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東京交響楽団
川崎定期演奏会 第10回
【 2007年2月23日(金) in ミューザ川崎シンフォニーホール 】

指揮:ジャナンドレア・ノセダ  ヴァイオリン:諏訪内晶子  ゲスト・コンサートマスター:高木和弘


■ シューベルト:付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」序曲
■ シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
■ ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
今日のコンサートのチケットは、1年半以上前(詳しくは忘れてしまいました)に行くことが出来るのか半信半疑で取ったものです。ですので、「ミューザ川崎で諏訪内さんのシベリウス」という情報だけが私の頭の中に入っていて、曲目はもちろん、指揮者が誰で楽団がどこなのかということは把握していませんでした。不思議と当日までに確認することも無く。
さらに当日も開演時間ギリギリに会場に着きましたので、パンフレットを読んだのは家に帰ってから。演奏中は、諏訪内さん以外の情報は何も分からずに聴いていました。
もしかしたら、だからこそ こんなにも楽しいコンサートだったのかもしれません(笑い)先に書いてしまいますと、最初から最後までとても楽しませていただいたコンサートでした。

最近テレビでBBCフィルの公演を観まして、その時の指揮者がものすごく熱い指揮をされていたので、その方の姿が頭の中に残っていたのですが…

さて、東響の皆様がそれぞれの席に着くと、続いて指揮者が登場しました。

!!!!!

――そうなのです。
このBBCフィルで熱い指揮をされていた方が目の前に出てきたのです! うそーっ!!!って感じ(笑い)
1年半以上も前にチケットを取ったコンサートで、指揮者は最近目にした人だった…なんて、こんな巡り合せもあるんだなぁと思いました。

ノセダ氏(と友人が呼んでいたので、私もそう呼ぶことにします、笑い。「ノセダさん」よりもぴったりです。呼び捨てでもいいですが)は体格がいいのか、立っているだけでも存在感のある方です。
腕の振りもとても大きいので、指揮がダイナミック!
そうそう、これこれ〜! この前テレビで観た熱い指揮は! とこちらも嬉しくなってしまいました。

1曲目の「『キプロスの女王ロザムンデ』序曲」の時。途中からリズム良く盛り上がる部分があった…と思うのですが、そこでノセダ氏。

「タン、タン、タン、タン!!!」

ジャンプしながら、力強く歌いながら、激しい指揮が ますます激しくなりました(爆)
それ以降、ずっとタンタン歌っていて、これはノセダ氏の声楽リサイタルなのでは…という位、私の耳にはノセダ氏の歌声しか残らず、東響さんの演奏の記憶が全くありません(ははは) しばらく開いた口が塞がりませんでした。
指揮者の唸り声や鼻歌に対しては好みはあると思うのですが、私はこのタンタンのリズムに引き込まれてしまいました。私の前の人も、このリズムに合わせて首を振っていました。その真剣な姿を笑っては失礼なのですが、聴いているこちらは噴出してしまう寸前でした(とにかく、タンタンすごいのですよ!)。

続いて私にとって本日のメイン、諏訪内さんのシベリウスです。
青系(だったと思うのですが>自信がありませんが)のドレスを着た諏訪内さんが、爽やかに登場!
一昨年の諏訪内さんのバッハのコンチェルトの時、私は2階席で ほとんど諏訪内さんの姿が見えませんでしたが、本日はよく見えます♪ 諏訪内さんの両腕にはとても筋肉がついていました。そして、スリムな体型に全く無駄がありません!>って、どこ見ているのでしょう、私… 美しい方でした〜v

そして続いてノセダ氏が登場。指揮台に上がると…
本日の席は右側の前列付近。泣きたくなる位に諏訪内さんがノセダ氏に隠れてしまいました(爆)
(でも、諏訪内さんは上下に動きながら演奏されますので、全く見えなかったわけではありませんでした。良かったです。)

ヴァイオリンのソロからシベリウスのコンチェルトは始まるのですが、諏訪内さんのドルフィンは響く、響く! 大変素晴らしかったです。
耳の穴の中一杯に、そして頭の中一杯に、その音色が染み渡った…とでも言うのでしょうか。ミューザ川崎のホールの音響も素晴らしいのだと思います。そして本日の気温や湿度、諏訪内さんのヴァイオリン、演奏方法、私自身のモチベーション…全ての要素が完璧だったのでしょう。本当に最初の一音から「これだっ!」という演奏でした。こういう状況ってなかなか無いことです。

一昨年のバッハのコンチェルトを聴いた時、諏訪内さんの演奏はものすごく上手いと感じましたが、と同時に自分との間に1枚の壁が見えたというか、近づき難い演奏でもあるな…と思ったのです。でも ここ半年諏訪内さんの公演をネットラジオで聴いていると、音がすごく丸くなったというか、女性っぽい音色だなぁ…と感じることが多くなりました。(母親になられたから?!と勝手に思っているのですが、爆)
本日の演奏もそうでした。上手いのは以前と変らず…いえ、それ以上だったのですが、とても身近に感じるような、優しくて、聴きやすい演奏でした。今の諏訪内さんの演奏、私はとても好きです。機会があるのならば、また何度でも聴きに行きたい位です。

シベコンは、「北欧の大地を思い起こさせるような、冷たく、感情など何も無い、静まりかえったシンプルな演奏がいい」という声をよく耳にします。
諏訪内さんの演奏は、北欧の冷たさもその音色に現われていたと思いますが、それだけでなく、諏訪内さんならではの情熱とか激しさとか優しさとかも同時に組み込まれていたように私は感じます。
私にとってはこれがイメージしていたシベコンでした。生でもここまでの演奏が聴けるんだ…と、感無量でした♪

以前も感じましたが、私は諏訪内さんの右腕の動きが好きです。振りが大きくて、しっかりとしていて。演奏されるフォームも無駄が無く自然です。観ていて、聴いていて、気持ちがいいです。今回、たっぷりと(ノセダ氏を挟んで、涙)右腕の動きを見てきました。

諏訪内さんは演奏が休みの時は、ヴァイオリンを下ろし、きちんと指揮者を見て待っていました。とても礼儀正しい方のように感じました。でも目の前の指揮が激しいので(後で記述します)、さり気なく、少しずつ、少しずつ、後ろに下がられていたような気もしました(爆)

私は1月にコバケン*日フィル*アナスタシアさんでシベコンを初めて生で聴いたのですが、この時はソリストの音色も小さかったですし、何よりオケが…こういう表現はあまり好きではないのですが あえて使わせていただきますと、「しょぼい」感じがしました(普段の日フィルさんはこんな感じでは無いのに!)。生のシベコンって、こんなもんなんだ… 地味な曲だなぁと正直、この曲に対する興味も無くなっていました。

でも今回のシベコンは、ソリストの音色が際立っているだけでなく、オケの音色も強弱はっきりしていました。指揮者目当てでコンサートに行く時、協奏曲があると指揮者が目立たないので(ソリストが主役なので)出来れば協奏曲が無いコンサートに行きたいなぁ…と私は思います。
でも、ノセダ氏は違いました! 気持ちが良いくらいに違った!
昨年聴いた、デュメイさんのメンコンは舞台上に指揮者が2人いた状態でしたが、本日のシベコンは まるでソリストが2人いたような状態でした。
諏訪内さんが目立たない…というのではなく、ノセダ氏が目立ち過ぎていたからです(爆)
協奏曲だからって、ソリストに対して手加減はしません(もちろん、信頼しているからなのだと思いますが)。熱い、熱い、指揮をされ、オケにも熱い演奏を求めているようでした。私はシベリウスは、オケがこれ位熱い演奏で丁度良いような気がしました。
そうするためにも、まずはソリストの音色をしっかり、はっきりと主張するところからこの曲は構成していかなくてはいけない…とも感じました(ですので、先日のアナスタシアさんは残念でした>演奏は決して悪くないのに!)。今回の諏訪内さんとオケとのバランスはそういう意味でも抜群でした。

シベコンで1番印象的だったのは、第1楽章でソリストのソロから受け継ぐようにオケが 「ジャカ ジャン!」 と激しく入る部分があるのですが(上手く表現できなくて申し訳ないのですが、この部分を分かっていただけますでしょうか)、そこでのノセダ氏…やはり、

タ、タ、タンッ!

と、思い切りジャンプして歌っていました(爆) 協奏曲でもタタタンは健在なのね…と。
そして第1楽章が終わるとハンカチを取り出されたのですが、額の汗ではなく、口を拭かれていたのでした… 協奏曲で、ここまで激しく指揮される方、私は初めてです。

休憩後はブラームス交響曲第1番! この曲が大好きな友人も多く、のだめで有名にもなった曲ですよね♪ でも、私はまだ聴いたことが無かったのです(苦笑い) なので、余計に楽しみでした。素敵な曲に違いない、という確信もありました。(ブラームスが約20年かけて完成させた、ベートーヴェンの交響曲第10番とも呼ばれるこの曲が素晴らしくないわけがありません!)

実際聴いてみますと、出だしからすごく力強くて、格好良くて、一気に好きになってしまいました(笑い)
東京交響楽団さんの演奏は、音の区切りがとても上手いと思います。ピタッ、ピタッと皆さんで止まりますので、曲が引き締まります。そして、演奏にパワーがあります!
先日、吹奏楽をやっていたという会社の同僚が「指揮者が良いと、自然と良い演奏を『弾かさせられちゃう』んだよね」と言っていたのが印象的なのですが、もしかしたら東響さんもノセダ氏にそういう演奏を弾かさせられていたのかもしれません。ロイヤル・コンセルトヘボウ程…とは言いませんけれども(笑い)、良い楽団だなと私は思いました。

私の位置からは第一ヴァイオリンの方々がよく見えたのですが、皆さんとても楽しそうに演奏されていたのも好印象でした。
特に、本日のゲスト・コンサートマスターの高木和弘さん。そして、その付近の方々。
笑顔が素敵でした。すごくナチュラルで(爆) 仕事帰りの私は大変癒されました〜v 皆さんが若い訳ではないのですが、演奏される姿勢はとても若い! 椅子から腰を浮かしてしまう位、元気良く弾かれているのです。そして、高木さんのソロの音色ですが、これがとても良くて。「純金の針金(という物が存在するのかは分かりませんが)」というような音色でした。力強い演奏の中、細く澄み切った音色が奏でられました。
高木さんは、4月から正式な東響のコンサートマスターになられるそうですので、今後の東響は私、注目したいと思います(笑い)高木さんも含め 東響さんの演奏、気に入ってしまいました。
演奏以前に、舞台に登場される時から…楽団の方、1人1人の表情が良くて、すっと心を開くことが出来たような気がします。今回この楽団に出会えて良かったです。

私が持っているCDのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団さんのブラームス1番と聴き比べてみても、今回の東響さんの演奏はとても力強いものでした。最初から最後までそうです。
ということは、もちろんそれに比例してノセダ氏の指揮も力強かったわけで(爆)そして声も大きい。

ターン・タ、ターン・タ、タッタ、タッタ、タッタタ…

これは第1楽章の部分ですけれども(笑い) よく、絶対音感の方は音を聴くと音階が浮かんでくると言いますが、私はブラ1を聴いたら全て「タンタン」のリズムに変換されるようになってしまいました… 曲がすごいだけに、ノセダ氏もすごかったです。そのノセダ氏と一体になった東響さんたち。その世界に私も引き込まれてしまったのでした。

演奏後のノセダ氏は汗びっしょり。背中がとても疲れているように感じました。素晴らしい演奏を聴かせていただいて、そして見せていただいて(笑い)ありがとうございました、という気持ちでした。
シベリウスのコンチェルトも今後これだけ素敵な演奏に出会えるのだろうかと思いましたが、ブラームスの1番はそれ以上に魅力がありました。

今回、タンタンにはびっくりしてしまいましたが(!感想も、ほぼノセダ氏のことばかりとなってしまいましたし)、でもまたノセダ氏の演奏会には足を運びたいな…と思います。そして東京交響楽団さんと、高木和弘さん。私の頭の中のチェックメモには新たな名前が加わったのでした(笑い)
私の2月のコンサートは この1公演だけだったのですが、すごく密度が濃くて、大満足でした。

2007年2月25日 記

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