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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 【 3日目】
「熱狂の日」音楽祭2007 民族のハーモニー
2007年5月4日(金) in 東京国際フォーラム
【 ホールB7 マラルメ 】 322
  ヴァイオリン:レジス・パスキエ チェロ:ロラン・ピドゥ ピアノ:ジャン=クロード・ペネティエ


■ グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45
■ ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調



【 ホールC カフカ 】 345
  ヴァイオリン:佐藤俊介 ピアノ:アンヌ・ケフェレック 長栄交響楽団 指揮:大友直人


■ ラヴェル:ツィガーヌ
■ ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
■ ラヴェル:ラ・ヴァルス



【 ホールC カフカ 】 346
  ピアノ:ミシェル・ダルベルト 香港シンフォニエッタ 指揮:葉詠詩


■ グリーグ:2つのノルウェーの旋律 作品63
■ ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲 ト短調 作品33

アンコール
■ グリーグ:抒情小品集より 蝶々 op43-1



【 ホールA ドストエフスキー 】 316
  ヴァイオリン:庄司紗矢香  ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー
  ウラル・フィルハーモニー管弦楽団  指揮:ドミトリーリス


■ チャイコフスキー:ヴァオイリン協奏曲 ニ長調 作品35
■ チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
山手線の10車両目に乗ると東京国際フォーラムへの改札に1番近い、と覚えた3日目(笑い)
東京国際フォーラムは相変わらず人でいっぱいです。

本日の最初の公演は、レジス・パスキエさんのグリーグ3番とラヴェルのピアノトリオです。どちらも大好きな曲ですので、楽しみにしていました!
舞台に登場された、パスキエさんとペネティエさん。見た目だけでも(そのオーラが)『巨匠』レベルの方だと伝わってきます。>単に年齢だけの問題ではなく。益々これからの演奏が楽しみに♪

初めて聴いたパスキエさんのヴァイオリンの音色。私の好みの音色とは少し違いますが、でも余計な物が無い、しっかりとした素敵な音色でした。聴いていて安心できますし、気持ちが良いです。グリーグ3番を聴いていて面白いな、と思ったのは、私が今まで普通に聞き流していたような部分の数音を、主張して弾かれていたことが何度かあったこと。ああ、パスキエさんにとってはここは意味を持たせたい部分なんだ…とか色々思いながら聴かせていただきました。

演奏が始まったとたんに子供が騒ぎ出し(しかも左右で)、第1楽章が終わるとついに泣き出し(ここで大きな拍手が起きたため、泣き声もそんなに目立ちませんでしたが)、友人の話では結局その親子はホールの外に出たわけではなく、客席の横に立って子供をあやしていたそうです。
もちろん3歳以上OKな演奏ですので、これが悪いとか言う訳ではないのですが(演奏家に対して失礼なのでは、とは思います)、その一連の光景が目に入っていながらあれだけの演奏をされたパスキエさんの集中力。さすがプロだなぁ…とよけいに感動が高まりました。

そして何より私が気に入ってしまったのはピアニストのペネティエさん!
指の動きが大変滑らかですし、私の好みどおりにガンガン弾いてくださいましたので、「そう、そう。これ、これ〜!」という気分で楽しませていただきました。
グリーグ3番の第2楽章の始めでは、きちんと気持ちを込めて優しく弾いてくださいました(ここはお気に入りの箇所ですので、私のチェックポイントです)。
第2楽章当たりからヴァイオリンとピアノの会話が始まった…というか、お互いの息が合い始めて、聴いているこちらも心の中で歌いながら、一緒にその会話の中に入らせていただきました(笑い)
この御二人でのラヴェルのソナタが聴きたかったです。きっと私好みの演奏をしてくださるに違いない、と確信しております。ラストの盛り上がりとか… 想像しただけで聴きたくなります。

ラヴェルのピアノトリオは、聴いていて重大なことに気がついてしまいました。
私がいつも家で聴いているのはデュメイ・コラール・ロデオンのものなのですが(お気に入りです♪)、これはお店の人に頼んでLPからCD-Rに落としてもらったものなのです(CDよりも音色が滑らかです)。このCD-R。何と、第1楽章が抜けていたようです(爆)今までずっとこの曲は全3楽章かと思ってたのですが、4楽章ありました。私にとっての第1楽章は実は第2楽章だったという訳で…

こちらも最初は不安定だったのですが、徐々に盛り上がっていって、トリオって聴いていて楽しいなぁ〜! と思うまでに至りました。チェロのピドゥさんも熱演で、弓の毛が数本切れていました。
迫力ある演奏って聴いていてドキドキしますね! ラストの盛り上がりも最高v とても良い公演でした。

続いてカフカホールで私が一度生で聴いてみたいと思っていた、ラヴェルの『左手のためのピアノ協奏曲』です! ついに聴くことが出来るのか…と。

最初にヴァイオリニストの佐藤俊介さんと指揮者の大友直人さんが登場。
『大友さん=オーギュスタン・デュメイさんとのメンコン』 という私の頭の中での法則は未だに健在だったようで、大友さんを見ただけでもドキドキしてしまいました(アホだ…)
初めて聴いた佐藤さんの演奏ですが、私としては物足りないかな…と。音符が1つ足りない箇所もあったように思いますし、ツィガーヌの面白さが私には伝わってきませんでした(偉そうに書いてしまって申し訳ないのですが、これは好みの問題だと思います)。
ただ、眼鏡を掛けて指揮されていた大友さんが素敵でしたので(ツィガーヌの時だけ眼鏡を掛けていらっしゃいました)、それだけで満足です(爆) デュメイさんと並んだときは霞んでしまいましたが、今回はとても背中が輝いていました。

続いてケフェレックさんの登場です!
小柄な方で、容姿も笑顔も素敵な方でした… そして、ファンの方も沢山いらっしゃるようでした。昨年のLFJの感想を読んでも、大変評価の高い方です。

私はラヴェルの曲はピアノはガンガン弾いていただきたい、という好みがあるのですが(笑い、それがいいのかは分かりませんが)、ケフェレックさんはソフトに演奏される方のようで、私としてはこちらも少し物足りませんでした。演奏自体は大変素晴らしいと思うのですが、曲としてのイメージが私の好みと違うかな、と。ケフェレックさんは違う曲で改めて聴きたい、と思いました。
本当にこの曲は全部左手で演奏されていて(当たり前ですね)、両手で演奏する以上に恐らく大変なのだろうなぁと感じました。

その次の公演では、私が楽しみにしていた『NHK スーパーピアノレッスン』で御馴染みのミシェル・ダルベルト先生の登場です!
私、先生の演奏には大変感動致しました(感涙) この時の状況を、感動を、どのような言葉にしたら少しでも記録として残せるのだろうか… と考えていたので、この日の分の感想をなかなか書き終えることが出来無かった位。>すごすぎて言葉で表現するのは不可能だとは分かっているのですが!
ピアノを習っていたら 『私、一生 先生について行きます』 宣言してしまったのでは、と。それくらい感動と衝撃とを与えていただきました。もう、心の弟子にでもさせていただきたいです(笑い)

先生は上下を黒で決めていらっしゃいました。テレビで感じたとおり、とても紳士的な、そして知的な方のように感じました。私の中でのイメージは「羊たちの沈黙」のレクター博士です(笑い、姿勢が良いのと紳士的な部分が、だけですけれども)。

オケが始まると、両手をピアノの両脇に置かれ、頭を下にして、しばらく曲のイメージを作られているようでした(スーパーピアノレッスンでもこの光景を見ました)。その後、鍵盤に軽く左右の指をすべらせていました(これは何かのおまじないでしょうか?)。私の席は中央付近だったため、丁度先生のお顔はバッチリ見えるのですが 肝心の手は手の甲までしか見えませんでした。軽やかな指の動きを目に焼き付けたかったのですけれども…

先生の最初の一音は 力強くガーーーン!!!という感じではなく、今までの激しいオケの前奏なんて何も無かったかのように、自然にスッと入られました。そして1音、1音、と次々に盛り上がっていき、オケと合流! …みたいな出だしだったのでは、と。記憶力に自信がありませんし、勝手な妄想かもしれません(汗)

それから、しばらく鍵盤を叩きつけるような演奏をされていたのですが、でもなぜか聴いていて胸にグッとくるような、泣きたくなるような気分にさせられました。新世界@ヤンソンスさんのときもそうだったのですが、ドヴォルザークの曲って、聴いていて悲しくなってくる瞬間があります(良い意味で)。
曲に感動しているのか、それとも演奏に感動しているのか、分からないのですけれども。

テレビでのレッスンを細かく覚えてはいないのですが、先生は「○小節目のこの音符との関係を考えると、ここの音符はこのように表現するべきです」のようなアドバイスをされていて、曲全体を見通した上で1音1音と向かい合って弾かれているようでした。そして作曲者自身のことや、曲が出来た背景など、色々な知識を吸収されていて、その情報も加味した上で音楽を表現されていました(プロの演奏家は皆様そうなのだとは思いますが)。まるで文学研究のようだと感じました。

ですので本日の演奏も、今ここでこう弾いているのはきっと意味があるのだろうな…など、こちらも色々(勝手に)感じながら聴かせていただきました。

第1楽章は激しめな曲で、曲の合間、合間に何度もハンカチでお顔の汗を拭き取られていました。ある部分になると「タ・タ・タ・タン」のように口を動かしリズムを刻みながら演奏されていました。そして、1楽章の時点で先生のお顔は真っ赤! 対照的に首は真っ白でした。すごく高揚されて弾かれているのだな、とますます感動(笑い)

基本的に知的な演奏をされる方だと私は思うのですが、単に「真面目」というのではなく、迫力ある演奏だったり、『キラキラ』という音が実際出ているかのように輝いた音色を出される時もありましたし、すごーーーく優しい音色でこれまた泣けてきた瞬間もありました。顔の表情を豊かにして演奏される方ですと、ここは悲しい感じなのだな…などすぐに分かるものですが、先生はそのようなタイプの方ではありません。でも、それが音できちんと伝わってくる。そいういう部分でも感動してしまいました。

第1楽章が終わった時の充実感。まるでコンチェルト1曲を聴き終わったかのようでした。
まだ第1楽章が終わっただけなんだ…と、得した気分に(笑い) それだけ、音楽からくる情報量・メッセージが多かったのだと思います。

オケは昨日も聴く機会があった香港シンフォニエッタさん。山根さんもチューヤンも元気そうでした(そして、この2人は仲が良いことも発見、爆)
不思議なのですが、昨日よりも演奏が上手くなっていた気もしました。先生の演奏に引きづられて自然と良い演奏になったのかな…と推測します。
このオケの良いところは、ソリストの音色を殺さないということです。これって、大事なことだと思います(笑い)

先生の手は小さいのに、なぜこんなに速く、正確な音が出せるのだろう… とも思いました(いや、それは先生だからでしょうが、笑い) まるで魔法のようでした。
テレビの影響で、「思い込み」のような部分もかなりあるとは思うのですが(私はミーハーですし…)、それでも1音1音出すたびに圧倒され、感動し、あっという間に終わってしまいました。

この今の気持ちをお伝えするには拍手しかないと、演奏後は拍手する自分の手が止まりませんでした。会場全体も大きな拍手! 皆も同じ気持ちだったと思います。義理の拍手ではありませんでした。

先生は椅子から立ち上がるとき、少しよろめいていた気がしました(爆) それだけ集中して演奏されていたのだなぁ…と。何か、ゴールした後のマラソンランナーという感じで、相当お疲れのようなのだけれども、達成感に満ち溢れていて笑顔、みたいな。

何度ものカーテンコールの末、先生は「アリガトウゴザイマス」と挨拶をされ、曲名を述べられてアンコールをして下さいました♪
あれだけの演奏をされた上で、もう1曲だなんて… と、驚きと感謝の気持ちで聴きました。

機会があったら また先生のメッセージを受け取りに、協奏曲を聴きに行きたいです。そして、ソロでの演奏も聴いてみたいと思いました。
興奮冷めやらぬ状態で、ホールを後にしました(爆)

本日最後の公演は、庄司さん(vn)とベレゾフスキーさん(p)でチャイコフスキーのコンチェルト。
久しぶりに庄司さんのヴァイオリンの音色を聴いたのですが、「庄司さんの音色」というものが私には分からなくなっていました。こんな音色だったっけ…?! と最初に感じました(普段は最初の1音を聴いた時に「あ、これ、これ〜!」と思い出します)。良いとか悪いとかそういう意味ではないのですが、庄司さんはチャイコンよりもショスタコとかブラームスとかの方が合っているのかなぁ…とも思いながら聴きました(個人的に、チャイコンは色々なCDで聴きつくした感があるからかもしれません、笑い)。

ベレゾフスキーさんは、ネットラジオの放送でもよく名前を見かけていて、世界中で大人気の方なのだろうなぁと想像していました。先程ダルベルト先生に感動したばかりであるにもかかわらず、不覚にもベレゾフスキーさんのピアノにも感動してしまいました(爆)>すいません、先生…
ベレゾフスキーさんの指の運びもまるで魔法のようでした。

オケも良かったです。ロシアの広い、広い大地を思い起こさせるような出だしで始まり、スケールの大きな演奏を終始されていました。

3日目となると、だいぶ疲れが出てきました。幸せ疲れですけれども(笑い)
帰りの電車の中では、頭の中でダルベルト先生の旋律がぐるぐると駆け巡っていました。

2007年5月9日 記

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