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マリインスキー歌劇場管弦楽団 2007年日本公演
指揮:ワレリー・ゲルギエフ

【 2007年11月4日(日) in 横浜みなとみらいホール 】

リムスキー=コルサコフのオペラ作品集
■ 歌劇「プスコフの娘」序曲
■ オペラ・バレエ「ムラーダ」よりW貴族たちの行進W
■ 歌劇「見えない町キーテジと乙女フェヴローニャの物語」組曲
■ 歌劇「金鶏」組曲
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■ ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」全曲(1910年版)
アンコール
■ リャードフ:交響詩「バーバ・ヤガー」



【 2007年11月11日(日) in 所沢市民文化センター ミューズ アークホール 】

■ ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
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■ チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op.64
アンコール
■ チャイコフスキー:くるみ割り人形より「花のワルツ」
■ チャイコフスキー:くるみ割り人形より「トレパック」



【 2007年11月14日(水) in サントリーホール 】
ピアノ:イェフィム・ブロンフマン


■ チャイコフスキー:交響曲 第2番 ハ短調 Op.17「小ロシア」
■ プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26
アンコール
■ プロコフィエフ:ソナタ 第7番 第3楽章
■ スカルラッティ:ソナタより(番号不明)
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■ ショスタコーヴィチ:交響曲 第15番 イ長調 Op.141
私にとっては初ゲルギエフさん。3公演行ってまいりました!!!
パンフレット見るだけでも7パターンものプログラムを用意されていて、また日本公演中の移動も激しそうで(東京→名古屋→熊本→福岡…と毎日移動だったり)、色々な意味で凄い方だな、と思っていました。

私の友人にゲルギエフさん大好きな方が何人かいらっしゃって、昨年ヤンソンスさん&コンセルトヘボウに大感激した私に皆さん「ヤンソンスさんもすごいけど、ゲルギエフさんもすごいから!」と言われていたこともあり、大変楽しみにしていました♪

記念すべき初となる横浜みなとみらい公演。
この時は私、あまりゲルギエフさんの魅力を感じませんでした…
曲が分からないということも大きいと思うのですが(火の鳥苦手ですし)、私はもっとパワフルな、爆発的な指揮をされる方なのかと思っていたので、あっさりとしていて物足りないといいますか。
前日来日されたとも聞きましたので、お疲れなのかなぁとも思いました。
ヤンソンスさんの時に感じた、一振り目のオーラのようなものが私には伝わってきませんでした。
私はこの後マリア・ジョアン・ピリスさんのリサイタルもありましたので、気持が半分以上、そちらへ向かっていたというのもあります。
クライマックスの部分は力が入って、素敵でしたけれども♪ 絶対皆が言っている、皆が感動しているゲルギエフさんって今日のこの人ではないんだ! と思いながら聴きました。

マリインスキーの方々は、本当、ロシアの方だなぁ…と感じました。女性は皆さんお美しい! 男性は、コンマスさんが小さい方だったというのが強烈な印象として残っているのですが、他はカラマーゾフの兄弟に出てきそうな人とか…セッター(レガーヴィ)みたいな方がいましたよ! セッターってカラ兄弟に出てくる森の売人なのですが(笑い)ずっとその方をセッターと心の中で呼んでいました。
他のオーケストラの方々に比べて、庶民的な感じがしました。私の席からはそういうおじ様ばかりが見えていたからかもしれません。

演奏が終わっても「どうだっ!」という、自信満々な態度は無く、真剣な表情で隣の方とボソボソ話し合ったりしているので、「え…もしかして、今の演奏満足出来なかったの?反省点とかあるの?!」と、変に深読みしてしまいました。
私は美しい系の音色が好みなので、コンセルトヘボウの時のように「あ、これだ!」という直観的な無条件な感動というものは感じられず、マリインスキーさんの皆様の態度とかで、良かったの?悪かったの?と判断する部分がありましたので、結局この日は不完全燃焼で終わりました。
皆が言っているゲルギエフさんの魅力って、何…?という気持ちでいっぱいでした。

続いて所沢公演。会場のアークホールは昨年ヤンソンス&コンセルトヘボウで大感動した思い出のあるホールです。その時に偶然席が隣になった友人が「ゲルギエフさんもすごいから!」ということで、今回チケットを手配して下さいました♪(ありがとうございます!)
話は1年前からつながっているのですv
また、この公演は私の大好きな「春の祭典」もプログラムにありましたので、楽しみにしていました。
この曲も、名古屋公演のヤンソンス&コンセルトヘボウで聴いて気に入ってしまい、帰りに名古屋駅でなぜかゲルギエフさんのアルバムを買って帰ってきた…というつながりがあります(笑い)

みなとみらいでは空席も目につきましたが、今回はほぼ満席!
人が埋まると、とても暖かな空気に包まれるホールです。改めて、良いホールだなぁと思いました。また機会があったら聴きに来たいです(家から遠いけど、涙)。

大きな拍手の中、ゲルギエフさんが登場!
みなとみらいの時と違って、少し笑顔を見せて下さいました(…そんな気がします)。
指揮も何か違う。クライマックスだけでなく、最初から気合いが入っているような。曲の違いなのでしょうか。こちらもテンションが上がって来ました(笑い)
ゲルギエフさんは前回も今回も指揮台は無し。それで丁度バランスが良いということは、背が高い方なのでしょうか。ヴァイオリニストのオーギュスタン・デュメイさんが198センチ程で指揮台をやはり使いませんでしたので、同じくらいなのかなぁと思いました。

友人曰く「ゲルギーは管を鳴らすからねー」ということなので、そういうことであれば納得なのですが、 管楽器と打楽器のボリュームがすごすぎました。
確かにアルバムでもすごいのですが、生はもっともっとすごい!
私は特に「いけにえの讃美」とか「祖先の儀式」あたりの後半部が好きなのですが、もう、管が鳴りすぎて音が潰れていて(と私には聴こえました)、そこには旋律というものが感じられず、「何なんだ、これは…」という気分でした(ははは) 衝撃的でした。
全体的にこの春の祭典は良かったのか悪かったのか私には分りませんでした。
私の好みではない…というのが正直な気持ちです。
でも、ゲルギエフさん御自身が満足そうでしたので、こちらも気分が良かったです。今日はきっと良い演奏をされているのだろうなぁと思いました。

曲が始まった時、空調が強かったのかコンマスさんと隣の方が見ていた楽譜が上からの風でめくれてしまい、押さえるのに苦労していたのが印象的でした。最初はヴァイオリンの柄で押さえて弾いていたのですが(大変!)、途中からコンマスさんがサッとハンカチか何かを出して、それを押さえにしていました。この光景を見て、昨年のレーピンさん&ゴランさんの時のツィゴイネルワイゼンを思い出しました。この時も楽譜がめくれてしまって苦労されていたのですよね。

後半のチャイコフスキー第5番。
これが、私のハートとがっちり握手!みたいな(笑い)
大変に素晴らしい演奏でした。ゲルギエフさんもマリインスキーの皆さんも輝いていました。
やっとゲルギエフさんの音楽に共感出来ました。良かった…(感涙)
皆が言っていたのは「これ」だったのか、と。本当に素晴らしい。気持ち、分かりました。

先程まであれだけガンガン音を鳴らしていた方々が(失礼な)、こんな繊細な音を出せるんだ…というような、180度イメージを変えたような出だし。
そして段々と演奏が熱くなってきます!!!
チャイ5は曲そのものも素晴らしいですが、その魅力を何倍も何十倍も引き出されていました。

指揮台が無いものだから、ゲルギエフさんも動く、動く。コンマスさんの譜面の前までかぶるようにして指揮したり(たぶん、この御2人楽譜読めませんよね…)、右斜め後ろにどんどん下がって行って(舞台から落ちてしまうのではないかと)、後の方に指示出したり。
ゲルギエフさんは夢中になると、前髪を左から右へ掻き上げるクセがあるようなのですが(そして、演奏後は髪の毛がめちゃくちゃに)、何度も掻き上げられていました。

この5番が特に素晴らしいなぁと思ったのは、作られた音楽なのではなく、皆さんのごく当り前な精神をそのまま演奏に乗せらている気がしたことです。これがよく言われる、ロシアの風とか匂い…というものなのでしょうか(笑い)壮大な曲ながら、肩に力を入れることなく、むしろ涙を流しそうになる位に安心して聴かせていただきました。

第4楽章は「勝利の行進曲」だと思っているのですが、そうなると勝者・敗者の関係で、どうしても上から目線的な演奏になる(聴こえる)はずなのですが、そういうのが無く、聴いていて「平等」というような言葉が頭に浮かびました。物質的な勝利なのではなく、精神的な勝利…というように感じました。心の底からじわりとくるような。

後半からハープが舞台上に置かれていたのですが(チャイ5では使いません)、アンコールの花のワルツで素晴らしいソロを聴かせて下さいました♪ 音が輝くように綺麗でした。
アンコールでもゲルギエフさんは、チャイ5の勢いがまだ冷めないのか 熱い指揮をされていました。
ホール中、ブラボーの嵐でした(爆) 言い過ぎな気もしましたが、この演奏なら納得です。
私はゲルギエフさんのことは全く知らなくて(調べてもいなくて)、現代音楽系がお得意の方なのかとなぜか思い込んでいましたが、チャイコフスキーがとても良くお似合いなのですね! チャイコの3曲はどれも良かったです。また聴きたい位です。
きっと私は今後チャイ5を聴くたびに、この日のゲルギエフさん&マリインスキーの演奏を思い出すのだろうなぁ!

さて、私にとって今年最後のゲルギエフさんのコンサート。サントリーホールです。
この日は頑張ったのですが、どうしても1曲目には間に合いませんでした(涙)
>というか、仕事がある上、いきなり夕方に席替えなんてするなーっ!!!と言いたい(苦笑い)
でも1曲目が長かったおかげで、2曲目がきちんと自分の席で聴けただけでも喜ばなければ。
サントリーホールに着いたのが開演45分後でした。
丁度舞台にピアノを移動されていた時で、「これから2曲目が始まりますので十分間に合いますよ。安心して下さいね。」と満面の笑みで係りの方に迎えられ(なぜか皆様笑顔でした)、3人の方に引き継ぎながら席まで案内してもらいました。
ブロンフマンさんに間に合ってよかった…

客席数が多いホールのせいか、本日は空席がちらほらありました。
ブロンフマンさんなのに。ショスタコなのに。
ピアニストのブロンフマンさん。私もチケットを取った時は何も知らなかったのですが、調べてみると2004年のサントリーホールでのブロンフマンさん&ゲルギエフさん&ウィーンフィルのラフマニノフ3番は有名…いえ、伝説だそうで。私も昔家で録画をしておりまして、この公演の前に少しだけ見てみました。うわさ通り、すごい演奏でした。ですのでとても楽しみにしておりました♪

ピアノの移動が終わり、第2ヴァイオリンの方(もしかしたらヴィオラですか?オケの配置はよく分りません)が再び席に戻られますと、ゲルギエフさんとブロンフマンさんが舞台に登場!
ゲルギエフさんは大きな方だと思いますが、ブロンフマンさんは身長も体格ももっと大きい!
そして、パンフレットの写真とは別人(写真の変更を希望!)。今の方が素敵な方です。

私は正面の席でしたので、ピアノの蓋で完全にゲルギエフさんは見えませんでした(爆、いいですが)
この協奏曲ってすごい曲ですよね… ピアノがガンガン最初から最後まで弾き続けて、最後はこれでもかって弾いて終わる。聴いていて大変気持ちが良いですが(圧倒されますし)、弾かれる方は大変だろうなぁと。

ブロンフマンさんのピアノはとても不思議。
先日聴いたピリスさんのピアノはピリスさんの音に感情や思いがすごく乗っていて、1音1音が重いものでしたが、ブロンフマンさんのピアノは打楽器みたいで…感情が音に乗っている気配は無く、メロディよりもリズム重視…というのでしょうか。「音を聴かせる」という意味が普通の演奏とは少し違うような気がしました。だからといって、雑とか下手とかそういうものではなく、上手いし、迫力あるし、こちらも息をするのを忘れてしまう位に素晴らしい演奏でした。
曲がどうこう言うよりも、「ブロンフマンさんブラボー!」な演奏でした。『体で感じるクラシック』というものがあるのでしたら、こういうものを言うのでしょうね。
ラストの激しい部分では、手の動きがとても速くて、空中にブロンフマンさんの手の残像が見えるくらいなのですよ。何という人なんだ… 聴き終わった後の、あの爽快感! ありがとう! という気持ちで一杯になりました。

驚いたのがアンコール。
私はプロコフィエフのソナタは当然(?)知りませんので、何を弾かれているのかはその時分かりませんでした(隣のおばさまは「おぅ!」と、第1音を聴いた時点で感動されていました)。
が、先ほどの協奏曲と同じ…いえ、それ以上の集中力と迫力でガンガン弾き始めました。
ブロンフマンさんは大汗掻いて一生懸命弾いていて。大きなブロンフマンさんにはピアノはまるでおもちゃのよう。あまりにもすごすぎて「なぜこれほどまでに彼はピアノを弾いているのだろうか…」と疑問に思い始めた程。先程あれだけ弾かれたのに。もう、誰も彼を止めることは出来ない状態(爆) マリインスキーの方々も、この姿を目の前にして もう笑うしかなく。「すごいな」って。
当然大きな拍手が沸き起こり、続いてはスカルラッティ。今度はとても優しい曲です。
もう、ぜいぜい息をして、大きなお腹も呼吸で動いている中、このような曲を披露して下さるのはさすがです。リズムも乱れないのですよね。大満足の中、前半が終わりました。

最後はショスタコーヴィチの第15番。
私は15番という曲がどのような曲かは知らなかったのですが、ショスタコーヴィチ最後の交響曲ということで、楽しみにしていました。
ショスタコの曲は、戦争とか革命とか今まで私が聴いた曲だけでイメージするに、俗世界的な曲を作られる方なのかなと思っていたのですが、この15番はとても精神的な曲でした。心がしんみりしてしまいました。
ゲルギエフさんも、今までの中で一番集中して指揮をされているように私は感じました。演奏自体は派手ではないのですが、気持が熱かった… 時々見える横顔が、すごく格好良かったです。世界の指揮者なんだなぁとしみじみ思いました。

この演奏がさりげない形で終わった後(2階席の外人だと思うのですが、ブラボーが早すぎて最後の雰囲気ぶち壊しでした!少しは空気を読んでよねって言いたいです)、これで今年のゲルギエフさんは終わりなんだ、と思うととても悲しくなりました。
そして背中。本日は指揮台を使って指揮されていたので背が高すぎるからか、ちょっと前かがみで指揮をされていました。その背中の丸み具合が何ともいえず。今もその大きく広く、丸みがかった背中の姿が目に焼き付いています(笑い)

今回、たっぷりとゲルギエフさんの世界を楽しませていただいて、結果的には大満足です。
世界を飛び回って大変お忙しい方のようですが、これからも新しい感動と興奮を私たちに体験させていただきたいなぁと思います。来年も(違うオケですが)1公演は聴きに行きたいです。

Valery Gergiev

2007年11月17日 記

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