場所を間違えてしまい、ピリスさんとデュメイさんのサインが逆に…  ラヴェル・小山さん

2008年9月23日 記

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