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オーギュスタン・デュメイ&小山実稚恵 デュオリサイタル |
【 2006年10月4日(水) in 紀尾井ホール 】 ■ モーツァルト : ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第41番 変ホ長調 K.481 ■ グリーグ : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ長調 op.8 ■ ブラームス : ハンガリー舞曲集より 第5番 ■ ブラームス : ハンガリー舞曲集より 第2番 ■ ブラームス : F.A.E.ソナタより 第3楽章 スケルツォ 休憩 ■ ブラームス : ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108 アンコール ■ パラディス : シチリアーノ |
今日は、すごく嫌な天気でした。空全体が薄暗くて… もしかしたら夕方から雨が降るかも?と、心配でした。せっかくのコンサートでしたし、雨だとデュメイさんのヴァイオリンの調子もどうなのかなぁと。 ですが、降らなかったのですよね! 天からのささやかな贈り物のようでした(笑い) 今日は大好きな紀尾井ホールで大好きなデュメイさんのコンサートです。 絶対遅刻しないようにと午後の半休を取り、準備は万全でした。気合も十分です!!! 友達が確認してくれたのですが、紀尾井ホールで売り出されていた当日券は開場時間の18:30頃であと残り10席前後。…うん、今日のホールの入り具合が大変良いものだと想像出来ます♪ (失礼ながら、もう少し余っていると思いました。平日ですし。でも良かった!) 舞台に登場したデュメイさんと小山さん。 紀尾井ホールの舞台への出入り口の扉のサイズは、デュメイさんの背の高さを改めて感じさせてくれました(笑い) 本当に大きな方ですね。 扉のほぼ全て(8、9割位)をデュメイさんの身長が埋めておりました! 初めて紀尾井ホールで見る、奇妙な(?)光景です。 デュメイさんはこれまでと同じスーツ。小山さんはどう表現したらいいのかわかりませんが、これまでのようなドレスではなく、動きやすそうなパンツスタイルでした。今日はガンガン弾いちゃいますからね!と言っているかのようでした。こちらも期待してしまいます、ぜひよろしくお願いします、と心の中で。デュオ・ツアー最終日ですし、私は御2人の力の全てが見たかったのです。 デュメイさんは最初から眼鏡を掛けていました。 譜めくりさんから楽譜を受け取り、それを譜代に置き、軽くチューニング。 紀尾井ホールの照明の当て方が上手いのか今日のデュメイさん、先日よりも5歳は若返って見えました(爆) 何ででしょう…すごく、肌が透きとおっていて活き活きとしている感じがしたのです。私の中では、グラモフォンのブラームスのソナタのジャケットのようなイメージです。>夢を見すぎかしら(汗) モーツァルト。今回のリサイタルのおかげで完全に覚えてしまいました(笑い) 第1楽章は、ヴァイオリンのデュメイさんの持ち味である『美音』が響いていなかったように思います。ヴァイオリンの調子が悪いのかしら(席の関係もあるかもしれませんが)…と気になったのですが、第2楽章になるとあたりが涼しくなって、いつもの美しい響きがホール全体に広がりました。 デュメイさんの演奏は、回を重ねるごとに弾き方が変っていったような気がします(見た目の面で)。私の主観ですが、日本人に受け入れやすいような形に近づいたというか。クセが少しずつ抜けたというか(私の慣れかもしれませんけれど)。でも、どの演奏も素敵なデュメイさんでした。 モーツァルトの曲はピアノの主旋律部分が多いと思うのですが、爽やかな笑顔で弾かれる小山さんの音色に気持ちが良い位にぴたりと音を乗せているデュメイさん。 …やっぱり引き込まれてしまいますね! この素敵なモーツァルトも今年はこれで聴き納めなんだなぁ… と残念な気持ちにもなりつつ、全てを大切に聴かせていただきました。良い曲です、K.481。 演奏が終わった後の会場の大きな拍手。皆の温かい気持ちが伝わってくるような拍手で、こちらも感動してしまいました。その拍手に紀尾井ホール特有の響きも加わって、会場全体が拍手に包まれました。思い込みかもしれませんが、皆「すご〜い! 良かったよ〜!!!」という気持ちがあったと思います。こういう拍手、久しぶりに出会いました。単なる社交辞令の拍手ではありませんでした。 そして、デュメイさん。これまでになく とても嬉しそうでした。笑顔が違っていました。 今回は、見上げる2階席もありますし! ほぼ満席ですし! デュメイさんの、そして小山さんの人気を改めて感じたのでした。 続いてグリーグの1番。私にとっては、今日のマイ・ベストの曲です(笑い) グリーグ1番の新しい魅力に気がついてしまいました 今回のデュメイさんの音色。「美しさ」よりも「力強さ」が勝っていた気がします。 でもそれは紀尾井ホールという場所で、大勢の観客の前で、すごく気合が入っていたからだと私は思っています。それは小山さんも同じで、小山さんもすごく気合が入っていました。ピアノの音、力強かったです(私は特にピアノの前の席でしたので、大音量…)。 魂と魂のぶつかり合い、とでも言うのでしょうか。グリーグのソナタでは、デュメイさんと小山さんが火花を散らして演奏されているような光景が何度も見られました。 すごく御2人とも熱かったです。音が熱かった! 素晴らしかったです。というか、2日経った今でも頭の中で音色が流れています。そして、その記憶がだんだん美化されていってます(笑い) 第1楽章が始まる最初のピアノの2音 ―― 逗子でもそうでしたが、小山さんはこの2音に大変心を込めて弾かれます。 そしてデュメイさんの軽やかな音色が重なってこの曲は始まる訳ですが… ここから私たちはグリーグの世界へ入り込んでしまうのですよね。 1楽章が終わると、デュメイさんは小山さんに音を出してもらっての念入りなチューニング。ここまで念入りなのは今回が初めてでした。 デュメイさん。弦をポン、と弾いて小山さんに(音出して!)と合図されるのですよね。>可愛かったです。 ここで感動したのが、チューニング時の音! 段々と音が合っていく過程…とでも言うのでしょうか。紀尾井ホールの天井にデュメイさんのヴァイオリンの音がどんどん登っていくのですが、それがすごく美しかったです。 …実は、この日1番の美音はこの時の音だと私は思っています(爆) 第2楽章で良かったのは、やはり最後の盛り上がり。CDでは味わうことの出来ない、生ならではの体験でした。険しい表情をされて力強く3拍子の音色を弾かれる小山さん。小山さんを後ろから支えるような感じで、やはり気合を入れて弾かれるデュメイさん。そして紀尾井ホールの響き… その世界観に圧倒されてしまいました。御二人とも格好良かったです! もう一度チューニングをしてからの第3楽章。 これ以上私の言葉で何も語ることは無いのですが(あまりにも良すぎて)、最後の辺りでデュメイさんがポン、ポンと弦を弾かれている時、「ああ、もうすぐこの曲も終わってしまうのだなぁ…」と無償に悲しくなりました。ずっと聴き続けていたかったです(笑い) そして、最後は華麗にフィニッシュ! デュメイさん、決っていました!>ブラボー! 続くブラームスハンガリー舞曲は、会場皆がデュメイさんの演奏に捕まってしまったかのようでした。デュメイさんの『こだわり』に皆が納得したというか。>少し音を外されたような気もしましたが。 「観客と一体になる」ってこういうことを言うのだなぁと思いました。皆、笑顔で拍手を送っていました。元々、このハンガリー舞曲ってファンサービスのために組み込まれた曲だと思うのです(誰もが知っている曲を1曲、みたいな)。そういった意味では大成功でした。楽しんで聴くことが出来ました。 追記: ファンサービス…と思ったのですが、「音楽の友」10月号でのデュメイさんのコメントを読み、それはありえないと思い、訂正いたします。ここでデュメイさん、『今日、芸術家が媚を売ることは最も危険なことです。(略)芸術家は自分との戦いを放棄したときに芸術家ではなくなる。』とお話されています。ハンガリー舞曲も、デュメイさんたっての希望だったのでしょうね! そしてF.A.E.ソナタより第3楽章。 デュメイさんのスケルツォは最高です! 何度聴いても素晴らしいです。 「ブラームス全部を後半に持っていけばバランス取れるのに」と会場で何人かの方が話されているのを耳にしましたが、でもきっとこれがデュメイさんのこだわりなのだと私は思っています(笑い) ブラームス3番をしっかりと聴かせたいということと、F.A.E.ソナタで前半は盛り上げて締めたい、という考えなのではと。そして、そのこだわりに(私が勝手に考えているだけですが!)私は大賛成です。 このさっぱりとした余韻に浸って休憩に入るのは、とても気持ちが良いです。 休憩後は最後のブラームス3番です。 この時、デュメイさんの音の裏にヴァイオリンのギシギシときしむような音が聴こえたのですが、あれは何の音だったのでしょうか(演奏には問題ありませんが)。 すごく力強く弾かれているようなイメージを私は感じました。 私はまた楽章間でチューニングされるのかなと思っていたのですが、ブラームスに関してはチューニング無し。このまま一気に弾き上げたい!並々ならぬ意気込みが伝わってくるようでした。 こちらもグリーグ同様、デュメイさんと小山さんとの間で繰り広げられる(?)演奏上でのぶつかり合いが聴き応えありました。音の緊張感というか、迫力というか。最後の方が特に。 終わった後に、無条件で拍手してしまう自分がいました(笑い) 「やっぱり、すごいよね…」という言葉が頭の中で浮かんできました。 アンコールはパラディスのシチリアーノ。 デュメイさんの音色にはぴったりの甘い曲です(笑い) でも、さすがデュメイさん。単に「甘く」ではなく、おしゃれな高級な感じに仕上げられていました。 ちょっと気持ち的にリッチになったところで、コンサートは終わったのでした。 3日間、本当にそれぞれ素敵なコンサートでした。大満足です♪ また、ぜひこの御2人のコンサートを企画していただきたいです。>今すぐにでも! それまではこの記憶を大切にして、待ち続けたいと思っている今日この頃です。 2006年10月6日 記 |
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