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オーギュスタン・デュメイ&小山実稚恵 デュオリサイタル |
【 2006年9月30日(土) in 逗子文化プラザ なぎさホール 】 ■ モーツァルト : ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第41番 変ホ長調 K.481 ■ グリーグ : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ長調 op.8 ■ ブラームス : ハンガリー舞曲集より 第5番 ■ ブラームス : ハンガリー舞曲集より 第2番 ■ ブラームス : F.A.E.ソナタより 第3楽章 スケルツォ 休憩 ■ ブラームス : ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108 アンコール ■ パラディス : シチリアーノ |
ついに、待ちに待ったデュメイさんのコンサートの日がやってまいりました!!! デュメイさんのコンサート。一体どのような感じなのかしら… 私の中では今まで全てが謎に包まれていました。デュメイさん自体、どのような方かも分かっておりませんでしたし(チラシ等の写真は現在のものではありませんので当てになりません、笑い) 新逗子駅から数分歩いたところに本日の会場、なぎさホールはあります。 駅からは、線路と川を渡ってのんびりとした静かな道を歩いていくのですが、6月に行った広島のさくらぴあホールまでの道のりを少し思い出しました。一歩一歩、ドキドキしながらホールへ向いました(笑い) 建物の逗子文化プラザは1階が図書館、他の階は会議室があったりと市民のための会館のようです。多くの地元の方が利用されているように感じました。 なぎさホールは555席の小さめなホール(参考までに紀尾井ホールは800席です)。 そのホールで 1/5 強ほど(もっとかな?)の空席がありました。場所が場所だけに仕方がないのだと思いますが、デュメイさんの生演奏が聴けるというこんな大チャンスを逃すなんて、逗子の方々は何て勿体無いことを…!!!と思ってしまいました(笑い) 体が2つあるのなら、2人分聴きたかった! 観客はほぼ地元の方。年齢層もデュメイ世代の方々のように感じました。 時々ヴァイオリンケースを持った中学生位の子供もいたりして。 私は今回、気合を入れて1列目の中央…より、少し左側の席を選びました(ピアノの位置と譜台を想定した上での位置です>これまでの経験により算出)。 そうしたら、正にビンゴ! デュメイさんは私の真ん前で演奏して下さいましたv とても幸せでした。 そして、私の左側に座ったおじさん。この人、開演前のブザーが鳴って会場が暗くなってから、かばんの中からガサゴソ、ビニール袋に入っていたタッパを取り出しました。 中身は何と、生のブルーベリーが8粒ほど。それを急いで楊枝に刺して食べ始めたのです。 な、何で今そういうことをしなくてはいけないの…?! と、この後のコンサートでの行動に不安が過ぎりましたが、ブルーベリーを食べ終わってまたタッパをビニールにしまい、それをカバンにしまってからデュメイさん、小山さんが舞台に登場。良かった〜 このおじさんは、実はすごいクラシックファン…いえ、デュメイさんファンだったようで(?)、熱心に演奏中は耳を傾けておりました。そして、グリーグやハンガリー舞曲第2番、ブラームス・ソナタ第3番で「ブラーヴィ!ブラーヴィ!」と声をかけていました。>私も声をかけたかったです(涙) ブルーベリーの行動が謎なだけに すごく印象深い方で、良くも悪くも思い出の1ページとなりました。 ―― 前置きが長くなりましたが、本題のデュメイさんの感想です。 開演前に「休憩時間の変更があります。パンフレットにはハンガリー舞曲集の後に休憩とありますが、F.A.E.ソナタの後に休憩とさせていただきます」とアナウンスがありました。 …F.A.E.ソナタの後? ものすごくボリュームが片寄っていますけど…(汗)>後半1曲! それだけ ブラームスの3番に期待していいということなのかしら、と私は思いました。 舞台左手の扉が開き、最初に緑のドレスを着た小山さん(私の記憶が正しければ、これは日フィルのガラコンサートの時の衣装でしょうか?)、そして黒のスーツを着たデュメイさんが登場されました。 噂どおり、大きな方…!!! デュメイさんと小山さん。二人並んでいると 「遠近法」 という単語が頭の中でグルグルしてくるような光景です。大きなデュメイさんと、小柄で笑顔が素敵な小山さんです。 デュメイさんは青の蝶ネクタイをされていて、スーツの下にやはり青のベストを着ていました(演奏には全く関係ありませんが、自分の思い出として記述させていただきます、爆) ヴァイオリンがとても小さく見えました。 (デュメイさんのヴァイオリンは 濃くもなく、薄くもなく、といった感じで素敵な色でした。) そしてデュメイさんは楽譜を譜台に置き、べっ甲(に見えました)の眼鏡をかけて… ポン、ポン と 最初に軽く、それはもう本当に軽く、左手の指で弦を弾かれたのです(その後チューニング)。 たったこれだけなのに、デュメイさんのヴァイオリンのシルクのような高級感溢れる音色が頭の中にすーっと入ってきました。 何て澄み切った音色! そして、ホール全体にしっかりと響き渡った迷いの無い音色! それは、まるでヴァイオリンが「Bonjour!」と会場の皆に挨拶をしてくれたかのようでした。(←この時の私は、かなり想像の世界に入っていましたので御了承下さい、爆) 1曲目のモーツァルト K.481 が始まりました。 CDを聴いていた私のデュメイさんの音色のイメージは、「あれだけ美しい音なのだから、出される音も繊細で細くて、皆が集中して聴かないと聴こえない位の小さな音なのだろう」 というものでした。 ですが、実際は違うのです。CDとはまったく違いました。生で聴くべき演奏とはこういうの演奏なのだと言われているような気がしました。 美しさはそのままなのですが、想像をはるかに超えた「大音量」! 響き方が、私が今まで聴いてきたヴァイオリニストの方々とは違いました。座席の関係等もあるのかもしれませんが、すごかったです。驚きました。まるで身長と比例しているかのようでした。 「美しい=細い」 だけではなく 「美しい=太い」 もアリなんだな、と思いました。 そう、太い…。デュメイさんの音色は意外にも私には太く感じました。とても安心感のある音色でした。低音も高音も美しい上、太いのです。1音も漏らさずに、私の耳にどんどん入ってくる感じでした。 太く感じるのは、デュメイさんの弾き方も理由の1つかもしれません(視覚効果の1つというか)。 細かく1音、1音を大切に、そして感情を込めて音を出される方だからです。右腕の振り方も大きいですし、足の踏み込み方も大きい!(踏み出す足音の大きさも半端ではありません、笑い) かなりクセがある…とも言えるのですが、コブシを効かせた演奏をされます。まさかここまで体全体を使って、あの美しい音を生み出しているのだとは思いませんでした(第1楽章の時点で、汗びっしょりでした)。まるで鶴の恩返しの、自分の羽根を使って反物を織った鶴のようです。 こんな部分まで感情入れて弾かれるんだ…と、楽しみながら聴くことも出来ました。強弱、メリハリの主張がとてもはっきりされていました。 なので、モーツァルトK.481 については私は第2楽章を楽しみにしていたのですが、本日の聴き所は、むしろ第3楽章だったように思いました。第3楽章に対する気合の入れ方がすごかったです。 デュメイさんの美音だけを求めている方は、むしろ目を瞑って演奏を聴かれた方が良いかもしれません(音と目の前のデュメイさんとが結びつかない位ギャップがあるのですよ、汗)。 デュメイさんの演奏スタイルは私には刺激的で、色々とデュメイさんのことを知ることが出来たような気がして嬉しかったです(笑い) 同時に、ピアニストの小山さんも素晴らしかったです! こんなに素敵なピアニストが日本人でいらっしゃったとは… 小山さんの演奏、完璧でした! 大抵私は「ピアノが強い」とか「弱い」とか、伴奏される方に満足する時がないのですが(ヴァイオリンとのバランスを考えた時に、です)、今日は何も言うことありません。 ホール全体にポロロン…と素敵な音色が響き渡りました。 ヴァイオリンに流されるのではなく、小山さんの主張もしっかりと組み入れて弾いていながら、決してヴァイオリンの音色を殺していない、素晴らしい演奏でした。デュメイさんとのバランスも最高! また、演奏中に時々見せる小山さんの笑顔が素敵なのです。機会があったら、小山さん個人のリサイタルにも足を運んでみようと思った位です。ファンの方の気持ちがよく分かりました。 ブラームス:ハンガリー舞曲第5番では、デュメイ節が炸裂!きゃ〜っ 私としては今一馴染めませんでしたが(爆)>自分の中ですでにリズムが出来上がっているので… これは「編曲:A.デュメイ」とした方が良いと思った位、普通のものとは全然違いました。思わず苦笑い。同じく自己流でも、第2番は素晴らしかったです。後半部分は、こういう演奏もいいなぁと思いました。(この違いは何なのでしょう?) 小山さんは、よくデュメイさんの自由奔放な演奏に合わせていたと思います(普通ですと、こういう演奏で両者のリズムの違いとかが表に出てくると思うので)。 さすが、ギトリスさんのツィゴイネルワイゼンの伴奏をされた方です(あれも大変そうに見えました)! 同じブラームスでも、F.A.E.ソナタは私好み♪ 今回の演奏の中でマイ・ベストかもしれません。 (デュメイさんの演奏で覚えた曲だからかもしれませんが) 激しめな曲なのでピアノときちんと合わせたいためか、デュメイさんは小山さんの後ろへ移動。 小山さんに向ってヴァイオリンを弾き始めました。>ある意味、観客無視状態です。 恐らく自分の腕の動きをピアノの黒い部分に写して、小山さんが合わせやすいようにするためだとは思うのですが(小山さんに弾き振りをしているような感じでした)。これだと、右側に座っている方はピアノに隠れて小山さんどころかデュメイさんまで見えなかったのではないかと思います。 …ただ、ビジュアル的にはとても素敵でした v デュメイさんは他の演奏でも最後の数音は必ず小山さんに近づいて、一緒にリズムを刻みながら曲を終わらせていました。この光景も素敵でした(笑い) 最後の音の演出を大事にするという点では、デュメイさんは新日フィルさんと演奏されたらぴったりかも?!と、勝手な想像も膨らみました。 >新日フィルさんも最後の音を大事にする演奏をされるので。 20分間の休憩中、私は皆さんの会話を耳を大きくして聞いていたのですが(笑い)、「デュメイ、いいね!」と話されている方が何組もいらしたので、大満足でした♪ 本当、素敵な演奏&音色でした。 後半唯一の曲、ブラームス:vnソナタ第3番は、デュメイさんは眼鏡を外して登場。つまり、楽譜を見る必要がない、暗譜されているということですよね。 そう思ったら、再びF.A.E.ソナタと同じ小山さんの後ろへ立ち、小山さんに向って演奏を始めました(!) ラストに相応しい、とても御2人の意気込みが感じられる演奏でした。 ただ、デュメイさん。決めの部分だけ観客の方を向いて弾いてくださって、そのスタイルに慣れていない私にはちょっとそのお顔が怖くて…(爆)>カッと口を開いて、こっちを向いて弾かれるのです!!! 素敵なのですが…これは実際、体験してみて下さい。 演奏、というよりもそのデュメイさんの姿が私の頭には焼きついてしまいました。 それもあって、今回はいつも良い演奏に出会えたときのような体全体から溢れてくるような感動というよりも、気持ちはとても高揚しているのですが、その興奮が体の底でじわじわとくすぶっている様な、すごく不思議な気持ちなのです。初めて見たデュメイさんにびっくりしたというか。 感動よりも、びっくり度の方が最後で強くなってしまいました! ははは。>この部分の気持ちは上手く説明できないのですが。 アンコールの後、何度か舞台を行き来してお辞儀をして下さったのですが、最後はデュメイさん、ポンポンと観客に向ってヴァオイリンの弦を弾いてくださいました。(その姿がとても紳士的で、ここでも感動してしまいました。「世界のヴァイオリニスト」というオーラが溢れておりました。) その時、ヴァイオリンがまた何も言わないデュメイさんの代わりに「Merci beaucoup!」と言っているような気がして(笑い)、デュメイさんとヴァイオリンって一心同体なんだな…とますますデュメイさんとヴァイオリンに私は惹かれてコンサートは終わりました。 こんなに待ち焦がれたコンサートは久しぶりでした。とても幸せな気持ちで会場を後にしました。 2006年10月1日 記 |
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