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バラホフスキー
麗しのヴァイオリン

【 2007年12月2日(日) in 東京オペラシティ 】
ヴァイオリン:アントン・バラホフスキー  ピアノ:ウラジミル・ミシュク


■ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 op.24 「春」
■ パガニーニ:カンタービレ ニ長調 op.17
■ パガニーニ / クライスラー:ラ・カンパネラ(ヴァイオリン協奏曲第2番 第3楽章)
■ ショパン / サラサーテ:ノクターン 第2番 変ホ長調 op.9-2
■ ショパン / サラサーテ:ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作
■ クライスラー:美しきロスマリン op.55-4
■ クライスラー:愛の悲しみ
■ クライスラー:愛の喜び
■ サン=サーンス:序奏とロンド・カプリッチョーソ op.28
■ フォーレ:夢のあとに(3つの歌 op.7-1)
■ サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン op.20

アンコール
■ ポンセ / ハイフェッツ:エストレリータ
バラホフスキーさんの演奏を初めて生で聴いたのが、2005年の11月末。クラシックの世界を知り始めて、川畠成道さんのファンの方とのやりとりがきっかけで知った演奏家でした(ですので、バラさんの演奏を聴くたびに、この方のことを思い出します)。
それから昨年は一度もバラさんの存在を感じることなく過ぎて行って、2007年の今年。夏のヒーリングクラシックス、秋のバイエルン放送交響楽団、そして本日のリサイタルと、5回も演奏を聴く機会に恵まれました。すごくラッキーな年でした(笑い←もう、2007年を締めようとしている私)

先に書いてしまいますと、今日の演奏はとてつもなく素晴らしくて、私はバラさんの演奏が大好きなんだ、と改めて確信致しました。この気持ちを2年の間、ちょっと忘れかけていたような気がします(爆) ヒーリングクラシックスでもきちんと思い出せていなかったです。
といいますか、バラホフスキーさんだけでなく、私はバラホフスキーさんとミシュクさんのデュオが大好きなんだということに、気づかされました。ミシュクさんのピアノ無くしては、今日のこの感動は無かったと思います。

この御2人の息はぴったり。特別念入りにお互いの演奏を確認している訳でもないのに、どうしてここまで音の流れが合うのだろう…と思う位でした。また聴きに行くなら、ぜひこの2人の組み合わせで、と強く思いました。

本日のオペラシティは1階席はほぼ満席。2階席は中央ブロックはほぼ満席。両サイドとP席に少しずつ人がいる、という感じでした。客層的には家族連れあり、恋人同士あり(羨ましい!)、ご年配同士あり、で、どういった方たちが集まったのかは読めませんでした。
ただ、最前列にいらっしゃった数名の方とP席にいらっしゃった数名の方は、ずっとバラホフスキーさん&ミシュクさんを応援されている方なのだろうなぁと感じました。いいですよね、こういうの!気持ちがこちらまで伝わってきました。

オペラシティの舞台に強い照明が当たり(最近やけに強い気がするのですが、気のせいでしょうか…)、バラホフスキーさんとミシュクさんが登場!
2年ぶりのミシュクさん…前回より少しスリムになって、髪の毛がやけにフサフサで、すごく格好良くなった気がするのですが(爆)>目線はそこか!
これは冗談などではなく、本当にロシア風ヨン様みたいな感じで、素敵でした。

対するバラホフスキーさんは、先日のバイエルン放送交響楽団さんに まみれた時のあの輝きは何処へ…といった感じで(失礼な)、ロシア青年に戻っていました…いいですけど、別に。服も燕尾服ではなく、動きやすい上下黒のラフな格好でした。(ミシュクさんは黒のスーツです。)
気になったのは、最初鼻と頬を赤くされていて、熱でもあるのかな…と。先日も咳込んでいらっしゃいましたから。気のせいかもしれませんが。

1曲目のスプリングソナタが始まりました。
これが素晴らしかった…(感涙)
恐らく、私が今までで聴いた中で一番なのではないかと。もちろん、私個人の好みの話です。
昨日私はインターネットラジオで、大好きなオーギュスタン・デュメイさんのスプリングソナタのライヴ録音を聴きました。それよりも、です。(いえ、これもすごく良かったのですが…!)>デュメイさんの生のスプリングソナタを聴いてみたいです。放送と生とでは全然違うと思いますし。

ベートーヴェンはこの曲を「春」をイメージして作った訳ではありませんが、呼び名が先行して、私はどうしてもこの曲を聴くと春を連想してしまいます。
御2人の演奏はすごく優しくて暖かくて、寒いロシアの国の人だからこそ(現在どこに住まれているのかは知りませんが)、春を迎える喜びというのを本当に知っていらっしゃるのだろうなぁ…と感じる演奏でした。東京育ちの私などには、到底表現出来ない領域です(笑い)

バラホフスキーさんの音色は元々好きですから、その素敵な音色と完璧な演奏が素晴らしいのはもちろんなのですが、ピアノのミシュクさんが良かった!
透明なガラス玉のようであり、またシルクのようでもある音色がぴったりとバラさんのヴァイオリンと絡み合って、聴いていてすごく気持ちがいいのです。こちらも優しい気持ちになれそうな気がしました。

ああ、幸せ…

と、思っていた矢先ですよ。演奏が始まって数分しか経っていない、まだ最初の時。
後の席で、ものすごくショッピングバックをガサガサする音が起こり始めて。それもかなり長い間。
今すぐ出て行ってくれ、と。また隣の人はここまでひどいなら注意してくれ、と言いたかったです。
今日のオペラシティは音の響きがとても良くて、バラさんのヴァイオリンもミシュクさんのピアノも響き渡っていたのですが、同時にショッピングバックの音もいつも以上に響いておりました(爆)

そうしたら、今度は2階席の左サイド(バラさんからすれば右側の真上)のおばさまが、膝にあった袋のようなものを床に置きだして、それもまたガサガサ鳴って…(涙)舞台の上で、あなたは何やっているの?!と、もう本当に怒りたかったです。
こんなに素敵なスプリングソナタは滅多に聴けるものではない、ということを分かっているのかしら、と。この貴重な瞬間の価値を。

もう、袋のガサガサ音は曲が始まるごとに発生して(なぜが、曲が終わった時などはガサガサしないのです)、演奏を相当妨害していました。どんな袋を触ればあれだけのガサガサ音が出るのか聞きたい位。普段はアンケートは書かないのですが、本日は「お客様のマナーが大変悪く、演奏者にも失礼だったのでは」と苦言を書いてしまいました。
袋だけでなく、演奏中のおしゃべり、また意味不明な曲中での拍手(これは仕方ないかもしれませんが、でも流れとしてどうかと←後で記述します)が度々起こったり、聴く方もですが、演奏する方たちのテンションもかなり下がったのではないかと思います。
私の中での客層の悪かったコンサートは今までダントツに川畠成道さんの三鷹で開かれたチャリティーコンサートだったのですが、それと同じ位のものでした。
バラさんのオペラシティの公演では、いつもこんな感じの方々が集まるのだとすれば、私は遠くても地方の公演に聴きに行きたいと思いました。(今年はどうしても日程が合わなかったのですが。)
私が細かすぎるのだとも思いますし、もっと気軽に楽しめばいいじゃないかという声もあると思うのですが、だってそれだけ楽しみにしていたのだもの! そして気持ちよく演奏していただきたいし、相手の気持ちを考えれば、最低限のこと位誰だって出来ると思います。本当、怒っています、私。

と、一気にこんな所で愚痴を書きましたが(書いてよかったのでしょうか)、そういう方は極一部の方で、他の方たちは今日の演奏をたっぷりと楽しみました。

前半のメインは「ラ・カンパネラ」。
バラホフスキーさんのラ・カンパネラは上手いし、素晴らしいのですが、夏のヒーリング・クラシックスの時の演奏から、さらに一段と良くなっている気がしました。バラホフスキーさんは、日本で演奏される曲目はほとんど同じなのですが、だからこそ、時期によっての演奏の違いも分かる気がして。どの曲も、どんどん曲の世界が広くなっていらっしゃるように感じます。
演奏後は、私の後ろの席のおじさまも、大興奮(笑い)拍手が一段と大きくなりました。

前半はバラホフスキーさんの前に譜面台がありましたが、後半は取り払われています。
バラホフスキーさんの演奏は、まるで社交ダンスをするかのように、華麗にそして幅広く動き回られます。譜面台が無い今、もう、動きたい放題です。

前半同様、ミシュクさんとのコンビネーションは抜群です。
もう、「良かった」以外、書くこともないのですが(笑い)

ショパンのノクターン 第20番だったでしょうか。バラホフスキーさんとミシュクさんは御2人の間に独特の『間』というものをお持ちなようで、それは演奏される姿を見ていれば誰でも分かることなのですが(ヴァイオリンは構えたままだし)、その大事な間を作っている間に、演奏が終わったと勘違いされた一部の方が拍手をし始めたのですね。これはソナタにおいての楽章間の拍手とは違って、曲の流れが台無しというか、どうなのかな…と疑問に思いました。私も分からない曲は演奏者が礼をして初めて拍手しますし(笑い)

未だに覚えているのですが、2年前のコンサートでは、序奏とロンド・カプリッチョーソでまだ中盤頃なのに そういった拍手が起こり、なぜここで…と疑問に思ったことがありました(他の演奏家で、ここで拍手が起こった場面に遭遇したことはありません)。
でも、本日もロンカプの同じ場面で拍手が起こったのです。間があるわけでもないし、すぐに次の音に入る場面なのに。そう拍手をさせたくなるような演奏だった…とプラス思考でいけばいいでしょうか(苦笑い) バラさんの時に限ってなぜ…って思います。
バラホフスキーさんを長年応援されている最前列やP席の方々は、この会場の状態をどう感じていらっしゃったのかも気になりました。これは、いつものことなのでしょうか。私は残念でした。

演奏後は、アルバムを購入された方を対象としたサイン会。
とても不思議なシステムで、アルバムを1枚でも購入すれば、どんな所にでも何枚でもサインしていただけるのです(チラシとかパンフとか何でも)。そして一緒に写真撮ってもOK、みたいな。購入すれば何でも許されるような状況でした(爆)

私がどうしてもお伝えしたかったのが、バイエルンの放送交響楽団さんの際のマーラー5番の感動です。「私は聴きに行きました、すごく感動しました。」ということをどうしても知っていただきたかった。
3日間ほど、仕事が手につかなかったし(笑い) あれは、すごかったです。
今日の客席は〜と怒る前に、他のコンサートの感想を第一に述べる自分が一番マナー悪いのかもしれません。でも、係りの方がどれだけ立ち止まるお時間下さるか分からなかったので、まず言いたいことを先に言ってしまいました。もちろん、今日も素晴らしかったですが!

バラホフスキーさんは「あれを聴いたのですか!」と笑っていました。そして「ありがとう」と。
でも、それよりも注目はレーピンさんのCD。
本日はバラホフスキーさんも共演されていますワディム・レーピンさんの「ライヴ・アット・ルーヴル」のアルバムを持って行きました(レーピンさんとプロコフィエフの2つのヴァイオリンのソナタを演奏されています。どちらがどちらのパートを弾かれているのか私には全く分かりませんが、素敵な演奏なのですよv)。
そうしたら、すごく喜んでくださって! 隣に座られているミシュクさんに「僕、これも演奏したんだよ〜」って見せていました。でも、ミシュクさんは全く関心を持たず「何それ? ふーーーん。」みたいな感じでした(笑い) そういう御2人は、きっと仲がいいのでしょうね。
また御2人のコンサートがあったときは、絶対に聴きに行こう(でも出来ればオペラシティ以外で)、と心に誓って会場を後にしました。
良い演奏が聴けて、幸せです。この感動を、今度は忘れないようにしなくては。

vadim repin au louvre

2007年12月2日 記

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