戻る

第4回 ソナタシリーズ2006 〜古典から現代まで〜
川畠成道 & 岡田博美
【 2006年9月16日(土) in 紀尾井ホール 】

■ ヤナーチェック : ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
■ プロコフィエフ : ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番 ニ長調 作品 94a
■ メシアン : 主題と変奏
■ ラヴェル : ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

アンコール
■ ドビュッシー : 美しき夕暮れ
■ プロコフィエフ : 3つのオレンジへの恋
■ フォーレ : 夢のあとに
今週は雨が降ったり止んだりが続きましたが、今日はそんな中でもまずまずの天気です。
四ッ谷駅に着きますと、偶然友達と会いました。紀尾井ホールまでの道のりを、今日の期待を色々と話しながら歩きました。こういう日ってとても嬉しいし、自分自身のテンションも上がってきます(笑い)

私は川畠さんのコンサートの中でも、とりわけソナタシリーズは大好きです。
初めて行ったコンサートがソナタシリーズでありましたし、昨年の仲道郁代さんとのコンサートが大変に素晴らしいものであったからです。そして、紀尾井ホールという素敵な会場!
ソナタシリーズは、極上の音色と時間とを味わえる要素が満載のコンサートなのです。

普段の川畠さんのコンサートとは、少し『質』が違うものだと私は思っています。
普段の小品とソナタの組み合わせが音楽を楽しむようなものだとしたら、ソナタ3曲のこちらは音楽と音色を味わう、テイスティングするようなものだと。
だから、聴き手の私たちも少し緊張して演奏に向かい合わないといけないと思うのです。それは過去2回の経験から勝手に思い込んだことなのですが(笑い)
これだけ気合の入っているコンサートでしたので、今回のパンフレットの内容と会場のお客様の質にはちょっと…でした。詳しくは書きませんけれども。何とかしていただきたいものです。

今日の曲目。川畠ファンにとっては馴染みの無い曲が並んでおりました。
そしてどれも現代音楽というか、1度聞いただけでは耳に馴染まない、難しめの曲だったと思います。なので、誰の演奏で聴きなれているのかによって、個々の感想が違ってくると思います。いつももそうなのかもしれませんが、今回は特に…

※ ちなみに。私は以下の方々で予習をしましたので、耳はこちらの方向に向いています。
  ヤナーチェク : 諏訪内晶子 & ボリス・ベレゾフスキー
  プロコフィエフ : アナスタシア・チェボタリョーワ & ペーター・ラウル
  メシアン : マキシム・ヴェンゲーロフ & イタマール・ゴラン
  ラヴェル : オーギュスタン・デュメイ & ジャン=フィリップ・コラール


舞台に川畠さんと岡田さんが登場して、コンサートが始まりました。
岡田博美さん。チラシ等の写真、そのままの方でした。少し地味目な…だからこそ(?)、ますますこれからの演奏に期待してしまいました。私の記憶が正しければ、川畠さんは燕尾服を着られていたと思います。ソナタシリーズに相応しいですね!

ヤナーチェクのソナタ。
この曲は、ドラマチックに始まり、ドラマチックに終わる…
まるで、映画のワンシーンを見ているかのような曲だと私は思います。
川畠さんの出だしはとても美しく、伸びのある音でとても良かったです。いつも掠れがちな高音も、今日は全然掠れません! 実はここまでの演奏をヤナーチェクには期待していなかったので(とても失礼な発言で申し訳ないのですが)、川畠さんの音楽を学ばれる、吸収される力ってすごいな、と驚きました。本当に、非凡の才能がある方です!

第2楽章。ここでは、温かいバラードが続きます。
今までの川畠さんの演奏だったら、母性的な深くて広い愛情のようなものが感じられる音色となったと思うのですが、今日の(というか今の?)音色は「男性的」な感じがしました。包み込む、というよりも外から見守ってくれるような感じ。上手く説明が出来ないのですが、今までは精神的なものだったのが物質的になったとでもいうのでしょうか。女神が神になったというか(笑い) それはヤナーチェクという作曲家のせいなのか、ヴァイオリンの状態のせいなのか、川畠さんの弾き方のせいなのかは分かりませんが、そう思いました。

第4楽章。ヴァイオリンの「チャ、チャッ チャ、チャ、チャッ」という何度も繰り返されるフレーズが印象的な楽章です。曲の最後も、「チャ、チャッ チャ、チャ、チャッ」で終わるのです。 >とても格好良いのですが、どこが終りなのかが掴めないのが難点です(汗)

私はこの曲は前半の最後の曲目に持っていって、最後の「チャ、チャッ チャ、チャ、チャッ」で舞台の照明を消してしまっても素敵なのではと思います(笑い)庄司紗矢香さんが、確かショスタコーヴィチのソナタでやっていた演出です。すごく、心に残るのですよね!

プロコフィエフ2番。
川畠さんの演奏は、1音1音を正確に表現される弾き方をされるので、カクカクッというか、きちんとなりすぎていて、私がイメージしていた曲が流れているようなリズムに乗った演奏では無かったです。初めて聴く人にとって聴きづらい曲が、一層聴きづらくなったというか(これは、ヤナーチェクの第4楽章の「チャ、チャッ チャ、チャ、チャッ」の部分にもいえたことなのですが)。ただ、演奏は決して悪くありません…これは好みの問題です。(私の大好きな第4楽章は十分に楽しませていただきましたが!)

岡田さんにも言えることで、基本的に川畠さんの刻むリズムと岡田さんの刻むリズムは違うと思いました(苦笑い、これが本日の第一の感想ですね) なので、お互いが曲に乗って良い演奏をしてはいるのですが、トータル的に『2人の曲』としてどうなのかというと、100%良かったとは私は言えませんでした。これは個性だから仕方がないのか、プロなのだからどんな時でも2人はきっちりと合わせるべきなのか、それとも私の思い込みなのか…

さて、後半の2曲は私が今回楽しみにしていた曲です♪

メシアン。良かった! 聴けて良かった!!!
川畠さんにこれからもメシアンの曲(ヴァイオリン用のものが何曲あるのかは分かりませんが)を沢山弾いていただきたい、と思いました。
私がイメージしていたような精神的な世界を、川畠さんの演奏を聴いて想像することは出来なかったのですが、でもすごく合ってました! 曲の流れと川畠さんが。もっと、もっと、深い部分を表現される演奏を私は聴きたいです。
余談ですが、この「主題と変奏」は、メシアンが最初の奥さん(ヴァイオリニスト)に結婚の贈り物として捧げた曲なのだそうですが、メシアンがこの曲に込めた思いというものが、私には未だに分かりません(笑い)それもこの曲の魅力の1つだったりします。

最後のラヴェル。
アルバムを聴いていますと、完全にピアノ主体の曲だな…と思っていました。そして、岡田さんのピアノに期待しておりました。
実際演奏を見て、聴いていますと、地味ながらもヴァイオリンがとても大変そう! 流れるように一定の音を出し続けなければいけませんし、ピアノ以上に演奏する部分が多いように感じました。

面白いのが、メシアンは鳥の鳴き声を研究して、曲の中にも多々取り入れたと聞きましたが、このラヴェルのソナタでの川畠さんのヴァイオリンの音色が、鳥の鳴き声に聴こえました(笑い)
とても澄み渡った鳴き声&歌声でした。紀尾井ホールの天井に登っていくかのような ――

第2楽章はピチカート部分が多く、ラストの部分は特にポンポン、ポンポン、弾いていますので、これはもしかしたらギターのように横に抱えて弾いていたりする? と少しだけ思っていましたが、そのようなことはなく、きちんと指で1音1音弾いておりました。…当たり前です。

大好きな、そして楽しみにしていた第3楽章。
出だし、ヴァイオリンとピアノのバランスがとても良くて、私の中では盛り上がっていました! 
川畠さんと岡田さんのリズムの違いが…などここにはありませんでした。すごく良かったのです。
でも残念だったのは、ラスト、ピアノがガンガンに弾くと思われる部分を(コラールさんは迫力つけて弾いていました)、岡田さんのピアノが弱かったのですよね…前半のヤナーチェクやプロコフィエフでは強かったのに。

私がこの部分で何を勝手に求めているのかを書いてしまいますと。
ヴァイオリンがジワジワと広く弾いている中で、ピアノが伴奏部分をあっさり目に、主旋律部分を強く弾いて下さいますと、まるでピアノ協奏曲を聴いているような気分になれるのです!
ヴァイオリンとピアノとの急がしそうな曲調の調和がオケみたいに聴こえるのですよね(デュメイ&コラール版だと)。その部分が私は大好きで、聴いていて得したような気分になります(笑い)

なので、私の気持ちは不完全燃焼で終わりました(涙)
他の方のアルバムでも、実際どのような感じなのか確認したくなりました。ガンガンに弾くのはコラールさんだけなのでしょうか。>聴いていて、すごく気持ちが良いのですよ!

五嶋みどりさんの解説によると、

『 ラヴェルは「ヴァイオリンとピアノという2つの根本的に相容れない楽器のためのソナタを書く場合、それらの性質の違いに安定をもたらすのではなく、独立性を認め、融和しがたい要素を強調することが大切であると考えている」と述べています。 』

とあります。私は、このラヴェルの考え方はいいなと思いました。だからこの曲では川畠さんと岡田さんのバランスが良かったのかしら、とか思ってみたり(笑い)

ソナタシリーズではアンコールは無い、というイメージが私にはありましたので(実際はあるのですが今までは2曲でした)、本日は3曲も聴くことが出来て嬉しかったです。また、この3曲がプログラム以上に良い演奏だったので、思わず苦笑い…
フォーレの夢のあとにって、こんなに良い曲だったかしら?!と新しい発見でした。いつもはCDなど聴いていても途中で眠ってしまうのですが、本日は川畠さんのヴァイオリンと岡田さんのピアノの音色に酔いしれました。

本日演奏された4曲。またどこかのコンサートで聴く機会があると嬉しいです。
特に私としては、メシアンとラヴェル…ですね(笑い)

2006年9月17日 記

▲上へ
本嫌いさんの読書感想文〜カラマーゾフの兄弟はいつも貸出中?!
YUKIKOGUMA   All Rights Reserved