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アントン・バラホフスキー 麗しのヴァイオリン
【 2005年11月25日(金) in 海老名文化会館 小ホール 】
  ピアノ:ウラジミル・ミシュク


■ タルティーニ/クライスラー  ヴァイオリン・ソナタ ト長調 「悪魔のトリル」
■ ショパン/サラサーテ  ノクターン第2番 変ホ長調 op.9-2
■ ショパン/サラサーテ  ノクターン第8番 変ニ長調 op.27-2
■ ショパン/ロディオノフ  ノクターン第20番 嬰ハ短調 (遺作)
■ パガニーニ/クライスラー  ラ・カンパネラ
  (ヴァイオリン協奏曲第2番 ロ短調 op.7 第3楽章)

■ ブラームス  ハンガリー舞曲集より 第1番ト短調、第5番嬰ヘ短調
■ マスネ  タイスの瞑想曲
■ クライスラー  美しきロスマリン op.55-4
■ フォーレ  夢のあとに(3つの歌 op.7より第1)
■ サン=サーンス  序奏とロンド・カプリチオーソ op.28
■ ポンセ/ハイフェッツ  エストレリータ
■ ラフマニノフ  ヴォカリーズ op.34-14
■ ツィゴイネルワイゼン op.20

アンコール
■ 曲目が分からず(汗)>初めて聴く曲でした どなたかのアヴェ・マリアかなと思ったり
こちらのアントン・バラホフスキーさんのコンサートは、このHPを通じてお知り合いになった方がきっかけとなって 足を運ぶこととなりました。ちらしは今までに何回もいただく機会がありまして、ヴァイオリニスト・ピアニスト 共にロシアの方ということで、チェックはしていたのですが聴きに行こうとまでは思っていなかったのです。

結果を先に言ってしまいますと――

非常に素晴らしいコンサートでした!!!

この不思議なつながりに感謝、きっかけを下さったその方にも感謝、という気持ちです(感無量)。
川畠成道さん、オーギュスタン・デュメイさんに続く、自分の中での注目のアーティストとなりました。

海老名文化会館 小ホールは、335人収容の普段行っているホールよりも少し小さめのホールでした。音響は素晴らしかったですし、座席も前後左右に余裕を持って配置されているので座り心地も抜群。海老名は私にとって 足を運ぶには遠い場所ですが、良いホールでした。

舞台に登場された御二人――
どちらも黒の服で決められていて、私の心の中でも「おおっ、ダブル・ロシアだよ!」と違う意味で興奮していました(ロシアの方なら誰でもいいのか、という声も聞こえてきそうですが。>違います!

1曲目の「悪魔のトリル」。
出だしから、バラホフスキーさんの世界というものが伝わってきました。こういう悪魔のトリルもあるんだ… と新鮮な気持ちになりました。上手く表現できないのですが、私の持っている語彙で雰囲気だけ表現しようとするならば(意味は違いますよ)『ワルツ風 悪魔のトリル』という感じでしょうか。
バラホフスキーさんの演奏されるお姿も「華麗」ですし、弾き方も1つ1つがとてもたっぷりと弾かれるのですよね。悪魔のトリルって、精神的に重々しい、暗い、というようなイメージを私は持っていたのですが、またそういう部分が私は好きなのですが、バラホフスキーさんの軽やかな華々しいトリルも抵抗無く受け入れることが出来ました。
バラホフスキーさんは指が長いので、左指の動きを今回 じっくりと拝見することが出来ました。今まで分からなかった「トリル」というものも、もしかしてこの部分かな?と分かったような気がします。
トリル部分ではないのですが、弦の上で指を左から右へ すすす…と移動される動きも美しかったです。また、右手で弾きながら、左手で楽譜をめくる姿も私には衝撃的でした。きっと、ヴァイオリンを弾かれる方にはこれが当たり前のことなんだろうな と思いましたが、そういう姿を初めて見ましたので(笑い)

今回特に素晴らしいと思ったのは、ショパン・ノクターンの3曲です。
パラホフスキーさんの「甘さ」というのでしょうか、ロマンティックな部分がたっぷりと表現されていたと思います(笑い)
それと対照的に、ブラームスのハンガリー舞曲では「情熱的」な演奏を聴くことが出来ました。知的情熱…とでもいうのでしょうか。計算して弾いているように一見思えて、でも、つい自分の熱い情熱を隠しきれずに部分部分で情熱さが溢れてしまう… (書いていて自分が変になったのではないかと笑ってしまいますが)体全体で表現するような情熱ではなくて、精神的な情熱、そのような感じに思えました。

全ての音をきっちりと細かく表現される方で、安心して楽しむことが出来ました。
節々の出だしの一音は必ず決めてくださる方です。これって、すごい効果がありますね!
その決める、決めない、の強弱がはっきりとしていたので、盛り上がった部分が特に自分の中で記憶に残ったような気もします。
また、御二人ならではの独特な時間というものがあるように感じました。
(他の演奏家の方でも恐らくお持ちなのだと思いますが、今まであまり気にならなかったので。)
演奏中の間の取り方などが、間を取り過ぎるのでは…?と思う位にたっぷりと取られたりするのですが(特にミシュクさん)、でも御二人の息はぴったり、なのです。しかも、それが嫌味に感じることなく ごく自然に。いいですね、こういう感じは。

今回、バラホフスキーさんと同時にじっくりと拝見したかったピアニストのミシュクさん(日本で大変人気のあるピアニストだそうです)。私の席は7列目の中央ブロックの左側、という決して悪い席ではなかったのですが、バラホフスキーさんの立ち位置が ばっちりとミシュクさんにかぶっていまして、ほとんどミシュクさんのお姿は見えませんでした(汗)
ヴァイオリンときちんと調和が取れていたように感じますし、「特にピアノが」という感がなかったので(つまり、主張しすぎでも しなさすぎでもなかったということだと思うのですが)、お互いに良いパートナーなのだなと聴いていて感じました。また、ヴァイオリンの独奏中に、両手をピアノの上(楽譜を置くあの位置)に置いて構えている姿が印象的でした。

先日の藤原浜雄さんのコンサートで気になった「ラ・カンパネラ」も、今回 聴いてまいりました!
感じたのは、これは弾き方だ…ということです。ヴァイオリンの弾き方を知らない素人の感想で恐縮なのですが、藤原さんの演奏では「本当に難しくて、これはすごい曲だ」と感じたのですが、バラホフスキーさんの演奏ではそういったことは特に感じませんでした。(すでに記憶に残っていないのですが、以前聴いた川畠成道さんのラ・カンパネラもそのようなものだったのではないかと。)
藤原さんは、曲全体を通して全てに全力を注いで演奏されていました。ですので、高音部分や細かなテクニックを要する部分も動きが大きかったので、難しい面が前面に出てしまったように感じます(だからこそ私はこれだけ印象に残ったのですし、そのような演奏を聴くことが出来て良かったと感じていますが)。
バラホフスキーさんは、高音部分や細かな部分は軽く、音量も小さめに弾かれて、低音部分や自分がアピールしたい部分をたっぷりと余裕を持って弾かれていました。ですので、私たちはそちらの方の記憶が強くて、難しい部分は印象に残らないのですよね。バランスの取り方が上手いな、と思いました。

335人収容のこのホール。開演時は半分位空席だったと思います。その後、遅れて来られた方がいらっしゃいましたが、でも5分の1から4分の1程空席でした(ホールの場所のせいもあるのだと思いますが)。こんなに素晴らしい演奏なのに、何で…?! という気持ちでした。すごくもったいないことだと思いました。
ぜひ、お近くでバラホフスキーさんのコンサートが開かれた時には、騙されたと思って(?)ぜひぜひ一度足を運んでいただきたいです。私も、今後も聴きに行きたいと思っています。
今度は、ぜひ御二人のソナタをたっぷりと…というのが希望です(笑い)ソナタを聴いてみたいです。
とても良い一時でした。おかげで翌日の朝も、幸せに充ちた気持ちで目を覚ますことが出来ました。

2005年11月26日 記

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