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日本フィル第301回名曲コンサート 《番外編》
大人のためのオーケストラ探検隊
【 2005年6月11日(土) in サントリーホール 】
  探険隊長 奥田佳道(音楽評論家) & 隊員 31名


日本フィル第301回名曲コンサートを聴く前に、普段では見ることの出来ないサントリーホールの裏側を探険して、より音楽を身近に感じてしまおう! 『オーケストラ探検隊』 という日フィルさんの企画。友人に誘われて、最後の最後で申し込みを一緒にしていただきました。なので最後の31人目の、はみだし隊員は私…なんですね(笑い、本来の定員は30人だそうです)。

結果を先に書いてしまいますと。

 参加して良かったです!!!

誘ってくれた友人に大変感謝しています。
まさか、本番前にこれほど充実した時間が過ごせるとは思っていませんでした。
探険隊長の奥田さんのお話も興味深かったですし、案内してくれた日フィルさんのスタッフの方がとても良い方で! 私にとって初めての日本フィルハーモニー交響楽団でしたが、音楽を聴く前から私の中では好感度急上昇でした。

集合場所が楽屋口 というのも素人にはドキドキさせる演出です。
廊下のボードに、普通のように「本日の演奏項目」などが書かれているのですから!>ちなみにアンコールは『未定』と書かれていました(笑い)
階段を上って、裏から舞台入口へ。
サントリーホールは楽屋と舞台とが同じ階にあります。段差無く 舞台へ行ける事によって、息を切らしたり心拍数が上がったりすることなく、ベストな状態で演奏が出来るようにという配慮による設計だそうです。なるほど…観客や音の響きだけでなく、演奏者の立場にも立って考えて造られたホールなのですね。

そして(…と、その間にも色々ありましたが省略です)、探検隊メインのゲネプロ見学です!
ゲネプロ… 私には初めての言葉でしたが、ドイツ語の「Generalprobe(ゲネラルプローベ)」を省略した言葉『本番直前の総練習』 だということを奥田隊長が説明して下さいました。

早速、ホールに入って…の前に。
今回ホールを案内してくださった日フィルのお姉さんが非常に嬉しい発言を!

「この後、何らかの形で川畠成道さんと接触することがあるかもしれませんが、本日川畠さんはテレビの取材が入っておりますので、その時はカメラがまわることをご了承下さい。」

…確か、こんな感じのことを言われていたと思います。

 何らかの形で接触…? 何らかの形…???

つまり――
そのような場を用意してくださっている…ってことですよね(笑い)
恐らく、今回の探検隊に参加された皆様は(私もそうですが)、川畠さんのチャイコフスキーのコンチェルトをゲネプロで見ることが出来たら嬉しいなぁ…という、半分位の期待を胸にいだいて参加されたと思うのです。なので 『お話が聞ける場』 なんて、想定の範囲外。考えてもいませんでした。
皆、顔から笑顔が隠せませんでした。>でも誰も大はしゃぎしない所が、さすが大人です…

気を引き締めなおしてホールへ入ります。
10列目以降でしたら、どの席に座っても良いとのことでした。
全部聴いてしまっては、本番の楽しみが無くなってしまうので…とのことで、私たちが聴いた曲は2曲。今回はプログラム通りの順で演奏されるとのことで(指揮者の方の進め方によってはプログラム順でないこともある、ということでしょうか?)、『グリンカ : オペラ 《ルスランとリュドミラ》 序曲』 と 『チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調』 を聴きました。 指揮者の沼尻竜典さんを始めとして、演奏される皆さんは私服での演奏です。(どんな服を着ていたか、などは覚えていません…)

『ルスランとリュドミラ』… 私はこの曲を、ルスランが魔法使いや敵たちと戦っている時の曲だと思っていたのですが。本日の説明によると、これは 「結婚式」 の場面の曲だとか!
私の想像力ってゼロだな…と思いながら聴いていました。

そして、私個人の感想なのですが。「サントリーホールは音の響きがとても良い」 という評判をネットなどで得ていましたので、今回川畠さんの演奏も楽しみでしたが、サントリーホールのすごさを感じるのも大変楽しみにしていたのです。
ところが演奏を聴いていると、音が何だか小さくこじんまりとしか聴こえません。1月に行った東京芸術劇場を思い出してしまいました(あの時は、あまり良く聴こえなかったのです)。
オーケストラって生で聴くと、やはりこんな感じなのか…と、自分の想像を超えることが出来なかった現実に少し残念でもありました。そして、自分が期待しすぎてしまったのかな、とも思いました。

そんなことを思いながら、2曲目。川畠さんの登場です!!!
ひとまず音のことは置いておいて、川畠さんの演奏をじっくりと聴き惚れようと(笑い)

…そこまでは覚えているのですが。
川畠さんの首に当てる布が白くて、いつもより大きいなぁ…と思ったことしか覚えていません。

私の次の記憶は川畠さんの独奏中。
指揮者の沼尻さんが、椅子にちょこんと座って、川畠さんの演奏をじっと聴いていた(聴き惚れていた?)ことです。この姿を見た時点で、沼尻さんの好感度が非常にUPしました。この気持ちの続きは、本番のコンサート中に…(笑い)
他の皆さんは、体を前にして聴いている人、自分のパートを楽譜で再確認している人など様々でした。

そして、最後の記憶。
日フィルの皆さんが、川畠さんに「ブラボー!」と拍手をする代りに(両手は楽器でふさがっているので)、両足をバタバタ足踏みして気持ちを伝えていたことに私は感動しました。
感動…というよりも。私も一緒に足をバタバタさせたかったです。気持ちを伝えたかった!拍手の出来ないこの立場が歯がゆいの何のって。

ホールを出て、2階のロビー(?)に上がり、少し待ちますと向こうから爽やかな笑顔で川畠さんが…! 先程、あんなに激しく演奏されていたのに。本番までの大切な時間を探検隊のために…と思うと、申し訳ないような、でも嬉しいような(自分に嘘はつけません、笑い)!

奥田隊長が、色々な質問をされました。
「よく、演奏前の縁かつぎをされる方がいますが、川畠さんはそういったものはされませんか? 食事にこだわるとか。演奏前は、何時頃に食事されるのですか?」
『 特にこだわりはありません。食べたい時に、食べたいものを食べます。以前はメロンパンを食べていましたが…今は何でも食べます。でも、やはりメロンパン… 』

――私の妄想でしょうか?(笑い)確か、このようなやりとりをされていたような…改めて考えてみると、違うような。

「来年はモーツァルト・イヤーですが(2006年は生誕250年)、川畠さんもモーツァルトを弾かれる予定はありますか?」
『 はい。こういう機会に普段なかなか弾くことのない曲を色々挑戦したいと思います。モーツァルトに限らず、プーランクやドビッシーや… 』

――いつの間にやら今年の秋のソナタシリーズのお話です。プーランクとドビッシーのソナタ!
特に、『ドビッシー』と言われた時の川畠さんの美しい発音が、今も私の耳に残っています♪

川畠さんに質問をされる前に、奥田隊長は私たちにチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲について少し説明をして下さいました。
このチャイコフスキーのコンチェルトはあまりにも難しく、技巧を要するので(作曲当時、献呈を予定していたレオポルト・アウアーに「演奏不能」と言われたという話は私もどこかで読みました)、「簡易版」というものも存在する ということ。
その違いが一番分かるは第3楽章だそうで、音の多い「完全版」の場合は音符がいくつ付いているのかは指揮者も詳しく分かっていないことが多く、こういう時の指揮棒の振り方を見てみるもの、オーケストラを楽しむひとつの方法だそうです。(ただリズムを刻むしかない、と。)
この話を聞いて、私は1月の東京芸術劇場の演奏を思い出しました。私はあの時、川畠さんの音がCDで聴いたものより音が多いなぁ…と思ったのです。それは、川畠さんが一音一音丁寧に弾かれているためと、CDでは音を拾うのに限界があるのだろう、と勝手に結論付けていたのですが。
そう思い出し、川畠さんの演奏は「完全版」(とでも言うのでしょうか?元々の楽譜。)のはずだ、と思いました。実際、そうでした。

「先程、皆にも説明をしていたのですが、今回のチャイコフスキーのコンチェルト。これには「簡易版」と「完全版」とがありますよね。今日の演奏では川畠さんは「完全版」で弾かれていましたが、昔からずっとこの「完全版」で弾かれていたのですか?」
『 いえ、学生時代に初めてこの曲を習った時は、「簡易版」で弾きました。その後「完全版」を弾くようになり、それからずっと「完全版」で私は弾いています。 』

「やはり、練習の前に指揮者の人とどちらの楽譜でやるのか、打ち合わせなどをするのでしょうか?」
『 それが、いつも言おう、言おう、と思っていながら、言うのを忘れたまま練習に入ってしまうのです 。』
「では、演奏者たちは今回はどちらでやるか分からないまま弾いていたりするのですね(笑い)指揮者によっては振り方が、2拍子だったり4拍子だったりしますしね。分からなくなりますよね。」

――私の方こそ、意味が分かりません(笑い) でも、この打ち合わせが曖昧なまま練習に入られることがある、ということのようです。そうなると、楽譜も違ってきますし、大変なのですね…

「強いて言うのなら、今回のこのコンチェルト。聴き所はどこになるのでしょうか。どんなことを考えて弾かれるのでしょうか?」
『 そうですね… この曲は、第1楽章から第2楽章、第3楽章まで、常に気の抜けない曲です。例えば、第2楽章では弱音器を付けて演奏するのですが、これを付け忘れる分にはいいのですが、取り忘れると大変なことになります。今まで、取り忘れた事は一度もありませんが(笑い) いつ事件が起きてもおかしくない、そういった曲です。 』

…私の記憶では、このような問答が繰り広げられていたように感じます。
チャイコフスキーのコンチェルトを最初に一緒に演奏したのが日フィルさんで、それ以来、何度もご一緒する機会があって、日フィルさんは自分のどのような演奏にも必ずついて来てくれるので、安心して演奏が出来ます…のようなことも言われていたと思います。

この探検隊。これで終りではありません。
この後、お隣の東京全日空ホテルの37階、見晴らしの大変良い場所で軽食を取りながら奥田隊長のお話を聞き、川畠さんのファンの方たちと心行くまでお話をし、本当の最後として、サントリーホールで利用できるドリンク・チケットをいただいて解散するのです!

奥田隊長のお話の中で1つだけ。
先程の質問で、川畠さんがプーランクやドビッシーというフランスの曲に触れられたことが嬉しかった、というようなことを言われていました。
プーランクのソナタはメジャーではないけれども、とても良い曲で、一部がチャイコフスキーの「エヴゲニー・オネーギン」とそっくりな部分がある ということを教えてくれました。それは単なる真似っ子ではなく、チャイコフスキーへのオマージュなのです…のようなことも。

オネーギンと言えば、原作はプーシキン! ドストエフスキーが熱中していたプーシキンです!
今回のルスランとリュドミラの原作者でもあります。この時、私の頭はオネーギンのことで一杯でした。オネーギン読んで、チャイコフスキー聴いて、プーランクのソナタと比べて、そして9月のソナタシリーズを迎える…! これで、秋の計画はばっちりです(笑い)
すごく良い話を聞いた…と1人ではずれた部分で感激に浸っていたのでした。

――話は戻しまして。
『 至れり、尽くせり 』とは正にこのこと。
幸せ気分を満喫して、オーケストラ探検隊は幕を閉じました。
そして既に1日が終わったような、色々な意味での満腹感を感じていたのでした…

※ 上手くまとめきれずに長文になってしまいました。ここまで読んでくださって、ありがとうございます。感謝!

2005年6月17日 記

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