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川畠成道 Japanツアー 2006 広島公演
― 今伝えたいことを 心を込めて ―
【 2006年6月4日(日) in はつかいち文化ホール さくらぴあ大ホール 】
  ピアノ:ダニエル・ベン・ピエナール


第一部
■ タルティーニ : 悪魔のトリル
■ グリーグ : ソナタ 第3番 ハ短調 作品45

第二部
■ クライスラー : 愛の悲しみ
■ クライスラー : 愛の喜び
■ イザイ : 無伴奏ソナタ 第3番 「バラード」
■ グノー : アヴェ・マリア
■ ラヴェル : ツィガーヌ

アンコール
■ ウィリアムス : シンドラーのリスト
■ ブラームス : ハンガリー舞曲 第5番
■ 日本古謡 : さくらさくら
■ モンティ : チャルダッシュ
■ メンデルスゾーン : 歌の翼に
昨年の宇和島公演に続き、今年も広島まで遠征してしまいました。
「皆で広島公演に行きましょう!」といつものメンバーでお誘いがあったのがきっかけです。私1人では、とても広島までは行きません(笑い)

広島まで約4時間。皆とは現地集合となっていました。
最寄り駅のJR宮内串戸駅からコンサート会場のさくらぴあまで、分かりやすい導線の看板が道の所々にあったのですが、にも関わらず途中で迷い(先に行き過ぎてしまったのです)、たどり着くまでが大変でした(爆) 1泊用の荷物もありましたし…東京より暑かったですし…
会場に着くと、上から「雪こぐまさーん!」と先に着いた仲間が声を掛けてくれたので、ようやくホッと一息つくことが出来ました。遠い場所でいつものメンバーと合流するのは、不思議な気分でした。

本日は、私にとっては今年最後のダニエルさんの伴奏。皆で翌日観光するのも楽しみでしたが、ダニエルさんの伴奏も楽しみにしておりました。(川畠さんの演奏はもちろん、ですよ!)

1曲目の悪魔のトリル。
川畠さんの演奏される姿を見て「ああ、私は広島まで来たんだな…」と改めて実感しました。この感覚。宇和島公演でも思いました。東京では感じる事の無い感覚です。
ダニエルさんのピアノ。ポロン、ポロン…とピアノの右側の方の鍵盤で高い音を鳴らすとき(その動作の名称は分かりませんが)の音色がとても美しかったです!今年何度もそのことは感じましたが、本日もそう思いました。これは、先日のアンソニーさんも同じことが言えたのですが、アンソニーさんの場合、川畠さんとのバランスがちょっと…なので、やはりダニエルさんが一番です(ははは) 今年最後と言わずに、もっともっと川畠さん&ダニエルさんのコンサートを聴きたかったです!

続いてグリーグのソナタ第3番。
私にとってはこの曲が本日1番の目玉でした! 4月のミューザ川崎での川畠さんとダニエルさんのものすごい集中されての演奏(そして第2楽章終りでの観客の拍手、汗)。今でもはっきりと心に焼き付いています。

ピアノのソロから始まる第2楽章…やはりダニエルさんのピアノは優しい!小さな子供と一緒に聴きたくなるような、何かに守られているような、安心できる旋律でした。
こうまで集中して弾かれてしまうと、その完成された世界に途中から入り込んで行く川畠さんのヴァイオリンの役目はとても重要です。変に入ってしまうと、この世界は壊れてしまいますし!
どう入っていくのかな…前回も思いましたが、今回も私は気になりました。

――結果。
そのような心配は無用でした(笑い)
ダニエルさんのピアノと対をなすように、バランスよく川畠さんの心落ち着くバイオリンの音色が聴こえてきたのでした。
私はグリーグ・ソナタ3番は第3楽章が好きなのですが、この演奏を聴いてしまうと第2楽章もいいな…と思うのです。グリーグのソナタは川畠さんのアルバム「哀愁のトリステ」に収録されていますが、でも全然違うのですよね。今の演奏のほうが、私はとても共感できますし、感情移入して聴き入ることが出来ると思います。

続いて第3楽章。こちらは、第2楽章が終わってダニエルさんが楽譜をぱらっとめくり、休む暇なくすぐに始まりました。
曲のせいもあるのですが、川畠さんとダニエルさんがすごく格好良く見えました!
演奏する姿が漠然と格好良く見える時ってなかなかありません。ダニエルさんもとても真剣な表情で、途中譜めくりさんを押しのけて、御自分で楽譜をめくる場面も…!>集中度合いが感じられました。
クロイツェルに続き、川畠さんダニエルさんペアでの演奏でまた1つ好きな曲が出来ました。

本日集まった観客。(私を含め?!)大変マナーが良かったと思います。それは、広島の方、東京から来た仲間、皆が言っていたことです。当然、グリーグ第2楽章後の拍手もありませんでした!
今回の会場、『はつかいち文化ホールさくらぴあ』も素敵なホールでした。
現地の方のお話ですと「ここら辺では1番良いホールですから!」とのこと。嬉しそうでした。「東京のサントリーホールとかとは比べられませんが…」ともおっしゃっていましたが、そんな事は無いと私は思います(笑い)サントリーホール並みに素敵でした♪それは見た目も音響も、全てに置いて、です。

また今回のチケットは完売ということで、パンフレットは座席の上に配られていました。チケットを切っていただいた時にパンフレットを受け取らなかったので、最初少し会場内をうろうろしてしまいました(どこでパンフレットをいただけるのかと、笑い)それも良い思い出です。

―― 後半はお2人とも上下黒でそろえての登場。>川畠さんがあまりにも細くてびっくり(笑い)

愛の悲しみ、愛の喜び。
何と言いますか…川畠さんよりも、ダニエルさんのピアノの美しさに聴き惚れてしまいました。伴奏が輝いていると、川畠さんのヴァオリンの音色も一層輝くなぁと。伴奏の大切さを再確認です。

イザイの無伴奏第3番。
今年のツアーで何度も弾かれたのだと思いますが、前回私が聴いた時(たぶん4月?)の曲調とは少し変化がありました。弾き続ける中で、ご自分流にアレンジされているのだと思うのですが。
最初の出だしが、すごくゆっくりになったのです。溜める部分が多くなったといいますか。
これが現在の川畠さんにとってのイザイなんだなと聴いていて思いましたが、私は以前のテンポの方が好きでした(大きな声では言えませんが、汗)。これは好みの問題だと思います…
でも音色はホール全体を響き渡って、会場全員で川畠さんのイザイを聴き入りました。

最後のツィガーヌ。
1月のコンサートでの川畠さんのツィガーヌがとても素敵だったという記憶があり(さらに月日が経つうちに記憶が美化されて)、大変に楽しみにしておりました。グリーグに続く本日の目玉です!

ですが、私は家ではずっとデュメイのツィガーヌを聴いていて、それが良くなかったのかもしれないのですが、川畠さんの演奏は私のイメージするツィガーヌではありませんでした。1月のあの記憶は何だったのだろうと思いました。この演奏の違いは、川畠さんのクセなのかデュメイのクセなのか…(後者かもしれませんね、汗)

川畠さんの演奏は全体的に速いです。でもそれは「ものすごく速い」訳でもなくて、どの部分の演奏も中途半端に感じるのです。後半の盛り上がる部分も盛り上がっていなかったような。ツィガーヌは個性を表現しやすい曲だと私は思うのですが(デュメイはもちろんのこと、パールマンとか五嶋みどりさんとか庄司紗矢香さんとか個性全開です!大好きです!)、このツィガーヌからは川畠さんらしさというものは伝わってきませんでした。好きな曲だけに、その曲の本質は知らないながらも色々と小うるさく言いたくなってしまいました(申し訳ないのですが)。

中盤でダニエルさんのピアノが入っていく辺り。ポロロン…と一気にピアノが流れる部分があると思うのですが、その部分のダニエルさんのピアノも(涙)
そこはフォーレのソナタのように、クロイツェルのように、一気にピアノの音色が流れるのが私は好きなのですが、『ダニエル流』が今回は出ていまして、上手く表現できないのですがかなりのアレンジをされていたのですね。これはこれで素晴らしい演奏だと思うのですが、個人的には受け入れることが出来ませんでした。普通でいいよ、と(笑い)

アンコール時のトークでは「先日タクシーを乗った時に、ラジオからJazzが流れたのです。そこで運転手さんと音楽の話になったのですが、彼はJazzをやっているということで『楽譜を即興でアレンジされて弾くJazzをやっているなんてすごいですね』と言うと、向こうは『楽譜通りにきちんと弾くことの方がすごいですよ』と言っていました。これから弾きますブラームスのハンガリアン舞曲第5番は有名な曲ですが、これを私なりにアレンジしております。」のようなことを言われて(いつものように記憶が曖昧なのですが)ハンガリー舞曲第5番を弾かれました。

ですが、川畠さんのハンガリー舞曲しか聴く機会の無い私は、どこがアレンジされているのかさっぱり分かりませんでした(爆)これが普通なのだと今まで思っておりました…

「前回広島で公演をしたときも、このさくらぴあさんで演奏させていただいたのですが(注:前回は他のホールだったそうです)、それが2年前だったのか3年前だったのか4年前だったのか…、今思い出そうとしても、思い出せないのです。とにかくかなり前に弾かせていただきました。この『さくらぴあ』というホールの名前は桜の木から付けられたと思うのですが…」

ということで、無伴奏さくらさくらを。
このさくらぴあホールは舞台前面の壁が木で作られていたのですが、この木は桜の木を表面に使用している言うことです(会場の関係者の方のお話より)。その効果もあるのか(?)私が今まで聴いた中で1番ダイナミックなさくらさくらの演奏だったと思いました。満開の大きな1本の桜の木の姿が舞台上に浮かびました。

続いてチャルダッシュ。これが笑ってしまいました(と書いたら失礼ではあるのですが)!
ダニエルさんが最初から最後まで「ダニエル風」で伴奏をされ(素人の私が分かる位に全然違うのですよ、笑い)、楽譜をきちんとめくる譜めくりさんが可哀そうに見えて… それに負けじと川畠さんの演奏にもいつも以上の勢いが付いて、とても元気な楽しいチャルダッシュとなったのでした。

最後は歌の翼に。
今日の公演を締めるのに、これ以上の相応しい曲は無いと思いました。大変に素晴らしかったです。また近いうちに翼に乗って川畠さんが広島までヴァイオリンを弾きに来てくださるような、希望に満ちた演奏でした。

「またいつかどこかで皆様にお会いできるのを楽しみにしています」
と、川畠さんは話されたのですが、そうか、広島の方にとっては川畠さんの演奏は「いつかどこか」なんだ…と、毎月のように演奏を聴く機会のある東京の有り難さと、今回のコンサートを楽しみに待たれていた現地の方々の気持ちとを考えると、思わず胸が一杯になりました。

公演終了後のサイン会は当然長蛇の列(川畠さんはさらに上着を白に着替えられていました)! 本日の公演の完成度がそのままこの列となっているかのようでした。東京でもなかなか巡り会うことの出来ない、とても良いコンサートでした。
そして、こうやって全国各地で川畠さんの音楽を楽しみに待っている方々がいるんだな、と実感した1日でした。今回、広島まで聴きに行って良かったです♪

追記:
大事なことを忘れていました。ダニエルさんがMagnatune(恐らく)より、12月頃にNEWアルバムを出されるそうです!バッハと同じ位偉大な方の曲と言うことで。私の知らない方でした…(暗) でも楽しみですね!!!

2006年6月11日 記

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