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モーツァルト 生誕250周年記念 ツィクルス 第1回 |
【 2006年4月22日(土) in 浜離宮朝日ホール 】 ピアノ:ダニエル・ベン・ピエナール クラリネット:澤村康恵 ヴァイオリン:玉井菜採 ヴィオラ:松実健太 チェロ:長谷川陽子 ■ ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調 K.301 ■ ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ヘ長調 K.377 ■ クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 アンコール ■ クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 第4楽章 |
今回から始まりました全3回の 『モーツァルト生誕250周年ツィクルス―モーツァルトの旅』 は13:30という観客泣かせの(?)時間から始まりますので、私を始め多くの方が開演ギリギリに浜離宮朝日ホールへ駆けつけました。(おまけに、大江戸線は乗り換えに時間がかかるので苦労しました、汗) 浜離宮朝日ホール。 昨年、ダニエルさんのリサイタルで一度だけ行ったことのあるホールです。 東京オペラシティに比べると客席も少なく、音響も良かったと記憶しておりました。 ホールに入ってみますと、舞台上の雰囲気からしていつもと違います(笑い) 具体的にどうとは言えないのですが、ピアノが一台置いてあるのを見るだけでこちらの気持ちが引き締まるような、そんな素敵なホールでした。>単に、私の気分の問題かもしれませんが! 先日の川崎ミューザのチャリティコンサートで大変楽しませていただきましたK.301から始まりました。 ―― やっぱり、いい! 何度聴いてもいい!!! 川畠さんとダニエルさんの、その一体化した呼吸…とでも言うのでしょうか。とてもいいですね。 そして私は今後も川畠さんがK.301を演奏されるたびに、川畠さんの音色を初めて聴いたあの日のことを思い出し、初心に戻るのだろうと思いました。これも何とも表現出来ない気持ちです。 そして今思い出しても ふと微笑んでしまうのが、この曲が終わった時。隣に座っていた友達が「大丈夫? ダニエルさん見える?」と聞いてくれたこと(爆) あ…あなたは、何の心配をしてくれたのですか(ははは、ありがとう!)>思わず、ずるっとなりました。 大丈夫、ばっちり見えますし、聴こえましたよ!!! というのも今回は私は右側の席でしたので、丁度ピアノの譜面台でダニエルさんのお顔が見えたり、隠れたり…の席だったのです(もちろん、見えなくても構いません、笑い)。右はピアノの音色は良く聴こえますし、最近の川畠さんは左を向いて(観客からすれば右側)演奏されることが多いので(それはピアノの音を確認するためでもあると思うのですが)、すごく良く聴こえると私は思うのです。しかし、その長所はソナタの場合であるということに本日気が付くのですが、それは後半に。 続いて、K.377。 この曲は、予習…したつもりでした(笑い) 家でCDを聴いていた時(今回、演奏者の名前は控えます)、第2楽章がとても庶民的に感じました。モーツァルトって、聴く曲、聴く曲が宮廷を思い起こさせるものが多いと思うのですが、この曲は少し違いました。 とてもしんみりとした感じ…私は、職を失った中年男が色々な思いを抱えながら町をぶらつく、ある1日を追った1本の映画のような気がしました。野良犬にポケットに入っている一欠片のパンをあげたり、 最後には、暖かい家族の待っている我が家に帰るのです(笑い)ヨーロッパのイメージでもあるのですが、その心の重さはロシア的でもあると思いました(チェブラーシカとか、あの雰囲気!)。 そのようなイメージを持って、本日聴きました。当然、この曲は川畠さんとダニエルさんが演奏するにはどうなのかな、という気がしていました(中年男の曲なので)。 ところが、川畠さんの演奏するK.377は全然違いました。 川畠さんとダニエルさんの生み出す音色には「若さ」がありました(笑い) それだけではなくて、全体的に言えることなのですが、御2人のモーツァルトを聴いていると「モーツァルトもいいなぁ」という気分になりました。(モーツァルトは聴いていても、ドラマ性などが感じられないので退屈な時があるのです。)聴いていて、引き込まれましたし、CDのように飽きることはありませんでした。 第3楽章は、ダニエルさんがパラっと楽譜をめくられた音が合図であるかのように始まりました。その時の、静まった中でのパラっという音が、とても良かったです(笑い) ―― 今さら、なのですが。 今日、やっと私はダニエルさんというピアニストのすごさを知ったような気がしました。 今までもすごいなぁとは思っていたのです。でも、それはきっと「川畠さんのCDで伴奏されている方」というイメージとか、頭の中でだけ感じていただけのことで、それが今日頭だけではなくて体全体で認識することが出来た気がするのです。すごく視界が開けましたし、聴こえる音も違ってきました(笑い) 後半は、クラリネット五重奏曲。 五重奏とかあまり詳しくない私は、五重奏の中にてっきりダニエルさんのピアノも含まれるのかと思っていました(爆) ですので、席に戻った時に舞台上にピアノが無くて「あれっ?!」と驚きました。ダニエルさんは、後半は後ろの客席で聴かれていたそうです。 そして、舞台中央に半円を描くように椅子が並べられておりました。 客席から見て、1番左の椅子の前にだけ譜台がありません。「ここが川畠さんの席なんだ」と、すぐに分かりました。 時間になり、演奏される5人の方々が舞台に登場! 左から川畠さん、セカンドヴァイオリンの玉井さん、クラリネットの澤村さん、チェロの長谷川さん、ヴィオラの松実さんという並びでした。 中央の3人の女性が美しい! 華があります!!! 皆様色の違うすてきなドレスを着られていて、そのドレスにそれぞれの楽器がよく似合っていて素敵でしたv 川畠さん。いつもは立って演奏されています。今日は椅子に座って演奏されるのかしら…(私としては四季のように中央に立たれて演奏されるのかなと、最初思っていたのですが!) ヴァイオリンとピアノ、ヴァイオリンとオーケストラ、しか聴きに行ったことのない私には、分からないことだらけです! 自然と視線も川畠さんに集まります。そして… !!!!! 川畠さんは、両足をがっつりと開かれて(その方が、座っていても動いて演奏しやすいのだと思います)、1人だけ体を大きく動かされて演奏されていました。座っていても いつもの川畠さんであり、また、新しい川畠さんの一面も見ることも出来ました。 私は右側の席。足を開かれた川畠さんだけが丁度正面に見えるのです。(他の方は見えないか後姿か、という感じ。)あまりにも自由に弾かれていたので、私は川畠さんを正視出来ませんでした… クリスマスコンサートでシトカベツキーさんととても楽しそうに演奏されていた川畠さん。その時と同じように、他の方々と楽しそうに演奏されていました。 楽しそうに演奏される姿を見ると、こちらも楽しくなってきますよね! とても良かったです。 モーツァルトだけでなく、今後も室内楽を演奏される機会があればいいのにな、と思いました。 ただ、五重奏というのは音が広がる範囲と言うものがあるようで、私の席は少しその範囲から外れていたようで、ほぼ、正面の川畠さんのヴァイオリンの音色しか聴こえませんでした(爆)>それでもいいのですが! クラリネット五重奏なのですが、クラリネットの音がほとんど…ははは。 なので、特に曲の感想が述べられません(笑い) 他の方の感想によると、大変素晴らしいハーモニーが生まれていたようです! 今回とても楽しかったのが、演奏後のトーク。川畠さんは、「自分にとって、初めての室内楽です…」と嬉しそうに(座ったまま)お話された後に、他の4人の方にもマイクを回されました。今日演奏された方がどのような方であるのか、お話を聞くことによって少し身近に感じ、その後に弾かれたアンコールは、先程とはまた違った感じで聴くことが出来ました。 まずはセカンドヴァイオリンの玉井菜採さん。川畠さんとは同級生で、桐朋学園の高等部、大学と一緒に学ばれたそうです。卒業後は会う事はなかったのですが、1年前(?)再会されたときに今回の室内楽を一緒にやりませんか、と話があったそうです。 クラリネットの澤村康江さん。クラリネット奏者にとって、モーツァルトの曲は無くてはならない存在だそうです。モーツァルトが当時新しい楽器であったクラリネットに興味を持ち(川畠さんは「新し物好きのモーツァルトが…」と話されていたように記憶しています)、この五重奏を書かなかったら、現在のようなクラリネットの普及は無かったでしょう…と。 チェロの長谷川陽子さん。笑顔が素敵な方でした。礼をされるときも「ありがとうございました」と口を動かしておじきをされていました。モーツァルトはチェロのための曲と言うものを1作も書かなかったそうで、チェロ奏者がモーツァルトの曲を弾くことは滅多にないとのことでした。この五重奏でもチェロの役割は少なく(当時のチェロと今のチェロとは形も違うそうです)、皆が忙しそうに弾かれている姿を私は拝見させていただいておりました、とのこと(笑い) ヴィオラの松実健太さん。桐朋学園、英国王立音楽院大学院、共に川畠さんの先輩だそうです。英国王立音楽院大学で一緒にいた時期も数ヶ月だったのですが…川畠さんの各先生の事はよく知っています、とのこと(当時は松実さんはヴァイオリンを弾かれていたそうです)。これもまた1年前…と言われていたと思うのですが、イギリスでの和波孝禧さんのコンサートで久しぶりに再会して(この時は多くの日本人の方が聴きに集まったそうなのですが)、その時は自分の方が「いつか室内楽やりたいね」と話していたのですけれども…と。松実さんの話を川畠さんは終始笑顔で聞かれておりまして、その光景を見て、仲間っていいなぁ…と思いました。 こういった話は、パンフレットに載っているプロフィールよりもリアルと言いますか、演奏される方々の人間味が伝わってくるので、とてもいいですね! 川畠さんについては私たちは著書で御家族との深い絆を読ませていただき、感動している訳ですが、それ以外の面、学校に通われた時にもやはりそこには仲間がいて、皆で音楽を追求し、学ばれていたのだと言うことを、ふと考えました。今回、同年の方々が集まって室内楽を企画されたという事が、とても良いことのように感じました。 「こちらの玉井さんは、桐朋時代は本当に色々お世話になり、第二のお母さんのような存在なのですが…本当のお母さんの話が、5月7日、テレビ朝日『グレートマザー物語』で放送されますので、ぜひ御覧になってください。」と、川畠さんはトークを上手くまとめられていました(笑い) 「クラリネット五重奏といえば、モーツァルトとブラームスが有名なのですが、モーツァルト ツィクルスといってブラームスを演奏するわけにもいきませんので、先程のモーツァルト クラリネット五重奏より、第4楽章を弾かせていただきます」ということで、最後の曲を弾かれたのでした。 2006年4月25日 記 |
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