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Grand Family Concert 2006
【 2006年5月6日(土) in 東京オペラシティ コンサートホール 】
  ピアノ:アンソニー・ヒューイット


■ L.V.ベートーヴェン:ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24 春
■ J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ニ短調 BWV.1004より シャコンヌ

■ A.ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 第2番 作品72の2
■ A.I.ハチャトリアン:剣の舞
■ E.クラナドス:スペイン舞曲
■ B.バルトーク:ルーマニア民族舞曲
■ P.サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

アンコール
■ ショパン:ノクターン
■ ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番
■ 日本古謡:さくらさくら
■ モンティ:チャルダッシュ
■ グノー:アヴェ・マリア
1年に1度のファミリーコンサートということで(アンコール時のお話によると、このファミリーコンサートは2001年から始まって今回で6回目ということです)、オペラシティ コンサートホールの前には親子連れの姿が目に付きました。今日はとても良い天気です!

本日、私が楽しみにしていた(注目していた)点は2つです。
・ 川畠さんのバッハのシャコンヌを堪能すること。
・ ピアニストのヒューイットさんの音色を聴くこと。

バッハのシャコンヌは昨年に1度聴くことが出来まして、とても感動したことを覚えています(同じオペラシティでした)。それ以来、もう1度聴くことが出来たらなぁ…と思っていましたので、それはもう楽しみでした♪

私にとっては初ヒューイットさん。川畠さんのコンサートには今年が始めての参加だと思うのですが、流れがよく分かっていないらしく、本来ならスタッフの方がピアノのフタを締めて「次は無伴奏だよ」という状態にしてから(その時舞台が一時暗くなるのですよね)、川畠さんが舞台に登場…となるところ、最初にいきなりヒューイットさんが川畠さんを舞台に誘導してしまったのでした。
川畠さんも、おかしいなぁ…という表情をしながら、使いっぱなしのピアノを背景にしてチューニングを始められました。私も、アンコールでもないのにまさかこの状態で?!と思いました。>それでもいいですけれども!
その後 川畠さんが舞台に立ったまま暗くなって、スタッフの方がピアノの片づけをされたのでした。その一連の光景が、とてもほんわかしていて良かったです(笑い)

そしてシャコンヌ、最初の1音――

1曲目のベートーヴェン『春』の時の音色と全く違って聴こえてきました。音が違う…というよりも、世界が違うというか。空気が違うというか。とにかく違ったのです。
オペラシティの無伴奏時の音響の良さも実感しました。ヴァイオリンだけになると、4倍位音色が響くと思いました(それは以前、イザイの無伴奏の時にも感じたのですが)。そして、ホール全体が神聖な世界となりました。

川畠さんのシャコンヌは、自分の過ち、自分自身が気が付いていない細かな罪など「全てを赦してもらう」ための曲だと今まで漠然と思っていたのですが、今日の演奏を聴いていて、さらに大きな世界観を感じました。

―― 以下は、勝手な想像なのですが(笑い)
最初のブォン、ブォン、と力強くヴァイオリンを鳴らす部分では、その弓で私たちの苦しみを掬い取って(救いとって?)くれているような気がしました。次々と世の中の苦しみを集めて、次は悲しみ、嘆き。そして私たちの罪が集められます。
マイナス要因を全て集めたところで、それをかき消すかのごとく、弓をグルグルと振ります(攪拌しているのですね、笑い)。ギュルン、ギュルン、ギュルン…という部分がそうです。

後半の平穏な部分では、今度は私たちの喜び、楽しみ、幸せ、平和…プラス要因を集めていきます。悪いことを赦してもらうのなら、今度は良いことも全ての源に戻していくのです。そして、ヴィオリンを使って世の中をプラス・マイナス ゼロの状態に戻しているような気がしたのです。今から私たちは、新しいスタート地点に立つんだ!という感じです。

妄想の果てに私が最後に思ったのは、午前中に赤ちゃんの泣き声をいっぱい背中に浴びたせいなのかもしれませんが、これは『生命の誕生の瞬間を現わした曲』なのかな、と(爆)
赤ちゃんって、前世(がもしあるのなら)を全てリセットして世の中に出てくると思うのです。そんな世界を今私は体感したのだと思いました(笑い、何思っているんだか…ですけれども) 神秘的でした。
演奏が終わった後、心が軽くなりました。素晴らしかったです!!! 川畠さんの演奏も、そしてこれを作曲したバッハも!

続いて、次に注目していたヒューイットさんのこと。
最初の1曲目ベートーベン『春』を聴いた瞬間、「ああ、今日はアンソニー・ジョン・ヒューイット ピアノリサイタルが開催されたな」と思いました(笑い)
ヒューイットさんのピアノ。大変に私好みです! 今までに川畠さんの伴奏をされたピアニストの方々には無い伴奏の仕方をされる方で、聴きなれた『春』も別の曲に聴こえました。春だけでなく、本日全ての演奏がまるで初めて聴いた曲のようでした。ヒューイットさんの弾き方に合わせる様に、川畠さんの弾き方もいつもと少し違っていたような気がします。

ピアノの1音、1音がすごく輝いているのです。聴いていて気分が良かったです。そして独特の間を持っている方で、「ヒューイット流」というものをきちんと確立されているような気がしました。その速い、遅い、の間の使い方が私は好きでした。たっぷりと音と音との間の時間を活かして演奏されるのです。私は、ウラジミール・ミシュクさんの演奏をふと思い出しました(この方も独特の時間をお持ちの方です)。

ですが、この間の使い方が問題でして。
…川畠さんがお持ちのテンポとは、まるで合っていなかったような気がしたのです。それぞれがすごくいいのですが、調和していると感じられなかったので、ヴァイオリンとピアノを別々に聴いているような気分になりました(受けとり方は人それぞれだと思いますので、あくまでも私の感想ということで)。
それぞれは本当にいいのですが!!!
先程述べた、ピアニストのミシュクさん。いっしょに弾かれるヴァイオリニストのパラホフスキーさんとの相性はぴったりです。だから、御二人の演奏は聴いていてとても気持ちが良いのです。
川畠さんとヒューイットさんも、お互いの弾き方の調整が取れはじめたら、ものすごい演奏が聴けるのではと今後に期待してしまいます。

そんな中でも、時々調和が取れていると感じた部分もありまして、「春」第2楽章とか、ルーマニア民族舞曲とか、ツィゴイネルワイゼンとか私は好きでした。
ツィゴイネルワイゼンの最初のピアノの出だしは素晴らしかったです! ヒューイットさん、ソロだとすごい方だと感じました。それに負けない位に川畠さんのヴァイオリンも響きました。

その反面、剣の舞などは、ピアノの音色にヴァイオリンがかき消されてしまったような気が… ピアノ頑張りすぎました(良かったのですけれども)。川畠さんのタップも回を重ねるごとに良くなっているような気がしましたが、最終的に耳に残ったのはピアノの音色でした(汗)

スラヴ舞曲は、最近演奏を聴く度に新日フィルさんの姿を思い出していたのですが、本日は全くその姿が浮かびませんでした。「別物」といった感じでした。
スペイン舞曲も川畠さんのアルバム「愛の悲しみ」に収録されているものとは雰囲気がまるで違いました。伴奏一つでこうも違うものかと驚きました。

アンコールは最初にノクターンを弾かれ、「2001年から始まった、グランドファミリーコンサート。おかげ様で6年目となりましたが、1回目に聴かれたお子様が小学校1年生だったとすれば、今年は6年生。来年は中学生となるわけです。出来れば、そのお子様が、そのまた子供を連れてファミリーコンサートに来て頂けるように、続けて行けたらいいなと思います。」のようなトーク(かなり省略されていると思いますが)から始まりました。そしてハンガリー舞曲第1番。

「次は無伴奏で、5分位で終わると思うのですが、誰もが知っている曲だと思うのであえて題名は申しません。きっと分かると思います。」

ということでさくら変奏曲。
最初弾き始めた時、私の周りでは失笑…というか、「なんだ『さくら』かぁ…」みたいな雰囲気があったのですが、次々とグレードアップされていく演奏に圧倒されていき、最後はとても大きな拍手となりました。私も、今日のさくらは一段と素晴らしかったと思います。(先程のシャコンヌよりも拍手が大きかったのは、私としては…ですが、笑い。さくらは人気がありますね!)

「丁度1ヶ月前、向こうの時間で4月5日ですので時差を考えてギリギリ1ヶ月前…ですね。ワシントンの桜祭りでこの演奏を弾かせて頂きました。その後も、ワシントンの何ヶ所かで弾かせていただいた思い出深い曲です。
ワシントンでの思い出で1番残っていることは、小学校を周ったことです。1校で3回弾かせていただいたのですが(と言われていたと思います)、小学校なので最初の回が8時30分から始まるのです… 早いですね。とても充実した時を過ごすことが出来ました。どれ位充実していたかというと、8日間で10校周りました(笑い)

私は10歳の時にヴァイオリンを持ち始め、今年で25年…計算すれば私の年齢がお分かりかと思うのですが、ワシントンでコーヒーを注文した時に、そのコーヒーにはアルコールが入っていたようで、パスポートの提示を求められました。向こうではアルコールは21歳から許可されているそうです。21歳…私もそう見られるんだ、と(笑い)」

そしてチャルダッシュ。
最後に、5月7日(日)放送のグレートマザー物語のお話をされて(「私の母はそんなにグレートではありませんが、そういう番組の名前なので」と話されたのが面白かったです)、出来ることならまた来年、来年とは言わずに今後もモーツァルトツィクルス、ボローニャとの四季などありますので、そちらなどでもお会いできればと思います…ということで、最後にアヴェ・マリアを弾かれたのでした。

コンサート終了後のサイン会は長蛇の列! 私は急いでいたので先に帰りましたが、「良かったね〜!」という声を会場でも、初台のホームでも耳にしました。連休のしめくくりに相応しいコンサートとだったと思います。

2006年5月7日 記

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