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川畠成道 & 仲道郁代
ソナタシリーズ 2007
【 2007年9月8日(土) in 紀尾井ホール 】

■ ドヴォルザーク:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 作品100
■ グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45
■ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47 「クロイツェル」

アンコール
■ ドヴォルザーク:ユーモレスク
■ フォーレ:夢のあとに
■ パラディス:シチリアーノ
台風も昨日無事に関東を通り過ぎ、本日は快晴! 再び夏が戻ってきたような、暑い1日でした。
今日は、川畠さんが事務所を移られてからの第1回目の記念すべきコンサートでした。
いつものコンサートより少し格式が高い(?と勝手に思っている)ソナタシリーズで、しかもピアノは仲道郁代さん! 大変楽しみにしておりました♪

舞台に登場された川畠さんと仲道さん。御2人並ぶと、仲道さんがすごく小さく見えて(本当に小柄な方なのですね!)、でも美しさのオーラは健在でしたv いつ見ても素敵な方です。2年前のソナタシリーズを思い出しました。
少しいただけないなぁと思ったのは、譜めくりさん。いつものコンサートでしたらいいのですが、本日はソナタシリーズです。川畠さんがスーツで仲道さんは白を基調としたピンク・青などのお花をイメージされたような模様が入っているドレスを着られている中で、譜めくりさんの服はラフすぎませんか、と。髪のまとめ方も清楚感に欠けているような気がしました。(演奏とは全然関係ありませんけれども!)
演奏中の所々で その姿が視界に入り、気になりました。悪いわけではないのですが…

1曲目はドヴォルザークのヴァイオリンとピアノのためのソナチネです。
私は、仲道さんの弾かれているお姿を見たいなぁと思っていたのですが、みごとに川畠さんのお体で仲道さんが隠れてしまいました(爆)私の席から見えるのは、仲道さんの指先だけでした。(か、川畠さん、もう少し左に立って下さい…と言いたくなりました。)

この曲はドヴォルザークの子供たちに献呈されていますが、大人たちも楽しんでもらえるようにとの思いを込めて作られた曲だということです。
五嶋みどりさんの解説によると、「円熟した作曲家(このときドヴォルザークは52歳)が作曲したにしては、あまりにも簡単で単純過ぎるという理由で、最近ではこの作品は演奏家から軽く見られる傾向があります。しかし、この曲特有の幸せな子供時代を彷彿させるような純粋な優雅さ、飾り気のないかわいらしさ、無邪気さを十分表現するのは大変難しいことです。」(引用)とのことです。
川畠さんと仲道さんがいかに子供らしさを表現できるか、がポイントだと思って私は聴かせていただきました(笑い)

久しぶりに聴いた川畠さんのヴァイオリンの音色。
これが川畠成道の音色だったか…と感じました。ふわっと柔らかく、そして決して大音量ではありませんが会場全体にスッと伸びていく感じ。今日の演奏は、高音もしっかりと響いているし、艶があって良かったと思います。
私が聴いたギル・シャハムさんの演奏に比べると、ちょっとぎこちないかなぁ…ということと(ぎこちないのですが、所々の音の伸びは私好みでした)、仲道さんとのバランスが完璧ではなかったのが気になりましたが、でも良かったです。
私の好きな第4楽章。これは素晴らしかったと思います。なので、大満足♪
川畠さんと仲道さんのリズムがあっていましたし、それこそ無邪気に走り回る「こどもらしさ」を、川畠さんは川畠さんらしく、仲道さんは仲道さんらしく表現されていたと思います。

続いて、グリーグのソナタ 第3番。
今日の中では、私はこの曲が一番良かったと思いました。というのも、私はこれまでに何回か川畠さんのグリーグ3番を聴き、今年のラ・フォル・ジュルネで樫本大進さん、レジス・パスキエさんの演奏を聴きましたが、その中のどれでもない、本日の川畠さんと仲道さんによるグリーグの3番が聴けたような気がするからです。
先ほども申し上げましたが、川畠さんのヴァイオリンの音の伸びがこの曲でもとても良く感じました。心地よく川畠さんの音色が耳に入ってくるのです。
そして私が大好きな第2楽章のピアノソロの出だし(私の中ではダニエルさんの出だしが一番好きなのですが!)。いつもこの曲を聴く時に注目している部分です。

…仲道さん、最高!!!

これが、本当に素敵で感激しました。
ダニエルさんは、生まれたての子供を優しく包み込むような、そんな出だしをされるのですが(こちらもいいですよv)、仲道さんは雪とか宝石とか、そういったキラキラしたものがホール全体に天から舞い降りてくる感じ。仲道さんの美しさも合わさって、言葉では上手く表現できないのですが、今まで感じたことのない感覚に襲われました。(これは、もしかしたら私が妄想モードに入ってしまっていたのかもしれませんが、爆。お許しください。)ただただ、紀尾井ホールが美しかった…
そして、どんなソロに対しても、その状況にスッとヴァイオリンを違和感なく合わせて入れていく川畠さんがまた素晴らしい。今日もすごく自然に合されていました。

休憩後は、本日のメインでありますベートーヴェンのクロイツェルです!
いつも素敵なクロイツェルを聴かせて下さいます川畠さんと、ベートーヴェン弾きの仲道さんとがどのような世界を展開して下さるのか。前回のソナタシリーズの時に、「今度はぜひベートーヴェンを」とお話しされていたということですから、御2人も気合いが入っていたことと思います。

ですが曲が始まってみますと、あまり…その… 良くなかったのです…(涙)
こういうことを書いていいのか(良くないとも思いますが)気になりますが、あくまでも私個人の感想ということでご了承下さい。実際、私の周りでは大絶賛でした(本当に)。「今までの中で一番良いクロイツェルだった」というお声も、何人かの方から聴きました。恐らく、好みの違いなのだと思います。

出だしはすごく良かったのです。川畠さんのヴァイオリンが気持ちよく響き渡って、そこに入ってくる仲道さんの力強く、意思のあるピアノの音色も。質の高いベートーヴェンがこれから聴けるんだ♪ってワクワクしました。
ですが、始まってすぐでしょうか。川畠さんの演奏が「音楽」ではなくて ただの音符の並びにしか聴こえなくなってしまって。まるで1音1音を確認するかのような、「楽譜通りに弾いています」という弾き方に感じました。川畠さんの演奏は時々こういう時が起きるように(勝手に)感じますが、まさかクロイツェルでこういう事態に遭遇するとは思いませんでした。もしかしたら、いつもよりテンポを遅めに弾かれていたので、そう感じたのかもしれませんが。
本日の第1楽章はとても遅めでした。迫力に欠けていたような気がします。
(いつもだったら、川畠さんのヴァイオリンがどんどん先に行ってしまって、私たち観客が置いて行かれてしまうような悲しい気持ちにすらなる演奏ですのに。)

そうしたら、今度は川畠さんと仲道さんとの演奏がずれてきました。(私は楽譜は読めませんし、クロイツェルの楽譜がどのようなものかは分りませんが、いつもコンサートやCDで聴いている曲とは違っていました。)川畠さんと仲道さんとがそのずれを調整するかのように、さらにゆっくりになり、ヴァイオリンの音色も小さくなってしまって… このまま演奏が止まってしまうのかしら(>そんな、馬鹿な!)と、失礼ながらに感じた位です。聴いていて、怖かったです。
何があったのか分りませんし、それは計算の上でなのか、それとも私の思い込みなのか。
途中から主導権は仲道さんが握られたような気がします。ピアノのテンポに合わせて弾くような感じになり、川畠さんらしいクロイツェルが消えてしまいました。

あの(私の大好きな)オーギュスタン・デュメイさんも、昔来日されてマリア・ジョアン・ピリスさんとクロイツェルを弾かれた時に、御2人の息がずれてしまって、結局デュメイさんは1小節をとばしてしまった…という話を聴いたことがあります。それを思い出しました。あのデュメイ&ピリスの息の合った黄金コンビでもそうなんです。クロイツェルって御2人の気持ちをしっかりと合わせないと完成出来ない難しい曲なのですね。「クロイツェルは革命そのものだ」とは、デュメイさんのお言葉です(笑い)

仕切り直しの(?)第2楽章。こちらは良かったです。
でも、御2人の演奏を聴いていて私は気づきました(これも思い込みかもしれませんけれども)。
クロイツェルはヴァイオリンとピアノが会話するように主導権をお互いが順番に持って展開していく曲だと思います。それは会話と言っても輪唱形式で、Aという同じ曲調のものを交互に微妙にずらして弾いていくものだと。
でも、本日のクロイツェルはAとBという全く別の曲調で会話されているように感じました。仲道さんの伴奏は、私今まで他の演奏家では聴いたことがありません。一般のクロイツェルとは違うような。
それは仲道さんがベートーヴェン弾きだから、仲道さん独自の「ベートーヴェン」の世界をお持ちだからなのだと思いました。ベートーヴェン弾きだから素晴らしい演奏になるだろうと思っていたのに、逆にそれが問題点になることもあるのだなぁと。仲道さんのベートーヴェンで音を合わせるのは、長年のパートナーとかでないと難しいのではないかという結論に私は達しました。そうしたら、気持ちがすっきりしました(笑い)
曲の魅力を何倍にもする所々の無音の間やタイミングなどが独自のものをお持ちで、普通とはずれているのです。なのでヴァイオリンとピアノは一致しません。また、ヴァイオリンを活かすような伴奏ではなくて(苦笑い) ベートーヴェンはそれぞれの楽器が主張できるように作曲したのではないかと思うのですが、仲道さんの伴奏は、ピアノが常に主張しすぎてヴィオリンの音色が潰れてしまうのです。
ヴァイオリンも入るタイミングが難しそうでした。単にカウントすればいいという問題ではないので。
第3楽章も再びかみ合わなくなって、私の中では微妙な気持ちの中で、この演奏は終わりました。
好きな、素晴らしい演奏家同士が演奏するからと言って、決して素晴らしい演奏が生まれるものではないのだなぁと、改めて音楽の難しさと深さを素人ながらに感じました。
でも御2人の曲に対する熱意とかは素晴らしかったですし、こういう演奏があって、他の演奏も成り立つのだということも、分かりました。とても楽しみにしてたクロイツェルですし、どんな結果であれ(失礼な表現ですが、汗)、御2人のクロイツェルが聴けて、嬉しかったです。

アンコールは3曲。本日はドヴォルザークの誕生日だそうです。そのようなことを川畠さんはお話しされていました。3曲どれも良かったです♪

演奏後は御2人のサイン会がありましたv
仲道さんには先日パーヴォ・ヤルヴィさんにもサインをしていただいた、仲道さん&ヤルヴィさん&ドイツ・カンマーフィルのDVDにサインしていただきました。
仲道さんは、サインをするアルバムごとに聴きどころのご紹介などを私たちにいつも伝えて下さいます(それが楽しみでもあります)。
今回いただいたメッセージは、2枚目はメイキングになっていてドイツで楽しく収録した色々な光景を見ることが出来て、仲道さんがソーセージを食べている姿まで収められているとこのとでした!
私は2枚目はまだ見ていないのですが、本当に楽しくこのDVDを収録されてきたのだなぁと思いました。今度、そのソーセージをメインに見てみようと思っています(笑い)

川畠さんの列にも多くのファンの方々が並びました。私の前にいらした方は、アルバムには一通りサインをいただいたからと、本日の感想を伝えるためだけに長い列に並ばれていました(ということは、本日はアルバムのみにしかサインをいただけなかったのでしょうか…そこら辺は良く分かりません)。
その方のお姿を見て、いいなぁ!って、こちらまで元気をもらってしまいました(爆)
久しぶりにたくさん友達にも会えましたし、楽しいコンサートでした。

2007年9月9日 記

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