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第24回名古屋クラシックフェスティバル
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
【 2006年11月26日(日) in 愛知芸術劇場コンサートホール 】
 指揮:マリス・ヤンソンス


■ ドヴォルザーク : 交響曲第9番 ホ短調 op.95 「新世界より」
* * *
■ ストラヴィンスキー : バレエ 《春の祭典》

アンコール
■ ブラームス : ハンガリー舞曲第6番
■ ドヴォルザーク : スラブ舞曲 op.72-7
2006年1月1日。NHKで放送されたニューイヤー・コンサートを見て、私はこのマリス・ヤンソンスという指揮者に釘づけになりました。何て楽しい指揮をされる方なんだろう、そして何て楽しい音楽を生み出す方なんだろう…って。(元々有名な方ですが、私はこの時初めて知りました。)
今年の放送は最初から最後まで飽きることなく楽しませていただきました(昨年は途中で飽きてしまいました…)。指揮者の存在というものを感じたコンサートでした。

そんなヤンソンスさんが今年日本へ来る! しかも、あのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)と一緒に!!!>私にとってこのRCOは一種のブランドというか、あまりCDで聴き入ったりすることは無いのですが、『すごい』というイメージがあります。
「ぜひ、今年聴かなくちゃ!」と、東京のサントリーホール他のチケット合戦は勝つ自信がなかったので(笑い)、28日の所沢公演と本日の名古屋公演(偶然キャンセルが出たようで購入出来ました)に行くことにしました。

今回のプログラムにはヤンソンスさんのお言葉が少し紹介されていまして、先日のワディム・レーピンさんのインタビューではないのですが、やはり「世界の」と言いたくなるような素敵な言葉を発見しました。基本はレーピンさんと同じなのだと思ったのですが。>以下、プログラムより引用です。

「最も重要なのは、その音楽で作曲家がなにを言おうとしているのかを見つけ出すことです。作曲家がどんな雰囲気を、どんな形象を、どんな内容を思い浮かべていたか。つまり音符の背後になにがあるかということです。それに思いを巡らすことは可能なことです。むろん、古い時代の作曲家の場合などは作曲家の考えていたことを100パーセント思い描くことはできません。しかし感じる事はできます。それを完全に言葉で表現できなくてもね。作曲家の想念やファンタジーを感得することはできるのです。私が音楽のなかにそれを探します。そう、音楽は、ひとつの言語なのです。なにかを私に語っている。音楽の言葉で楽譜だけを追う演奏はしたくありません。速くとか、ピアノとか、フォルテとか、楽譜そのものは記号にすぎませんからね。私は意味を求めたい。」

「もうすぐ開演です…」とのアナウンスが流れると、舞台上にRCOの皆様が登場しました。それぞれが自分の席に着くまでの動作が実に機敏で、それだけでもどこか違うな…と感じました(笑い、日本のオケだとダラダラと着席する人とかもいますし)威厳というか気品というか、「伝統」というものを背負っている気がするのです。
ステージマネージャーさん…と言うのでしょうか?舞台上を指示する方が2人いて、マエストロが出入りするための通路の確保や全体のバランスなどを、テキパキ指示してセッティングされていました。

そして、世界一のマエストロ(と思っている)マリス・ヤンソンスさんの登場です!

ヤンソンスさん…私のイメージとしては、ものすごくオーラを発していて気高い方なのだろうな…と思っていたのですが、実際拝見すると「あ、コロンボが来た!」と思いました。
コロンボとはもちろん、ピーター・フォークが演じている、あの『刑事コロンボ』です(笑い)
私の大好きなテレビシリーズなのですが!
ヤンソンスさん。すごく庶民的な近づきやすい雰囲気を放たれている方に感じたのです。オーラなどありません(爆、失礼な…)あれだけすごい指揮をされる方なのに。意外でした。

本日の席は、2階の右ロビー席。1階席で言うと3列目付近に当たる位置です。
さすがに演奏者の表情までは見えませんが、指揮者とオケの全体を見渡せるとても良い席でした。普段見る機会が無かった管楽器・打楽器の演奏を、今回はじっくりと拝見してきました。

私にとって記念すべき、ヤンソンス&RCOの演奏1曲目「新世界より」が始まりました。
この曲は2月に新日本フィルさんの演奏を聴いて、大変に感動した曲です。そして、『銀河英雄伝説』を思い出してしまう、イメージは『宇宙』。何かに向って突き進むような希望に満ち溢れている曲。

ですが、今日は違ったのです!
全然、銀英の世界なんて浮かんできませんでした。掠りもしなかった(爆)
「すごーーーい!!!」 と思ったのは、私はRCOの演奏を聴いて、そしてヤンソンスさんの指揮する姿を見て、ドヴォルザークの姿を舞台上に垣間見たことです… といっても、私はドヴォルザークのことは何も知りませんので、頭の先が見えたかな?!という位のイメージなのですが。
この曲がどのような形で作曲されたのかは分かりませんが、私には第1楽章はとても悲しい、胸に詰まるような曲に聴こえました。弦も管も悲しそうな音色に聴こえました。>気のせいかもしれませんが!
今までイメージしていたこととはまるで違う感想を持ったのです。この曲は宇宙というよりも精神世界を表した曲だと。そう思ったら、曲にどんどん入り込んでしまって、涙が出てきてしまいました。
…第1楽章なのに。

ヤンソンスさんの指揮は、私がニューイヤーコンサートを見て感じたイメージとは少し違ったような気がしました。想像より落ち着いて指揮をされているように感じました(笑い)
でも、指揮棒を持った右手の動きはまるで綿のように柔らかく、軽やかです。そして、時々すーーーっと頭の後ろの方に手を引いていかれますと、オケの音もそれに合わせて伸びていきます。
キュッと手を止めると、音もピタッと止まる。
会場中の音を操作しているのは、紛れも無くヤンソンスさんなんだと感じました。
先程はコロンボのようだと感じましたが、指揮台に立つと「世界のヤンソンス」に早替わりです(笑い) とても活き活きしていました。

ヤンソンスさんは楽譜を見ながら指揮をされているのですが、常に楽譜をめくられているようでした。私はRCOのDVDに収録されているドキュメンタリー番組を思い出しました。その映像には、携帯メトロノームを片手に持って大きな楽譜を時間を計りながら読まれているヤンソンスさんの姿があったのです。今回もメトロノームを持って色々なことを計算しつくされた上での、この指揮なのだろうな、と思いました。

RCOの音色は、実に素晴らしかったです。
素晴らしいオケの弦の音色って絹の糸を何本もまとめたような音色に聴こえてくるイメージなのですが、RCOの弦の場合、1つにまとまって聴こえるのです。絹糸の束ではなくて、シルクのハンカチが宙に舞っているようなイメージです。とても綺麗な柔らかい音色です。
同時に、管も素晴らしい。今まで管楽器の存在を考えたことすらなかったのですが(!)、その私でも うわ〜っ、綺麗だなぁと第一に思った位です。すごいのは、大音量を出した時にも 耳障りでない、耳に優しい音色の質を持っているということです。そして常に輝いています。一体、他のオケと何が違うのだろうかと思いました。

家に帰ってパンフレットを読んでみると 「RCOは『ベルベットのような弦、黄金の金管、類稀な個性的音質をもつ木管』が世界中で賞賛されている」 と書かれていました。
…ええ、確かにその通りでした! そんな感じがしましたよ!!!

「新世界より」では、『夢路』の部分を独奏で弾いたイングリッシュホルン(?)のおばちゃんが特に素晴らしかったです。この方の演奏にずっと注目していました。この方が何の楽器を演奏されていたのかは分からないのですが(苦笑い>後日勉強します!)、2つの楽器を交互に弾かれていました。
あと、弦のソロも柔らかくて良かったですv 特にヴァイオリン。今までに聞いた事の無いような不思議な音色が響いていました。…というか、本当にこれはヴァイオリン?! と思ってしまいました。

聴き手も(恐らく)1番盛り上がる、第4楽章。
確か、北原幸男さんの指揮では4楽章の始まりから勢いのある力強い指揮をされていたと記憶しています(そして、その姿に客席も興奮したと)。
ヤンソンスさんの場合、出だしの指揮は控えめでした。演奏は大きな音でしたけれども。
そして、少し後のヤンソンスさんとして大きく表現したい部分(恐らく…なのですが)、そこで体一杯使って指示を出されていました。熱のこもった指揮と一緒に、自分たちの気持ちも高揚していくのが分かりました(笑い)

ヤンソンスさんは、この曲の最後の音を少し長めに取られていました。
激しめな第4楽章を聴いた後には、その余韻がたまりません…
―― と、言いたいところなのですが!

音は確かに消えましたが、ヤンソンスさんが両手をまだ上にあげているにも関わらず、1階席後ろ辺りから拍手がもう起こってしまったのでした。>まだ曲として終わってないじゃない(怒)!

余韻もへったくれもありませんでした。本日の一部のお客様は、本当にヤンソンスさん&RCOの音楽を楽しみにしていたのだろうかと疑ってしまうような方たちでした。チケットは完売したのに。
と言いますのも、演奏中に携帯電話が私が分かった範囲では2ヶ所で鳴っていました。バイブ音はその限りではありません。携帯が鳴るなんて久しぶりに出会いましたよ…
風邪が流行っているとはいえ、咳の仕方も遠慮がありませんでした。また、飴の包み紙を開ける音、コンビニの袋をガサガサといつまでも鳴らしている音、色々な雑音がすごかったです。
せっかく日本に来て演奏してくださっているのに…恥ずかしいし、申し訳なかったです。そして頭にきました(苦笑い) だって、すごく楽しみに聴きに来ている人がほとんどな訳でしょう?! チケット取るのだって大変でしたし。その楽しみを一瞬で壊すような事はして欲しくありません。
その部分が、今回のコンサートでの唯一の欠点でした。それ以外は満点です(笑い)

後半は「春の祭典」。
バレエ音楽ということでしたので、この演奏を聴く前にバレエの映像も観ておきたかったのですが、間に合いませんでした。後日機会があれば、確認します。
「春」というとベートーヴェンのスプリングソナタや、ヴィヴァルディ「四季」の第1楽章などのイメージが私にはありますが(それしか無いとも言えますが)、この「春の祭典」は全然違いました(笑い)
どちらかというと、どろどろした感じ…でしょうか。
第1部「大地礼賛」8曲、第2部「いけにえ」6曲からなっていて、最後は太陽の神にいけにえの乙女たちを差し出すという曲らしいです(笑い)>でも、全体的な流れにストーリー性は無いそうです。
「誘拐」という部分では、略奪結婚の場面を現しているとのこと。後半は、祖先の霊が降り立ってきて、儀式をします(この部分が、私のお気に入りです。あ、霊が降りてきたな〜と感じることが出来るからです)。曲の解説によると、最後はどうやらいけにえの乙女たちは踊り狂って死んでしまうようです(爆)何という曲なんでしょう…

休憩後に舞台を見て驚いたのが、前半と違って舞台全体にぎっしりとオケの方々が座っていたこと!
何て大人数なのでしょう…特に管楽器が増えています。
これだけの人数だと、どうやって日本に来られたのかしら…と思いました。別々の飛行機だったのでしょうか。楽器だって運ぶの大変だと思いますし。そして日本国内の移動も、宿も。

さて、この曲は、管の魅力を最大限に表現できる曲のようです。
聴いていて、自然と管ばかりに目を奪われました。弦の存在があまりなかったような…(しっかりと演奏をサポートをしている感じです)。

「春の祭典」は、私は「新世界より」よりも気に入ってしまいました。帰りにゲルギエフ指揮&キーロフ歌劇場管弦楽団でアルバムを購入してしまった位です(ヤンソンスさんではなく なぜかこちらを)。
でも、なぜ気に入ったのかという部分を上手く言葉に表現することが出来ません。今は適切な言葉が出てきません… ので、省略します(笑い、管の感想の表現力を持ち合わせていないというか)
ただ、リズムがとても良い曲ですので、管の気持ちの良い音色を楽しむのと同時に、ヤンソンスさんの指揮と一緒にリズムを刻み、心で歌いながら聴くのが楽しかったです。

ラストも、決して壮大な終わり方ではないのですが、とても盛り上がりました。
後ろの方で「ブラボー! ブラボー!」と叫んでいる方がいらっしゃいました。

本日はアンコールが2曲。
ハンガリー舞曲とスラヴ舞曲は全部押えておかないとだめだな…と思いました(笑い)どちらも、私の知らない曲でした。この時のヤンソンスさん(楽譜無しで指揮されていました)が、1番私のイメージに近い、あのニューイヤーコンサートの時のようなヤンソンスさんでした。飛んだり、跳ねたり、が2階席からでもはっきりと分かる指揮でした。
そして、アンコールでは演奏しない楽器も存在していて(笑い)、椅子に座ったままじっとされている方々の姿も印象的でした。

最後に。
演奏が終わって、舞台から去られた後のヤンソンスさんはどうされているのでしょうか?! 今回私は右側の席でしたので、舞台扉の奥の奥まで見ることが出来ました(笑い)
ヤンソンスさんは、毎回バスタオルで顔を中心に汗を一生懸命に拭かれ、そして渡された水(と思われます。コップとペットボトルと2種類ありました)を飲んで、それからまた舞台へ登場されていました。これだけ汗をかかれるなんて、すごい熱演だったのだなぁ…と感じました。
最後のアンコールの時は、裏の隅に行かれて胸のポケットから櫛を出されて、髪を一生懸命に整えられていました。素敵ですねv

期待以上の素晴らしい指揮と演奏でした。「頑張って名古屋まで行って、本当に良かった!」 と思える大満足な1日でした♪

2006年11月30日 記

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