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ニューイヤーコンサート2006
川畠成道 ヴァイオリンリサイタル
【 2006年1月28日(土) in 東京オペラシティ 】
  ピアノ:ロデリック・ジェイムズ・チャドウィック


第一部
■ フォーレ:ソナタ 第1番 イ長調 作品13
■ イザイ:無伴奏ソナタ 第3番「バラード」

第二部
■ チャイコフスキー:メロディー
■ ブラームス:ハンガリー舞曲 第4番
■ ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2番
■ ハチャトリアン:剣の舞
■ パラディス:シチリアーノ
■ ラヴェル:ツィガーヌ

アンコール
■ ドビュッシー:美しき夕暮れ
■ ショパン:ノクターン
■ クライスラー:愛の喜び
■ モンティ:チャルダッシュ
■ グノー:アヴェ・マリア
2006年最初の川畠さんのコンサートです!
風が吹くと少し寒いものの、日差しは暖かく、とてもコンサート日和な1日となりました。

今回の伴奏はロデリックさん! 昨年のニューイヤーコンサートでも伴奏をされた方ですが、その時は私は2階席で 全くお顔を見ることが出来ませんでした。プログラムの写真を見る限りでは『英国紳士』というようなイメージを持っていたのですが、昨年BS朝日で放送された川畠さんのドキュメンタリー番組でコメントされた時は髭を生やされていて、どこかジェレミー・アイアンズのような怪しい雰囲気を感じました(私はジェレミー・アイアンズの怪しさが大好きなのです、笑い)。

―― さて、実際は…
ジェレミー・アイアンズ風の方でした!>おおっ!!!素敵な方でした。

そして、1曲目のフォーレのソナタ第1番が始まりました。
この曲は、私が初めて川畠さんのコンサートに行った 一昨年のソナタシリーズでも弾かれた曲で、当時私は寝てしまいました(汗)知らない曲、そして初めて聴くには難しい曲だったのです。
そして現在…
オーギュスタン・デュメイさんの演奏されるフォーレのソナタが大好きで、聴きこんでいます(笑い)
そして、この曲はヴァイオリンというよりも、ピアノが非常に重要だと私は感じています。デュメイさんの伴奏者、ジャン・フィリップ・コラールさんのピアノがとても素晴らしくて(軽やかに歌われています)、私はこの曲を聴いて以来、デュメイさん、コラールさんのコンビの演奏を好むようになった位です。
ですので、当然ロデリックさんのピアノに注目していました。

第1楽章の出だし… ロデリックさんの指に重りが付いているのではないかと思うくらい、ぎこちないような、重々しい感じでスタートしました。第1楽章は、自分のイメージとは違うフォーレのソナタでした。
第2楽章から、ロデリックさんも体を横に揺らしながら 情感豊かに弾き始めました。そして第2楽章が終わると、ポケットからハンカチを出されて手のひらを拭かれていたので、やはりこの曲は手に汗を掻いてしまう位にピアノの負担が大きい曲なのかなと思いました(違うかもしれませんが)。
今年最初のコンサートということもあってか 会場の方々も大変気合が入っていて、フォーレのソナタは各楽章ごとに拍手が起こりました。そして、それに川畠さんとロデリックさんは笑顔で答えていました。

イザイの無伴奏ソナタ第3番――
私はこの日のために、ワディム・レーピンさんと佐藤久成さんの演奏を交互に聴いて曲を頭に入れて挑みました。昨年の三鷹では、ちんぷんかんぷんだったもので(笑い)

まず言いたいのは、『川畠さんのイザイは非常に素晴らしい!』 ということ。
私にとって川畠さんのイザイは、どこか宗教的な香りがするのですよね。(それはレーピンさん、佐藤さんのCDでは感じませんでした。)最初の一音から、私は過去に…過去と言うか、どこかの昔の修道院に行ったような気分になりました。修道院といっても、私にはそんなに広い知識はありませんので、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老のいる修道院であったり、ジョルジュ・サンド「スピリディオン」の世界であったり。どちらかと言うと、スピリディオンです。あの独特の不思議な雰囲気。その世界に約5分半の間、彷徨っていました。>頭がおかしくなった訳ではありません。
そして、最後に演奏がどんどん速くなって盛り上がってくる部分があるのですが、そこで一気に現実に時間を巻き戻していただいたような、まるで川畠さんが時の番人のように ヴァイオリンを使って時間と空間を操っているかのように見えました。本当にストーリー性のある、深い、深い、演奏でした。
イザイは今年のJapanツアーのプログラムBに入っておりますし(東京はAです、涙)、他のコンサートでも弾かれると思いますので、今後が楽しみです!

今回 私は前の方の席だったのですが、前の席はヴァイオリンの残響…と言う表現が正しいのかは分かりませんが、1音がホール全体を響き渡って、それが消えないうちに次の1音が弾き出される…まるで2つのヴァイオリンで演奏されているかのように味わい深い演奏を聴くことが出来ました。オペラシティの音響はあまり良くないと私は思うのですが、前の席で無伴奏を聴く分には(ツィガーヌの最初の独奏でもそうでした)とてもいいなと思いました(笑い)

イザイの無伴奏が終わると、後ろのほうの方が「ブラピ!ブラピ!」と叫んでいました。
―― えっ?!ブラピ(ブラッド・ピット)???
と一瞬 思いましたが、たぶんどこかの言葉で「ブラボー」をブラピかブラヴィみたいな感じで言うのでしょうね(笑い)外国の方が、大変感動されていたようでした。私も同じ気持ちでした。

後半は、スラブ舞曲から川畠さんの重音が響き渡り、ピアノとの兼ね合いも良くなってきたように感じました。私もどんどん気持ちが高まってきました。
何と言っても、後半は楽しみにしていた「剣の舞」と「ツィガーヌ」があります!

「剣の舞」。
私は川畠さんが演奏する姿がイメージできなかったのですが、弾き方も今までの川畠さんとは違うような感じがして(ヴァイオリンを高く上げて弾くために、時々川畠さんのお顔が見えなくなるときもあった位で)、新しい一面を聴かせて、見させていただいたような気がします。
そして、途中に足で「バタバタ」とステップを踏まれたのですよね(笑い)>会場皆で大喜び!
初めてされたことだと思うので、恐らく川畠さんにも恥じらいが少しあったのではないかと私は思ったのですが!果たして真相は…
タップシューズを履かれて「コツコツ」と本格的な音を出されてもいいかも、と思ったり、ロデリックさんも一緒にステップ踏まれても良かったのでは、と思ったり。大変に楽しませていただきました。剣の舞は、ファミリーコンサートで弾かれると子供たちも喜びそうですね!
【お詫びと訂正】
教えていただいた話によりますと、この時 川畠さんはタップシューズを履かれていたそうです!!!上記の失礼な発言(感想)、お許し下さい。今後の「剣の舞」がますます楽しみです。


川畠さんがステップを踏まれた部分。通常はどのように演奏されているのだろうと気になって(ステップは川畠さんのオリジナル?と思ったので)、簡単にネットで調べてみましたら、ステップを踏む以外にも色々あるのですね。ヴァイオリンをコツコツやるのもありますし(これが一般的なのかしら?)、指揮者が譜面台を叩くのもありますし、ピアニストが立ち上がって手を叩く、というのもあるようです(笑い)元々、楽しい曲のようです。

「ツィガーヌ」。
これも、最高でした!最初の独奏部分(カデンツァ)。私はもう少しゆっくり目が好みなのですが、それはいいとしまして、川畠さんの独奏がとても聴かせてくれました。
五嶋みどりさんのHPで、「『一日がめまぐるしくて落ち着かないときには、ツィガーヌのカデンツァの下手な演奏を聴こう(下手なカデンツァほど、延々と続いて時間が止まるような気がするよ)』。これは我が家でよく言われるジョークです。」と書かれているのが印象的なのですが(こちら)、当然、川畠さんの演奏はこちらには当てはまりませんでした!あっという間に終わってしまって、逆に悔しい位(笑い) でも大満足です。この曲も、もう一度聴きたいです。
ロデリックさんの伴奏も力が入っていました。1番最初のフォーレ第1楽章が嘘のような、滑らかな踊るような演奏。演奏が終わった後のロデリックさんの指(第2関節から上の部分)は真っ赤になっていました。これは、本日のコンサートの盛り上がりを物語っているかのようでした。

アンコール時のトークは、「今日は、今年最初のコンサートです。皆様、あけましておめでとうございます!」から始まって、「ショパンのノクターンは約20年前…15歳の時に初めて弾いた曲で、弾くたびに当時の頃の思い出が甦ってきます」ということ(あまり正確な記憶ではないのですが、汗)。「今年は、アメリカ(ワシントンだったような…?)と中国でコンサートをする予定です。」ということ。「今年1年の、皆様の幸せを祈って弾かせていただきます」ということで、最後の曲、グノー:アヴェ・マリアを弾かれたのでした。
このアヴェ・マリアは、川畠さんのヴァイオリンとロデリックさんのピアノが美しい位に絡み合って、とても良かったと思います。

今年も、また楽しみになってきた!というワクワク感一杯な気持ちで、コンサート会場を後にしたのでした。

2006年1月29日 記

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