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キリスト教会礼拝堂で聴く
川畠成道 ヴァイオリン リサイタル
【 2008年5月31日(土) at 日本聖公会 神田キリスト教会 】
ピアノ : ダニエル・ベン・ピエナール


■ ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番 ヘ長調「春」
■ バッハ:シャコンヌ
■ ドビュッシー:美しき夕暮れ
■ リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
■ ドヴォルザーク:スラヴ舞曲
■ ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
■ カッチーニ:アヴェ・マリア
■ ワックスマン:カルメン幻想曲

アンコール
■ ラスマニノフ:ヴォカリーズ
■ モンティ:チャルダッシュ
■ ピアソラ:オブリビオン
■ ディニーク:ひばり
■ メンデルスゾーン:歌の翼に
今年に入って川畠さんのコンサートは何度か聴きに行っているのですが、そしてそれはどれも素晴らしいものでしたが なかなか感想をまとめる機会が無くて、そのままになっていました。
ですが、本日はピアニストが今年最初で最後のダニエルさん!>きゃ〜っ!!!
記憶のあるうちに、書き留めておきたいと思います♪

会場である神田キリスト教会は秋葉原駅から10分ほど歩いたところにあります。
秋葉原に教会…?! って驚いたのですが、本当に電気ショップが立ち並ぶ先に この教会がありました。時間があれば、私も帰りに色々立ち寄ってたくさん買いたかった位で(笑い)

小雨の中 開演時間ギリギリに会場へ入りますと、すでに人は一杯。
こうやって教会の長椅子に座るのって何年振りだろうか…って思いました。
プログラムを見ると、2曲目にバッハのシャコンヌがv
久しぶりに聴く川畠さんの無伴奏。さらにこの曲を教会で聴くのは初めてです。

私は後の方の席だったのですが、係りの方が色々出入りをされている中、黒い服を着た二人組が中央の通路を歩いてきました。

あ、川畠さんとダニエルさんだ! ・・・そして、皆で拍手!

私の席からは舞台上は全く何も見えませんでしたので(唯一見えたのが、挨拶する時のダニエルさんの頭の先)、今日は音に専念することにしました。
今日のコンサートはお子様もOKなものでしたので、私のまわりはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン状態。今年の熱狂の日以上に熱狂の日でした(ははは、公演の趣旨を最初から分かっていて参加したのでいいのです)。

川畠さんの演奏をここ数年聴いていて、私は川畠成道のヴァイオリンの音色がよく分らなくなった時期がありました。毎回聴くたびにヴァイオリンの音色が違う。「あれ、こんな音色だったっけ・・・」っていつも思うのです。でも会場の周りでは「良かったね」「すごかったね」の声が飛び交っていて。私の耳が変なのかな・・・って気持ちになっていたのですが。

昨年後半位からでしょうか。
私の中で、「これが川畠さんの音色だ!」って再びはっきりと分かるようになりました。聴く度に、しっかりとヴァイオリンの音色が伝わってくるようになったのです。音とともに川畠さんの気持ちというか勢いというかそういったものもひっくるめて曲として伝わってくるようになって。
「今日のこの曲はとても良かったな」と思える曲が何曲も出てくるようになりました。
(注:偉そうに書いていますが、私個人の視点ですのでご了承下さい)

そういった気持ちは今回のコンサートも同様で、川畠さんのヴァイオリンは教会に鳴り響いていてとても良かったと思います。

ただ、私の今回の目線(というかお目当てというか)はダニエルさんです!!!
仲間内でも川畠さんの伴奏者の好みは色々あるのですが(今度皆の意見やおすすめポイントを表にまとめてみたい位で)、私はダントツにダニエルさんを推します(笑い)
(細かく言ってしまうと、マンシーニのひまわりはロデリックさん、ディニークのひばりは寺嶋さんがいいなぁと思います。)
最近はダニエルさんは川畠さんのアルバムの収録には参加されませんし、来日期間も以前に比べて短くなっているような気がします。
今年も東京方面の公演は、これが最初で最後だと思いますし・・・
一音たりとも聴き逃してはいけないって気持ちで、集中して聴かせていただきました。

一曲目のベートーヴェンの春。
私はこの第5番には、あまり思い入れがありません。大好きなデュメイ&ピリスの演奏を聴いていてもクロイツェルほど感じるところは無いです。
デュメイさんたちにとって、この曲は特別な曲であるはずなのに。
また生演奏としては、アントン・バラホフスキーさんとウラジミール・ミシュクさんのペアでの演奏が自分の中での一番であり(素晴らしい世界でした)、どうしてもこの時の感動と比べてしまうのです。

本日も川畠さんとダニエルさんとの出だしを聴いて、うーーーんという気がしていたのですが(ダニエルさんのピアノの強弱の付け方は素晴らしいなと思ったのですが)、第一楽章で大きな拍手が起こってからの第二楽章。
御二人の世界がさく裂したのは、ここからでした!

元々あまり興味のない曲ですので、第二楽章以降は気合い入れて聴いていなかったのですが(ひどい話だ)、今回 こんなにも第二楽章って「聴かせる」曲だったのか、と気が付きました。
演奏者はものすごい精神を集中させてこの部分を弾かれているのですね。川畠さんの感情が沢山入った一音一音にダニエルさんの優しいピアノの音色がぴったりと重なって来るのです。二人の暖かくて優しい気持ちが伝わってくるのです。
この曲に こんなに素晴らしい世界が含まれていただなんて、私の視界がガラっと変わりました。
(家に帰ってこの目線でデュメイ&ピリスのアルバムを聴いてみたら、こんなにいい演奏を私はこれまで放っておいたの?!って位、素敵に聴こえました。)

第二楽章が自分の中でバチっとはまると、続いて第三・四楽章もその勢いで楽しく聴けるから不思議。ここまでこの曲に入り込んで聴くことが出来たのは初めてかもしれません。
クロイツェルと同じく、川畠さんとダニエルさんとのヴァイオリンとピアノのやりとりのバランスが良いことを感じました。演奏のタイミングに無駄がないですし、本当に良いパートナーなのだなぁと。
一曲目から大満足でした。

ダニエルさんが舞台から去って、川畠さんの無伴奏シャコンヌ。
川畠さんの真上と左右の壁にはステンドグラスがあって。
教会ならではの雰囲気と川畠さんとの音色を自分の頭の中で組み合わせながら、楽しませていただきました。
最近、色々なことにイライラしっぱなしな毎日でしたので、全部綺麗に浄化させてほしいなぁと思ったりして(笑い) 私にとっては、そういう曲なのです。

後半は小品でした。
どれも良かったのですが、1つ選ぶとしたらカッチーニのアヴェ・マリアでしょうか。
途中のダニエルさんのピアノがものすごく心を揺さぶられました(他の曲でもそういった部分はいくつかあるのですが、この曲は特に)。
ダニエルさん、感情表現を音に乗せることが上手くなったような気がします(どちらかというと、これはロデリックさんお得意の分野だと私は思っていたのですが…)。
出だしのピアノで感情を乗せられて、川畠さんのヴァイオリンも心を引き付けられて、お二人の息がぴったりで、さらにカッチーニのあの曲…と来たら、これはもう 観客は泣くしかないでしょう! という感じでした。約4分がとても短く感じました… もっと聴いていたかったです。

ラストのカルメン幻想曲もすごかったのですよ。やはり、これもダニエルさんが主役!
隣の男の子は横になって寝ていたのですが(涙)、ダニエルさんの前奏で飛び起きて、夢中になって自分もピアノ弾いているように手を動かしながら聴いていました。

ワックスマンのカルメン幻想曲を川畠さんがコンサートで弾かれるようになった時のダニエルさんの演奏を覚えているのですが(初めて聴いたのがダニエルさんでした)、「正直、ピアノ厳しいな…」と思いました。
演奏がというのではなくて、通常だったらオケでシンバル打ちながら盛大に ♪ジャンジャカジャカジャカ… とやる部分を、ピアノ一台で表現する訳ですから。
指のもたつき等もあるでしょうし、ピアニストとしては素晴らしい表現をされているのかもしれませんが、カルメンという世界に対しては物足りないというか。これは、ダニエルさんに限らず他の伴奏者でもいつも感じていました。

ですが今日のダニエルさん。指の運びが滑らかな上、音符がいつもより多い気がしましたし、ピアノ一台で十分オーケストラ並の表現をされていたような気がしました。オペラ「カルメン」の世界でした。すごかった…
こんなにすごい前奏を弾かれては…と、続く川畠さんも気合いが十分に感じられて、最後までお二人の迫力に圧倒されました。最後の方でダニエルさんはいつもピアノをダーーーーって指で流すのですが(これを何と言うのか私には分からないのですが)、その部分が印象的で私は大好きなのですが、今日も期待以上に格好良いダニエルさんを見せてくださいました! 隣の男の子もさらに興奮したことでしょう。

大拍手の中、プログラムは終わったのですが、アンコールが数曲。
ヨーロッパでは教会でコンサートというのはよくありますが、日本では演奏する機会がなかなかありません。これは、私だけでなく多くの演奏家にとってもそうです。本日、こちらの教会で演奏出来たことを嬉しく思います。これからも度々・・・とは言いませんが、時々こちらの教会でこういった演奏会を開いていただき、多くの演奏家に教会で演奏する機会を作っていただければと思います。そして、私も時々参加させていただければ・・・
と、うろ覚えですがこのようなお話が川畠さんよりありました。

そして、演奏です。チャルダッシュの場合、ダニエルさんの前奏はいつも違うアレンジをされるので今日もどんな前奏なのだろうか…と楽しみにしていたのですが、やりたい放題な前奏(良い意味で)でした(笑い)

続くオブリビオンが大変素晴らしかった(涙) これもダニエルさんが!
カッチーニのアヴェ・マリアと同様に、音に感情を乗せて弾いて下さったのですよね。盛り上がり、盛下がりのリードが素晴らしく。
川畠さんのヴァイオリンはダニエルさんのピアノと息がぴったりですから・・・
この曲は、ピアノがキーポイントだったのかって思いました。
川畠さんは川畠さんのオブリビオンの世界観をお持ちですので、それをピアノがどうリードしサポートするのかが全体のバランスの鍵なのですね。

・・・と、大絶賛のダニエルさんですが、ディニークのひばりだけはあまりにも自由奔放すぎて私としては受け入れられませんでした(爆) 好きだからといって、全てが良いとは限らないということを再認識しました。御二人とも やりすぎじゃないでしょうか、あれは(苦笑い)

欲を言えばもっとダニエルさんの演奏を聴きたかったですが、充実した1日でしたので大満足です。
また川畠さん自身のコンサートも、2008年の前半はこれで終了。
川畠さんは今年でデビュー10周年だそうで、後半は10周年としての演奏をガンガンされると思いますので、こちらも大変楽しみです♪

2008年5月31日 記

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