戻る

第3回 ソナタシリーズ 2005
川畠成道 and 仲道郁代 デュオ・コンサート
【 2005年9月17日(土) in 紀尾井ホール 】
  ピアノ:仲道郁代


第一部
■ プーランク:ソナタ
■ ドビュッシー:ソナタ

第二部
■ フランク:ソナタ イ長調

アンコール
■ ドビュッシー:美しき夕暮れ
■ フォーレ:シチリアーノ
私の川畠さんの生音との出会いは、昨年のソナタシリーズから始まりました。
昨年は10月10日。今年は9月17日。…約1年前の出来事です。
自分の中では今日のコンサートは『1周年』の一大イベント(!)として、とても楽しみにしていました。

場所は昨年と同じく、クラシックファンには評判の良い紀尾井ホール。
ピアノの伴奏は、とても美しく、素敵な笑顔の仲道郁代さん!
(ちなみに、ソナタシリーズの1回目はダニエル・ベン・ピエナールさんだったそうです。私は2回目の小川典子さんの時しか知りませんので、「ソナタ・シリーズ=女性のピアニスト」 という方式が勝手に出来上がっていたのですが…違ったのですね、笑い)
プログラムもプーランク、ドビュッシー、フランクのソナタということで…そう、このチラシの配布が始まったころ、私はドビュッシーの音楽に興味を持ち始めた頃で(でも、その後特にドビュッシーの音楽を集めたりなどはしませんでしたが、笑。1月のコンサートのアンコールで弾かれた『美しき夕暮れ』が頭の中にずっと残っていたのです)、ドビュッシーのソナタの名前を見たときは大喜びしていました。

今日は良い天気で、木陰を歩きながらの四ッ谷駅から紀尾井ホールまでの足どりは、とても軽かったです。頭の中は 「き・お・い♪ き・お・い♪」 という掛け声をかけていて、何に対してエールを送っていたのかは自分でも分かりませんが(笑い)、非常にテンションが上がっていました。

座席に着く前に、昨年自分が座った2階のバルコニー席を眺めてみると、とても感慨深いものがあり、1年前のことが頭の中を駆け巡りました。そういえば、あの時は入口の扉の厚さに驚き、2曲目からは居眠りをしたんだっけ、演奏中に 隣の人がパンフレットをガサガサやってさぁ…などなど。

――そして、開演の14:00になり、御2人が舞台に登場!
プーランクのソナタが始まりました。

!!!!!

いいっ! 仲道さんがすごくいい!
申し訳ありませんが、最初 私は仲道さんのピアノを弾く、華麗な姿から眼を離せませんでした。銀の靴が輝いていたのも印象的で。
川畠さんの演奏されるプーランクのソナタを聴くのは初めてですし、本来なら川畠さんから目を1秒たりとも離してはいけないはずなのですが(笑い)、なぜか仲道さんに目がいってしまって…
出だしの激しめな部分。「パーン、パ、パーン、パ、パパパーン」と仲道さんは口に出してタイミングをとられて(?)演奏されていました。(その後も、大事な部分は「パパパン」と口に出されていたので、それが仲道さんのスタイルなのかなと思いました。)
その、真剣な表情。笑顔の柔らかさとは正反対の激しい鍵盤の叩き方。それも、単に乱暴に…というのではなく、音がすごく澄み切っていて、柔らかいのです! 女性が出している音、という感じが伝わってくるというか。激しいのですが、その音の中には仲道さんの笑顔の要素が詰まっているというか… 上手く説明が出来ませんが、とにかく私は仲道さんのピアノの音に、そして仲道さんに惹かれてしまいました(笑い)

そして、川畠さん。
一音、一音を確認するかのように 丁寧に、そしてリズム良く弾かれている その表情は、真剣そのもの!
曲自体が持つ雰囲気のためかを私は思っていましたが、とても険しい表情で弾かれていました。
プーランクのソナタはとても素敵な曲ですので(耳に入りやすいです)、期待も大きかったのですが、それに応える以上に満足した演奏でした。

続いて、ドビュッシーのソナタ。
ドビュッシーのソナタは先程とても楽しみにしていたと書きましたが、この曲は私にとっては「地味な曲」というイメージが強く(リズムに乗れるような曲でもありませんし)、楽しみにしていたわりには 曲そのものにはあまり期待をしていませんでした。

…前日までは。

当日の朝になってやっと、このソナタの味(?)というものが分かりかけたような気がしました。
聴きなれてみると素晴らしい曲ではないか! と。>素人のくせに少し分かったふりをする私(笑い)

実際、生演奏を聴いてみますとその通りでございまして。すごく、音の深さを感じることの出来る曲だと思いました。CDで聴くのと生で聴くのとでは、満足感がかなり違うのではないかと。
私はヴァイオリンを弾いたことがないので 『1音を出す』 ということが どのように難しいことなのかが分からないのですが、ヴァイオリンを習われている方が以前おっしゃっていたことによると、同じ音を長い間出すということは、弓を動かしている中で 音の強さと音程を一定に保たなければいけないということで、大変難しいのだそうです。相当の集中力も必要だとか。(短い音が続いた方が出しやすい、と。)

1音、1音の長さが印象的な曲ですので、ヴァイオリンの音色の魅力をたっぷりと味わえる訳です(笑い)
さらに、紀尾井ホールの音の響きが素晴らしく、川畠さんのヴァイオリンが響く、響く!
川畠さんも、胸を張って伸び伸びと弾かれていました。(いつものフランクのソナタ・第3楽章を弾かれている時の川畠さんと似ているかな…と思ったのですが。)
曲そのものというよりも 川畠さんのヴァイオリンの音色、そして仲道さんのピアノの音色を楽しみ、感じ取ることが出来たような気がします。

演奏が終わった時。

…やっぱり、いいじゃない! ドビュッシー!!!

そんな気持ちで一杯でした(笑い) ドビュッシー度、★(星)5つ…みたいな。私は満足でした。

最後のフランクのソナタは 最初のヴァイオリンの美しい音色、そしてピアノの独奏…と盛り上がる部分で(上手く説明出来ませんが)、私は川畠さんのヴァイオリン、そしてそれに続く仲道さんのピアノの両方の音色の美しさに鳥肌が立ち、目頭が熱くなりました。
この曲は、ヴァイオリンだけでなくピアノの音色も活かされている曲ですので、御2人の演奏が紀尾井ホール全体に響き渡った瞬間、鳥肌が立つのは不思議なことではないのかもしれません。
そして、第4楽章の最後の盛り上がりでも再び鳥肌と目頭が熱く…(笑い)

今日は、どれもが本当に素晴らしく、呼吸をするのがもったいないという位、聴き入ってしまいました。なので、非常に息苦しかったです(汗) 酸素が足りませんでした。そして手にも、汗を一杯かいてしまいました。

ブラボーが飛び交う中、アンコールはドビュッシーの「美しき夕暮れ」。
1月に聴いて以来、ずっと待ち続けていた曲です。やったー! と心の中で叫びました(笑い)
美しき夕暮れは、短い曲ですので他の事を考えていると、あっという間に終わってしまうのですよね。ですので、最初から最後まで 聴きもらすことなく集中して、心の中に刻み込んできたつもりです。
こちらも地味な曲ではありますが…(元々はピアノの曲なのでしょうか) 噛めば噛むほど味が出てくるような、後々思い出すと大変良かった、と思える曲だと思います。

アンコールの合間のいつものトークはありませんでした。…そういえば、無かったのです!
その時は 演奏に感動しっぱなして、何も違和感ありませんでしたが。だからこそ、トークを無くしたのでしょうか。良く分かりません(笑い) ヴァイオリンを構えたまま、マイク無しで曲名を言われたのでした。

最後のサイン会では、川畠さんだけでなく、仲道さんにもサインをいただきました!
仲道さん…サインをするDVDやCDに、込められた思い・解説などを 1人1人にお話して下さり、笑顔と同じくとても素敵な方でした。私のお願いしたCDでは「ここには『冬のソナタ』でも良く流れていた曲が入っていますから、楽しんで聴いてくださいね!」というようなことをおっしゃっていたような気がします。とにかく、緊張してしまって何をお話して下さったのか あまり覚えていません(笑い)そのCDをしまおうとしても、手が震えてしまって上手く袋に入れられなかったのですよね。非常に興奮していたと思います。
会場を去るときも、川畠さんのサインに並ぶ人々に対して、おじぎをして下さりながら 華麗に去っていきました。いつか、仲道さんのコンサートにも足を運びたい…! 後姿を見送りながら、そう思いました。

今日は、川畠さんにサインをいただく時もなぜか非常に緊張してしまいました(昨年、初めて川畠さんにサインをいただく時と同じような気持ちだったと思います)。
そして頭の中ではドビュッシーとプーランクのソナタがぐるぐると流れていて、いい1日だったなぁ…と満足感で一杯でした。

毎回・毎回 言っているような気がしますが、今日のソナタシリーズは、2005年のコンサートの中で1番のコンサートだったのではないかと(笑い)! >…本当にいつも言っていますが。今度こそ3本の指には入ると思います。
でも、いつもそう思える演奏に出会えるということは、とても幸せだと思います。
次のコンサートも期待せずにはいられない、私でした。

2005年9月18日 記

▲上へ
本嫌いさんの読書感想文〜カラマーゾフの兄弟はいつも貸出中?!
YUKIKOGUMA   All Rights Reserved