戻る

5世紀を跳ぶヴァイオリン
【 2007年12月1日(土) in すみだトリフォニーホール 】
ヴァイオリン:ネマニャ・ラドゥロヴィッチ


■ J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV.1001
■ イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 作品27-2
■ ミレティチ:ダンス
■ J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 二短調 BWV.1004
■ イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 二短調 作品27-3「バラード」

アンコール
■ パガニーニ:24のカプリースより 第13番 ト短調「悪魔の笑い声」
■ イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 第4番より第1楽章
以前書いたことがあるのですが、私のネマニャ・ラドゥロヴィッチ君の演奏との出会いは、今年のラ・フォルジュルネ・オ・ナントのインターネット放送でした。第一印象が悪すぎて(ナントの会場は拍手喝采のようでしたが、大変私好みではないツィガーヌでした)、この人のリサイタルは行くことはあるまい…と思っていました(笑い)
そしてラ・フォルジュルネ・オ・ジャポンで偶然「動物の謝肉祭」の演奏を聴き、ネマニャ君の持ち前の明るさ・笑顔、そして不思議と演奏もラジオで感じたような悪いものではなく、芯のしっかりとしたものでしたので、私の考えを改めたのでした。
今回すみだトリフォニーホールで無伴奏ということで、これはぜひ聴きに行かなくては、とチケットを取りました。すみだトリフォニーホールはいいホールですので、きっとヴァイオリンの音が美しく響くかと思って(実際、その通りでした)。

私にとって初めての無伴奏のリサイタルでしたが、「私には3年ほど早かったかも…」と思いました。演奏が悪いとか意味が分からないとかそういうことではなく、無伴奏だと息を抜く暇がないというか、一生懸命集中して音を聴いてしまって、終わった後の疲労感がものすごくて。
その聴きどころのポイントがもっと分かるようになってから、ぜひ聴きたいなと(笑い)

舞台に元気よく現れたネマニャ君は、5月同様、ものすごい頭をしていました。ライオンというか、獅子舞というか… 思いっきり頭(髪というべきか)を振って挨拶する姿は、とても若々しくて可愛いです。
それだけで、こちらも元気をもらった感じ。>演奏前からこれですから…

曲については、最後の2曲以外私の知らない曲ですので、詳しく述べることが出来ませんが、どれもエネルギー溢れるものでした。こんなに弾いて、よく体力持つなぁと。
ネマニャ君の演奏スタイルは、一見パフォーマンスと言ってもいい位、体全体を激しく動かします。スタイルがいいから、見た目的にも良いのですよv
でもそういうことは他の演奏家だって出来ることで、ネマニャ君のすごいのは、それでいて、音に全くブレが無い…ということでしょうか。音がすごく安定しているのです。だから目を閉じて聴いていると、こんな感じで演奏しているとは想像がつかないと思います。
そして、もう弓がバッサ、バッサ、と切れまくります(笑い)一楽章ごとに気持ちが悪い位に。こんなに弓を切る演奏家は私、初めてです(と言っても 演奏が雑、とかそういう訳ではないです)。

そして、演奏後は笑顔で少し照れながら挨拶、そして扉の向こうまで小走りで退却。
走って去る演奏家も初めてです(笑い)すごくフレッシュ感がありました。

シャコンヌで有名なバッハのパルティータ第2番。
先日、川畠成道さんの演奏でシャコンヌのみを聴いてきたばかりです。
演奏が終わったら、うしろのおじさまが隣の人に「これ、速くないか?」と、ボソッと言ったのです。

同感、同感!!!

と、思わず心の中で答えてしまいました。
ネマニャ君の2番は、ものすごく速かったです。ですので、飽きることなくあっという間に終わったのですが、でももう少しゆっくり目の方が私は好きかな…と思いました。演奏・テクニック面では言うことありませんが! ヴァイオリンの音そのものも、なかなか良いです。
第5楽章のシャコンヌに入る前は、少し間を取って落ち着いて入ったのですが、でも最終的に速くなりました(笑い) 私にとってこの曲は、自分の心と会話しながらしみじみと聴いて行きたいものであるので、ちょっと違うかなぁと。演奏家によって色々な表情が出てくるのがこの曲の醍醐味であるのかもしれませんが。私はやはり、川畠さんのシャコンヌが好きです(シャコンヌと言わず、2番通してぜひ聴きたいものです)。

私が一番楽しみにしていた2番がこれかぁ…と、少し残念、でも全体的にとてもいい演奏ですので(これもアリかな、という)良いコンサートだったな、と自分の中でまとめに入りつつあってのラストの曲、イザイの3番「バラード」です。

これが、すごく良かった!!!!!

ネマニャ君にぴったりの曲だと私は思いました。
この曲は異世界に行ったような、少し不思議な雰囲気の曲だと思うのですが、その不思議感が良く表れていて。ネマニャ君独特の間やテンポがあって、これまでのような違和感がありませんでした。
何と言っても、ラストの数分間が圧巻!
あの速さ、そして超絶技巧な曲であるのに、その正確さ。彼の力が良く分りました。
その音の迫力に、こちらはどんどん引き込まれてしまいまして、イザイのバラードってこんなに動的な曲だったっけ、と新しい側面を知ったような気がします。(本当にすごかったの!)

終わると会場中、大きな拍手とブラボーの声が。
この1曲が聴けただけでも、聴きに来て良かった…と思いました。

コンサート終了後にはサイン会があって、会場にはこれだけ人がいた?と思う位、長蛇の列でした。
ホールは少し寒い位でしたのに、現れたネマニャ君は黒の半袖!
それだけエネルギー使われて、暑いのでしょうね。でも、見ているこちらは寒かったです。
あれだけの演奏をした後だというのに、1人1人にじっくりと笑顔を振りまく好青年で、これは絶対にファンが増える…と思いました(笑い) ちなみに、彼は左利きのようです。
今度は、ぜひコンチェルトを聴いてみたいです。ネマニャ君の演奏は、オーケストラできっと映えそうな気がします。

2007年12月2日 記

▲上へ
本嫌いさんの読書感想文〜カラマーゾフの兄弟はいつも貸出中?!
YUKIKOGUMA   All Rights Reserved