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第4回 文京福祉チャリティーコンサート  昼公演 / 夜公演
Narimichi Kawabata & Yukio Kitabara
【 2006年2月19日(日) in 文京シビック大ホール 】
  指揮 / 北原幸男  ヴァイオリン / 川畠成道  &  新日本フィルハーモニー交響楽団


■ チャイコフスキー:『 なつかしい土地の思い出 』より 瞑想曲 ニ短調 (作品42) with 川畠成道
■ チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 (作品35) with 川畠成道

《 前半アンコール 》 〜川畠成道さんによる
■ イザイ:無伴奏ソナタ 第3番「バラード」 [ 昼の部 ]
■ エルンスト:夏の名残りのバラ(庭の千草) [ 夜の部 ]

〜 休憩 〜

■ ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 『新世界より』 (作品95)

《 後半アンコール 》
■ ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第10番 [ 昼の部 / 夜の部 ]
【 昼の部 】

文京区ってすごい建物持っているんだなぁ…

東京ドームのすぐ横にある、文京シビックホールの入口、そして中に入って誰もがそう思ったに違いありません。本日の会場は、そんなホールでした。
昼の部は、文京区民が集まっているのかなと思えるような雰囲気(違うかもしれませんが、何となく地域性のようなものを感じました)。ホールに入るにも、長蛇の列が出来ていました。そして、当日券は完売しておりました。

私は昼・夜共に前の方の席だったのですが、座席に着いてびっくり! 舞台が結構高いのです。ミューザ川崎では「舞台が低い」と思いましたが、それの3倍ほどの高さがあるのでと思いました。(座席に座ると、目線は演奏される方々の靴の位置になります、笑い)

本日は新日本フィルハーモニー交響楽団さん。私は10月に聴いた、新日フィルさんの「ドビュッシー:海」の表現力、世界観にとても感動したので、当然今日のコンサートも期待しておりました。 気になるのは、川畠さんと新日フィルさんとの組合せがどうなのか、ということでした。

そして前日 チラシに書いてある曲目を見て「チャイコフスキー:『なつかしい土地の思い出』より 瞑想曲 ニ短調」 も、もしかしたら川畠さんも一緒に演奏されるのでは…?という期待が生まれました。この『なつかしい土地の思い出』の3番目の 「メロディ 変ホ長調」 は川畠さんのアルバムにも入っていますから。協奏曲だけでなく、こちらも演奏してくださったら とても嬉しいのに、と思っていました。

主催の富士福祉事業団の代表の方の簡単なあいさつから 本日のコンサートは始まりました。

そして、指揮者の北原さんに続いて…川畠さんのお姿が!!!>会場皆でよしっ!という気分に(笑い)

瞑想曲。物悲しげな、しっとりとした オケの出だし…それに続く、川畠さんのヴァイオリン…

正直、ガーン!!! といった気分でした。失敗してしまったかな、と。
それは何かと言いますと、『音』 です。川畠さんの弾いてるお姿から これ位の音は出ているだろうと予測される音色の半分も、私の耳には届きませんでした。もしかしたら、私の頭の上を音が飛んでいるのかもしれないな、と。「生演奏を聴いている」という実感が湧きませんでした。ただ、中央よりやや右よりの席でしたので、目の前のチェロとコントラバスの美しい音色だけは届いていました。

元々この曲自体も何度聴いても頭の中を流れてくれない、私にとっては難しい曲でしたので、1曲目が終わった時点では、今一つ気分が盛り上がりませんでした。でも友人は「さすが!ロシアの深い雰囲気が出てたね。チェロも良かったね。」と満足そうに言われたので(その短い言葉には、なぜか説得力がありました)、そういう風に聴き取ることが出来たことを羨ましく思いました。

続いて、チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲です。
音に関して先に書いてしまいますと、丁度第1楽章のヴァイオリンの独奏あたりから、会場内が寒くなってきて、それに合わせる様に川畠さんのヴァイオリンの音色、そしてオケの音色が会場内を響き渡ってきたように感じました。それから後は(夜の部も)、いつものように ずっと演奏を夢中になって楽しむことが出来たのでした。良かったです。

川畠さんのこのコンチェルトは、今回3度目なのですが、どの演奏もそれぞれ違ったように感じました。でも、今回の演奏は特に違った部分があります。

―― それは、川畠さんの「笑顔」です。

川畠さんは、このコンチェルトに向かう時、非常に険しい表情で弾き始めるというイメージ(記憶)が私にはあります。それだけ集中されて弾かれる曲なんだな、と思って聴いておりました。
ですが、今回はオケの演奏が始まると、恐らく自分のイメージに入るためだと思うのですが、にっこりと笑われたのです! (何かマリア様みたいでした、笑い。川畠さんが、すごく大きく感じました。)
たぶん これだけ書けば、その後の演奏がどのようなものだったか… 想像つきますよね?!
私が前に2回聴いたチャイコンとは、全く別のものでした。この曲で目指しているものが、以前とは違うように感じました。激しい第1・3楽章も、激しさの中にも暖かさのようなものを私は見た気がします。

激しいと言えば、この曲は本当にソリストにとっては右腕・左腕を過酷なほどに激しく動かす大変な曲だと思うのですが、演奏される川畠さんの左手の甲には血管が浮き上がっていましたし、弦を押さえる指も1本1本筋肉が付いているのが分かる位にパンパンに張っていましたし、そんな所からも改めてこのコンチェルトの、ソリストのすごさを感じました。

また、「川畠さんのチャイコンは速すぎる位に速い!」 というイメージも私にはあるのですが、今回は特に速いとは感じませんでした(逆に ゆったりめだな、と。)。この全体的な弾き方、流れは、大変私好みでした(笑い) とても良かったです。

新日本フィルさん。川畠さんと組まれるのは今回が初めて…と聞きました(すいません、確実ではありません)。ですが、すごく川畠さんの演奏と絡み合って、1つの新しい世界を作り上げられたと思います。オケ部分だけでも大変素晴らしかったです。今後も、他の曲でぜひ一緒に演奏していただきたいです。

――どこが素晴らしいのか。
それは、出だしと終り、途中の決めたい部分、止める部分などを、皆が気持ちが良い位にスパッとそろえて決めてくださることです。そして、新日フィルさん独特の時間の使い方を持たれていることです。

新日フィルさんから川畠さん、川畠さんから新日フィルさん、という音色のやりとりなどは 聴いていて、ワクワクしてしまいました。思わず体がリズムを刻んでしまいます(そして、心の中では一緒に歌っています)。川畠さんとオケとの一体感がありました。

弾き方で特徴的なのが、第1楽章と第3楽章の終りの部分です。例えば第3楽章の終りは、普通は

「… チャン チャン チャチャ(ここが川畠さん) チャ チャン!」

となると思うのですが(意味分かっていただけるでしょうか、汗)、新日フィルさんの場合、

「… チャン チャン チャチャ(ここが川畠さん) チャン ・ チャーーーン!

と、こうなるのですね。まるでオペラの第1幕が終わったかのような、華麗な、次を期待させるかのような、たっぷりと余韻を持たせて終わらせます。これは川畠さんの意志なのか、指揮者の北原さんの感覚なのか、それとも新日フィルさんの弾き方なのか…私には分かりませんけれども、とにかく良かったです。

おまけに書いてしまいますと、第1楽章の終わり方は、

(普通)    「チャン チャーン チャーーーン」
(新日フィル) 「チャン チャーーン ・ チャーーーン」

です。自分自身が忘れないためにも書いておきます(笑い)

演奏が終わると、川畠さんには花束が送られました。その花束を、川畠さんは第一ヴァイオリン(で、いいのでしょうか)の女性にプレゼント! 「さすが、川畠さんだわ!(こんなことは川畠さんにしか出来ないわ!) 優しいわね〜」と、会場の女性のハートをしっかりと掴んでおりました(笑い)

このプレゼントにも理由があって、川畠さんはこの後、会場の皆、そして新日フィルさん、指揮者の北原さん(オケの間でずっと立たれておりました)の前で、イザイのバラードを弾かれたのでした。
このイザイのバラード。1月のオペラシティで聴いたものとは違いました。イザイだと気が付かなかった方がいらっしゃる位に。
個人的には1月の雰囲気が好きですが、本日の演奏の方が良かったと言う方ももちろんいらっしゃいますし、同じ曲でも、表現の仕方で全く別の物を生んでしまうのだなぁと、無伴奏の奥の深さのようなものを感じました。(でも、どちらの演奏も基本的には好きです。)

それは、川畠さんの弾く時の気持ちが1月と違ったのではないかと私は思います。
1月は、客席に挑みかかるかのような、ものすごく険しい表情、張りつめた空気で、最初の1音を出されました。今回はコンチェルトの時と同様に、川畠さんの顔には笑みが浮かんでおりました。
私はイザイの無伴奏には、斎戒とか戒律とか、古めかしい修道院、荒野の修行…のようなイメージを曲に同化させて聴いているのですが、今回はそれとは逆の、許しとか告解とか、そういう優しい大きなイメージが感じられました。でもそういうイメージは、私にとってはバッハのパルティータ2番・シャコンヌですので(笑い)、今回の川畠さんの雰囲気でしたらバッハも聴きたかったような気がしました。

この川畠さんの演奏には新日本フィルの方々も、「同じ演奏家として、見せつけられてしまったよなぁ…」 と関心、そして感動の拍手を送られていました。あれだけの演奏をした後に、この演奏ですから…! 客席も もちろん感動、そして大満足の前半でした。前半は、川畠さんも客席に投げキッスを送られました(笑い)
休憩中は、当然のように(?)川畠さんのCD販売スペースはすごい人だかりでした。

―― 夜の部へ続く。
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【 夜の部 】

昼の部で一度このホールでの音の響き方を耳に入れ込んだためなのか、夜の部は一曲目から素晴らしい音色が耳に入ってきました。

昼の部では気持ち的に今一つだった「瞑想曲」。
これが面白い位に今回は、私の頭の中に、心の中に入り込んできました。おかげで現在、この曲が鼻歌で歌えてしまいます(笑い、覚えてしまいました)。
パンフレットの解説にあるのですが、本当はこの「瞑想曲」はヴァイオリンコンチェルトの第2楽章を流用したものだったそうです。(その後、コンチェルトの第2楽章の方を作り変えました。)

コンチェルトも、相変わらず川畠さんと新日フィルさんの一体感がとても良いです。川畠さんも、私は昼の分では2ヶ所気になった部分があるのですが、夜の部ではきちんと音を出されていました。 第1楽章の終りの盛り上がり方には特に感動して、思わず拍手をしてしまおうかと思いました。でも理性が邪魔をして出来ませんでした。

そして、昼の部と同じように川畠さんに花束が送られ、それをヴァイオリンの女性にプレゼントし、再びアンコール…! 今度は「夏の名残りのバラ」です。
この曲は、今の川畠さんにはぴったりの曲でした。秘密の花園の入口に咲いているいくつもの薔薇の花。葉には朝露が数滴ずつ付いていて、そこに朝日が反射してキラキラと輝いている… そんなイメージが伝わってきました。この曲は超絶技巧と言われるほどの曲ですが、その難しい面を少しも見せずに ごく自然に弾かれる川畠さんの姿が良かったです。そして再び、会場の皆と新日フィルさんからため息交じりの拍手が沢山送られたのでした。

ここで1つどうしても書かなくてはいけないのは、新日フィルさんのコンサートマスターさん(西江辰郎さんとおっしゃるそうです。>教えてくれてありがとうございます!)の存在です。肌が透き通っていて、眼鏡を掛けて、知的で大変にハンサムな方でした。今回、この方の存在に心を奪われた女性が多数!!! 熱心にヴァイオリンを弾かれるその姿、時には髪を振り乱し…そういう姿が女性にはたまらないのですよね。(私はクリスマスコンサートの時にそうでした。なので、気持ちはよく分かります、笑い) ビジュアルだけではなく、それに比例して素敵な音色を出されるところがとても大事な部分です。そういう所もきちんと客席は見て聴いているのです。

そんなサプライズ(?)もあり、余計に新日フィルさんの演奏に惹かれながら、後半のもう1つのメイン、ドヴォルザーク:交響曲第9番です。

これは、非常に、非常に、素晴らしかったです(感涙)!!!

これを1日に2回も聴くことが出来た喜び、そしてあと5回聴いてもいいかも、という欲深さ。1回聴くだけでもお腹一杯になりますし、でも何度聴いても飽きることはありません。
川畠さんのチャイコフスキーは、本当に素晴らしかったです。でも、今私の頭を流れている曲は、ドヴォルザークの方なのですよね… 新日フィルさんのすごさを「海」に引き続き実感しました。今度は、普通に新日フィルさんのコンサートへ行ってみようと思いました。私は、この曲に対する新日フィルさんの表現の仕方が好きです。

第9番は、コンサート後に色々な人に言いまわりましたが、最初から最後まで銀河英雄伝説の世界に浸らせていただきました。もう、舞台上は宇宙そのものです(一応、コンマスさんがキルヒアイス>それ以外の人は見つかりませんでした、笑い)。小説以上の、アニメ以上の、漫画以上の、そのスケールの大きな銀河の世界がそこにはありました。
確か第2楽章で、チェロの独奏、それに続くコントラバスの独奏…という部分があったと思うのですが、その音色がとても美しくて! 舞台一杯にして演奏されていたので、首を180度回して全体を見る事はなるべく止めていたのですが、この時だけは(昼・夜共に)チェロとコントラバスに見入ってしまいました。懐かしい様な、優しい音色でした。

演奏後は、指揮者の北原さんとコンマスの西江さんに花束が贈られました。コンマスさんは川畠さんに習って(?)ヴァイオリンの女性にプレゼントされていました(笑い、昼夜それぞれ別の女性に>川畠さんは同じ女性に渡していました)

「今日は、この演奏会に来てくださってありがとうございました。アンコールは同じくドヴォルザークのスラブ舞曲・第10番です。」と、北原さん。

10番…?! 2番なら川畠さんのコンサートで時々聴くけれども…

演奏が始まりますと、それは川畠ファンには御馴染みの(?)スラブ舞曲 第2番でした。
私にはこの意味が分からなかったので、少し調べてみたところ、ドヴォルザークのスラブ舞曲集というのは 第1〜8番までが作品46、第9〜16番までが作品72ということで、「作品72 第2番」というのは、第10番となるのだそうです(笑い) つまり、同じ曲だったのですね。

初めてこの曲をオーケストラで聴きましたが、ヴァイオリンだけの時よりも さらに音に広がりがあって、曲全体を楽しんで聴くことが出来ました。どちらのヴァージョンもいいと思います。

とても盛りだくさんな内容の1日でした。これだけ充実した演奏を聴かせていただくと、明日も頑張ろう!という気持ちになってくるから不思議。1日疲れたと言いながら、皆の目は活き活きとしていたのが印象的でした(笑い)

2006年2月21日 記

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