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ムターの四季
【 2008年6月8日(日) at サントリーホール 】
 アンネ=ゾフィー・ムター & トロンハイム・ソロイツ


■ バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント
■ J.S.バッハ : ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BMW1042 with アンネ=ゾフィー・ムター
■ ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲集「四季」Op.8-1〜4 with アンネ=ゾフィー・ムター

アンコール
■ ヴィヴァルディ : 四季「夏」第3楽章
■ ヴィヴァルディ : 四季「冬」第2楽章
■ J.S.バッハ : G線上のアリア
ムターさんがモーツァルトのソナタを背負って来日されたのが2年前。
サントリーホールでリサイタルをされたのですが、丁度同じ日、同じ時間に東京オペラシティで川畠成道さんとボローニャ歌劇場室内合奏団さんのヴィヴァルディの四季のコンサートがありました。
この日、川畠ファンは東京オペラシティに行く人とサントリーホールへ行く人と別れたのですが(笑い)、私は東京オペラシティ… そうです、川畠さんとボローニャさんとの演奏を聴きに行きました!
これは大変に素晴らしい演奏で、以前の川畠さんの演奏の中ではこれがMaxだったのではと勝手に思っています(今は今で また素晴らしいのですが)。それ位、素晴らしい演奏でしたv
サントリーホールへ行った友人の話によりますと、ムターさんのモーツァルトも大変素晴らしかったようで「世界ってすごい」という感想をいただいたように記憶しております。

次に来日した時は絶対に聴きに行く! と思っており、それが私にとって本日の公演となりました。
偶然にも本日も同じ時間に川畠さんは他の場所でラジオの公開録音をされているようで、ムターさんとバッティングしております(笑い) 今回はムターさんを選びました♪
本日ムターさんが演奏した曲もヴィヴァルディの四季というのが、何か縁があるようで不思議な気持ちがしました。
(さらに偶然が続きますが、他の方のブログによりますと この日の川畠さんの公開録音でもアンコールの最後にバッハのアリアを弾かれたとのことです。)

本日はヴァイオリンケースをもった子供・学生がたくさんいました。
終演後にサイン会があるということで(これはすごかったです、係りの人も「今までで最高かも」と言われていた位に人が並んで、私も1時間ほど並んだのではないかと)、会場に入る前のCD売り場からしてものすごい混雑ぶりです!

1曲目はトロンハイム・ソロイツによるバルトーク。
トロンハイム・ソロイツのことを私はよく知らなくて(調べてもいませんでした)、単なるムターさんに関係のある音楽院の生徒の集まりかと思っていたのですが、そんなことはなくて、大変素晴らしい演奏をされる人たちの集まりでした! 女性もきちんと舞台衣装が統一されていて(上下の色だけ揃えているオケが多いと思います)好感が持てました。
素晴らしかったのですが、バルトークのこの曲を私は知らないので 途中からいつものように(?)記憶が無くなってしまいました…

2曲目からムターさんが登場!
青いマーメイドのような衣装だったと記憶しているのですが…(と思ったら色々なブログを拝見するとグリーンだったようです) 素晴らしい笑顔、そして素晴らしいプロポーション! CDジャケットそのままでした。
バッハのヴァイオリン協奏曲は私は好きなので、大変楽しみにしておりました。

初めて聴いたムターさんのヴァイオリンの音色。

…意外にも「普通」でした。
デュメイさんのように「美しい音色」とかそういうものでもなく、演奏的にもクセがあるわけでもなく。
全てにおいて普通でした。

ムターさんのイメージって「こってり」と言うか、ものすごく演奏にクセがあるように感じていたので、こんなにあっさりと演奏される方なんだ…とびっくり。
また、音量も大変小さいものでした。集中して聴かないと聴こえない位。
(パンフレットのインタビューに今回のバッハは必ずバロック弓を使うと書いてあったので、そのせいなのでしょうか。よく分りません。)

でもそれを無理して音量上げようとするでもなく、トロンハイム・ソロイツもバランス良く音量を調節されて弾いているので、全体的なまとまりは完璧!

何より、ムターさんは音ではないのです。特別大げさなパフォーマンスをしているわけでもないのに、音が聴こえなくてもなぜかムターさんの気持ちがその場から伝わってくるというか…
これがムターさんなんだ、これがバッハなんだ、って納得出来てしまいました。あれこれ考えることが無意味に思えました。大満足♪

後半の四季は「ムターさんは、やはり女王だった…」と思えるような素晴らしい世界が待っておりました! これはヴィヴァルディの四季ではなくて、ムターの四季でした。

四季は春・夏・秋・冬がそれぞれ3楽章に分かれて 全部で12楽章ある曲ですが、この12種類全部違う世界を私たちに見せて下さったのです! これはムターさんもすごいですが、トロンハイム・ソロイツの演奏も素晴らしかった。特にチェンバロの方…(個人的にですが、笑) タイミングとリズムがとても良くて! あとコントラバスの方も良かったです。
チェロの方はものすごく飛ばしていて、気持入っているなぁ…と感心していたのですが、トロンハイム・ソロイツの芸術監督さんだったようですね。通りで他の方たちと違うはずです。

ムターさんの四季が他の方たちの演奏とどこが違うのかと言いますと、まず「春」第一楽章の出だしからして最初の一音で春の喜びと言うか幸せ感を「パッと」表現されていました(演奏自体、ムターさんが舞台中央に行かれるなりパッと始められました)。
そして普通だったらソリストの音が活きて歌い出す部分。
これをムターさんと第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンの3人でバランス良く、まるで3羽の鳥が仲良く歌っているかのように演奏されていたのです。ムターさんのヴァイオリンは目立っていないのに、でもその世界を演出したのは紛れもなくムターさんであるということが私たちに伝わってきました。
こういう表現の仕方もあるのだ…と。

そして第2楽章。
先程とはガラッと雰囲気が変わって、とても厳しく緊張感の漂う曲調に(この解釈で合っているのかは分りませんが)。風が吹いてきたような感じです。

続く第3楽章は、草原で皆で踊っているような ものすごく明るい表現をされていました。

全部書いているときりがないので止めますが、1つ1つにこだわりをもって演奏されていて テンポの取り方も通常より速かったり(夏)遅かったり(冬)各楽章が1つの小品のようでした。

夏の第2・3楽章がものすごく速くて(ムターさんもオケも共に)、すごい…と空いた口が塞がりませんでした。そして チェンバロの入り方が格好良くて!(アンコールでも再確認しました)

秋の第2楽章はソリストはお休みされることが多いのでは…と思うのですが、ムターさんは弾かれていました。

冬の第1楽章はビブラートのかけ具合が聴くポイントかな と思っていたのですが、皆さんの出す音がとても面白くて。窓にみぞれがベチャ、ベチャ、と ぶつかってくるような わざと(?)変な音を出されていたのです。これから雪が積もって来るのだな…というイメージが湧きました。もしかしたら 寒さによる歯のガチガチ音なのかもしれませんが。

人気の高い第2楽章は、暖炉の前に動物が集まって寒い冬をしのいでいる…とかそういう暖かさではなくて、もっと精神的に大きなレベルでの…たとえばアヴェ・マリアとかそういった曲と同じような世界観がありました。もちろん、ここはとてもゆっくり目に弾かれていました。

最終楽章はまた緊張感が表現されていて、最初の春の喜びを思い起こさせるような部分もあるのですが、冬の厳しさにきちんと向かい合いなさい! と叱咤激励しているような(誰に?)、厳しい雰囲気で曲が終わりました。気が引き締まるような終わり方でした。

どこでもドアで 世界中の季節を垣間見たような、たくさんの自然の表情を見せていただいたような演奏でした。これがもし同じ場所での一年の四季だとしたら、何て1年は色々なことがたくさんあって充実したものなのだろうって気がしました。

これからもムターさんの演奏、色々な曲を生で聴いてみたいと思いました(あまりCDは聴いていませんが)。 聴きなれた曲でも、ムターさんの演奏には新しい発見が必ずあると思うので。
友人ではありませんが、世界はすごい…!!! 聴きに行って良かったです。

ムターさんがトロンハイム・ソロイツの皆さんと一緒に、きちんとP席に向かってもお辞儀をされていたのも好印象でした。

2008年6月8日 記

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