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日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会
創立50周年記念 ガラ・コンサート
【 2006年9月2日(土) in サントリーホール 】
 指揮 : 小林研一郎  ※渡邉康雄   司会 : 江原陽子


第1部
■ 野田暉行 : 《ファンファーレと記念音楽》より
■ メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲 第1楽章 [川畠成道]
■ ブラームス : ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 第3楽章 [木野雅之・菊池知也]
■ 吉松隆 : トロンボーン協奏曲 《オリオン・マシーン》 第1楽章 [箱山芳樹]
■ ショパン : ピアノ協奏曲第1番 第1楽章 [関本昌平]
■ イタリア民謡 : カタリカタリ [佐野成宏・ピアノ伴奏:小林研一郎]
■ プッチーニ : オペラ 《トスカ》より「星は光ぬ」 [佐野成宏]
■ ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第2番 第1楽章 [小山実稚恵]

第2部
■ チャイコフスキー : バレエ 《白鳥の湖》より「情景」※ / 「四羽の白鳥の踊り」※ [スターダンサーズ・バレエ団]
■ チャイコフスキー : 《くるみ割り人形》より「花のワルツ」※ [スターダンサーズ・バレエ団]
■ シベリウス : 《カレリア》組曲より「マーチ」※
■ シベリウス : 交響詩《フィンランディア》より ※
■ プーランク : 2台のピアノのための協奏曲 第2、第3楽章 [寺田悦子・渡邉規久雄]
■ サラサーテ : ツィゴイネルワイゼン [千住真理子]
■ ワーグナー : オペラ 《タンホイザー》より「歌の殿堂をたたえよう」 [日本フィルハーモニー協会合唱団]
■ プッチーニ : オペラ 《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」 [錦織健]
■ ヴェルディ : オペラ 《椿姫》より「ああ、そはかの人か〜花から花へ」 [澤畑恵美]
■ シベリウス : 交響曲第2番 第4楽章

アンコール
■ ヴェルディ : オペラ 《椿姫》より「乾杯の歌」 [澤畑恵美・錦織健・日本フィルハーモニー協会合唱団]
※ これは元々プログラムに組まれていた曲ですが、小林マエストロが「今日はアンコールの曲も用意してあります」という
  ことで演奏されたので、アンコールとして表示しました。その他数ヶ所変更があった部分は、他の方のブログ記述を参
  考にさせていただきました(私の記憶には残っていなくて…)。
久しぶりに感想が溢れ出てくるコンサートに出会いました!
日フィルさん創立50周年記念のガラコンサート。内容が盛り沢山なのに知らない曲ばかりなので、川畠さんの演奏が終わったらきっと寝てしまいそう…でも雰囲気だけ楽しめればいいか、位の軽い気持ちで行ったのですが、とんでもない(笑い)!雰囲気どころか、最初から最後まで隅から隅まで万遍無く楽しむことが出来た夜でした。

プログラムの曲目からもお分かりの通り、1曲ごとにオケの座席の移動やピアノの出し入れなどがありまして、18時開演、休憩1回で、終わったのが21時30分でした。アンコールが無くてこの時間ですので、通常のコンサートより約1時間長かったのではと思います。それでも皆が夢中になって最後まで聴いたのですから…!!!

暗い舞台の上を、そろり、そろりと、コバケンことマエストロ・小林研一郎さんが中央まで歩いてこられまして、そこで舞台上とP席にスポットライトがあたり、1曲目の《ファンファーレと記念音楽》が始まりました(この時、演奏者はP席にいました)。

小林さんは、名前こそ何度も聞いた事はありましたが、実際の指揮を見るのは今日が初めてでした。とても分かりやすい指揮をされる方で(一筆書きしているような指揮とか、テルミン弾いているような指揮とかは私は苦手です、汗)、「また小林さんの指揮を見に行こう!」とすぐに思いました。
また1人、素敵な指揮者に出会えましたv 演奏の合間に「うん」とか「ふん」とか小林さんの気合の入った声と息遣いが聴こえてきてしまうのも魅力の1つです(笑い)

続いて、川畠さんのメンコン(第1楽章のみ)。
川畠さんは、小林さんの指揮、日本フィルハーモニーさんとのメンコンでデビューをされたということで、メンコンは川畠さんにとっても、小林さんにとっても、日フィルさんにとっても、とても意味のある曲なのだと思います。そのようなことを司会の江原さんもおっしゃっていました。
正に、創立50周年に相応しいシュチュエーションだと思います。>だから、曲目をチャイコンからメンコンに変更されたのかもしれませんね!

小林さんとクラシック界のハンカチ王子こと、川畠さんが舞台に登場! メンコンが始まりました。
(※本日の川畠さんの顎に当てるハンカチはブルー。早実・斎藤投手を意識されたのでしょうね、笑い。ただ、川畠さんの場合、タオルでなく本当にハンカチです。)

こ・れ・が…っっっ!!!

素晴らしいメンデルスゾーンでした。私にもメンコンの素晴らしさが分かるんだ、と思いました。
先日のサントリーホール with 読響さんとのメンコンと何が違うのかと言いますと(あくまでも私の解釈ですが)、『指揮者』の在り方です。私にとっては小林さんの存在が、本日のメンコンをすごいものにしてくれたのだと思います。演奏が始まって1小節ほどの小林さんの指揮を見て、全てが理解出来たような気がしました。なぜ、サントリーホールでは「普通」にしか感じなかったのか。自分が何を求めていたのか、など。私の視界がぱぁっと開いたような気がしました。

小林さんは、手先こそオケの方を向いて指揮をされていましたが、体と顔はほとんど川畠さんの方を向いていて、川畠さんと一緒にリズムを刻み、一緒に演奏をされていました。川畠さんに背中を向けている時も、背中からは見守っているような温かいオーラが出ていました(笑い) ソリストとオケとを自分を通して上手く繋いでいたように感じました。
川畠さんの音色や弾き方がどうというよりも、私がこの協奏曲で求めていたのは、川畠さんと指揮者、そしてオケとの一体感だったのかな(音よりも精神的な面で)…と本日の演奏を聴いていて思いました。お互いがすごく信頼しあって演奏されているようでした。小林さんと川畠さんは、まるで親子のようでした。

そして、ヴァイオリンの独奏部分。
これまで川畠さんのメンコンには、心にギュッとくるような優しさ溢れる音色だったり、無性に泣きたくなるような演奏を求めていたのですが、今日は、ただただ 『美しかった』…これに尽きます。

小林さんの方を見上げて演奏される川畠さんと、川畠さんを見つめて演奏を見守る小林さん。その瞬間、瞬間が1枚1枚の写真を見ているようで、絵になっていました。
この時の気持ちはプラド美術館展で、初めてムリーリョの「エル・エルコリアルの無原罪の御宿り」という作品に出会った時と似ていました。これは『音楽』というよりも『芸術』でした。そこにあるのは音ではなくて、絵画を目の前にしているようでした。

こんなに素晴らしいメンコンに出会えたと言うのに、第1楽章のみというのは皮肉なものです(笑い)
小林さんの指揮で、また聴かせていただきたいですね!楽しみにしています。
演奏後は、客席の拍手と同時に小林さんの「ブラボー!」という声が(この時は川畠さんに対してです。他の演奏者に対しても、皆さんに「ブラボー!」と伝えていらっしゃいました)。そして、熱い握手と何か一生懸命に声を掛けているようでした。
本日、このように小林さんがじっと見守るような指揮をされたのは、他に佐野成宏さん、小山実稚恵さん…位だったでしょうか。とても良かったです。

この後、全ての演奏に同じ位の感想があります(笑い)でもそれを細かく書いてしまうと、とても長くなりますので、掻い摘んで綴らせていただきます。

■ ブラームス : ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
日フィルのソロ・コンサートマスターである木野さんのお名前と体格(!)の事は話に聞いておりましたが、初めて演奏を聴かせていただきました。
想像以上に大きな方でした(爆)でもその体格だからこそ、発する音色は1音・1音が安定していて、安心して聴く事が出来ました。木野さんもソロで演奏される時には、ぜひ聴きに行きたいと思った方です。ヴァイオリンの音色も私好みですし、とにかく『上手い』と思いました。
ソロ・チェロ奏者の菊池さんの演奏も良くて、木野さんも菊池さんも日フィルさんの一員だからなのか、木野さん菊池さんのやりとりは絶妙! 指揮者、オケとの一体感は格別! とても良かったです。

■ イタリア民謡 : カタリカタリ
佐野さんは、経済学を勉強中の時に小林マエストロから「声楽の道に進みなさい!」と言われたことがきっかけでこの道に進まれたのだと説明がありました。「小林先生」と呼んでいて、とても尊敬されているようでした。
当時のレッスンと同じように(再現して?)、小林さんのピアノ伴奏で『カタリカタリ』を歌われました。
舞台上が暗くなり、ピアノの辺りだけにスポットライトが。正面のパイプオルガン付近は青い照明が。そして、ピアノの脇に立って歌われる佐野さん。とても素敵な空間でしたv

友人が以前、ソプラノ歌手のコンサートに行った時に「人間って楽器だったんだ…って瞬時に理解出来た」と言っていたのですが、同じ事を私も感じました。友人が言っていた事がやっと分かりました(笑い) 正に『楽器』でした。楽器以上の楽器!

続く「星は光りぬ」は、フィギュアスケートのプルシェンコ&マートンさんのエキシビションの曲です(笑い) やはり生は素晴らしいです。たっぷりと楽しませて聴かせていただきました。

■ ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第2番
小山さんの演奏は初めて聴きました。今月末から私一押しのヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイさんとデュオコンサートをされる方なので、色々な意味で注目しておりました(爆)デュメイとのバランスはどんな感じになるのだろう…とか。
青い素敵なドレスを着た小山さんは素敵な笑顔とは正反対の力強い演奏をされる方でした!
ラフマニノフの協奏曲自体が、力強い曲なのでしょうか。ヴァイオリニストの庄司紗矢香さんを思い出しました。 曲にのめり込んでいるかのような演奏。
(関本さんも小山さんも、サビの部分(?)になると、ブツブツ何か言われながら演奏されていたのが気になりました。こういう時、ピアニストの方って何を呟かれているのでしょう?!)
最初は、ここまで力んで演奏しなくてもいいのでは…と思ったのですが、最後は一緒に演奏をしているかのように小山さんに入れ込んでいる自分の姿がありました。
きっとデュメイとのデュオコンサートは、大きなデュメイと小さな小山さんの組合せでありながら、細いデュメイの音色を小山さんの音色がぐんぐんと引っ張っていくようなコンサートになるのかな、と(これはこれでバランスが良いと思います)想像します。

■ チャイコフスキー : 《くるみ割り人形》より「花のワルツ」
8人で踊られたバレエが素敵でした! 生のバレエを見るのは約20年ぶり位でしょうか… クラシックバレエには思い出があるので、色々なことを思い出しながら素敵な踊りをじっくりと(手の先から足の先まで!)見させていただきました。
指揮者の渡邉さんは日フィル創立者の渡邉曉雄さんのご長男。誠実そうなお人柄が、そのまま表れた指揮だったように感じます。オケの音を糸で操っているかのように、渡邉さんの指示通りに音が変化していくのがよく分かりました。とても良かったです。

■ プーランク : 2台のピアノのための協奏曲
こちらの渡邉さんも、渡邉曉雄さんのご子息。寺田さんが奥様。
さすが御夫婦で、息の合った演奏が素晴らしかった! 1人で弾いているかのような音のつながり。ごく自然に弾いているようでいて、色々な表現をされていました。
リラックスをした気持ちで極上の世界を満喫できたような、贅沢な時間でした。この御2人の名前も頭の中にメモしておきました(笑い)

■ サラサーテ : ツィゴイネルワイゼン
「これからツィゴイネルワイゼン弾くわよ!」と、一目瞭然の赤いドレス(カルメンファンタジーでもいいかも)、満面の笑顔で千住さんが登場! 演奏前に指揮者とコンマスさんに握手をしたのは、千住さんだけだったような… 明るいお人柄が演奏する前から伝わってきました。
千住さんの噂のストラディヴァリ。
不思議な音色でした。詳しくは分かりませんが(著書を読んでいないので、汗)、この音色が千住さんの元にやって来たことが、とても意味のあることだと感じました。
何というか…靴を床でキュッ、キュッ、と擦ったような音色なんです(爆)今まであまり聴いた事のない音色でした。

■ プッチーニ : オペラ 《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」
錦織健さん。めちゃくちゃ格好良い方でした(衣装も良かった)! >昨年末の第九では気がつかなかった…
歌われる前から、錦織さんに釘付けです(爆)
側に寄ったら、素敵な香りがしそうな気がします。そんな方です。
もちろん、声も素敵! 佐野さんの時と同様、人間って楽器だ、と。1人の人間でも、十分オケに勝つことが出来るんだなぁと思いました。すごい大音量でした。

■ ヴェルディ : オペラ 《椿姫》より「ああ、そはかの人か〜花から花へ」
―― とは言うものの、やはり声楽は女性が1番! と思わせてくださった澤畑さん。
錦織さん同様、ものすごい大音量。本日は前の方の席でしたので、楽しむというより辛い部分もあったのですが(大きすぎて、汗)
でも、不思議なのです。耳というよりも脳に直接響いてきたような気がしましたし、あれだけの大音量で長時間聴いたにもかかわらず、その後頭痛が全くしないのです。人間が発した声を人間が聴いたからでしょうか… 新しい世界を知ることが出来ました。またコンサートの幅が広がりました(笑い)

本日の頂き物♪ とても楽しいコンサートでした! 最後は、澤畑さん&錦織さんで「乾杯の歌」。
錦織さんがバラの花を前列の方に投げていました(笑い)受け取った方は、演奏中にも関わらず大興奮♪
>お気持ち分かります!
とても素敵なコンサートが終了したのでした。

本日は、記念品としてCDケースをいただいたのですが、帰りにはロビーに飾ってあった、そして最後に錦織さんが舞台上から投げていたバラの花を1輪ずついただいて、至れり尽くせりな気持ちでサントリーホールを後にしました。

2006年9月3日 記

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