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ROYAL CONCERTGEBOUW ORCHESTRA
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
【 2006年11月28日(火) in 所沢文化センター ミューズ アークホール 】
 マリス・ヤンソンス : 第6代首席指揮者


■ ベートーヴェン : 交響曲第8番 ヘ長調 作品93
* * *
■ マーラー : 交響曲第1番 ニ長調
「お先に 失礼します!」
と、終業時間の17:30分ジャストに周りをあえて見ないようにして会社を出て(笑い)、急いで本日の会場、アークホールへ向いました。1本電車に乗り遅れると、遅刻することが分かっていたからです。
アークホールのある 『航空公園駅』 に到着すると、たくさんの人が電車を下り、駅は混雑していました。コンサートでこんな状況って私は初めてかもしれません…(フィギュアスケートなどではよくある光景なのですが)。駅に着いたのが開演15分前。アークホールまでは徒歩10分のようなのですが、私は念には念を入れてタクシーを使いました。
アークホールの前は素敵なイルミネーションで飾られていて、私のテンションもますます高く…

タクシーを使ったものの、結局座席に着いたのは開演時間19:00ギリギリで、あわてて座りました。…すると何と!

いつも他のコンサートでご一緒している友人御夫婦が、隣の席だったのです!!!

すごい偶然です。このコンサートに来ていることは分かっていたのですが、まさか隣とは!
嬉しくて、さらに私のテンションは上がったのでした(笑い)

初めて行ったアークホール。舞台全体を客席が囲む感じで、雰囲気が素敵なホールでした。正面のパイプオルガンの両脇には、2体の像みたいなものがあるのも印象的でした。
通常のホールよりも少し舞台が高め…でしょうか。私は本日は前の方の列の、丁度ヤンソンスさんの真後ろ辺りの席だったのですが、前数列目ですと 舞台よりも座席の方が低い感じがしました(でも、音はきちんと届きました)。見上げる感じです。

そして、ロイヤル・コンセルトヘボウ(RCO)の方々が舞台に登場!
名古屋公演では2階席だったため分からなかったのですが、RCOの方々は全体的に背が高い! それだけでも迫力満点です。舞台が高いうえに皆様も大きな方ですので、本日は完全に管楽器・打楽器のあたりは見えませんでした…弦の後ろの方すら見えない位です(汗) もう、視界は指揮者と手前のみの世界。>それでもいいです!

続いて、マエストロ・ヤンソンスさんの登場。
実に爽やかな方です。笑顔が素敵です! こんなに間近で拝見出来て、幸せでした。

ベートーヴェン交響曲第8番。
実は、チケットを申し込む時「第7番」と勘違いをしていました(笑い)私としては7番が聴きたかったので(NHK音楽祭2005でヤンソンスさんがバイエルン放送交響楽団と7番を演奏した映像が気に入っていたので)、それはもう大喜びでした!
逆に第8番は1度も聴いたことが無い曲でしたので、間違えに気がついた時はどうしよう…と。公演前に丁度ネットラジオでヤンソンス&RCOの演奏で第8番が流れましたので(他にも今回聴いた4曲全てが放送されたので、大変助かりました)、約1日で頭の中に叩き込みました(爆)
「ベートーヴェンの交響曲の中では小粒ながら、ピリッと辛さのある完成度の高い曲」 と どちらかのHPで紹介されていたのですが、確かに。とても馴染みやすく、そして聴いていて楽しくなってくる曲だったので、たとえ7番でなくても(笑い)聴くのが楽しみになりました。

チャ〜チャラ ラララ〜♪
曲が始まった瞬間、ホール全体がパッと華やかな世界となりました。
RCOの奏でる音色は暖かく、華やかで、明るい! そして切れがあります。
プラス、時々横を向いた時に見えるヤンソンスさんの笑顔!!!
うわ〜っ、いいなぁ〜 と、瞬時に舞台上の世界に引き込まれてしまいました。

名古屋では遠くから聴いていたせいか、ヤンソンスさんって想像していたよりも落ち着いて指揮をされる方なのだなぁ…と思っていたのですが、とんでもないです(笑い)!
想像通り 飛んだり、跳ねたり、笑ったり、しかめっ面したりで、変化に富んだ指揮をされる方でした。手を上げるにも肩から指の先まで腕全体を使って上げていますし、かがむ時も、膝はもちろん足首まで曲げて指揮されています。本当に体全体で指揮される方ですね。すごい運動量だと思いました。 かと思うと、協奏曲でのソリストの独奏時のように、何もせずにそのまま立ち尽くしている時もあります(もしかしたら、顔の表情で指揮をされているのかもしれませんが! 背中しか見えないので分かりませんでした)。

私はいつも指揮台の後ろにあるパイプのような手摺の部分の使い方について、疑問に思っていたのですが(指揮者が勢い余って後ろに倒れないための支えなのかな?とか)。
ヤンソンスさんは、左手でこの手摺に捕まって、一生懸命背伸びをして右手の指揮棒を高ーーーく上げて、左側の後ろの方の人に何度も指示を出していました。
なるほど、こうやって使うのね…! と思うのと同時に、ヤンソンスさんが今指示を出している楽器ってどれなのだろう?と気になりました(後ろが全く見えないので、笑い)。

コンサートで時々、ヴァイオリンとピアノが会話しているという、素晴らしい状況に出会えるときがあるのですが、ヤンソンスさんのこういう姿を見ていると それと同じように指揮者とオケも会話をしているのだなぁと感じました。
ヤンソンスさんは、オケの隅から隅まで個人単位で気を配って指示を出されているように見えました。それ位、あちこちに向って飛び跳ねたり しゃがんだりして指揮していたのです(笑い)
RCOの方々の1人1人の演奏する集中具合も半端ではありませんでした。視界に入った弦の方だけに限定すると、全員がソリストレベルの方に見えました。ただ音を出しているのではなく、自分なりに意味を持った音を出している、それが出せる方たちに感じました。

相変わらず、ヤンソンスさんの手の動きは軽やかです。とても綺麗です。そして魔法のよう!
第1楽章の最後の方で 「チャッ、チャッ、チャッ」 と音を切る部分が何度か出てくるのですが、ヤンソンスさんの手の動きどおりのタイミングでオケの音色も切れるので(RCOの演奏も上手いからなのでしょうね)、まるでヤンソンスさんが音を操っているかのようでした。見ていて、聴いていて、とても気持ちが良く、楽しかったです。自分もつい、「チャッ、チャッ、チャッ」 と心の中で歌ってしまいます!

私が1番感動した、のめり込んでしまったのが第4楽章です。
とても小さい弦の音でリズム良く4楽章は始まるのですが、(ヤンソンスさんも膝を曲げて体を小さくして「小さく!」と指示を出されているのですが)、ということは、この後 大音量で「バーン!」とやってくれるのかな…?と期待してしまいますよね(笑い) 聴きながらドキドキしてしまいます。

で、やはり 「バーン!」 とやってくれたのですが、その世界が想像を遥かに超したものでした。
一瞬、私の心とヤンソンスさんとRCOのいる舞台とが宙に飛び上がったかと思いました(爆)
音というよりも、演奏の世界がすごく大きかったのです。ここで、私の頭の中の理性が(?)プチッと切れた気がしました(笑い)ヤンソンス&RCOの作り上げる世界に入り込んでしまいました。
音も 単に大きいというのではなく、大きくても優しい音色、安心して聴くことが出来る音色なのが嬉しいです。耳に優しくて、不快感がありません(大音量に不快感があるオケもあります…今まではこんなものなのかな、と思っていたのですが)。音色の本質が違うのでしょうね。
この私お気に入りの部分は「音を大きく・小さく」という指揮者とオケとのやりとりが何度もあって、何度も楽しめてしまう内容でした。「くるぞ、くるぞ」と分かっていても、実際やっぱりすごくて その都度感動してしまうというか(笑い) 指揮者とオケがとても格好良く感じました。

ベートーヴェンがこの部分を作曲している時、どんな気持ちだったのでしょう…きっと、心が高揚していたに違いありません! 頭にこんな曲が流れてくるとは!>違っていたりして。
(ヤンソンスさんの新世界よりを聴いて以来、そしてパンフレットのお言葉を読んで以来、作曲家のことも考えるようになった私です、笑い)
聴いているこちらは、幸せな気分になりました。この時期、ベートーヴェンは交響曲を何作も掛け持ちして作曲していたということですので、その同時期に作曲した曲も一緒に聴いてみたくなりました。
また、他のオケではどのように演奏されているのかも興味が湧きました(ヤンソンスさん独自の世界かもしれませんし)。

最後は終わりそうでなかなか終わらない演奏の末(笑い、ベートーヴェンの交響曲はこういう終わり方が多いのでしょうか)、「チャン!」とあっさり目で終わるのですが、その短い音がホール全体をボワ〜ンと広がって良い感じに余韻が残りました(各楽章の終りの余韻もそうです)。
会場、割れんばかりの大きな拍手(ちょっと早いかなと思いましたが、名古屋よりはいいです、笑い)! アークホールに演奏会を良く聴きにくる友人の話によると、「このホールでこんなに暖かい拍手は初めて!」とのこと。
…そうです。今日の拍手も、とても暖かいものだったのです(感涙) デュメイさんの紀尾井ホールでの拍手に似たようなものがありました。名古屋公演のように名前だけで(もしくは招待券で?分かりませんけれども)聴きにくるような方たちなのではなく(私も名前先行で行ってしまった1人なのですが、汗)、本当に『マリス・ヤンソンス』という指揮者が大好きで聴きに来られた方たちが集まったのだな、と感じました。その空間と瞬間を大切に出来るような方たちが。

後半は、マーラー第1番です。私には理解不能な苦手なマーラーです(汗)
先月、この第1番を聴いた時に寝てしまった(しかも、何度 目が覚めても曲が終わっていなかった)という経験を反省し、今回はきちんと曲を頭の中に入れてから演奏に向いました。
副題の「巨人」という言葉は、演奏を聴く上ではあまり気にしなくて良い…と、何かの資料で読みました。そうなると、始まりはとても可愛らしく、春を思わせるような幸せな曲に感じてくるから不思議です(笑い) カッコウも鳴きますし。自然の風景が浮かんできます。
最初の「ウィーーーーーン」という印象的な弦の音。これは草原一体に広がっている霧のようにも感じます。寒い朝を迎えたのか。冬から春になったのか。だんだん希望に満ち溢れてくるような気がしてきます。第1,2,3,4楽章と次々に色々な世界が楽しめる曲でした。

マーラーになると、オケの人数も一気に増えました。小さめな舞台にぎっしりと皆さんが配置されています。楽器の位置も変っていましたが、詳しくは私には分かりません。これだけの人数が どうやって所沢まで来たのだろう…と、やはり思わずにはいられませんでした(笑い、貸切バスでしょうか?!)

私的にすごいと思ったのは、ヤンソンス&RCOのマーラーだと 『全然眠くない』 ということです(笑い) 曲に吸い込まれてしまって、楽しんでいるうちに終わってしまいました。むしろ、もう少し長くてもいいかも、と思った位でした。
第3楽章辺りで、ヤンソンスさんの横顔を見ると、顔が真っ赤になっていました。そして後ろ髪は汗でぴっしょり。そしてオケを見渡すと、皆さんも顔を真っ赤にして演奏されていました。
特に目を引いたのがチェロの方々です。顔をブルブルと震わせながら、狭い空間(本当に狭いのです…)を最大限に体全体を使って演奏されていました。
夢中になって勢いよく弾くと、全体的にも勢いだけの演奏になりがちですが(まとまりが無いというか)、でもRCOは違います! 相変わらず、弦は1枚の布のように統一感がある音色を保っていますし、管は耳に心地よい音色で輝いていますし! ヤンソンスさんの指揮の勢いは衰えるどころか第4楽章ではますますヒートアップされていましたし!

第3楽章でのコントラバスのソロ、そしてどこかであった(忘れました…)ヴァイオリンのソロ。どちらも素晴らしかったです。名古屋でも思いましたが、ヴァイオリンってこんな音色だったかしら?というような不思議な音色を出されるのですよね。美しかったです。

第4楽章の盛り上がりもすごかったです。ヤンソンスさんのジャンプも増しています(笑い)
第1、2楽章のあの華やかさは何だったのだろう…と。精神的に迫ってくる 濃い内容の楽章です。弾いている方々も大変そう。でも上手いです。
コンサートマスターさんが、両足をじたばたさせながら演奏していたのも印象的でした。彼は熱かった! そして、ふとした合間にヴィオラの方と笑顔でアイ・コンタクトをしていたのも良かったです。お互い、力の限り弾くぞ! みたいな雰囲気でした(もちろん、ヴィオラの演奏も良かったです)。
ベートーヴェン8でも思いましたが、大音量でも聴いている側が辛くありません。感動は最大限に、でも耳の負担は最小に、といった感じです。音の成分が違うかのように。体に力を入れることなく(あまり音が大きいと、体に力が入ってしまいますよね)、聴くことが出来ました。
特にラストの盛り上がりは、鳥肌ものでした。観客皆が一体となった気がしました(笑い)

ブラボーがあちこちで飛び交いました。
花束を渡しに舞台の下まで駆けつけたファンの方もいました(そして、ヤンソンスさんと握手!>こういう方法もアリなのね、と頭の中でメモを。すごく微笑ましい光景でしたv)
RCOの方たちが退場して、舞台上に誰もいなくなっても、皆帰らず拍手が止みませんでした。皆の気持ちが高揚していたというか! どうしても帰る気がしませんでした。
そうしたら、ヤンソンスさんが退場された反対側の扉から再び来て下さって。またまた大拍手!
あまり見たことの無い(異様な熱気に包まれた)光景でした。すごい演奏を聴いたのだと改めて実感しました。

本日アンコールはありませんでしたが、あのマーラー1番の後に演奏はいりません(笑い)
変に小品を入れてしまうと、先程までの感動が消えてしまいそうなので。
ベートーヴェンもマーラーもすごかった! ありがとう、ヤンソンスさん&RCOの方々。
また来日された時は、頑張って聴きに行きますから! と心に誓ったのでした。

2006年11月30日 記

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