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BBCフィルハーモニック 2008年日本公演
【 2008年3月14日(金) at 東京文化会館 】
 首席指揮者:ジャナンドレア・ノセダ  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン


■ ストラヴィンスキー:バレエ音楽「妖精の口づけ」より ディヴェルティメント
■ シベリウス : ヴァイオリン協奏曲 二短調 Op.47 vn:ヒラリー・ハーン
■ ベートーヴェン : 交響曲第7番 イ長調 Op.92

アンコール
■ バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 より 「ブレー」 (ヒラリー・ハーン)
■ ベートーヴェン : 祝賀メヌエット
昨日に続いての、BBCフィル+ノセダ氏+ハーン公演♪
本日は雨が降っておりましたが、たくさんの人が東京文化会館に集まりました。
主催が都民劇場ということもあるのだと思いますが、昨日と客層が全然違います。年齢層も高く、庶民的な雰囲気がホールに満ち溢れていました。こういうの、いいですね!

本日のメインは何と言っても、ベートーヴェンの第7番です!
元々行くつもりではなかったのですが、1月に同じ東京文化会館(小ホール)で行われた菊池裕介さんのリサイタルの時に この公演のポスターを見てしまい、やはり我慢できずに申し込んでしまいました(笑い)

・・・そういう訳で 申込が遅かったこともあり、本日の席は1列目の一番右側の席。きゃ〜っ!!!
東京文化会館の音ってどうなんだろう(1列目は舞台よりもかなり低い位置にありますし)…と不安でしたが、きちんとこの席でも届きました。演奏側の問題かもしれませんが、サントリーホールより響きが良かった気がします(爆)
笑ってしまったのが、私の目の前の楽器は前半はコントラバス、後半のベートヴェンでは何もなかったことです。最後尾のコントラバスが私の斜め左側にいて…。(奥に座っている管の3人がばっちりと見えました。) それ以外は、指揮者とコンサートマスターさん以外、何も見えませんでした。
本当に端の端、なのです。

コントラバスの席は演奏者が自分で準備するようで、各曲毎に席の数を調節したり位置を移動させたりしていました。貴重品が入っているのか、舞台上まで大きなポシェットを持ちこまれている女性がいたり、弓に松脂を塗っている所を見ることができたり、と普段なかなか見えない部分が見ることができて、面白かったです。
でも見なくても良い部分も見えてしまった気がします。演奏中や楽章間に咳やくしゃみが遠慮なくオケの中から聴こえたり、コントラバスさんは眠そうにあくびしていたり… (そりゃ、昨日の今日で眠いかもしれないけどね。私だって仕事中はあくびするけどね。でもねっ!って気分)
「自分たちはオケの名前を背負っているんだ」という誇りのようなものが感じられませんでした。国民性でしょうか、何か軽かったです。オーラが無かった。(もちろん、世の中にはそういうオケがほとんどですが。)バイエルン交響楽団さんは舞台出ると指揮者が登場するまで客席向いて起立していて、椅子には座りませんし、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団さんは嫌味な位に自信と威厳に満ち溢れていましたし。そういった演奏以外のちょっとした部分で印象って変わってきますよね。

さて、本日もオケの間にたくさんのマイクが置かれていました。毎回…となると、NHKではなくBBCなのでしょうか。ネットラジオで近いうちに聴けるといいですね!

1曲目のストラヴィンスキー。今回のノセダ氏公演で私が毎回付き合う曲であり、昨日大変長く苦しく感じた曲。今日もか・・・ なんて思っていたのですが。
昨日一度聴いたせいなのか、本日はとても楽しんで聴くことが出来ました。曲本来の、そしてノセダ氏の生み出すリズムに。この曲のリズムとノセダ氏の腕と腰の動きが、私の頭の中でしっかりとペアで刻み込まれました(ははは) 結構 BBCの音色に合っている曲なのかもしれません。今日の演奏は違和感無かったです。

また、ノセダ氏を聴く場合、真後ろの中央ブロックで聴くよりも、少し左右にずらして聴いた方がいいかも…と思いました。ヤンソンスさんと違って大きく左右を向いて指揮される方ではないので、中央だとほとんど背中と腕(と腰)しか見えないのです。
本日、ノセダ氏の多彩な表情まで見ることが出来て(コントラバス奏者とほぼ同じ目線でしたから、苦笑い)、そういった意味でもたくさん楽しむことが出来ました。

2曲目は皆が待っていたハーンさんの登場です!
衣装は昨日と同じ。可愛らしさも同じ!!!
私の席からはノセダ氏に隠れてしまい、時々しかお姿を見ることが出来ませんでしたが、それでも可愛らしさは十分に伝わりましたv
それに、音だけ聴いていても十分納得出来るシベリウスです。昨日も思いましたが、ハーンさん独特の呼吸というか、テンポの取り方が、私は好きだなぁと再確認しました。カデンツァは本当に素晴らしい。誰にも真似することのできない、ハーンさんだけの世界が確立されています。
正確にきっちりと、強い感情を入れることなく弾いているのですが、ハーンさんの演奏はなぜかそれでも想像力が膨らみます。自分のこの曲に対する想像力をハーンさんの演奏に乗せることが出来るからなのかな、と思いました。だから技術面だけの感激に留まらず、感動に厚みがあるのですよね。(これは人それぞれの聴き方によると思うのですが。)

第1楽章の私の大好きな部分では、やはり鳥肌が立ちました。
ある1つの物語があって、そのクライマックスにどうしようもない位に感激したとすると、その感激と同じような どうしようもない位の感激がハーンさんの演奏にはありました。
この小さい体で、この若さで、どうしてこんな気持ちを人に起こさせるような表現が出来るのだろうって聴けば聴くほどハーンさんの魅力に引き寄せられてしまいますねv

残念だったのは、昨日同様第1楽章の最後の方でオケがもたついたように感じたこと。シベリウスってわざとソリストとオケとがずれるように演奏する曲だったかしら…と。私も詳しくないので強く言えないのですが。ノセダ氏の熱い(熱過ぎるとも言う。本日も叫びながらジャンプしておりました)指揮と迫力あるハーンさんの演奏に、オケ(弦)がついて行けていない…というか、ついて行く気があるのか君たちには、というように感じる瞬間でした。私の席の問題だったのでしょうか。
・・・そしてソリストを見つめながら「決め」のポーズでノセダ氏が第1楽章をフィニッシュ。音も決まれば本当に素敵な場面になったのにもったいない!

後半は楽しみにしていたベート―ヴェン第7番。
生でこの曲を聴くのはたぶんこれが初めてです(記憶が無いです)! 初めての指揮者がノセダ氏だなんて、ブラームス1番に続いて光栄です。
ベートーヴェンの曲はどれも素晴らしいですが(まだ知らない曲もたくさんありますが)、中でも7番のすごいところは全楽章素晴らしいということ。普通、苦手な興味のない楽章って1つの曲の中に1〜2楽章位あると思うのですが、第7番は全部好き。第2・4楽章は特に好きです。

険しい表情をされたノセダ氏の力のこもった一振りからこの曲は始まりました。
ノセダ氏の熱い指揮にBBCフィルは100%応えられていないような気はしましたが(何かが足りないのですよね)、でも曲そのものが素晴らしいから、こちらも気分が高まってきます。
そして今度は笑顔のノセダ氏。この曲でどんなことを表現したいのか、顔で何となく分かるような気がしました。表情が次々に変わっていきます。
指揮も素敵でした。時々わざと指揮をしないでオケに任せるところとか、ヤンソンスさんもきっとこんな感じの指揮をされるだろうなぁ…なんて思ったり。ノセダ氏の「ターンタタ、ターンタタ、タタタ…」という歌声(?)も聴こえてきました。

悪くないけど、でも機会があるならヤルヴィさん+ドイツカンマーフィルかヤンソンスさん+バイエルン放送交響楽団で聴いてみたいなぁ…なんて思いながら第1楽章がフィニッシュ。
(「普通」ではなくて「極上」の第7番が聴きたくなってしまって←我がままなのですよね)

そうしたら、ですね。
何と、ノセダ氏は胸の前に左の親指突き出して「Good!」とBBCフィルの皆さんにお伝えしていたのですよっ!!! すごく満足そうでした。
Goodなの? これでいいの? 本当に?! 良かったのは自分の指揮だけじゃないの???
と私は疑問符一杯でしたが(でも決して悪いわけではないのですよ)、ノセダ氏が満足されているならそうなのでしょう、と第2楽章からは肩の力を抜いてノセダ氏を信頼して(?)何も考えずに聴くことにしました。

そして2・3楽章は普通に楽しませていただきました。
このまま普通に第4楽章を聴いて終わってしまうのかな…と思っていたのですが。

びっくりする位、最高の第4楽章が私を待っていたのでした。

どんちゃん騒ぎの第4楽章。
個人的にはカラマーゾフの兄弟のモークロエでのミーチャたちの宴会のイメージを持っていて、(勝手な)思い入れも深いのですが。
ノセダ氏はBBCフィルと高速で一気に弾き上げたのでした。

これについては好みもあると思うのですが、でも第4楽章の持っている雰囲気・迫力は十分に伝わったのではないかと。居眠りしていた私のお隣さんも起きましたし(笑い)
私がいくつかCDやテレビで聴いた演奏は、音の強弱やテンポのメリハリがあって、音を小刻みにリズム良く表現されるものが多く、私としては少し物足りないな…なんて思っていたのですが。
今回、迫力重視でこれでもかっ!って位に爆発的表現をして下さいました。大満足。昨日の悲愴に引き続き、「やれば出来るじゃない!」という上から目線的な感想を述べたくなりました。
一緒に心の中で歌って、ミーチャとノセダ氏をダブらせたりして、十分に第4楽章を楽しみました。
(改めて、他のオケでも第7番が聴きたくなってしまいました。本当にいい曲ですね。)

BBCフィルはずるいです。このまま普通に演奏が終われば、BBCフィルってこんなものなのか…で私の感想も終わるのに、最後の最後で一部だけこうやって最高の演奏を見せて下さるのですから。
これだと、また来日した時に「聴きに行こうかな」ってなりますよね。この一部の感動を求めてまた。
アンコールのメヌエットも良かったです。
拍手でノセダ氏が何度も舞台を出入りする中、管の人が楽譜を裏に取りに行っていましたので(笑い)、今日は1曲弾いて下さるのかな♪なんて思っていました。

色々ありましたが、結果的には聴きに来て良かった… と思える公演でした。
皆が熱い気持ちで、雨の中を帰りました。

2008年3月15日 記

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