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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2日目
熱狂の日 音楽祭2008 「シューベルトとウィーン」
2008年5月3日(土) at 東京国際フォーラム
【221】
ミシェル・ダルベルト(ピアノ) マーク・マーダー(コントラバス)
モディリアーニ弦楽四重奏団のメンバーより
フィリップ・ベルナール(ヴァイオリン) ローラン・マルフェング(ヴィオラ)
フランソワ・キエフェル(チェロ)

■ シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D667「ます」
【222】
堤剛(チェロ) 小山実稚恵(ピアノ)

■ メンデルスゾーン:協奏曲的変奏曲 ニ長調 作品17
■ ヴェーベルン:チェロとピアノのための3つの小品 作品11
■ ウェーバー / ピアティゴルスキー:アダージョトロンド
■ シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタ イ短調 D821
【223】
ネマニャ・ラドロヴィチ(ヴァイオリン) オーヴェルニュ室内楽団 アリ・ヴァン・ベーク(指揮)

■ メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調
■ シューベルト:ロンド イ長調 D438 (ヴァイオリンと管弦楽版)
■ メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第12番 ト短調
【238】
シュテファン・ゲンツ(バリトン) ミシェル・ダルベルト(ピアノ)

■ シューベルト:愛の便り、戦士の予感、春のあこがれ、セレナード、わが宿、遠い国で、別れ
          アトラス、彼女の絵姿、漁夫の娘、都会、海辺で、影法師、鳩の使い
          (歌曲集「白鳥の歌」D957)
2日目で、すでに疲れております… もう少しセーブしたチケットの取り方をした方がいいのかも(と、来年の自分に言いたい)。特に最終公演は目が開かなくなるので、体力的な面で気持ちだけではどうにも出来ない部分があり、私は控えた方がいいと思います(苦笑い)
午前中はあいにくの雨で、人の出だしも控え気味に感じました。前の方で結構空席が目立ちました。もったいない!

ダルベルト先生を含めた「ます」から本日はスタート!
昨日のベレゾフスキーさんを筆頭としたロシア人の「ます」とはまた雰囲気が違いました。一番の違いを感じたのは、ヴァイオリンの音色かしら。音色のタイプが全然違いました。
それから注目していたベレゾフスキーさんとダルベルト先生の違い。
私はこう感じました(あくまでも私の考えです)。
今回感じたのは、ベレゾフスキーさんはある意味パフォーマンス性を持った音の出し方をされる方のような気がしました。観客好みの音を1音目からバシッと出して、私たちを惹きつける。客席がどう喜ぶかを重視。
ダルベルト先生はあくまでも自分のシューベルト感を表現して、シューベルトの世界を私たちに伝えて下さってるような。客席目線ではなく、自分のイメージを客席にどう伝えるかが重視の演奏。
ですので最初っから共感できるものではなく、ある部分に達し、ダルベルト先生が伝えたいそのシューベルトの側面が少しでも見えはじめると、とてつもなく先生の演奏の世界に魅せられていくような。
一見突き放しているようで、でもその世界に一歩足を踏み入れると大変魅力的な世界。

ダルベルト先生は、七色の音色とでも言うのでしょうか… 部分部分によって、音が全然違うのです! 盛り上がる部分など、何と言うか…海神ポセイドンが海に向かって雷のハンマーを振り下ろすみたいに、手を後ろから「バン!」って振りおろして、するどく固い強音を出されたり、指先のみに力を入れて「ボン!」とアクセントの効いた音を出されたり、色々な方法で弾かれるのです。そのお姿を見てしまうと、ますます先生の演奏に惹かれてしまいます… 素晴らしかった。

今回の私の席は、右寄りの前から2列目。丁度私の前には人が座っていなかったので、舞台がとても良く見えました。ダルベルト先生はピアノの上からお顔が良く見えましたv やっぱり、鼻歌歌われているような気がしたのですが…
ですが、左右がとても怖かった…
子供、親、子供、親、私、子供、親…という並びで、2つ向うの小さな子供は演奏中に椅子から降りて地べたに座ったり、もそもそしだすし、右側の子供は口を鳴らしたり、ため息ついたりチャックの開封をしたりするし、唯一まともだった左隣の子も後半で疲れてしまったのか椅子の上で もそもそし出すし。締めとして、後の子供が寝てしまったようで、いびきがすごくて。これには周りの皆が大迷惑。
その子のことを皆でチラ見していました。退場して欲しいとまでは言いませんが、何とかならない物ものですかね… 音楽聴いて寝てしまうのは、自分とその音楽の波長が合っているということで素敵なことだと私は思うのですが、いびきはね。

でも、演奏がとても素晴らしかったので、客席的欠点も帳消し! 演奏後はダルベルト先生、素敵… という気持ちで満たされておりました(笑い)

続いて堤さんと小山さんのアルペッジョーネ・ソナタ。
堤さんのチェロは私、初めてだったと思うのですが、素敵な演奏をされる方ですね!
人間的な温かみがあるというか、きっと堤さんってこういう人で、こういう生き方をされてきたのだなぁと音色からイメージが湧いてきました。
チェロの音色にお人柄が十分に溢れていて、幸せな気分で聴くことが出来ました。
小山さんの笑顔も素敵! 今日かその前後が小山さんの誕生日のようで、演奏後に堤さんの「ハッピーバースデー トゥーユー〜♪」の演奏(会場も歌いました)でケーキが登場し、皆でお祝い致しました。素敵な演出ですね。
もしかしたら、毎年の恒例行事なのでしょうか?!

次はオーヴェルニュ室内楽団とネマニャ君。
オーヴェルニュ室内楽団の安定した、素晴らしい演奏に改めて感動。本当にここのオケは素敵。強弱の付け方とか全体的なまとまり感とか最高です!
(確か昨年の公演で私は寝てしまった記憶がありますが、汗)
ネマニャ君が演奏した曲は、昨日庄司さんが演奏した曲と同じでした。
オケの編成が昨日よりも小さいですが、ホールも小さい分音がしっかりと客席に届きます。同じ曲でも雰囲気が全然違う!

特に、やはりソリストの存在。庄司さんとネマニャ君とでは表現方法が違いました。昨日の庄司さんは音響に恵まれず、きちんと音が届かなかったということもあるのですが、正統派の(?)庄司さんの演奏に対して、パフォーマンス性溢れたネマニャ君の演奏は圧巻。パフォーマンスだけでなく、演奏技術もそれなりに素晴らしく、見た目だけでないのがネマニャ流。傍にいる人すべてを幸せにする笑顔も健在で、1曲目を真面目に振っていた指揮者さんも、思わず笑顔になってしまったほど。
オーヴェルニュ室内楽団さんの演奏が音の強弱(盛り上がり盛り下がり)をとてもよく表現して下さるオケである上、ネマニャ君もその表現力は素晴らしく、まるで1つの物語を見ているかのように、曲の中に起承転結があることが、こちらにも伝わってきます。そして視覚聴覚で見せ場を決めてくれるので、聴いているこちらはとても楽しい時間を過ごすことが出来ます。
隣の方が、「楽しい曲だったね〜♪」と話されていましたが、本当にそのとおり!
観客をそう思わせる力のあるネマニャ君はすごいです。
今度は何かの協奏曲でネマニャ君の演奏を聴きに行きたい。カデンツァが聴いてみたいです。

一度家に帰り、再び有楽町へ。
本日最終公演のゲンツさんとダルベルト先生の歌曲「白鳥の歌」です。
これは演奏者が変更になったもので、当初のスケジュールでは違う方の演奏だったのですよね。だからチケットを入手するのが大変でした(苦笑い)
時間もあったので少し並んで(自由席でした)、ダルベルト先生の指が見えるベストポジションの位置に座ることが出来ました♪ たぶん、こんな良い席は今後座れないと思う…

歌曲というのは私には未知の世界で、皆様ピアノに対し右側の席に座られているようなので何でかな…と思っていたのですが(ピアノを聴くなら指の見える左がいいと思っていたので)、ピアノの右側にゲンツさんが立って歌われるからなのですね!
ダルベルト先生の指に集中したかったのですが、ゲンツさんが客席を見回しながら歌ってくださるので、あからさまに先生ばかりも見ていられず、そのうち私の体内時計の宿命からか、疲れではなく本能的に眠くなってしまい、目が半分になってしまいました(爆)

ダルベルト先生の伴奏は、当然ですが素晴らしかったです!
やはり曲によって指の置き方が違いましたし、出てくる音も違いましたし、魔法のような指使いでしたv 惚れ惚れします。結構強めに表現されて歌う歌が多かったような気がするのですが、それに合わせてダルベルト先生の表情も険しいものになったり。音と顔が一致しておりました。

ダルベルト先生は、昔の音楽雑誌(レコード芸術 1990年8月号)のインタビューで

「室内楽を演奏することは、自分の音色をより良く知ることができます。他の音を聴くことを学ぶことで、ピアノの音にさらに大きなヴァラティーを与えるとか、音色自体、響き自体のより大きな差異化を求めるとか… それから、フレーズの面でも、ピアニストがヴァイオリン奏者やチェロ奏者から学ぶべきものは決して少なくありません、彼らのより自然なフレーズをです。ヴァイオリン奏者には弓の動きからくる自然な呼吸というものがあります。私たちピアニストの場合は、弓の動きという制約がありませんから… それから、非常にためになったものには、歌手の伴奏があります。」

といわれているように、歌手の伴奏から色々なことを得られているようなのですが、私が感じたのは ゲンツさんと一緒にダルベルト先生のピアノも歌っていたということです。まるで二重奏のようでした。きちんと歌とピアノの音色で会話をしていました。
素敵な演奏を聴くと、私はその音色が歌や言葉に聴こえるのですが、ダルベルト先生の演奏も、その「歌」でした。ソナタなどを弾かれている姿とはまた違っていて、先生の新しい一面を見ることが出来てうれしかったです。パラッと時々ご自身で楽譜をめくられる姿もまた素敵v
ゲンツさんもダルベルト先生も汗をかきながら、演奏して下さいました。

今日1日、素敵な演奏を皆様ありがとうございました。
明日は頑張れるのかが心配ですが(すでに体力的にリタイヤ気味、苦笑い)、また楽しんでこようと思います♪

2008年5月3日 記

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