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川畠成道&ボローニャ歌劇場室内合奏団が送る
ヴィヴァルディの「四季」
【 2006年6月16日(金) in 東京オペラシティ コンサートホール 】

第一部
■ T.A.ヴィターリ : シャコンヌ ト短調
■ E.エルガー : 愛の挨拶
■ J.ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
■ C.グノー:アヴェ・マリア
■ P.サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

第二部
■ A.ヴィヴァルディ:四季

アンコール
■ イザイ:無伴奏ソナタ第3番「バラード」
■ ビゼー作曲カルメンより前奏曲
■ ヴィヴァルディ:冬 第2楽章
■ ヴィヴァルディ:夏 第3楽章
朝の嫌な大雨が午後には上がり、晴れやかな気分でオペラシティへ向うことが出来ました。
私にとっては初めてのボローニャ歌劇場室内合奏団さん! 2年前に全国ツアーに行かれた方たちの評判はとても良かったので、楽しみにしておりました。

先に結果を述べてしまいますと、また音楽の楽しみ教えていただいた、まだこんな楽しみ方もあったのか!と驚きと充たされた気持ちとでコンサートホールを後にすることが出来た、素晴らしいコンサートでした。

前半は小品。後半が本日メインのヴィヴァルディ「四季」という構成でした。
私は演奏が始まるまで、小品はヒューイットさんがピアノを弾かれるのかと思っていましたが(爆、名前も無いのに勝手に…)、舞台に現われたのはボローニャの方々。オケの構成には詳しくないので細かい事は分かりませんが、13人位…だったでしょうか(正確ではありません)。DVDやドキュメンタリーで見たことがある方々です!
こ、この方たちがボローニャ…と少し興奮してしまいました(笑い)

1曲目のヴィターリのシャコンヌ。
いつものピアノ伴奏やオルガン伴奏(これは五嶋龍くんのコンサートにて)とは違い、弦楽版だとまた違った雰囲気が生まれておりました。私はオルガン伴奏よりはこちらの方が好きです。

―― 何より、川畠さんの演奏が素晴らしかったです!
初めて、生演奏のシャコンヌで感動しました。今日のシャコンヌは、1音・1音がとても生きているような気がして、川畠さんが表現したいこと…それは何かは分かりませんが、でも何かを伝えようとしているという気持ちが感じられました。すごくこの曲が大きなものに思えました。

前半は、もう川畠さんに目線がくぎづけです(笑い)こんな状態は久しぶりです。
先日聴きに行った広島公演の演奏とは違いました。広島もとても良かったのですが、何というか…そこから更に殻をやぶって生まれてきた、みたいな、新しい川畠さんの姿があったような気がします。
それは、弾き振りといういつもとは違った立場にいたためなのかもしれませんし(だから弾き振りは良いのですよね!)、ボローニャさんとの共演ということで川畠さんも気分が違ったのかもしれません。

1曲目が終わると、川畠さんがマイクを持ち「今日はボローニャ歌劇場室内合奏団との共演で、私自身も大変楽しみにしておりました。」のようなことを少し話されました。

ブラームス・ハンガリー舞曲第5番。
この時の、川畠さんのヴァイオリンの弾き方、構え方がとても格好良くて、印象的でした。演奏に切れがあるというか、ギル・シャハムの「悪魔のダンス」というアルバムがあるのですが、そのジャケット写真が私は頭に浮かびました。
全然違うんですけれども(笑い)何となく、そんなイメージでした。
ボローニャ流なのでしょうか。それとも川畠さんが新しく作り上げた世界なのでしょうか(後著であって欲しいです)。

後半のヴィヴァルディ・四季。
CDジャケットのような、黒のタキシードに黒のリボンで川畠さんは登場(前半は白のスーツでした)!
川畠さんは春・第1楽章から、ものすごく飛ばしていて、こんな最初から思い切って弾いて大丈夫なのだろうか…と思った位です。とても楽しそうに弾かれていました。こちらも聴いていて楽しくなりました。生演奏はこうでなくちゃ!と。

また、川畠さんとボローニャさんとの相性の良さのようなものも感じました。
先日のモーツァルトのトルコ風とは、やはり違います…。今回はソリストとオケとの間に壁が見えませんでした。
オケ自体も雰囲気が全く違いまして、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団さんたちは「私たちの演奏を、どうぞ聴いてください」のような一方的に提示するような演奏で、ボローニャ歌劇場室内合奏団さんたちは「皆で一緒に楽しもうよ!」みたいな観客に呼びかけるような演奏に感じました。どちらが好きかは演奏する曲や好みによると思うのですが…演奏自体はどちらも素晴らしかったです。

今度はボローニャさんの姿もじっくりと見ることが出来ました。
ボローニャさん。1人、1人の演奏に無駄がありませんでした。そして川畠さん同様、とても楽しそうに弾かれていました。
コンサートマスターさん(エマヌエーレ・ベンフェナーティさんというそうです)の指の動きがとても美しくて惹かれてしまいました(笑い) 弦を押さえる左手も、そして弓をもつ右手も(時々、小指が立つのですが!)。出来ることならずっと見ていたかったです。見た目が美しいのもいいな、と。

今まで四季は2度聴く機会があったのですが、今回始めて全体の流れを意識しながら聴くことが出来たと思います。
そこで感じたのは、「夏」それも特に第3楽章の素晴らしさです!
夏の人気が高いのは「これ」だったのか…と分かりました。川畠さんも、ボローニャさんも、同じところを目指して、一心不乱に(?)まとまって弾かれる姿。その気迫と魅力が溢れる空間にいる喜び…とでも言いましょうか、そういうものを感じました。この曲で1番オケが光り輝く楽章だと思いました。

もう1つ素敵だな、と思ったのは「冬」第1楽章です。これはCDでは分からない光景です。
出だしの部分。皆で弓をブンブンブンブン…と動かしているのですが、左手は激しく弦を押える、放す、を繰り返しているのですね!で、川畠さんはボローニャさんたちの2倍の速さで繰り返されていました。皆さんの動きが綺麗にそろっているので、すごく格好良いのです!
そして小さい音がだんだん大きくなっていくのですが、それが「これから厳しい冬がやって来るぞ…!」みたいな(日本風に解釈するとそうなると思うのですが、イタリアの四季だとどうなるのでしょう)、何かが起こる前触れのような、気持ちが穏やかでないドキドキ感が生まれました。

演奏後の「楽しかったなぁ。良い演奏をたくさん吸収できたなぁ…!!!」というここまでの充実感は久しぶりでした。いつものコンサートももちろん良いのです。でも、今回はボローニャさんの魅力もプラスされて、少し違ったのです。

アンコールは、最初に川畠さんがイザイの無伴奏第3番。
ボローニャの方々も、じっと演奏している川畠さんを見ていたのが印象的でした。大抵、数人は下向いていたり、違う方向を向いていると思うのですが(…って、私が違う方向を向いていましたね、汗)、皆で川畠さんに注目されていました。

川畠さんはひとまず退場し、コンサートマスターさんがイタリア語で何かお話され(さっぱり分からず、汗)、最後の「カルメン…ビゼー…」だけが分かりました。

ボローニャさんのカルメン。
これが、オペラで演奏されるんだ…!何て、贅沢な!!!と思いました。
もう、皆で1つにまとまっているような演奏なのです。そして、その演奏にすっと聴いている自分が入っていけるような開かれた演奏。欲を言えば、もっと聴きたかったです(笑い)

面白かったのが、その次です。
川畠さんが再び舞台に登場したのですが、その時ボローニャさんたちはもう1曲演奏するつもりで、楽譜を用意されていたのです。
そしてコンサートマスターさんが川畠さんと舞台を出入りする間に「もう1曲弾こうよ!」と交渉しているようでした。(その姿がとっても微笑ましいというか、これで私はボローニャさんたちの魅力につかまってしまいました、爆)

「本当は素晴らしいカルメンの演奏の余韻でこのコンサートを終わらせたいと思うのですが、最後にヴィヴァルディの四季より冬・第2楽章を弾かせていただきます」 …と川畠さん。

「え、何だって??? 今、君は何を弾くって言ったの???」 …とコンサートマスターさん。

「冬の第2楽章です」

「冬の第2楽章?! なんてことだ!!!
皆、ナリミチは冬の第2楽章を弾かれるそうだよ。」

――舞台上で、きっとこのようなやりとりをされていたのではないかと(笑い)
ボローニャの皆さんが、急いで用意していた楽譜を取り替えられたのでした。

冬の第2楽章は、とても素敵な曲で日本人が大好きな部分でありますが、オケとしてはピチカートのみで、不完全燃焼…です。聴いていて、きっとボローニャさんたちは夏の第3楽章を弾きたかったのではないかな、と思いました。
日本人って、しっとりとした余韻でコンサートを終わらせるのが好きだと思うのですが(感動を心に溜めたまま帰るというか)、イタリアの方って皆でワイワイ爆発させて陽気に終わらせるのが好きなのではないかなと思いました。そこに文化の違いと言うか、感じ方の違いがあったりするのでは…と(勝手な推測ですが)。

冬・第2楽章が終り、舞台を行き来する川畠さんとコンサートマスターさん。
(その間、舞台上のボローニャさんたちは楽譜を先程のものに替えているようでした、笑い)
再び、コンサートマスターさんは川畠さんに交渉です。きっと今度は自分たちが弾きたい曲を具体的に言われているのだな、と思いました。
もう、ボローニャさんたちって面白いですね!

言われるがままに、もう1曲アンコール(笑い)私たちは得した気分です♪
演奏されたのは、やはり夏の第3楽章でした。
聴いていて、先程感じたあの感覚(オケが1番光り輝く楽章だということ)は間違いではなかったのだ…と再確認。素晴らしかったです。
そして、コンサートマスターさんの手の動きもやはり美しかったです。

―― 最後の川畠さんの一振り。
勢いあまってコンサートマスターさんたちが見ていた譜台にボコッと弓がぶつかり、川畠さんが「あれっ?」とよろめいて終わりました。(それだけ熱い演奏だったのです!)

こ、こんな終わり方で良かったのでしょうか…(汗)

川畠さんが舞台から退場し、続いて退場されるボローニャさんたち。
観客の私たちに手を振ってくれたりして(チェンバロの女性の方がすごくキュートでしたv)、最後の最後まで私たちを楽しい気分にさせてくださったのでした。

2006年6月17日 記

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