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BBCフィルハーモニック 2008年日本公演
【 2008年3月13日(木) at サントリーホール 】
 首席指揮者:ジャナンドレア・ノセダ  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン


■ ストラヴィンスキー:バレエ音楽「妖精の口づけ」より ディヴェルティメント
■ シベリウス : ヴァイオリン協奏曲 二短調 Op.47 vn:ヒラリー・ハーン
■ チャイコフスキー : 交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」

アンコール
■ バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 より 「サラバンド」 (ヒラリー・ハーン)
ジャナンドレア・ノセダ氏の衝撃的な指揮を体験したのは、諏訪内晶子さん+東京交響楽団さんとのシベリウスのvn協奏曲でした。2年前だったかな…と思って調べてみたら、昨年2月のことでした。だいぶ昔のように感じていました。この時聴いたシベコンとブラームスの交響曲第1番は今でも頭に焼き付いております。
「ものすごく好き」という訳でもないのですが(笑い)、でも機会があればまた聴きに行きたいなぁと思っていたら、今年はBBCフィルと共に来日! しかも、ソリストは一度生で演奏を聴きたいと思っていたヒラリー・ハーンさん! 大変楽しみにしていた今回のツアーでした。

サントリーホールの舞台上は段々の台が置かれていて(これを何と言うのか分りませんが)、後ろの演奏者が高い場所で座っているので、客席からも後ろまでよく見えるようになっていました。
オケの間には沢山のマイクが置かれていました。NHKFMかな…と思ったのですが、どこの局なのでしょう。カメラは残念ながら入っていませんでした。

舞台に現れたノセダ氏。
あれ…こんなにお歳の方だったかしら、と失礼ながらに思ったのですが(私の記憶ではもっと若々しかった)、実際まだ若いです。指揮ももちろん、前回感じたようにとてもダイナミックでこちらが圧倒されてしまうものでした。髪のせいかしら…
背が高く体格も良いので、指揮台に上がるととても目立ちます。そのせいか、演奏中は手がとても長く見えて、長い手を横に揺らしてオケ全体を指揮する姿は印象的なのです(手だけではなくて、声とか足のフットワークなどもですが)。

1曲目のストラヴィンスキー。私の知らない曲です。
1曲目ですし、短めの曲なんだろう・・・と思っていたら、4曲もある長めの曲。次のヒラリー・ハーンさんを楽しみにしている身としては、とても長く感じました。いつ終わるのだろうか…と(失礼な)。
初めて聴きましたBBCフィルの音色は、特別「これ」というオケ独自の特徴をお持ちではないようでした。有名なオケなので、もう少し「何か」があるのかなと思っていたのですが。少し残念でした。
個人的には管と打楽器がなかなか良いなぁと思いましたが、その反面弦が私好みではありませんでした。もう少しまとまった音が出たらいいのに、と。コンマスさんがとても張り切っていまして、コンマスさんのヴァイオリンの音色が強く全面に出てしまうのです。ソリストではないのだから、皆で一致団結した方がいいのでは…なんて 注文色々です。

1曲目の時点でノセダ氏は汗びっしょり! 額から汗はブンブン飛びますし、指揮されている指先からも汗が。オケの1列目は楽譜に汗が飛んでいるのではないでしょうか。
腕をぶんぶん振って、しゃがんだり腰動かしたり、大変な運動量でした。以前のように「タンタンタン…」という激しい歌声はあまり聴こえてきませんでした。

簡単な席の移動の後、ヒラリー・ハーンさんがノセダ氏と一緒に登場!!!
きゃ〜っ! 可愛い〜〜〜!!!
横に立っているノセダ氏も「ね、かわいいでしょう?」とまるで父親のように笑顔で会場からのハーンさんに対する拍手を見守っていました。

初めて聴いたハーンさんの1音。
自分の好みにジャストフィット! という音ではないのですが、でも他の演奏家には無い、とても意思のはっきりとした音色で迷いがありませんでした。何度でも聴きたくなるような演奏でした。

ハーンさんの音色のイメージは、人間ではなく天使とか、何か別の生物であるかのようでした。
ステンドグラス、モザイク画…違うな。うーん、何と言うのでしょうか「これ」は。私の頭の中に1枚の絵がイメージされているのですが、それを何と言うのか忘れてしまいました。
「人を包み込むような大きな愛」とかそういう音色ではないのですよね。「優しい」音色でも無い。「女性らしい」訳でもない。でも、上手く表現出来ませんが すごく安心できる音色でした(技術面とは別の意味で)。

諏訪内さんとのシベリウスでもそうだったのですが、ノセダ氏は このコンチェルトの指揮が大変熱い。1曲目以上に力が入っていました。
ハーンさんはサラ・チャンさんのような演奏とは違って、最小限の動作で演奏される方でした。なので、ノセダ氏の指揮が目立つ、目立つ(私はこの指揮が見たかったのですがv)。そして汗も第1楽章からバシバシ飛び散ります。

諏訪内さんの時と同様、オケの「ジャカジャン!」で ノセダ氏 唸り声と一緒に熱くジャンプ!!!
この曲がとても好きな方なんだな…と思いました。>違うかもしれませんが。

ハーンさんは というと、ソリスト演奏お休みの部分では 左手はヴァイオリンを構えたまま、右手の弓は下におろして、オケを右に左にとじっくりと見まわしていました。そして一緒になって軽く口ずさみながら、体を動かしていました。ハーンさん自身はオケと一体化されているなぁという気がしました。ハーンさんの弾き振りを見てみたいと思いました。とても良い感じがします。

第1楽章の私のお気に入りの部分もばっちり。鳥肌が立ちました。ハーンさんは何をイメージされてこの部分を弾かれているのかな、など思ったり(とても良かったので)。
オケも良かったのですが、第1楽章の最後の部分だけは良くなかったです。
ハーンさんとノセダ氏の世界について行けていない気がしました。残念。

また、第3楽章の出だしが速くて驚いたのですが、それに続くハーンさんの演奏も速く、興奮の中終わったような気がします。ハーンさんの腕を見せつけられたような気がします。すごかった…!

会場大拍手の中(当然です!)、「バッハ ノ サラバンド デス」 という とても綺麗な日本語と声でハーンさんがアンコールを弾いて下さいました。
ハーンさんは声も神秘的でした… もちろん、バッハもとても神秘的。
この時 ノセダ氏はオケの後ろの席に座って、満足そうにハーンさんの演奏を聴いていらっしゃいました。 娘を見守る父親みたいでした。

後半はチャイコフスキーの交響曲第6番です。
私は家にあるレニングラード・フィル、ムラヴィンスキー指揮のCDが気に入っています。
だからでしょうか。BBCの演奏は「チャイコフスキー」「ロシア(ソ連)」というイメージではありませんでした。これはこれで良いのですが、本来のこの曲とは『別物』といった感じで。
ノセダ氏の指揮のためかもしれませんが、すごく元気な「悲愴」なのですよね。第1楽章での胸がぎゅっとなるような、悲しく美しい 旋律とかが全くない…(そこがいい所なのに!)
ノセダ氏はこの曲では指揮棒を使われていなかったように記憶しています。手の細かな動きでゲルギエフさんを思い出しました(そして、ゲルギエフさん+マリインスキーでこの曲聴いてみたいな…と思ったり)。

―― しかし、です。

第3楽章がすごかった!!!
チャイコフスキーなんて枠を放り投げての、ノセダ氏+BBCフィルの「悲愴」。
BBCはマーチみたいな分野がとても似合っていると思いました。威風堂々とか。
ボレロみたいに段々と演奏が盛り上がって行って(表現が間違っているかもしれませんが)、最後は大行進。すごく格好良かったし、こちらも興奮しました。
それまではノセダ氏の指揮が1人で浮いている感もありましたが、やっとオケと一体化したような気がしました。こんな演奏があったなんて・・・という気分。BBCではこういう演奏をたくさん聴きたいです。

キャーキャー言っていたハーンさんのシベリウスも吹き飛んでしまい、帰りの私の頭の中は この第3楽章の旋律で一杯でした。

コンサート終了後はヒラリー・ハーンさんのサイン会がありました。
当然ながら、長蛇の列! この時、21:30を過ぎていました。
1人1人にサインを簡略することなく(ものすごいスピードで)書いて下さる姿に頭が下がりました。少しお疲れな様子でしたが、でも笑顔を絶やすことなく一生懸命な姿を見て 何も感じない人なんていないはず。すごいファンサービス精神。本当にありがとうございました、という気持ちで一杯でした(頭の中は悲愴なんですけれども…)。

2008年3月16日 記

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