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新日本フィルハーモニー交響楽団
サントリーホールシリーズ ♯402
【 2006年6月21日(水) in サントリーホール 】
 指揮:ジェームス・ジャッド  ヴァイオリン:渡辺玲子


Dmitry Shostakovich ショスタコーヴィチ(1906-75)

■ ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77 with 渡辺玲子
■ 交響曲第7番 ハ長調 作品60 「レニングラード」
私はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番がとても好きです。「どこが」というのではなく、何も考えずに音の流れを聴いているととても気持ちが良い曲だからです。音の並び方が好きです。第4楽章などは、ディズニーランドのイッツ・ア・スモールワールドにいるようにワクワクした気分になります(変な聴き方かもしれませんが)。

それは、テレビで庄司紗矢香さんが演奏しているのを見たことがきっかけです。よく分からないけど良い曲だなぁと感じました。その後、友達用に図書館で渡辺玲子さんが演奏するCDを借りる機会があったのですが、友達以上に私がはまってしまったのでした(笑い)
丁度その時 この渡辺玲子さんが弾かれるショスタコ協奏曲のコンサートがあると知り、チケットを取りました。東京って素晴らしい…と思った瞬間でした。これはだいぶ前の話です(いつ発売日だったか忘れてしまったくらい昔)。

そんな、とても楽しみにしていたコンサート♪ オケは私としては信頼度抜群の新日フィルさん。
今日は不思議な位に仕事も順調で、何の罪悪感もなく、極々普通に会社を出ることが出来ました(笑い、いつもは後ろめたい気持ちで先に帰っています) まるで、サントリーホールに導かれているかのようでした。

今日の感想は、何と書いていいのかとても困っています。自分の持ち合わせた言葉では、半分も伝えることが出来ないからです。演奏後、私はとても泣きたくなりました。あまりの素晴らしさに胸が一杯になりました。渡辺さんにブラボー!と叫びたかったです。
単に上手い…というのではないのです。素晴らしさでは昨年聴いた諏訪内さんのバッハの方が上だと思いますし、演奏の温かさと楽しさでは先週聴いた川畠さんとボローニャの演奏のほうが優れていると思いますし。舞台上の雰囲気とかそういうものでもなくて…私のイメージしていたショスタコがそのまんま舞台上にあった、というか。ここまでそのままのものを聴くことって出来るんだ…と。渡辺さんの、見た目や人柄ではなくて『力』そのものを見せていただいたような気がしました(それがとても自然になのです)。頭を殴られたような衝撃でした。

…以下は、そのすごさの説明にはなっておりませんが、記憶に残っていることをそのまま書きたいと思います。

最初に、指揮者のジェームズ・ジャッドさんとワインレッドのドレスを着た渡辺玲子さんが登場しました。渡辺さんはそのまま指揮台の上に御自分の黒い汗拭き用のタオルを置かれました。(置いていいんだ…と思いました、笑い。初めての光景でした。)

第1楽章――
初めて聴く渡辺さんのヴァオイリンの音色。特別に「美しい」とか「優しい」とかそういうことは感じなかったのですが、私の耳にすっと入ってきました。
渡辺さん御使用のヴァイオリン。ストラディヴァリなのでしょうか…
すごくホール全体に響いていたのです!オケに勝っていました。これだけでもすごい(新日フィルさんの弾き方が良かったのかもしれませんが)!!!
先日サントリーホールで聴いた川畠成道さんのヴァイオリン(ガダニーニ)はオケに負けていましたし、庄司紗矢香さんのストラディヴァリも少し負けているように感じました。なので、サントリーホールで聴いてもコンチェルトってこういうものなのかなと思っていました。…違ったのですね。
ヴァイオリンの音の流れを楽しむ第1楽章は、おかげで大満足でした♪
渡辺さんの演奏。高音でも全く掠れもしないのです!安心して演奏に聴き入りました。

第2楽章――
最初はオケのヴァイオリンはお休みで、ソリストの渡辺さんが弾き続けるのですが、この部分ってとてもリズムが良いのですよね!私も大好きな部分で、思わず一緒に体が動いてしまうのですが…演奏を待っている新日フィルの皆さんも同じようでした(笑い)
本日のコンサートマスター崔さんは、右足でカウントを取っていましたし、2月の文京シビックでのコンサートマスター西江さんは首を縦に振っていましたし、やはり2月の時に演奏されていた第一ヴァイオリンの女性の方(名前分からず…)は弓を揺らしていました。舞台も客席も皆で渡辺さんの演奏に一体となったかのようでした。皆ですごく集中したような気がします!
その後オケのヴァイオリンも入っていき、盛り上がって終わるのですが、全員で弓を上に高く上げて締めるラストは、まるでミュージカルの一幕が終わったかのよう…!そこにはすごい熱気が溢れていて、思わず鳥肌が立ちました(今日は何度も鳥肌が立ちました)。素敵な場面でした。

第3楽章――
前半は、先程の楽しい盛り上がりと違って、優しく穏やかな曲調になります。
私はこの部分には、癒しとか温かさとか、母親が子供を守るような、包み込んでくれるような幻想的な(?)イメージを持っていました。

―― ですが、渡辺さんの演奏は違いました。

渡辺さんの場合、子供を抱いたまま戦場で戦い抜くような、ジャンヌ・ダルクのような演奏でした(笑い) 同じ守ってくれるにしても、とても現実的といいますか… リアルな厳しい中での優しさでした。

後半はこの曲のメイン、渡辺さんの独奏部分です!!!
3楽章に入って、渡辺さんが鼻をしきりにすすっていらしたので、集中力具合が心配だったのですが(全く問題ありませんでした!)、独奏に入ってからは御自分の世界に入られたからか、鼻も止まっていました。
独奏部分では目をずっと閉じられて、ヴァイオリンに左耳を近づけられて、体の感覚だけで弾かれたのだと思います。時々、足をパタパタと踏み鳴らす音もホールに響き渡って、体全体で音を出されるのだなぁと、ヴァイオリンと一体になっているのだなぁと感じました。すごい集中力でした!
でもそれは五嶋みどりさんや庄司紗矢香さんのように、神がかったものではないのです。なので、聴いていて身近に感じることが出来ました。
一見、早くてめちゃくちゃに弾かれているようでも(笑い)、渡辺さんは全てを計算された上でこの音を出されているのだろうなと思いました。渡辺さんなら、もう一度弾いても全く同じ音で演奏することが出来る方だと思いました。

すごい独奏を上手くオケが引き継いでの第4楽章――
(こういう部分が新日フィルさんって、上手なのですよね!)

独奏後の渡辺さんのヴァイオリンから肩当て(というのでしょうか?ヴァイオリンの後ろに付けている部分)が外れました。先程、相当激しく弾かれたのだと感じました。弓の毛も数本切れていました。
すぐにソリストも弾かなくてはいけないのですが、渡辺さんは急ぎつつも冷静に肩当てを付け直し、指揮台の上に置いてあったタオルでヴァイオリンと御自分の首を拭き(これまでも各楽章が終わると、タオルできちんとヴァイオリンを拭かれていました)、演奏に入られました(笑い)

第4楽章も楽しい部分!あと少しでこの演奏が終わってしまうのが残念で仕方がありませんでしたが、楽しい旋律に夢中になりました。弦の上で弓がポンポンと跳ねます。高音も鳴り響きます。ピチカートでリズムを刻みます。…お祭り、というか宴会並みの賑やかさですね。私のショスタコーヴィチのイメージはこういう感じです。

――そして、ついに終わってしまいました(涙)
会場全体がものすごい拍手を送りました。
「すごい…」しか、私も言葉が出ませんでした。
とても良い演奏に巡り会うことが出来たことに感謝です! 本当に良かった!

このまま帰っても良い位だったのですが(笑い)、後半もあります。

交響曲第7番 ハ長調 作品60 「レニングラード」   75分

75分…(暗)
先日のマーラー5番と良い勝負…でしょうか(どの位の長さだったか、もう忘れてしまいました)。
どちらも私の知らない曲ですし…。
また何度起きてもまだ演奏が終わっていない状態になるのかな、と覚悟していました(爆)

ですが、今回は違いました。とても聴きやすい曲(演奏が聴きやすかったのかもしれませんね)でした。これは戦争との関係を無しには出来ない音楽のようで(パンフレットに説明がありました)、私もそのことを意識して挑みました。

第1楽章。
途中から小太鼓(?)のマーチ的なリズムに乗って、チャーン、チャーチャ、チャ、チャ♪ という旋律が何度も繰り返されます(この部分だけ覚えてしまいました)。「ボレロ」のパロディ…と、パンフレットに書いてありましたが、確かに(笑い)!

私は「戦争」というからには、もっと重々しくて暗い音楽なのかと思っていましたが、そうではありませんでした。ある意味楽しめてしまう…というか、戦争を知らない若い人たちの演奏、という感じがしました(そういう私は戦争もこの曲も知りませんが)。
指揮者のジェームスさんも、すごく乗っていて、まるでテルミンを弾いているかのような手の動きでした(爆、その後75分も熱の入った指揮をされたのですから…すごいですね!)

以下長くなるので省略しますが、この大作を聴いた後も、私の心の中ではヴァイオリン協奏曲の旋律が流れていました。
とても幸せな気分で、家に帰りました。

2006年6月22日 記

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