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びわ湖の午後シリーズ30
アンサンブル・ラロ
【 2008年7月17日(木) at びわ湖ホール 小ホール 】
 アンサンブル・ラロ              + 川田知子(vn) 遠藤真理(vc)
 … ダイアナ・ケトラー(pf) アレクサンダー・シコトヴェツキー(vn)
   ラズヴァン・ポポヴィッチ(va) ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルグ(vc)


■ R.シュトラウス:ピアノ四重奏のための2つの小品 AV.182
   1.アラビア風舞曲  2.愛らしい歌
    vn:アレクサンダーシトコヴェツキー va:ラズヴァン・ポポヴィッチ
    vc:遠藤真理 pf:ダイアナ・ケトラー

■ R.シュトラウス(V.プシホダ編) : 歌劇『ばらの騎士』より ワルツ
    vn:川田知子 pf:ダイアナ・ケトラー

■ ブラームス : ピアノ四重奏曲 第3番 ハ短調 op.60
    vn:アレクサンダーシトコヴェツキー va:ラズヴァン・ポポヴィッチ
    vc:ヘーデンボルク・直樹 pf:ダイアナ・ケトラー

■ シューベルト : 弦楽五重奏曲 ハ長調 op.163 D.956
    第1vn:川田知子 第2vn:アレクサンダー・シトコヴェツキー
    va:ラズヴァン・ポポヴィッチ
    第1vc:ヘーデンボルク・直樹 第2vc:遠藤真理

アンコール
■ シューベルト : 弦楽五重奏曲 ハ長調 op.163 D.956 第3楽章より
Ensemble Raro(アンサンブル・ラロ)… 数年前からの川畠成道さんのファンの方は、このピアノ四重奏団に親しみを感じることと思います。

2年前のクリスマス、と記憶していたのですが調べてみたら2005年の12月24日でした。
ミューザ川崎で川畠さんのクリスマスコンサートがありました。曲目はバッハの2つのvnのための協奏曲とヴィヴァルディの四季、オーケストラは東京交響楽団さん という構成。
前半のバッハの2つのvn〜の1stヴァイオリンを担当したのが名前も聴いたことが無いロシアの若々しい青年! 彼はヴァイオリンの音もいいし、演奏もめちゃめちゃ上手で!!!
何より、8割方(?)川畠さん目当てと思われるファンの大集団の前で 少しも臆することなく堂々と顔を真っ赤にして弾ききったお姿を見て、また聴きたい〜! と思いました。
今でも覚えているのですが、川畠さんもその青年もとても楽しそうに弾かれていて、川畠さんがまるでお兄ちゃんのようでした。舞台上の雰囲気がとても良かったです。

その青年の名前がアレクサンダー・シトコヴェツキーさん(愛称Sasha)。有名なドミトリー・シトコヴェツキーさんは叔父様だったと思います。
川畠さんとSashaがまた一緒に弾かないかなー、Sashaの演奏がまた聴きたいなー、とずっと思っていたのですが、昨年ネットで調べてみると、神戸の音楽祭にアンサンブルで来日していたとのこと(調べた時はすでに『過去形』でした、涙)。しかもブログ等の書き込みを読みますと「ヴァイオリンの人(=つまりSasha)が良かった!」という意見が多数!
日本に来ているんだ… 次は聴きに行きたい! とそれを見て思ったのでした。

今年の初めに再びネットで調べていますと、関西方面の情報にSashaの名前が!
しかも『アンサンブル・ラロ』という名前もあります。そういうグループを結成していたとは… とHPを見てみますと、グループの1人にダイアナ・ケトラーさんのお名前が!

ダイアナ・ケトラーさん。
この方もやはり川畠成道さんのピアノ伴奏を時々される方で、川畠ファンには馴染みのあるピアニストです♪ (以前のファンクラブでのインタビューもなぜかダイアナさんは多かったような気が…)私も一度だけ宇和島で伴奏を聴かせていただきました。

Sashaとダイアナさんが結びつくとはびっくりしましたが、これは聴きに行かなくちゃ〜と比較的休みが取れそうな日に開かれる、びわ湖ホールでの演奏会に行くことにしました。

…要らない前置きが長いのですが、それだけ私のこのコンサートに向けた思いが強いことを御察し下さい(笑い) とても楽しみにしていましたv

滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホールは、その名の通り びわ湖の横にありました!
大・中・小 とホールが3つもあります。すごい…
今回は323席の小ホールにて。小ホールは地下に潜ります。上にある大ホールのロビーからは、びわ湖が眺められるのだそうですよ! 休憩時間とか最高ですね。
平日の午後のためだと思うのですが、学生さんの姿はあまり見られませんでした。

開演時間になりますと、チェロとマイクを持って ヘーデンボルク・直樹さんが舞台に現れました。

「私は『ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルグ』というカタカナが多い名前ですが、日本語は話せますので御安心ください」

というお言葉から、本日のコンサートは始まりました(笑い)
モソっとした感じの話し方がとても良くて、大きなチェロが似合う方だなぁと思いました。
直樹さんの好感度急上昇!
演奏される曲の解説もして下さいました。先日行ったコンサートでも 指揮者の土屋邦雄さんのトークに大満足したところでした♪ 聴き手の知識も増えますし、また演奏家がどのような気持ちで曲と向かい合っているのかなども知ることが出来るので、こういうトーク&解説付きのコンサートは大好き!

今回のプログラムはリヒャルト・シュトラウス、ブラームス、シューベルト…と、ウィーンで活躍した作曲家でまとめたそうです。
最初の四重奏の2曲は「アラビア風舞曲」と「愛らしい歌」ですが、これはシュトラウスにとって少し実験的な曲だったのではと直樹さんは感じているとのこと。アラビア風舞曲はサロメにある何とかの踊り…という部分をイメージしながら書いたのではないかと。愛らしい歌はその時期にブルックナーが曲(交響曲第○番>番号忘れました)を書いていて、その曲に捧げるような気持ちだったのではないかと思いますとお話しされていました。(かなりうろ覚えなので全体的に直樹さんが話されたことと意味が違っていたりして、汗) 今はほとんど弾かれないのだそうです。アラビア風舞曲が気に入った方はサロメも聴いてみて下さいね、とのことでした。

そして演奏される皆さんが登場!

あ、ダイアナさんだ! 宇和島で見た時と変わらない!

まぁ、Sasha…! 何で あなたはそんな髪の伸ばし方をしているの…(涙)>別にいいですが。

と、色々な部分でワクワクしながら演奏が始まりました。

アラビア風舞曲は確かに私のイメージするワルツ王シュトラウスとは全然違った曲。昔エジプトで訳分からずお土産に買ってきたカセットに入っていた曲に近いものがあります…(ホテルのおじさんがしきりに勧めてくれたカセットです。おじさんお気に入りの曲のようで。)
その曲、そのリズムにSashaのヴァイオリンの音色がすごく合います!
そして曲に入り込む集中力! 足をジタバタさせながら、リーダーのようにぐいぐい演奏を引っ張って行きました。

そうそう、この曲の入り込み具合に私は川崎の演奏で惹かれたのだよなぁ…と思いだしました。あの時は川畠さんの弟のようでしたが(演奏ではなく見た目の面で)、今はすっかりお兄さん(笑い) 見た目も成長していますが、演奏もさらに成長されたように感じました♪

次の「ばらの騎士」は、オリジナルではなくてヴァイオリンとピアノのために編曲されたものだとのこと。私にとって「ばらの騎士」ワルツ というと、やはりヤンソンス&バイエルン放送交響楽団の演奏! 昨年、アンコールで弾いて下さり とても楽しく素敵な曲だったことを覚えています。ヤンソンスさんも大好きな曲なのだとラジオで解説されていたような気が…
ヴァイオリンとピアノのだけのワルツは、最初やはりボリュームが小さいかな…と思いましたが、中盤から曲がノッてきたというか、頭の片隅にオーケストラが浮かんでしまった位、素敵に盛り上がりました♪ 最後にはワルツの世界を見事に表現されていました。川田さんのヴァイオリンの音色はSashaと同じく 私好みの音色を出される方でしたv ドレスも素敵でした。

続いてアンサンブル・ラロ フルメンバーによるブラームスです!
ウィーンの代表とも言えるリヒャルト・シュトラウスもブラームスもウィーン生まれの人ではないとのこと。ハプスブルク家が築き上げたウィーンの世界に惹きつけられてやってきたのだそうです。
ピアノ四重奏曲 第3番はブラームスが20年に渡って作曲した曲。最初の1、2楽章は割と早く作ることが出来たのですが、そこから完成させるまでに20年かかりました。
これはヴェルテル四重奏曲とも呼ばれているように、ゲーテのヴェルテールの悩み…主人公が実らぬ恋に悩んで、最後ピストルで自殺をしてしまう…という話なのですが、ブラームスはそのヴェルテールに自分を重ねているという記述もあって、とても深刻な気持ちでこの曲を書いているそうです。
最後の衝撃的な2音もどうぞお楽しみください…(と言っていたような気がします)。

そして、アンサンブル・ラロもこの曲でアルバムを出しております!
カップリング曲を作曲されたPETERIS VASKSさんから、この曲と一緒に収録して欲しいとの希望があったそうです。
日本では10月発売なのですが、トランクに入れて少しこちらに持ってきたとのことで会場では販売されておりました♪ VASKSの四重奏もブラームスも、どちらも素晴らしくお薦めです!

第1楽章は少し不安を感じさせるような、心がざわつく様な曲なのですが、でもピアノのアクセントや4人が盛り上がるところがすごく格好良い! 皆がそろって1つのリズムを刻むのって、きゃ〜っ!って感じですよね。本当、その皆様が生み出す世界観に圧倒されてしまいました。
もちろん、Sashaもノリにノッていますv

演奏後に仲間に何度も言ったのですが、この4人の世界に私も混ぜて欲しい…って本気で思いました(笑い) 演奏したいという意味ではなくて、とにかく気持を共有したいって思いました。会場の誰もがそう思ったと思います。
デュメイさんやダルベルト先生の演奏を聴くと、きゃ〜っ!!!って無性に抱きつきたくなるのですが(素晴らし過ぎて、笑い)、今日は皆で円陣を組んで仲間意識を共有したくなりました。
いつも妄想しすぎです…私ったら。

アンサンブルってこういう所が楽しいのですよね。ヴァイオリンとピアノのリサイタルやオーケストラ(オケもまた違った魅力を感じますが)とは違って、少人数で気持ちを1つにして何かを生み出す過程、集中力、連帯感… 演奏だけでなく、そういう面を感じるもの楽しいし 舞台上の世界に引き寄せられてしまいます(笑い)
最後までアンサンブル・ラロのサブメンバーに成ったつもりで楽しませていただきましたv

第2楽章は何と言ってもピアノのダイアナさん!
ものすごく、格好良かったです。
ダイアナさんってこういう演奏をされる方なんだ…と思いました。
川畠さんの伴奏をしていた時とはまるで別人。すごく楽しそうに弾かれていたのが印象的でした(と言って、伴奏を嫌々弾かれていたとかそういうことではないですよ)。
ダイアナさんの伴奏は音が大きめ…と言われる方が多いのですが(私もそう思いました)、アンサンブルになると当然ですがそんなことはなく。ピアノで皆を引っ張って行って、素晴らしい世界を生み出されていました。
ダイアナさん、すごい…って初めて思いました。時々Sashaを見て、全体のバランスを取っている姿も素敵でしたv 楽譜を譜めくりさんにお願いするだけでなく、時々タイミングを見て自分でめくっている姿も素敵。川畠さんの伴奏を聴いたことのある方は、一度アンサンブル・ラロでのダイアナさんも聴いていただきたいと思いました。もう、全然違うのですよ!
この演奏を知ることによって、川畠さんとのリサイタルの思い出も より深みが増すような気がします。

第3楽章だったでしょうか…チェロのソロの部分があって、直樹さんの演奏がとても良くて、ビオラソロの部分もやはりポポヴィッチさんが良い演奏をされていて、個人でもそれぞれ良くて、アンサンブルでも良くて、で たっぷりと楽しませていただきました♪

後半は1曲。シューベルトの弦楽五重奏曲です。
シューベルトは本日の作曲家の中で唯一のウィーン生まれの方だそうで、この曲は亡くなる年に作られたもの。
弦楽五重奏曲の中でも最高峰のものですっ!…と、少し興奮気味に直樹さんはお話しされていました(笑い)約50分もある超大作です。

出だしを聴いた時、ピアノが無い弦楽器だけの曲って テンポを生み出すのが難しそうだな…って感じました。これまでのピアノの存在がとても大きく見えました。
私としては(正直に書いてしまいますと)最初は少し曲っぽく聴こえなかったのですが、でもすぐに皆様1つにまとまって シューベルトの長い旅が始まりました。
旅が始まると、本当に素敵な世界が舞台上で繰り広げられました。演奏する皆様もとても楽しそうで(顔は真剣ですが)。

第2楽章はゆったりした感じの曲で、ついに私はここで記憶が無くなりました(爆)
昼間の疲れがドッとでたようで。贅沢なリラックスタイムをいただきました。
気がつくと、目の前にはとても気持ち良さそうに目をつむって皆とハーモニーを生み出してるSashaの姿が!(まだ2楽章は終わっておりませんでした)
ヴァイオリンの川田さんがリードされて、皆を引っ張っているようです。
そのハーモニーがまた素晴らしかった(涙)
大げさに言ってしまうと天国に行ったかのよう。キラキラしていました。
この感じは、以前新日フィルさんのアンサンブルでも感じたことがあるよな…と家に帰って調べてみましたら、ハイドンの弦楽四重奏第77番「皇帝」でした。あの時もキラキラしていましたv

そこから再び元気になって、曲に集中(笑い)
CDではいつも途中で意識が無くなっていたので、第4楽章を私は聴いたことがありませんでした。
最後で曲調が少し変わって激しく・明るく・楽しくなる部分。
皆様、格好良い〜!!!
もう1回その部分を聴きたかった位です。最後の最後でこんな部分が隠されていたとは。

眠ってしまったものの、あっという間の50分でした。

最後は「本当に50分弾いて、私たちももう限界なのですが、最後にスケルツォ−プレストを」と弾いて下さいました。この部分も曲そのものが素敵だし(私はディズニーランドに行ったかのようにワクワクしてしまいます、笑い)、演奏する姿も素敵だし、で最後の最後まで楽しませていただきました♪

最後にものすごく野暮なことを書いてしまいますと、私はこの曲はアイザック・スターン、チョーリャン・リン、ヨーヨー・マさんたちで収録されたアルバムで予習していたのですが、演奏はやはりアルバムの方が素敵だと思います(強いて比べるなら、ということです)。全体的な音の強弱の構成の仕方とか。編集もしているでしょうし。
でも、そういった一般的感想を越えた何かが生演奏にありますよね! 演奏者の息遣いというか、ハートというか、音楽って活きているなぁって体で理解できる瞬間があるというか。
今日の演奏を聴いていて、そういったことを強く叫びたい衝動にかられました(笑い) 頭で感じる「良い」と体で感じる「良い」は必ずしも一致しないということ。機会があるのなら、体で感じる「良い」を今後もたくさん吸収していきたいということ。
びわ湖まで行って良かった… 本当、楽しかったです。

コンサート終了後は本日の演奏者全員のサイン会がありました。
6名がずらっと横に並びまして、こちらも横に移動しながらサインをいただくのですが、演奏者の皆様がたくさんいらっしゃるのでこちらもどうやって横に進んだらいいのかワタワタしてしまいました。
Sashaはミューザ川崎の時と変わらず、大変若々しく明るい青年でした♪
なぜかアントン・バラホフスキーさんを思い出してしまいました(バラさんの演奏も聴きたい…)。同じロシア人だからでしょうか。

帰りは仲間とびわ湖ホールのロビーにあるレストランで食事♪
貸し切り状態だったのですが、びわ湖を見ながら食事が出来ますし、料理もとても美味しかったです(お薦めです!)。良い演奏→美味しい食事…完璧です!
レストランが開くまで喫茶で待っていたら、アンサンブル・ラロさんがロビーに写真撮影をしに来られました。びわ湖ホールのロビーで撮られた写真、どこで使われるのでしょうか。ぜひその写真の行く末を見てみたいです(笑い) その横に私たちもいたのよね〜!なんて自己満足したいし。

アンサンブル・ラロさん。またぜひぜひ聴きに行きたいです。Sashaの音がもっと聴きたい!
東京に来ていただくことって難しいのでしょうかね…
東京でもこの演奏・雰囲気を、私たちに伝えてほしいと強く思いました。
機会のある方は、ぜひアンサンブル・ラロさんの演奏を聴きに行ってください〜v お薦めです!

2008年7月19日 記

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