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川畠成道&マリボール歌劇場管弦楽団
NARIMICHI KAWABATA & SYMPHONY ORCHESTRA OF THE SLOVENE NATIONAL THEATRE MARIBOR
【 2007年4月21日(土) in 文京シビックホール 】
 マリボール歌劇場管弦楽団


メンデルスゾーン
■ 序曲「フィンガルの洞窟」op.26
■ ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 with 川畠成道
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ヴォルフ=フェラーリ
■ 歌劇「おろかな娘」 序曲
■ 歌劇「4人の気むずかし屋」より 間奏曲
■ 歌劇「マドンナの宝石」より 組曲 ―祭り / 間奏曲 / レセナータ / ナポリの踊り
■ ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.26 with 川畠成道

アンコール
■ サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン with 川畠成道
■ イザイ:無伴奏ソナタ 第3番 「バラード」 川畠成道独奏
風が大変強く(飛ばされそうなくらい、笑い) でも日差しは暖かい、そんな天気の中で本日のコンサートは行われました。
この文京シビックホールは約1年前に新日本フィルさんとのチャイコフスキーのコンチェルトが昼・夜公演と1日に2回あり、素晴らしい演奏を聴くことが出来たという 私にとっては思い出深いホールです。地下鉄・後楽園駅から直通で行けるという、交通の便が良いホールでもあります。

マリボール歌劇場管弦楽団って、一体どのような人たちなんだろう…と思っていると、舞台に皆様が登場。最初に出てきたのが ものすごい美人 or ナイスバディな女性たちでしたのでびっくり(笑い) すごい国だ…と思っていましたら、その後からたっぷりと安定感のある(?!)方々もいらっしゃいましたので、安心しました。>何がだ(笑い)
1人、赤い縁の眼鏡をかけていらっしゃる女性がいまして、その眼鏡がとても印象的でした。

1曲目はメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」です。
私はこの曲の雰囲気が好きなのですが、マリボールさんたちの出だしにはズルっとなりました(汗)
何と言いますか…音がばらばらなのです。1人だけ音が違っていたような気もしますし。メンデルスゾーンの曲の魅力とすごさが表現できていないなぁと思いました。中盤から徐々に良くなってきてはいましたが。(この後の演奏はどうなってしまうのだろう…とその時は心配でしたが、その後は心配ありませんでした、と先に述べておきます。)

2曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。
暖かい拍手の中、川畠さんが指揮者の方と一緒に登場! マリボールさんの音がバラつくこともなく(笑い)、メンコンが始まりました。

私の中でのメンコンは、昨年10月に聴いたオーギュスタン・デュメイさんの演奏がかけがえのないものでありますので、今後どのような素晴らしい演奏を聴いたとしても、恐らくこれを越える事はないだろうと思っています(もう、自分の中で思い込んでいるというか、受け付けないというか)。

ですから、本日の演奏も私としてはデュメイさんにはかなわないよなぁ〜という感想になってしまうわけです(爆)>これは本当に個人の思い込みですので御了承下さい。
川畠さんの演奏は正確なのですが、全て音符の並びに聴こえてきます。四分音符が3つに八分音符が2つ…のように。もう少し演奏に感情表現があると、こちらも曲に入りやすいと思うのですが!
川畠さんのデビューは日フィルさんとのメンコンだったそうですが、そのご自身にとって記念すべき作品だからこそ、もっと思い入れなどあるのではないかなぁと、こちらはそのプラスα を期待してしまうのですよね。他の方には無い、作品への思いとか表現とかがあるのではないかと。
その点デュメイさんは「自分はこの曲を全体的にこう表現したいから、ここの部分はこう速く弾くのです」とかそういった意志が伝わってきて、オケ全体を自分の我儘で引っ掻き回してしまうような(笑い、違いますけれども)とても聴いていて面白い演奏だったのです。>音色も素敵だったしv

言い訳ではありませんが、それでも私が今まで川畠さんのメンコンをフルで2回聴いた中では、本日の演奏が1番良かったのではと思います。オケとも合っていましたし。
…合ってはいましたが、指揮者が一度も川畠さんを見ないで指揮をされていたのは気になりました。小林研一郎さんだったら、もっと川畠さんを見ながら、川畠さんの演奏を尊重しながら(?)指揮して下さるのに、とか思ったり(笑い、川畠さんを信頼されているから、という見方も出来ますけれども)。オケと川畠さんを繋ぐ役割をしていただきたかったです。>我儘なファン心理でありますが!
指揮そのものは大変熱かったです。白いお顔を真っ赤にされて振っていらっしゃいました。

休憩中に知らない方から話しかけられたのですが、「私はサントリーホールで川畠さんのメンコンを聴いたことがあるけれども、音が全然違った。今日はヴァイオリンの音がキンキンする。本当はもっと丸みのある音を出す方だと思うのに。今日の席はセンターだから決して悪い席ではないはず。ホールの音響のせいかもしれないけれど、何だか川畠さんが可愛そう。」のようなことを言われました。
きっと、残念で誰かに お話したい気持ちだったのでしょう。

この御意見は、私も同感です。いつも不安定に感じる高音が、本日は掠れることなく響くのはとてもいいなぁと思ったのですが、その分なぜだか全体的にキンキン耳につく感じがしました。そして、川畠さんの持ち味である低音の暖かい響きが無くなっていました。
どのような感じかと言いますと、アンコールでツィゴイネルワイゼンを聴いていた時に、日フィルさんのガラで聴いた千住真理子さんのツィゴイネルワイゼンを思い出した…と言えば分かっていただけますでしょうか。音の質的にはそのような感じでした。
音量に関しては、やはり少し小さいかな、と。会場全体に音が届いたのかが気になるところです。

後半は、ヴォルフ=フェラーリです。
これは最初からとても良かった! 私の好きな「おろかな娘」の出だしも、「マドンナの宝石」の出だしも、バッチリだったと思います。歌劇場管弦楽団さんなので、オペラ系のほうが強いのかしら、と勝手に思いました(詳しくは分かりませんが)。
本日、譜台の上にオペラ用の照明が付けられていましたので、雰囲気作りで会場を暗くして演奏されたりするのかな と思っていたのですが、そういうことも無く(笑い)、この照明は使われませんでした。

ラストが今回の注目度No.1の(?)ヴォルフ=フェラーリのヴァイオリン協奏曲です!
再び川畠さんが舞台に登場されました(川畠さんが登場される時の拍手は大きいです、笑い)。

今回、このフェラーリのヴァイオリン協奏曲は『日本初演』ということが売り文句だった訳ですが、これについて最初に少し書かせていただきたいと思います。
以前他のページで、「すでに佐藤久成さんという方が日本で演奏されているようだ」という事を私は書いたのですが(佐藤さんのHPに記録の記述があります)これについて友人が少し調べてくれました。>ありがとうございます!

佐藤さんは「日本初演」を宣言するにあたっていつも、

◎ 日本著作権協会に問い合わせて確認し、作曲家の権利が終わった後(50年以後)の記録は自分たちで調べる
◎ 多くの文献、資料を点検する
◎ それらに詳しい人や学者にも点検してもらう

調べられる限り調べた上で、責任を持って宣言されているそうです(記録もきちんと録ります)。
ただ、作曲家の没後50年以後の「日本初演」に関しては100%の保障は無いとも言われていたそうです(どこでも自由に弾けるものなので)。

それで川畠さんの「日本初演」との関係なのですが、佐藤さんの演奏されたのは作曲家自身が書いたピアノ伴奏譜面のオリジナル原曲(ヴァイオリンパートはオケ版と同じ)だそうなので、オーケストラ版はやはり川畠さんが初演、ということになるようです。きっと今回はそのようにお考えになられての企画だったのではと思います(主催者側には未確認です>自分にとってはそれ程重要なことではありませんので)。佐藤さんのピアノ伴奏版もぜひ聴きたいですね!
※ 「初演」にこだわるわけではありませんが、きちんと今回の演奏を楽しむために書かせていただきました。

本題のヴァイオリン協奏曲です。
このヴァイオリン協奏曲は「日本初演」という位ですから、日本ではもちろんアルバムは発売されていませんし、海外で見てもアルバムを出されている方はギラ・ブスタボさんとウルフ・ヘルシャーさんの御2人しか私は確認することが出来ませんでした。比較する演奏自体がありませんので、今回の演奏が良かったとか悪かったとか、はっきりと述べることが出来ません。ただ私は今回この演奏を聴くにあたって予習をし、この曲がとても好きになりましたので、今後も滅多に生で聴くことが出来ないであろう曲を聴くことが出来ただけでも幸せで、感動しました。出来ればこれをきっかけに、今後も色々な場所で聴く機会があると嬉しいです。
何より、この約35分ある協奏曲を全て頭の中に叩き込める川畠さんの才能に改めて感服いたしました。プロですから当たり前のことなのかもしれませんが、でもすごいですね!

この曲はヴァイオリンのソロから始まるのですが、川畠さんはたっぷりとビブラートをかけながら演奏されていました。ブスタボ版の演奏が好きな私としては、完璧な出だしです(笑い、ブスタボさんはビブラートをバリバリかけて演奏されています)。
これからの約30分の時間が楽しみで仕方がありませんでした。
メンコンの時は川畠さんを全然見ずに指揮をされていた指揮者の方も、この曲では川畠さんとオケを交互に見ながら指揮をされていました。先程は決して川畠さんを無視していたわけではなかったのね、と(笑い、当たり前ですが!)。

ブスタボさんは この曲をまるでオペラであるかのように、物語性を持って演奏されています。ウルフ・ヘルシャーさんは「美しさ重視」といいますか、美しさはフェラーリの曲の特徴なのかなと私は勝手に思ったのですが、とにかく美しく、聴いているこちらもうっとりしてしまうような演奏をされているように感じました。(御2人の演奏は、同じ曲ながら全然雰囲気が違うので聴いていて面白いと思います。)
川畠さんの演奏は、全体的にヘルシャーさんに似ているように私は思いました。音の美しさを全面的に出している部分、第3楽章のImprovvisoの速めに弾かれるところとか、その他色々な部分の音の強弱の出し方、テンポなどがヘルシャー版をイメージさせました。(ですので今回残念ながら聴きに行くことが出来なくて、でも川畠さんの演奏がどのような感じだったのか気になる方は、ヘルシャー版を聴かれることをお薦めいたします。全く同じではありませんが、かなり近いものがあるのではと。)

私の大好きな最終楽章、Rondo finale。
マリボールさんの出だしがバラバラ… せっかく川畠さんがリズム良くブンブン弾かれているのに(涙) この部分はちょっと残念でした。

プログラムの解説を読んで知ったのですが、カデンツァの部分は当時ブスタボさん自身が作曲されたとのこと。この部分は、川畠さんもご自身の味を出されて弾かれていた様に私は感じました。
ブスタボ版でもヘルシャー版でもない、川畠さんの素敵なカデンツァでした。この部分が聴けただけでも私は今回大満足です♪
川畠さんは時々面白いな、と思わせるようなテンポというかリズムというかを表現される時があり、それが川畠さんの魅力の1つでもあると思うのですが(例えば、NEWアルバムに収録されているツィガーヌとか)、それがこのカデンツァにも出ていたと思います。言葉では「こんな感じ」と、上手く表現ができないのですけれども。

この協奏曲はブスタボさんの魅力を十分に引き出すことが目的で作られたのでは?!と思うのですが、もうすぐ終りかな…と思うあたりで、この聴かせどころのカデンツァがあるのですよね。 この曲、長いな…と思いながら聴くには勿体無い部分だと思いました(笑い)

ラストは 「大団円」 という感じで ゆっくりとこの曲を終えられましたので、聴いているこちらも 思わずにっこりv 後ろの方からは「ブラボー!」の声も聴こえました。
1つの祭りが終わった…という気分でした(完璧な演奏を聴くというよりも、ファンにとってはこれは記念すべきお祭りのようなものですよね!>そんな感じ方でいいのでしょうか…笑い)。
お隣の方たちは「長い曲だったわね…」とお話されていましたが、「ちょっと…!そんな感想しか無いの?!」と言いたくなってしまいました(爆) 35分は決して長くはありませんよ!

驚いたのが、アンコールでツィゴイネルワイゼンとイザイのバラードを弾かれたこと。これは大阪公演でのプログラムそのままですよね(大阪ではメンコン、ツィゴイネルワイゼン、アンコールにイザイのバラードだったようです)。協奏曲を1曲弾くだけでも どれほどの体力を使うか想像出来ないのに、協奏曲2曲とツィゴイネル、イザイ、です。川畠さんの体力はすごい…と思いました。

最初のツィゴイネルワイゼンを弾く時に、川畠さんはすぐに弾く準備が出来ていてヴァイオリンを構えていたのですが、指揮者の方がお顔の汗と曇った眼鏡を拭かれていたために演奏を始めることができず、その妙な時間の間が面白かったです。
そして、イザイのバラードが終わった時には指揮者の方が川畠さんに「とても良かったよ」みたいなことを囁いていました。オケの方々も、よく弾くよなぁ…と思われていたのではないでしょうか(笑い)

大拍手の中で本日のコンサートは終了したのですが、最後に指揮者の方が会場に向って「バイバイ!」と手を振ると、コンマスさんも真似して(?)「バイバイ!」と手を振って舞台を後にされたのが良い余韻として残りました(笑い) コンマスさん、とてもフレンドリーな方のようでした。(このコンマスさんもとても汗かきのようで、演奏中に何度もお顔を拭かれていました。)

いつものコンサートとはまた違った充実感があり、とても楽しい一時でした。
私は次の川畠さんのコンサートは恐らく秋以降になると思いますが(今の予定では)、また今後も色々な違った魅力を感じ取ることが出来ればいいな、と期待をして会場を後にしました。

2007年4月22日 記

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