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〜生命の輝き〜
チャリティコンサート
【 2006年4月15日(土) in ミューザ川崎シンフォニーホール 】
  ピアノ:ダニエル・ベン・ピエナール


第一部
■ W.A.モーツァルト:ヴァイオリンソナタ ト長調 K301
■ E.グリーグ:ソナタ 第3番 ハ短調 作品45

第二部
■ A.ドヴォルザーク:ユモレスク 作品101の7
■ A.ドヴォルザーク / F.クライスラー編曲:スラヴ舞曲 第2番 作品72の2
■ V.モンティ:チャルダッシュ
■ C.グノー:アヴェ・マリア
■ F.ワックスマン:カルメン幻想曲

アンコール
■ ショパン:ノクターン
■ ガシューイン:サマータイム
■ 日本古謡:さくら
■ ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
■ ヴィヴァルディ:四季より「冬」第2楽章
ここ約1年の色々な思い出が甦ってきた、感慨深いコンサートでした。

昨年の同じ4月15日。横浜みなとみらいホールで、この「生命の輝き・チャリティーコンサート」が開かれたのですよね。私にとっては始めての平日の夜のコンサートでしたので、会社を出て一生懸命みなとみらい線に乗って会場を目指したのを覚えています。
丁度ピアニストのダニエルさんが体調を崩されていて、鷲宮美幸さんに変更されたのでした。そして、ここで素晴らしいアヴェ・マリアの演奏に出会うことに!(それ以来、鷲宮さんのアヴェ・マリアは大好きになりました。)

今日の1曲目はモーツァルトのソナタ、K301番です。
これは、川畠さんの生演奏を聴いた1番最初の曲という、私にとっては特別な曲。
この曲に、川畠さんの演奏に、惹かれなかったら川畠さんのコンサートに足を運ぶ今の自分は無かったと思いますし、また 『クラシック』 という音楽に対しても無関心だったと思いますし(今も無関心と同じようなものではありますが…汗)、ヴァイオリンの魅力についても興味を持たなかったと思います。全ての始まりの曲です!
当時は全く知らない曲でしたが、とても気に入って、パールマンの演奏であれから何度も聴きました。

―― そして演奏が始まりました。
川畠さんのヴァイオリンを構える姿を見て、私は一気に紀尾井ホールの2階の右側の席にいる光景が甦りました。そして最初の方の、右手の「波、波、波〜〜〜」という弓の動きを見て(意味分かっていただけるでしょうか、笑い)、ヴァイオリンって面白いんだな…と思ったことを思い出しました。
かなり明確に当時の川畠さんの動きを覚えている自分に驚きました(その後のコンサートの事は結構忘れています)。2階席でありながら、よく見ていた自分に感心…

そして今日のピアニストはダニエルさん!
入間市の涙・涙のコンサートから私はずっと待っておりました。川畠さんの姿とダニエルさんの姿を交互に見ながら聴きながら、私は胸が一杯になってしまいました。

続いて、グリーグのソナタ第3番。
この曲は、数日前に川畠さんが決められたと聴きました(だからでしょうか?パンフレットに添えられている、アンケートの「本日の演奏曲目の中でおきに召した曲を2つお選びください」の項目に載っていなかったのですよね>しかも2つだけなんて選べません!)。

第2楽章が、とても素晴らしかったです!
ピアノの独奏から入るのですが、このダニエルさんの集中力!この気持ちの入れ方!
私の席は右側の席でしたのでダニエルさんの手の動きは見えませんでしたが、表情がとても良く見えました。ダニエルさんの目が全てを物語っていたといいますか… この柔らかな出だしにすべてを注ぎ込んでいたように感じました。
昨年「ダニエルさんのピアノは優しくなった」という声を耳にしましたが、今年はさらに優しくなっているように私は思いました。

そのダニエルさんの気持ちに応えるかのように、続く川畠さんのヴァイオリンのまた素晴らしいこと!いつもの優しい、暖かいヴァイオリンの音色が、ピアノの音色の効果で何倍にも膨れ上がりました。
ダニエルさんが「ん〜っ!」という表情(恐らく音楽の世界に入り込まれているのだと思うのですが)で弾かれると、続いて川畠さんも「ん〜っ!」と同じ表情で弾かれていました。同じイメージの世界で御2人は弾かれていたのだろう…と私は(勝手に)思い、その世界観に泣けてきました。

その御2人の集中力が今までに無い程 強く感じられましたので、第2楽章の終りで起こった拍手にはがっかりしました。私もこういうことには詳しくないので、楽章間の拍手がどうこうとはあまり考えないのですが(自分も拍手をしてしまうことありますし)、でもこの空気ではしてはいけなかった、と私は思います。そのまま休み無しで第3楽章に入って欲しかったですし、御2人も入りたかったのではないかと思います。

というのも先日、読書中のロマン・ロラン著「ジャン・クリストフ」で拍手について考えさせられる部分があったからなのです。この部分の解釈が分からず、頭の中をずっと離れなくて、本当の意味は違うのかもしれませんが、私はこのようなことを言っているのかなとやっと気がつきました。

「諸君はそれほどの感激を持っていると、ひとに信じこませたいのか? …ところがだ! 諸君はちょうど反対のことを証明しているのだ。もし拍手したいのなら、拍手を必要とする作品か楽章に拍手したまえ。モーツァルトの言ったように、《長い耳のために》 作られた騒々しい終始部に拍手したまえ。そこでは心ゆくまで拍手したまえ。驢馬(ろば)の鳴き声ははじめから見越されているのだ。それは音楽界の一部なのだ。―― だが、ベートーヴェンの『荘厳ミサ』のあとでは! ……それはとんでもないことだ! ……これは最後の審判だ。諸君はたった今、狂い立つ栄光(グロリア)が、大洋の上の嵐(あらし)のように通りすぎるのを見たのだ。諸君は、力強くて狂暴な意志の竜巻(たつまき)が通りすぎるのを見たのだ。それは立ちどまり、黒雲につかまり、両の拳(こぶし)で深淵(しんえん)にしがみつき、再び全速力で空間に突進して行く、突風が叫ぶ。その嵐の真っ最中に、突然の転調が、音のきらめきが、空の闇(やみ)をうがって、鉛色の海の上に、光の板のように落ちてくる。それが終結である。殺戮(さつりく)の天使のたけりたった飛翔(ひしょう)は、三度の稲妻に翼を釘(くぎ)づけにされてぴたりとやむ。周囲では、まだすべてがふるえている。酔った目は眩(くら)んでいる。心臓は激しく打ち、呼吸はとまり、四肢(しし)はしびれている……そして、最後の音符がまだふるえやまないのに、諸君はもう陽気になり、愉快になり、叫んだり、笑ったり、批評したり、拍手したりしている! ……だが、諸君はなにも見なかったのだ、なにも聞かなかったのだ、なにも理解しはしなかったのだ、なにも、なにも、それこそなにも! 芸術家の苦悩も、諸君にとっては一つの見世物である。ベートーヴェンの激しい苦悶(くもん)の涙を、諸君はみごとに描かれていると見るだけだ。諸君はキリストの磔刑(はりつけ)を 『もう一度!』 と叫ぶかもわからない。諸君の暇つぶしの好奇心を一時間楽しませるためには、半神が一生涯苦悩のうちにもがくのだ! ……」
(新潮文庫 新庄嘉章訳 第2巻 P101-102)


長い引用になってしまいましたが、これは主人公クリストフ(音楽家)が書いた評論の一部です(クリストフの評論は、周りから受け入れられる事はありませんでした)。私は今、この作品に夢中になっているので、もしかしたらクリストフのこの考えに同化してしているのかもしれません(笑い)
グリーグのソナタの第3楽章だったか、詳しくは覚えていませんが、曲があと3音で終わる…そんな最後の最後で拍手し始めた方もいらっしゃいました(もしかしたら同じ方なのかもしれません)。せっかくの良い演奏が…と、こちらも残念でした。

私は前の方の席だったので生音は聴こえたのですが、今日はいつもよりヴァイオリンの音の響きが小さかったように思います。このホールの音響は悪くないと思っていたのですが、そう感じました。

――後半は、川畠さんはまぶしい位の真っ白なスーツと白の蝶ネクタイで登場されました。

ドヴォルザークのスラヴ舞曲 第2番。
2月の文京シビックでのコンサートの新日フィルさんのアンコールが私は未だに忘れられません(笑い) とても素晴らしい演奏でした。今日も川畠さんとダニエルさんの演奏を聴いているうちに、周りに新日フィルさん、そして指揮者の北原幸男さんの姿が浮かんできました。ふと気づくと舞台には二人の姿しかないのが不思議な位で。
オケと同じ位のスケールの大きい演奏をされた川畠さん、曲を聴いただけで思い出してしまう素敵な演奏をされた北原さん&新日フィルさん。どちらも素晴らしいなぁと、そしてそのような演奏を聴くことが出来たことを嬉しく思いました。

チャルダッシュとカルメン幻想曲。
ダニエルさんはとてもスピード感溢れる、そして乗りに乗った伴奏をされていました。聴いていて気持ちが良かったです。それに対抗するように(?)川畠さんの演奏もスピーディになってきて…
御2人だからこその演奏、そんな気がしました。

「朝日新聞厚生文化事業団さんの御協力により、今年もこの『生命(いのち)の輝き』チャリティーコンサートを開くことが出来ました」

…と、アンコールは始まりました。
※記憶が曖昧なので、これ以降の記述は多少違っているかもしれません。

ショパン『 ノクターン 』。どうしても入間市のコンサートを思い出さずに入られません!あの時も、そして今回も、ダニエルさんのピアノは素敵でした。

今日は体感プログラム(?耳の御不自由な方が、振動を通じて音を体感するプログラムのようです。本日はピアノの前にマイクがありましたが、そのためと思われます)で来られている方もいらっしゃいますが、私は先日ワシントンで3つの小学校をまわり演奏をしてきましたて、子供たちは楽しい音楽になると自然に体を動かし始める…そんな光景がありました、とのこと。

「夏はまだですが…」と、ガシューインの『 サマータイム 』。
やはりこの曲はCDで聞くよりも、演奏されている姿を見ながら聴いた方が楽しめる曲だと改めて感じました。とても良かったです。

「先程、ワシントンの話をしましたが、ワシントンホールで桜祭りのコンサートもしてきました。」と、次は関西方面のコンサートへ行かなかった東京のファン待望の(?)『 さくら 』。
―― 期待以上の、素晴らしい演奏でした!!!
会場の全員が(少なくとも私の周りでは)「うわ〜っ!」という感動で一体となった気がしました。

「最後の曲です。サマータイムの夏、桜の春…と来たら、次は…」ということで、最後はヴィヴァルディ「四季」より 『 《冬》 第2楽章 』 を演奏してくださり、本日のコンサートは終了しました。

コンサート後のサイン会は、やはり長蛇の列! すごい熱気でした。
小さな子(小学生に見えました)がとても良いカメラを持って川畠さん、ダニエルさんを写していたのが印象的でした。とても羨ましかったです。>カメラが!

そして、今日はテレビの撮影が入っていたようです。友人たちと、テレビ朝日の「グレートマザー物語」ではないかと話していたのですが(先日のアメリカで放送されたラジオで話されていたそうです。私は英語が分からないので聞き取れませんでした、汗)。
…でも、詳しくは分かりません。今後の情報を皆で要確認です!

2006年4月16日 記

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