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日本フィルハーモニー交響楽団
第317回 名曲コンサート
【 2007年10月14日(日) in サントリーホール 】
 指揮:アレクサンドル・ラザレフ ピアノ:小山実稚恵


■ チャイコフスキー : バレエ組曲 《 眠りの森の美女 》
■ チャイコフスキー : ピアノ協奏曲 第3番 変ホ長調
■ ショスタコーヴィチ : 交響曲 第5番 二短調 《 革命 》

アンコール
■ ショスタコーヴィチ : 「馬あぶ」よりロマンス
急に小山さんのピアノの音色が聴きたくなり、チケットを取ったのが本日のコンサートでした。
ですが、実際このチャイコフスキーのピアノコンチェルト第3番は全1楽章の約16分の小粒な協奏曲で、私の本来の目的から言えば、選択を間違えたかな…というものでした(爆)
>でも、内容的には満足しています♪

指揮者のアレクサンドル・ラザレフさんは(恐らく有名な方なのでしょうが)私は初めてで、チラシのお写真を見ると、宇宙人というか骸骨というか、見た目的に受け付けない方でした(…失礼な)。
ですが、舞台に登場された本物のラザレフさんはまるで別人! 体型的にもしっかりされていますし、素敵な方でした。

ラザレフさんのひと振りで1曲目の「眠りの森の美女」が始まりました。
いきなり大音量で始まる曲なのですね(私はラストの方しか知らないので)。オケ聴きに来たのだなぁ〜と体感出来て、嬉しかったです。体全体を使った、私好みの指揮をされる方でした。

第1楽章が終わると、客席に拍手を求めました。
???…と、こちらも訳が分からず鈍めの拍手を。
そうしたらラザレフさん、「皆さん座りなさい」って後ろの方に手で合図をして、途中から来たお客様を席に座らせたのです。座るまでのお時間作って下さっていたのですね!

第2楽章が終わっても、また客席を見まわし拍手の合図を。
「どうです? 素晴らしいでしょう。」と自信満々に言っているような気がしました。堅苦しい演奏というよりも、パフォーマンス…という感じで、こちらもリラックスして音楽と向き合うことが出来ました。
ただ、ここで私の後ろの男性が激しく「ブラボー!!!」と叫んだのにはびっくりしました。楽章間のブラボーは、いいのでしょうか(気持ちは分かるのですが)。
追記:私は素人なので良く分りませんが、これは組曲ですから第1楽章、第2楽章というものではなくて、小さな曲の集まり…のようなものなのでしょうか。そうなるとブラボーもありかも?と。

私も知っている(笑い)最後の「ワルツ」で感じたことは、ラザレフさんは音の強弱を大事にされる方なのかな…と。大きい・小さいをオケにとても要求しているようでした。
日フィルさんもそれに一生懸命に応えようとして弾いている姿は分かるのですが、完璧ではありませんでした。何かが足りないというか…(悪くはないのですが)
以前、同じような気持ちになったことが他のオケでもあったなぁ…と思ったのですが、家に帰って調べてみるとオーギュスタン・デュメイさん指揮、関西フィルさんの時の公演でした。あの時も、気持はわかるのだけど…という感じで。
ラザレフさんは、来年の9月から日フィルさんの首席指揮者になられるそうですので、今後の日フィルさんの演奏がとても楽しみです。きっと、そのラザレフさんの要求に応えられる時が来ると思います。
>素人のくせに偉そうに、すいません…個人的に思ったことです。

続いて、緑の生地に葉のデザインをされた素敵な服を着て小山さんが登場!
このチャイコフスキー ピアノ協奏曲第3番は、あまり演奏される機会の無い曲で、小山さん自身、生演奏を聴いたことが無く、弾くのも初めてだったそうです。(この曲はラザレフさんのリクエストによるものです。)

そんな曲の深さを私が分かるわけがなく…
弾く機会が少ないというのは、やはりそれなりに理由があるのだな、などと思ってしまいました(爆)
1番のように、その曲の魅力が素人が1度聴いただけでは分からないのですよね。フレーズが頭に残っていかないのです。
小山さんのピアノは力強く、生き生きとされていましたが、日フィルさんの演奏は今一でした。弾きなれていないな…という感じがして。
逆に小山さんは初めてとは思えないくらい、音楽を自分のものとされていまして、すごかったです。
約4分の中盤のカデンツァが、この曲の聴きどころだそうなのですが、この手の動きがすごい。右手と左手とが刻むリズムが全く違うのです。そして速くて激しい。
曲そのものは華もなく、うーーーん、という感じなのですが、とにかく小山さんの手の動きが!!!
曲には馴染めませんでしたが、小山さんの演奏には大満足です。

最後はショスタコーヴィチの第5番。
日フィルさんも、「…これだよ!」という演奏。
先ほどの協奏曲と気合いの入り方に雲泥の差があります。
良いオケは前半の協奏曲も後半の交響曲も、どちらも完璧に演奏しますよね(海外オケなど特に)。日フィルさんも以前は協奏曲も素晴らしい演奏をされていたのに…今回は特別だったのでしょうか。
とにかく、ショスタコはとても良かったです。
ロシア人であるラザレフさんの指揮はさらに良かったです(笑い) 第2楽章が終わった時点で大量の汗が指揮台に飛び散っていました。

ショスタコーヴィチの交響曲は真面目に全部聴いたのはレニングラードしか私は無いのですが、でも、映画とか舞台とか見ているような気分になれる、ストーリー性が感じられる曲だと思います。軍隊の行進部分はパッと頭に浮かんできますし。
曲そのものも良いのですが、日フィルさんの弦もそろっていて、音ではなく、まるで言葉のように感じました。楽器ではなく人間が発している音、とでもいうのでしょうか。
聴いていて大変満足度が高く、またどこかにショスタコの曲を聴きに行きたいなぁと思わせる力をもった演奏でした。

演奏が終わるとあちこちで熱く「ブラボー!」と声がかかりました。もちろん、私の後ろの席の人もです(爆)←この人のブラボーはただ叫びたいだけなのかもしれませんが。

本日、私のラザレフさんの好感度を一番高めたのがアンコールの馬やぶです。
こちら、出だしは11月よりコンサートマスターさんになられるという江口有香さんが繊細なソロを弾かれたのですが(こちらも良かったです♪)。
途中でラザレフさん、観客に向かって指揮をしだしたのです。
「どう? この幸せな雰囲気、ちゃんと伝わってる?」みたいな感じで。
その時、ぶわ〜って客席が音楽につつまれた気がしたのです。すごく暖かい音色に。
これが指揮者の力というものなのかなぁって感じました。

以前も書いたことがあるのですが、学生時代にオケをしていた会社の同僚が「良い指揮者だと、良い音楽を弾かさせられちゃうんだよね」と言っていたのです。
それってこういうことなのか、と。
ラザレフさんのハートが強烈にこちらに伝わってくるのですよね。
これはP席ではだめなのです。いくら自分たちの方向に指揮者が向いてくれていても。
指揮者の対象とする、右手と左手の間にいる人でないと感じることのできない感覚です。
きっと私も今 楽器を持っていたら、良い音楽を弾いてしまいそうだわ…などと思いました(笑い)
とても良い経験をさせていただきました♪

ラザレフさんの指揮はまたぜひ聴きに行きたいと思います。
来期の日フィルさんも、楽しみになりました。

2007年10月14日 記

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