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フィリアホール13周年記念コンサート 川畠成道ヴァイオリン・リサイタル |
【 2006年4月23日(日) in フィリアホール 】 ピアノ:ダニエル・ベン・ピエナール 第一部 ■ モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第25番 ト長調 K301(293a) ■ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」 第二部 ■ ドヴォルザーク:ユモレスク Op.101-7 ■ ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 第2番 Op.72-2 ■ イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.27-3 「バラード」 ■ グノー:アヴェ・マリア ■ ワックスマン:カルメン幻想曲 アンコール ■ ショパン:ノクターン ■ ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番 ■ 日本古謡:さくら ■ モンティ:チャルダッシュ ■ ヴィヴァルディ:四季より「冬」第2楽章 |
昨日のあの感動は決して嘘ではないのに。 本当に沢山の感動をもらって、浜離宮朝日ホールを後にしたはずなのに… 今日のコンサートも、大変素晴らしいものでした。 2日連続で、このようなすごい演奏を聴いてしまっても良かったのだろうか、そしてこう感動し続ける感覚が、よく分からなくなりました(あまり「素晴らしい」を連続させると自分でも嘘っぽく感じて嫌なのですが、でも本当の気持ちであって。) 同じ感動でも、昨日と今日とは別の方向を向いているもので、その違いを上手く説明することは出来ないのです(苦笑い) 本日のフィリアホールは500席という小さなホール。いつもの東京オペラシティ・コンサートホールは1632席ですので、それだけでも贅沢な空間です。 (ちなみに昨日の浜離宮朝日ホールも552席。浜離宮朝日ホールが「赤」だとしたら、フィリアホールは「白」というイメージを私は持ちました。) 座席数が少ないだけチケットを取るのも大変です。フィリアホールの会員先行予約というものもあったようです。発売日に電話をしてもなかなかつながらず、2時間半後にやっとつながった時には席がほとんど残っていませんでした。(そして、翌日完売!) なぜこんなことを書いたのか? それは本日座ったその残りの席が、想像以上にとても良い席だったからです。この席に導かれたとしか言いようがありません。もう、この巡り合わせに感謝です。次回フィリアホールに何かのコンサートで足を運ぶ時には、同じ席に座りたい位です。 その席とは、2階の左側。丁度、1階席の2列目の上付近です。 2階席の手摺は低めに付いていますので、ちょっと前のめりになれば視界の邪魔にはなりません。川畠さん・ダニエルさんの御2人が、バランス良く視界に入るのです! そして肝心の音響です。このホールは響きがとても良くて、全く問題なし! 上に音が上にいくようですので、むしろ2階の方がいいのかな、と。前の席で生音を楽しんでいる時と音の広がりの質が違ったので驚きました。同じヴァイオリンでも、いつもと音が違って聴こえるのです。そして、嬉しくなってしまいました。これが、ホールの持つ力なのですね。 本日楽しみにしていたのは、クロイツェルです! Japanツアーで川畠さんのクロツェルに大変感動し、もう一度聴きたいと思っていたからです。そして本日の伴奏はダニエルさん! もう、期待せずにはいられません♪ 川畠さんがヴァイオリンを構えられている間、ダニエルさんはざっとピアノの上でクロイツェルの指の動きをイメージトレーニング(?)されていました。これを見ただけでも、この後の演奏が楽しみです。 ――川畠さんのヴァイオリン。それに続くダニエルさんのピアノ… 私は最初のこの部分を聴くと、頭の中で田園風景が広がり、続いて緑、広い大地、澄みきった小川…というキーワードみたいなものが駆け巡ります(恐らくこれは天満敦子さんのCDジャケットの影響かと思われます。天満さんとライナー・ホフマンさんのクロイツェルも好きです)。 その光景は静寂でなければなりません。嵐の前の静けさと言いますか、これから起こる大きなことを予感させるような意味有り気な静かさです。(…と言いつつ、その後の曲のイメージは特に無いのです。最初の導入部分だけ、笑い。) さて。 今日のクロイツェルはすごかったです!!! そういった光景が最初の数音聴くなり、くっきり、はっきりと頭の中で描かれました。 完璧すぎて気を失うかと。もう、鳥肌が立つとか涙が出るとかそういうレベルではないのです。こういう感情ってあるんだ…って自分でもびっくり。最初の10秒位でくらっと来てしまいました。 そして私の座っている所からはダニエルさんの手の動きが良く見えます!左手は体で隠れて見えないのですが、ピアノに映っているのでばっちりと。 先日のチャリティ・コンサート、モーツァルト・ツィクルスと、私は右側の席でしたので、今年はダニエルさんの顔ばかり見ていました。手の動きを見るのは今回が初めてです。当然、本日のほとんどの視線はダニエルさんの背中と手の動きに注がれることに(笑い) …これが、すごいのですよ!>先程から連発していますが、本当にすごいとしか言いようが無くて。 『ダニエル・ベン・ピエナール〜ピアノリサイタル』に今から変更しても良いのではないかという位、激しく、そして静かな(その強弱の付け方が、川畠さんとぴったり合っていて!)弾き方をされていました。クロイツェルの第1楽章って、こんなにヴァイオリンもピアノも忙しい曲なんだ、と改めて感じました。 単に激しいと言うのではなく、そこで川畠さんとダニエルさんとの調和が生まれていて、次々と弾かれる音にもきちんと意味があるような気がしたので、そこに私は引き込まれました。ダニエルさんの手の動き、しっかりと目に焼き付けてきたつもりです(笑い) 当然、川畠さんのヴァイオリンもすごい集中力、音色でした。 御二人あっての、この『クロイツェル』でした。 途中から、川畠さんもダニエルさんもこの音の勢いに乗って遠く向こうへどんどん走っていってしまうような気がして、私も置いていかれないように一生懸命付いていかなくちゃ、と思いました。 第1楽章が終わった時、私の心臓はドキドキしてました。脈拍も体温もだいぶ上がっていたような(笑い)正直、疲れました。でも気持ちの良い疲れです。今まででこんな感じで演奏を聴いたのは恐らく無いのでは…(記憶の中では思い出せません)。私の中では、今年聴いた中で1番の演奏でした。 トルストイではありませんが、私には第1楽章だけで十分でした(笑い)でも、続く第2・3楽章も、もちろん素晴らしかったです。今回クロイツェルという曲を今までとまた違う視線で捉えることができ、今まで以上に好きな曲となりました。川畠さん、ダニエルさん、ありがとう!と私は言いたいです。 余談ですが、本日の譜めくりさんは男性の方でした。私は女性の方を見る機会が多いので、新鮮でした。 ――続いて後半。 全部良かったのですが、その中でも特に素晴らしかったのは、イザイのバラード! 演奏後、私の2つ向こうの席に座っていた女性が、バルコニーから落ちてしまうのではないかという位に前に出て、舞台上にいる川畠さんに拍手を送っていたのが印象的でした。 音響が良いので、川畠さんのヴァイオリンが響く、響く! 私の席からはホール全体がほぼ見渡せましたので、舞台上で演奏する川畠さんとそれに聴き入る皆さんとの光景が、とても神秘的に感じられました。ホール全体、酸素までもが川畠さんのヴァイオリンの音色で埋め尽くされました。(なので息苦しかったです、笑い) 演奏後には、大変に大きな拍手が起こりました。クロツェルの時の3倍位大きな。>納得出来ません! ―― アンコールです。>注:記憶に自信が無いので、正確ではありません。 最初に1曲弾かれ、「今のはショパンのノクターンです。」と川畠さん。 「この曲は私が12、3歳位の時…中学2年生位の時、初めて弾きました。あれから約20年弾き続けている訳ですが、何度弾いても飽きることの無い、私もとても好きな曲です」とのこと。 聴いているこちらも、何度聴いても飽きる事はありませんね。川畠さんのノクターンはとても切なくて、暖かくて、聴いた後の充たされた気持ちが何ともいえません(笑い) 「このフィリアホールで演奏するのは今回で3回目で、このホールは…こう、舞台に立って演奏していても、とても気持ちよく弾くことができる、素敵なホールです。 2回目の時はフィリアホール11周年に…とても中途半端な時ですけれども(笑い)、演奏させていただきまして、今回は13周年と言うことで…ということは毎年こちらでは何かをされているのでしょうね(笑い)、声を掛けていただきました。次はぜひ、15周年の時に呼んでいただきたいと思います。」 ということで、ブラームスのハンガリー舞曲第5番。 「丁度2週間前、私はワシントンのケネディ・センターで弾かせていただきました。。向こうではとてもゆったりと…7日間で10ヶ所ほど(間違っているかもしれません)の場所でコンサートをさせていただきました。ケネディ・センターでは桜祭りが開かれておりまして、日本の桜が約100年前(?)にアメリカに渡り、今では多くの方が桜を楽しんでいるようです。」 次は無伴奏のさくら変奏曲です。川畠さんのトークの最中にダニエルさんが足を組み始めると、「次は無伴奏」という合図のように思いました(前回もそうだったので、笑い) ダニエルさんは今年、何回川畠さんの『さくら』を聴かれたのでしょう。羨ましいです… こちらも先程のイザイと同じ位、大きな拍手が起こりました。 そして、そのままチャルダッシュへ。 「今年はモーツァルト生誕250周年ということで、各地でモーツァルトの演奏がされている訳ですが、私も昨日、モーツァルト ツィクルスの第1回をさせていただき、先程弾かせていただきましたソナタK301や、クラリネットクインテットを演奏いたしました。何でモーツァルトの話をしたのかと言いますと、昨年私はアルバムの録音のためにイタリアのボローニャに行ったのですが、そこでモーツァルトもこの場所に来て、生涯で一度だけ音楽を学ぶために学校に入り、試験を受けたという話を聞きました。その試験が合格したのかしなかったのかまでは聞かなかったのですが…聞くまでも無いでしょう(笑い)なぜこの話をしたのかと言いますと、そのイタリアでのヴィヴァルディの四季を弾こうと思うからです。といっても全部弾いてしまうととても長い曲ですので(笑い)、一部だけです。」 ということで、最後の曲。 ヴィヴァルディ「四季」より『冬:第2楽章』を弾かれて、本日のコンサートは終了しました。 あまりにも素敵なコンサートでしたので、しばらく他のコンサートは行かなくてもいいかも…と今は思う位です(笑い、でも行ってしまうのですよね) 帰りがけに、側にいた方が「もう、自然と涙が出て止まらなかったわ」とおっしゃっていました。>気持ち、よく分かります!!! クロイツェルは、川畠さんだけでなく他の方のコンサートにも足を運びたいです。生演奏でヴァイオリンとピアノの緊張感を、沢山味わいたくなりました。 2006年4月24日 記 |
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