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アナスタシア
ヴァイオリン・クリスマスコンサート2006
【 2006年12月15日(金) in 杉並公会堂大ホール 】
アナスタシア・チェボタリョーワ(ヴァイオリン)  ドミトリー・チェチェーリン(ピアノ)


■ D.ショスタコーヴィッチ : 24の前奏曲より
■ R.シュトラウス : ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18

* * *

■ WA.モーツァルト : ヴァイオリン・ソナタ 第34番 変ロ長調K.378
■ F.メンデルスゾーン : 無言歌 作品19-1「甘い思い出」
■ F.メンデルスゾーン : 「真夏の夜の夢」作品61より 「スケルツォ」(ハイフェッツ編)
■ シマノフスキ : 夜想曲とタランテラ Op.28
■ N.パガニーニ : ラ・カンパネラ(クライスラー編)

アンコール
■ バッジーニ : 妖精の踊り
■ チャイコフスキー : くるみ割り人形より「トレパック」
■ リムスキー・コルサコフ : 熊蜂の飛行
本日は本当だったら残業必須の現状なのですが、「頑張ったって頑張らなくたって、どうぜ怒られるんだし!」と開き直って会社を後にしました(笑い) >怒られまくりの毎日であります…
…といっても、開演時間19:00ギリギリ着になりそうな時間。初めて行く杉並公会堂に数分できちんとたどり着けるかも不安でしたので、「え?こんなに近いのに?!」と運転手さんに呆れられながらの荻窪駅からのタクシーの使用(実際近かったのです、爆)。きちんと1曲目に間に合うことが出来ました。 杉並公会堂の前に飾られているイルミネーションも、クリスマスの雰囲気満点でした。

客席数1190席の杉並公会堂大ホール。私は昨年バラホフスキーさん(…は、今度はいつ日本でコンサートしてくださるのでしょうか)のコンサートで行った海老名文化会館 小ホール を思い出しました。椅子の形と、前後のゆったり感が似ている気がしました。
また、客席の空き具合もバラホフスキーさんの時と大変似ていました(苦笑い)杉並はP席や2階席もありますので、規模そのものは違うのですが、人口密度が似ているというか。後ろ1/3〜1/4位でしょうか…どちらも残念ながら空席だったのです(さらにデュメイさんの地方コンサートの時の空席具合も思い出してしまいました、涙)。
私はアナスタシアさんの昨年のクリスマスコンサートにも行きましたが、こちらはオペラシティで、ほぼ満席だったような気がします。場所と曲目の影響って結構あるのでしょうか。席を常に9割以上埋められるヴァイオリニストって本当にすごいし、恵まれているのだなと感じました。

本日のプログラムは、ほぼ知らない曲…(汗) 予習もする余裕がありませんでしたので、何が何だか分からないまま、その瞬間の音楽を聴いてきました。
アナスタシアさんのインタビューによると、今回のプログラムは今年はモーツァルトとショスタコーヴィチの生誕記念にあたるので、両方の作品を演奏にしたとのこと。また、メンデルスゾーン作曲シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の中の「スケルツォ」は元々オーケストラの曲で、どのヴァイオリニストもあまり弾いていないので、新鮮で新しいことを挑戦してみたかった、とのことでした。1番お気に入りなのは、シマノフスキの「夜想曲とタランテラ」だそうです。

アナスタシアさんの演奏は、今年のニューイヤーでチャイコフスキーのvn協奏曲を聴いて以来なのですが、本日のコンサートは私が今まで聴いた中で1番良かったと思います。ヴァイオリンの音色はもちろんなのですが、アナスタシアさんの演奏にどんどん磨きがかかっているように感じました。音に深みが増しているといいますか…(私自身の聴き方も、ここ最近で変ってきているのだと思います。)私はアナスタシアさんのヴァイオリンの音色が好きで時々聴きに行きたくなるのですが(あまり演奏姿勢には興味はありません)、アナスタシアさんご自身の魅力も今回は感じました。淡々と演奏される中にもユーモアがあり、優しさがあり、激しさがあるというか。

前半・後半とアナスタシアさんは衣装が違い、前半はクリスマスをイメージした緑の派手やかなドレス。後半は薄いピンクのしっとりとした落ち着きのあるドレス。髪はアップにされていて、とても素敵でしたv 美しい! クリスマスの雰囲気を、アナスタシアさんそのもので表現されていました。

前半のシュトラウスのソナタは、昨年藤原浜雄さんのコンサートで初めて聴いた曲。(この出だしを聴くと、藤原さんの演奏が頭にパッと浮かぶ私です。)
今日のヴァイオリンの音色は これまた格別で、すごく心にスーーーっと入ってくるようで(スポーツの後に清涼飲料水を飲んだ時のような感じ)、第2楽章はあまりの気持ちよさに爆睡してしまいました…(汗) 最近のコンサートでここまで深く寝てしまったのって無いと思います。とても安心して気持ちをゆだねることが出来た演奏でした。>なんて、物は言い様です!

後半の1曲目 モーツァルトのソナタ第34番は、先日タスミン・リトルさんと江口玲さんでの映像を観る機会があったので、知っている曲でした。
江口さんのピアノって、すごく綺麗なのですよね! ヴァイオリンのチューニングをするためにポロン…と出した音からして、他のピアニストは違います。すごく今、生で聴きたいピアニストの1人です。
それを考えると、本日のピアニスト・ドミトリーさん…いえ、ミーチャさん(と馴れ馴れしく愛称でお呼びしてもいいでしょうか?笑い)はどうしちゃったの?!というような演奏でした。昨年のクリスマスコンサートでは、素敵な音色をホール一杯に響かせていたのに。本日は、アナスタシアさんの演奏の足を引っ張っていたような気がします。
ピアノのフタ(?)を閉めていたのも気になったのですが、それよりも、音が全般的にもたついているような感じがして。特にモーツァルトの曲はピアノが重要だと思うので、「ミーチャ、頑張れ!」って心の中で叫んでしまいました。ピアノが良ければ、本日のコンサートはものすごいレベルの高い、感動しまくりのコンサートだったでしょうね。
(とは言うものの、本来のミーチャは素敵な演奏をされる方なのだと思います。ミーチャが作っているショパンのアルバムは楽しく聴くことが出来ますし。)

メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」からアンコールの「熊蜂の飛行」までは、アナスタシアさんの超絶技巧ワールドにようこそ!という感じでした(笑い)あまりに技が前面に出すぎていて、バランスとしてどうなのかなとも思ったのですが。聴き続けると結構疲れるといいますか。
でも文句無く上手いので、聴いている瞬間はアナスタシアさんの腕に魅せられっぱなし!
ちっとも難しそうでなく、楽しみながら弾かれている感じがしたのも良かったです。

シマノフスキの「夜想曲とタランテラ」は私、気に入ってしまいました。
この曲がどのような曲なのかは分かりませんが、最初のフレーズで私は高い崖の上からペルーの空中都市マチュピチュを見下ろしている風景が頭に浮かんできました。音楽を通して、インカ帝国時代の人たちと会話をしているような気分になりました。
後半部分は とてもリズムが良くて、演奏しているアナスタシアさんと聴いている観客とがそのリズムに一体化しているようでした。演奏中に弓が数本切れてしまったのも、この曲の激しさを物語っているようでした。演奏後は拍手喝采です!

ラ・カンパネラは私はこれまでに何人かの演奏を聴いたことがありますが、アナスタシアさんのラ・カンパネラが1番私のイメージに近いものでした。
聴いた瞬間、「おっ、これは!」と共鳴するものがありました。
私は この曲は 『気高い貴婦人の、ある昼下がり』 という勝手なイメージを持っているのですが(特に理由はありません)、正にそのような演奏でした。スコーンとか紅茶とかテーブルに用意されていて、その横にちょっとプライドが高い我儘な(でも皆に愛されている)貴婦人がいるのですね(笑い)
この曲を最後に持ってくるだけありまして、本当に素晴らしい演奏でした。とても難しい曲ですよね。

アナスタシアさんのアンコールでは御馴染みの(?)「熊蜂の飛行」。
アナスタシアさんの演奏では、「これは本当にヴァイオリンの音色なの?!」と思えるような瞬間に出会えるのです。蜂の羽音そのままが聴こえるのです! その瞬間に出会うのが、私は大好きです。
もちろん、今回も蜂は飛んでいました(笑い)

コンサート後、アナスタシアさんの白い腕は真っ赤になっていました。「本日は素敵な演奏を、どうもありがとうございました!」とその腕を見て感じました。
期待を遥かに超した、素晴らしいコンサートに出会えて嬉しいひと時でした。

2006年12月23日 記

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